成年後見人とは?いざという時に財産を守るための10の知識

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高齢化が進む現代社会において、ご親族の中に認知症等が原因で判断能力が低下しまう方がおられる方も少なくないと思います。

オレオレ詐欺などの特殊詐欺が一向に減らないように、このような判断能力が低下した方を狙った詐欺や悪徳商法も後を絶ちません。

このような、判断能力が低下してしまった方の財産を保護するための制度として成年後見制度があります。名称は聞いたことがあるけれど、具体的にはよくわからないという方もおられるでしょう。

後見制度は、うまく利用することで、前記のような犯罪等による被害を防ぐことができるだけでなく、相続に関するトラブルまで未然に防ぐことができるのです

ここでは、成年後見や相続などの家事手続きに精通したベリーベストの弁護士が、後見制度の仕組みや成年後見人の役割等について説明していきます。この記事が、成年後見人について理解し、いざという時に財産を守ることに役立てば幸いです。

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1、成年後見人とは?

認知症や精神障害、知的障害等の理由で判断能力が十分ではない方が、不動産や預貯金等の財産を管理したり、介護サービス等に関する契約を締結したり、また、遺産分割協議等の法的行為を行ったりしようとすると、判断能力が不十分なせいで不利益な内容や条件の契約を結ばされてしまう可能性があります。

成年後見人とは、このような判断能力が不十分な方を保護するために、判断能力が不十分な方に代わって財産管理等の権限を与えられた人のことです。

なお、判断能力が不十分な方に成年後見人を付ける場合、その後見人をつけるご本人のことを、成年被後見人と呼びます。

2、成年後見人は誰がどのように選任する?

成年後見人の選任は家庭裁判所が行います。判断能力が不十分な方の親族などが家庭裁判所に申立てを行うことで、家庭裁判所が適切な方を成年後見人として選任します。

そして、家庭裁判所が成年後見人を選任する際は、ご本人の判断能力がどの程度低下しているか等について医師による鑑定等を行う場合があります。

成年後見人をつけるということは、ご本人が単独で契約等を行うことができなくなる(法律上は完全にできなくなるわけではありませんが、後から取り消される可能性があるため、事実上、相手方が契約に応じてくれないという状況になります)という点で、ご本人の権利を制限することになります。

ですから、まず、医師の診断によってご本人の判断能力がどの程度低下しているかを調べる必要があるのです。

3、成年後見人をおくメリットとデメリット

(1)成年後見人をおくメリット

成年後見人が選任されると、ご本人が単独で行った契約は、事後的に成年後見人が取り消すことが可能になります。

そのため、仮に、成年後見人の知らないところでご本人が不利益な契約などを結ばされてしまった場合でも、後から契約の効力を否定することができるようになります。

また、成年後見人は、ご本人の代理人として契約を行うことができますので、介護サービス契約等ご本人のために必要な契約を行うことができます。

また、遺産分割等の法律行為を行う必要がある場合に、ご本人の判断能力が低下していても、成年後見人がついていることでスムーズに手続きをすすめることができます。

さらに、成年後見人が選任された場合、成年後見人は、定期的に財産の状況について家庭裁判所に報告をしなければならなくなります。

それによって、ご本人の財産が、一部の家族や周囲の者によって勝手に使われてしまうことを防ぐことができます。

(2)成年後見人をおくデメリット

成年後見人は、ご本人に代わって、ご本人のために財産を管理します。しかし、例えば、ご本人の子供のうちの一人に財産を贈与するといったような判断を後見人が勝手にすることはできません。

また、あくまで管理をするだけなので、投資をするといったような積極的な運用をすることは、財産が減少するリスクもあることから許されません。

ですから、ご本人が財産を利用するのに比べると、一定の制限が生じてしまうというデメリットがあります。

この点は、特に相続税対策の点において顕著になる場合が多いといえます。

生前贈与や養子縁組等を利用した積極的な相続税対策は、これによってご本人の財産や身分関係に影響を及ぼすことから成年後見人が行うことができません。

そのため、積極的な相続税対策ができないままになってしまうという可能性があるのです。

また、定期的に家庭裁判所に財産状況の報告をしなければならないため、普段の入出金の状況等を記録しておく必要があります。ご本人の財産が勝手に使われてしまうのを防ぐことができるとはいえ、煩雑であることは否めません。

4、成年後見人の役割

成年後見人の役割には大きく分けて2つの役割があります。

1つは、ご本人の身上監護です。判断能力が低下している方は、一人で日常生活を送るのが困難である方が少なくありません。

そこでご本人のために、家賃の支払い等を行ったり、医療機関や介護サービス、福祉サービス等に関する手続きを行ったりするほか、定期的にご本人を訪問して生活状況を確認することが求められます。なお、ここでいう身上監護には、現実の介護行為は含まれません。

成年後見人のもう1つの役割が財産管理です。通帳や印鑑等を保管するだけでなく、ご本人が日常使用する範囲の金銭の管理や、公共料金・税金等の支払いの管理、不動産の管理等を行うことが求められます。

5、成年後見人には誰がなる?

(1)成年後見人になれない人

成年後見人になるのに、特に資格等は必要ありません。ただ、法律上、下記の事由がある方は成年後見人にはなれないとされています。

①未成年者

②過去に家庭裁判所に解任された法定代理人、保佐人、補助人

③破産者

④成年被後見人に対し訴訟をしている、または過去にした者、その者の配偶者及び直系血族

⑤行方不明者

上記の①、②、③、⑤は、他人の財産を管理するという成年後見人の職務の性格上、不適格と考えられている者です。

なお、③の破産者については、過去の破産をしたことがあっても、免責決定を受けている場合は除かれます。

また、④は、被後見人と対立する立場にある者ですから、本人の意思を尊重して財産を保全するという成年後見人の職務から当然に不適格といえます。

(2)成年後見人になれる人

前記のとおり、成年後見人になるのに、特別な資格は必要なく、前記の①~⑤の事由に該当しない限り誰でも成年後見人になることができます。

ただ、成年後見人は、ご本人の身上監護と財産管理の両方を行わなければならず、一人で担当するのが困難な場合もあります。

そのような場合は、成年後見人を複数選任し、役割を分担してもらうこともあります。

特に財産管理については、親族等が行うのが難しい場合や、親族間で、誰が財産管理を行うかについて意見が対立している場合等は、第三者で、専門家でもある司法書士や弁護士等が成年後見人に選任される場合もあります。

(3)成年後見人になる人がいない場合

親族等が近くにいないとか親族も介護が必要な状況であるといった理由で成年後見人になれる方がいない場合、家庭裁判所において専門家後見人が選任される場合もあります。

その場合、弁護士や司法書士、行政書士などの法律の専門家や、社会福祉士等の福祉の専門家が選任されることが多いといえます。

また、社会福祉協議会やNPO法人等が団体として成年後見人に選任されることもあります。

団体が成年後見人に選任された場合、その構成員が業務を行うので、個人が成年後見人になるのに比べて長期的に業務を行うことができるというメリットがあります。

6、成年後見人の費用

成年後見人をつけるためには、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう際の費用と、選任後成年後見人に対して支払う報酬の2つの費用が必要になります。

家庭裁判所で成年後見人を選任する際にかかる費用は、家庭裁判所に納める収入印紙代、切手代があり、多くても1万円程度です。

ただ、成年後見人を選任するにあたって、ご本人の判断能力の低下状況について、医師の鑑定が必要であると家庭裁判所が判断した場合、その鑑定費用として、5~10万円程度が必要になります。

また、成年後見人が選任された後、選任されたことを登記するための費用が数千円発生します。

次に、成年後見人に対する報酬ですが、これは、成年後見人に選任された方が家庭裁判所に対して報酬を決めてもらう申立てをし、家庭裁判所が報酬額を決定して、ご本人の財産から支給されます。

この報酬については、親族が成年後見人となった場合は、いちいち申立てをしないという場合も少なくないようです。

ただ、専門家後見人のように第三者が成年後見人になった場合は、報酬を支払わないわけにはいきませんから、必須になります。

専門家後見人の報酬は、管理している財産の額や成年後見人として行った職務の程度を勘案して家庭裁判所が判断します。

基本的には月額2万円程度をベースに、財産が高額の場合は月額5~6万円程度まで増額される場合があります。

7、成年後見人選任手続きの流れ

(1)後見開始の申立て

成年後見人を選任してもらうためには、まず、家庭裁判所に対し、「後見開始の申立て」をします。申立てを行うことができるのは、本人、配偶者又は4親等内の親族です。

申立てに際しては、成年被後見人となるご本人の診断書を添付する必要があります。また、成年後見人の候補者がいる場合は、候補者を明記して申立てをします。

(2)家庭裁判所調査官による調査

家庭裁判所に申立てがなされると、家庭裁判所調査官がご本人の状況や成年後見人の候補者、その他の親族等の状況について調査を行います。

この段階で、ご本人の判断能力の低下状況について医師の鑑定が必要だと判断された場合、鑑定を行います。

(3)後見開始の審判

調査の結果、ご本人の判断能力が欠けていると判断された場合、家庭裁判所が後見開始の審判を行い、正式に成年後見人を選任します。

ご本人の判断能力の程度によっては、後見ではなく、保佐や補助の判断を行うこともあり、その場合は、保佐人(補助人)が選任されます。

(4)審判書謄本送付と後見登記

家庭裁判所が審判を行った場合、その審判の結果を記載した審判書謄本が、申立人と成年後見人に送付され、正式に後見が開始します。

また、成年後見人の氏名等が東京法務局に登記されます。登記されることで、成年後見人は、自分が成年後見人であることを証明できるようになります。

8、成年後見制度の活用事例

(1)ご本人の財産を保全したケース

Aさん(85歳)は、子供が3人おり、次男のBさん(60歳)家族と一緒に暮らしていました。

Aさんには、5,000万円程度の資産と年金収入がありましたが、Aさんが認知症を患っており、判断能力が低下していたため、BさんがAさんの資産や年金収入を勝手に使っているのではないかと他の子供たちが心配していたというケースです。

このケースにおいて、Aさんの長男が家庭裁判所に後見開始の申立てをし、家庭裁判所は、司法書士Xと次男のBを成年後見人に選任し、XにAの財産管理を、BにAの身上監護をするように命じました。

これにより、Aさんの財産が勝手にBさんに使われるということを防ぐことができ、また、Bさんとしても、勝手に使っているわけではないのにあらぬ疑いをかけられるということもなくなりました。

(2)訪問販売等からご本人を保護したケース

Cさん(78歳)は、夫を亡くしてひとり暮らしで、認知症を患っています。

隣の市に住んでいる娘のDが月に1~2回様子を見に来るという状況だったのですが、 Cさん宅を訪れる訪問販売のセールスに対して、布団や宝石など、生活に必要のない物の購入契約をCさんがよくわかないままに契約してしまう(高額品はローンの契約をさせられてしまう)ことにDさんが困っていました。

そこで、Dさんは、家庭裁判所に後見開始の申立てをし、自分が成年後見人に選任されました。その後は、Cさん宅に訪問販売の業者が来ても、Cさんには成年後見人がついているという証明書を業者に見せるようにCさんに指示をすることで、業者が契約をあきらめることが多くなり、Cさんが契約してしまった場合でも、Dさんが後から(クーリングオフ期間後でも)取り消すことができるようになりました。

そのうち、Cさん宅を訪れる業者もほとんどいなくなったようです。

9、他の制度との比較

判断能力が低下した方を保護する制度は、ご本人の判断能力の低下の程度によって、後見以外にも、保佐、補助といった制度があります。

(1)後見人と保佐人とはどう違う?

後見人は、ご本人の代わりに財産に関する契約等について代理する権限があるのに対し、保佐人は、家庭裁判所が審判で定めた行為についてのみ代理権を有します。

また、後見人は、ご本人が行った行為のうち、日常生活に関する契約行為(例えばスーパーでの買い物等)以外は全て後から取り消すことができますが、保佐人が取り消すことのできるのは、民法13条1項に規定された行為で、保佐人が同意をしていない行為に限られます。

(2)後見人と補助人はどう違う?

補助人は、保佐人と同様、家庭裁判所が審判で定めた行為についてのみ代理権を有します。

また、補助人が後から取り消すことができるのは、民法13条1項に規定された行為のうち家庭裁判所が審判で定めた行為について、ご本人が補助人の同意を得ていない場合に限られます。

 

後見

保佐

補助

ご本人の判断能力

判断能力が欠けている

判断能力が著しく不十分な状態

判断能力が不十分な状態

ご本人ができること

日常生活に関する契約行為のみ

日常生活に関する契約行為は単独で可能
民法第13条1項所定の行為を行うには保佐人の同意が必要

原則として制限はない。
ただし、民法第13条1項所定の行為のうち、家庭裁判所が審判で定めた行為については、補助人の同意が必要。

代理人の立場

成年後見人

保佐人

補助人

代理人の権限

財産に関する全ての行為

家庭裁判所が審判で定めた行為

家庭裁判所が審判で定めた行為

(3)法定後見人と任意後見人とはどう違う?

法定後見人は家庭裁判所で成年後見人が選任されるのに対し、任意後見人は、ご本人が、判断能力が低下する前に、将来、自分の判断能力が低下した際に後見人として財産の管理等を任せたい人物との間で契約(任意後見契約)を締結することで、ご本人が自ら後見人を選任することができるという制度です。

なお、ご本人が任意後見契約を結んでいた場合、判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に申立てをし、後見監督人(成年後見人を監督する立場の人)を選任してもらう必要があります。

(4)信託の受託者とはどう違う?

後見制度は、ご本人の判断能力が低下した際に、ご本人に代わって財産管理等を行う者を選任する制度です。

これに対し、信託は、ご本人が十分判断能力を有する場合であっても、第三者に財産の管理を委託する場合に利用される制度です。

この場合に、財産の管理を委託された者を受託者といいます。

信託の場合、受託者に財産の管理を任せた後に、ご本人の判断能力が低下した場合であっても、後見人を選任することなく、受託者が引き続き財産の管理を行うことができます。

詳しくは、「家族信託で託した資産を安全に運用してもらい利益を受けるための知識」をご参照ください。

10、成年後見人についての相談先

親族に判断能力が低下した方がいる場合や、もし自分の将来判断能力が低下したときのことが心配な場合は、後見制度の利用を検討されることをおすすめします。

後見制度自体の仕組みや、財産の管理について特に相談されたい方は、弁護士や司法書士等の法律家に、身上監護について相談されたい方は、社会福祉協議会や社会福祉士等に相談されるのが良いといえます。

まとめ

ご本人が生涯をかけて築いた財産が、ご本人の意思と関係なく利用されてしまったり、散逸してしまったりするのは、財産の所有者であるご本人の本意に反しますし、後々相続人間にトラブルが起こってしまう原因にもなります。

そのようなトラブルを防ぐためにも、できるだけ早い段階で後見制度の利用を検討されることをおすすめします。

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