裁判員裁判を経験した弁護士が教える! 裁判員裁判の流れ

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Lawyers speaking with the judge

昨今ニュースなどで「裁判員裁判」という言葉をよくお聞きになると思います。

言葉は聞いたことはあるけれども、どのような手続きであるのかはよくわからないというのが多くの方の感想ではないでしょうか。

今回は、裁判員裁判の仕組み、被告人の弁護でどのような点が大切かなどを中心にお話をしていきます。

1、裁判員裁判とは

一般から選ばれた6人の裁判員と3人のプロの裁判官によって行われるのが裁判員裁判です。検事や弁護士から事件についての主張を聞いたり、目撃者や被害者、被告人の話を聞いて、最終的に、有罪無罪のどちらにするか、有罪にするならどのくらいの重さの罪にするかが決められます。

2、対象となる事件

裁判員裁判の対象となる事件は、一定の重大な犯罪です。

代表例としては、

  • 人を殺した場合(殺人)
  • 強盗犯が、人にけがをさせ、あるいは、死亡させてしまった場合(強盗致死傷)
  • 人にけがをさせ、死亡させてしまった場合(傷害致死)

などがあげられます。

こうみますと被害者が亡くなってしまった犯罪が中心となっていることが分かります。マスコミで取り上げられるところでは、酒を飲んで車を運転して被害者を死亡させてしまった場合の危険運転致死や子供に食事を与えず部屋に置きざりにして子供が亡くなってしまった保護責任者遺棄致死なども対象となる事件です。

これらの罪名に該当する場合でも、裁判員裁判とならない場合もあります。例えば、示談が成立した場合や、当初強盗致傷とされていた罪名が、新たな事実によって窃盗と傷害というように罪名落ちした場合などです。

3、裁判員裁判の流れ

(1)公判前整理手続き

裁判員裁判の対象となる事件では、起訴がなされると、裁判がはじまる前に、裁判官、検察官、弁護士が集まって、裁判の準備のために話し合いをします。これが公判前整理手続です。

公判前整理手続きでは、検事と弁護士がそれぞれ事件についての主張をし、裁判で争うポイントを決めます。これを争点といいます。

争点がきまると、検事と弁護士がその主張をどのような証拠によって証明するのかを確認します。例えば防犯カメラの映像を調べるか、目撃者を呼んで話を聞くかなどです。

裁判員裁判は、一般の裁判員が参加して短期集中で行われるため、裁判がはじまる前にかなり細かく準備をする必要があるのです。

このように裁判員裁判では、裁判が実際にはじまる前の段階が今までの刑事裁判と比べて、非常に重要であるといえます。

被告人の立場からすれば、公判前整理手続で弁護士がどのように対応をするかによって、その後の裁判の行方が大きく変わってくるのです。弁護士が検事の主張をよく理解したうえで、被告人の言い分に基づいて、的確な反論をしなければ、争点があやふやになります。争点があやふやになれば、目撃者、被害者、被告人などに対する質問で適切な対応ができなくなるのです。裁判員裁判では、裁判がはじまる前の段階でも弁護士の力量が大きく問われるのです。

(2)公判期日

①裁判の具体的な流れ

裁判は、その裁判で検事が裁判所に判断をしてもらいたい事実を明らかにすることからはじまります。これを起訴状の朗読といいます。これに対して、被告人と弁護士が意見をいいます。

このあと、検事が考える事件についてのストーリーを示します。事件発生の経緯から結果の発生まで被告人が有罪であることについて物語のように話がなされます。このことを冒頭陳述といいます。

これに続いて弁護士が考える事件のストーリーを示します。ここで弁護士は被告人が無罪であることや、有罪であるとしても同情の余地があり悪質でないことを説明します。これが弁護士の冒頭陳述です。

検事と弁護士の両方からそれぞれのストーリーが語られると、ストーリーを根拠づける証拠が調べられます。これを証拠調べといいます。例えば、ナイフが凶器として使われたコンビニでの強盗致傷事件であれば、使われたナイフを調べたり、お店の防犯カメラの映像を見てみたり、目撃者である他のお客の話、怪我をした被害者の話、被告人自身の話を聞いたりします。

証拠調べが終わると、証拠調べの結果に基づいて検事は、被告人が有罪であることの最後の主張をします。これが論告と呼ばれるものです。検事はこのときに、被告人の刑の重さについて懲役何年が相応しいという意見もいいます。これが求刑です。これに対して、弁護士は、証拠調べの結果をうけての被告人に有利な事情を説明します。これが最終弁論です。

以上で法廷での具体的なやり取りは終了します。このあと裁判員と裁判官による話し合いがなされ、判決が下されます。

②裁判員裁判と今までの裁判の違い

裁判員裁判は、普通に生活をする裁判員が参加して行われますから、短期集中で行われます。よほどの重大事件や入り組んだ事件でなければ、数日で裁判が終わってしまうことも珍しくありません。そして有罪無罪の判断や刑の重さの判断は、裁判員と裁判官が実際に法廷で見聞きしたことのみによってなされます。

法廷で見聞きしたことに基づいて判断がなされるのは当たり前のことだと思われるかもしれません。しかし、裁判員裁判が開始されるまでは、これは当たり前のことではありませんでした。今までの刑事裁判では、裁判官は法廷の場で見聞きしたことから判断をするというよりは、文字になっているその裁判の記録を時間をかけて読みこんで判断をしているのが常でした。

裁判員裁判では、弁護士や検事が実際に法廷でやり取りしたことだけが判断の基礎となります。これは何を意味するのでしょう。今までの刑事裁判では、裁判官は裁判官室に戻って裁判の記録をよく読みこみますから、検事や弁護士の法廷での主張は、必ずしも分かりやすいものである必要はありませんでした。弁護士や検事が提出する文書が分かりやすければそれでよかったのです。また、目撃者、被害者、被告人等に対する質問でも、その場でのやり取りを重視するのではなく、質問内容が文字になったものを後から読むことで判断をしていました。

しかし、短期集中型の裁判員裁判では、法廷で裁判員と裁判官に分かりやすく説得力のある説明ができなければそれで終わりなのです。法廷でのやり取りが終わった後、裁判員や裁判官が裁判の記録をよく読んでじっくり判断をしてくれるようなことはありません。法廷でのやり取りがすべてであり一発勝負なのです。そうであるからこそ、法廷での説明が分かりやすく説得的であることが求められるのです。プロではない裁判員に理解をしてもらうためには、話し方や声の大きさ、有効な資料の使用など、プレゼンテーション能力も大切になってくるのです。

弁護士であれば、そういった説得的でわかりやすい説明を誰でもできるのではないかと思われるかもしれません。しかし、これはそう簡単なことではなく、日頃からの訓練と経験があってはじめて可能となるものです。残念ながら話し方や態度など、主張の中身とは関係のないところで、悪印象をもたれる弁護士がいることも事実です。プロである裁判官に分かってもらえればそれでよかったという今までの刑事裁判とは弁護士に求められるものも異なるのです。裁判員裁判が開始されてすでに5年以上が経過していますが、いまだに「身内」だけでおこなっていた頃の刑事裁判のやり方から脱却できていない弁護士が存在するのも事実なのです。

③裁判員裁判での証人尋問、被告人質問

刑事裁判では、有罪無罪や刑の重さの判断は、様々な事実に基づいてなされます。法廷で主張されるこれらの事実は、必ず証拠による裏付けが必要です。刑事裁判ではその裏付けが確かなものであるかを確認するため証拠調べがおこわれます。証拠調べの中でも大きなウェートを占めるのが、目撃者や被害者といった証人、被告人などから実際に話を聞いてみることです。これを証人尋問、被告人質問と呼びます。テレビドラマや映画などでよく描かれる刑事裁判の場面です。事件の目撃者、被害者、被告人等の法廷における生の話は、裁判の行方に大きな影響を与えるものです。

先ほどお話したように、今までの刑事裁判では、証人や被告人への質問について、それが文字となったものを裁判官が後から読んで、判断の資料にしていました。しかし、裁判員裁判では、裁判員や裁判官が後で文字になった質問内容を「読む」ことはありません。法廷の場での検事、弁護士、証人、被告人のやり取りだけを聞いて裁判の判断がなされるのです。証人尋問や被告人質問は、休憩を挟みつつも数時間に及びことがあります。プロの裁判官でさえ、長時間の尋問・質問を集中して聞きとおすことは難しいのですから、裁判員にとってはなおのことです。メリハリのないポイントのよくわからないような質問をしても、裁判員と裁判官の印象には残りません。

証人尋問や被告人質問は、弁護士が検事の主張を崩す最大の反撃の機会です。ここで有効な反撃をすることができるかは裁判の行方に大きく影響をします。証人尋問と被告人質問は、弁護士の力量が大きく問われる場面と言えます。

(3)評議

裁判所でのやり取りが終了すると、裁判員と裁判官が非公開の場で、事件の最終処分を決めるために話し合いをします。これが評議と呼ばれるものです。裁判長が議長役を務め、裁判員と他の裁判官の意見を聞きながら行われます。

では具体的にどのようなことが話し合われるのでしょうか。話し合われる事項は大きく分けると2つになります。

一つは、検事が主張した犯罪を被告人がおこなったといえるのかです。もう一つの事項は、どのような重さの刑がふさわしいかを決定することです。

評議の進め方は、裁判長によってまちまちではありますが、有罪無罪や刑の重さの判断は最終的に裁判員と裁判官合計9人の多数決をとって決めています。

裁判官が評議を主導したとしても、裁判員の判断が重要であることに変わりはありません。裁判員が判断の材料とするのは、法廷で見聞きしたもののみであることは先にお話ししたとおりです。

評議は、非公開ですからここでのやり取りは、ブラックボックスのように感じられるかもしれません。しかし、裁判員と裁判官が、法廷でのやり取りのみに基づいて最終的な判断をしていることからすれば、判断が大きく法廷でのやり取りとずれるということは通常はありません。

したがって、法廷において弁護士が、どれだけ裁判員を説得できるような説明や有効な尋問質問をしたかが、被告人の立場からすれば重要ということになります。

ところで刑の重さの決定の仕方ですが、裁判所は過去の裁判に基づいた刑の重さのデータベースを作っています。裁判員裁判での刑の重さの判断でも、このデータベースを参考にされています。裁判所が過去の裁判のデータを参考にするのは、過去の同じような事件とのバランスをとるためです。ところが、新聞報道等でご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、裁判員裁判がはじまって、凶悪犯罪や性犯罪等について、今までの刑事裁判と比べると、重い刑の判決が下される傾向があります。一方で、被告人に同情の余地がある場合などは、今までよりも軽い刑が下されることもあります。この傾向は、一般の方々の感覚が刑事裁判に反映された結果であるといえます。

事件の種類によって、今までの刑事裁判とは違う刑の判断がなされる可能性を弁護人はよく頭に入れておくことが必要です。

裁判員の一般人としての感覚に働きかけるような、被告人に有利な事情を丁寧に主張することで、過度に重い刑罰が下されるのを回避したり、また逆に今までの裁判より軽い刑罰を勝ち取ることが可能となるのです。

(4)判決

評議が終了すると、評議に基づいて裁判官が判決書を作成します。判決書を裁判員が確認し、裁判員と裁判官が全員そろった法廷で判決が言い渡されます。判決の言渡しは、通常評議から数日以内になされます。

まとめ

今までのお話をまとめますと、裁判員裁判は今までの裁判と様々な点が違うということです。

公判前整理手続という裁判前の準備があったり、法廷での主張や、証人や被告人への質問などが一般の裁判員に対するその場での一発勝負になります。

どの弁護士でも、被告人の利益を守るために適切に裁判員裁判に対応できるわけではないのです。担当になる弁護士次第でその結果に大きな違いが生じてしまうのです。もし、裁判員裁判の被告人となってしまったら、裁判員裁判の制度をよく理解し、一般の裁判員を説得できる力をもった弁護士を選ばれることを強くお勧めします。

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