遺留分とは? 相続に備えて知っておきたい8つのこと

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住宅が白いスタジオに並んでいる様子

遺留分(いりゅうぶん)というキーワードはご存知でしょうか?相続について学ぶとこの言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。しかしながら、日常生活になじみのないキーワードなため、曖昧な理解しかできていない可能性があります。

そこで、これから遺言書を作成する方やすでに相続が発生しており遺留分について詳しく知りたいという方などのために、今回は、遺留分とは何かについて学んでいただきたいと思います。

1、遺留分とは

遺留分とは、一定範囲の法定相続人に対して、法律上権利を保障された相続財産のうちの一定割合をいいます。

本来、亡くなった被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。

遺言書を作成して、特定の人に自分の財産を残す。生前に特定の人に自分の財産を贈与する。相続財産は元々被相続人の財産ですから、被相続人が自由に処分出来ることが大原則になります。

しかしながら、現実には、相続の場面において、配偶者や子といった法定相続人の生活保障を考えなければいけないことが多々あります。

被相続人の財産に依拠して生活していた法定相続人がいるにもかかわらず、被相続人の自由処分を無制限に認めることは、実質的には、被相続人の恣意的な判断で法定相続人の生活を崩壊させることを許すことになってしまうからです。

そこで、民法は、一定範囲の法定相続人について、相続財産の一定割合を確保することを定めました。

これが遺留分です。

2、遺留分権利者は?

遺留分権利者は民法が定めた遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の法定相続人です(民法1028条)。

配偶者、子供が遺留分権利者となるのは当然として、胎児も相続については既に生まれたものとみなされますから(民法866条)、遺留分権利者となります。代襲相続人も(たとえば、相続人である子が死亡していた場合、死亡した子の子、すなわち被相続人の孫)遺留分権利者となります。

また、配偶者や子がいない場合の直系尊属(被相続人の両親等)も遺留分権利者となります。

3、遺留分の割合(遺留分率)

民法は、被相続人に配偶者や子が居る場合については、相続人の財産の2分の1、配偶者や子が存在せず、直系尊属(被相続人の両親等)のみが相続人の場合については、相続人の財産の3分の1が遺留分となると定めていいます(民法1028条)。

4、遺留分の計算方法

(1)遺留分算定の基礎となる財産の算定方法

まず、遺留分算定の基礎となる財産は、民法1029条1項により、次の計算式で求められることになります。

「遺留分算定の基礎となる財産」=「相続開始の際に存した財産」+「贈与財産」-「債務」

以下、それぞれについて詳しく説明していきます。

①「相続開始の際に存した財産」

「相続開始の際に存した財産」には、遺贈財産(相続発生後、遺言により無償で与えられた財産)が含まれます。また、相続させる旨の遺言(遺産分割方法の指定であり、本来的には、遺贈とは法的性質が異なります)により特定の者に相続させられた財産も「相続開始の際に存した財産」に含まれます。

②「贈与財産」

「贈与財産」とは、被相続人が生前に贈与した財産を意味しています。対象となるのは、被相続人が相続開始前1年間にした贈与です(民法1030条前段)。ただし、「遺留分権利者に損害を加えることを知って」なされた贈与については、相続開始の1年以上前にされた贈与も遺留分減殺請求の対象となります(同条後段)。

ここでいう贈与は、「贈与契約」にいう贈与よりも広く、無償の処分全般を指し、寄付行為や債務免除行為も含まれると解されています。

また、被相続人は、遺言により、法定相続分とは異なった相続分の指定をすることがありますが、相続分の指定も遺留分減殺請求の対象になります。

★特別受益

「贈与財産」として「相続開始の際に存した財産」に加算されるものとして、「特別受益」にあたる、相続開始1年よりも前になされた相続人に対する贈与があります。

判例は、相続開始の1年より前になされた相続人に対する贈与のうち、特別受益に該当するものの取扱について、特段の事情がない限り、遺留分減殺請求の対象となるとしています。

この「特段の事情」とは、判例によれば、「右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的十条の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情」とされています。

このような特別な事情がない限り、「特別受益」にあたる贈与については、相続開始から1年以上前になされたものでも遺留分減殺請求の対象となります。ですから、原則的に「特別受益」は遺留分減殺請求の対象となると考えておくべきでしょう。

★生命保険金

一方、原則として遺留分減殺請求の対象にならないものとして、生命保険金の受け取りがあります。これは死亡保険金請求権は、保険契約に基づき、指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得する財産だからです。

ただし、生命保険金の受け取りが特別受益に準じるものとして持ち戻しの対象になる余地もあると考えられています。

③算定の基準時

遺留分は、相続開始時点の価額を基準として算定されることになります。過去の贈与についても、相続開始時点を基準に評価されることになります。ですから、かなり昔になされた特別受益にあたる生前贈与などは、現在の貨幣価値に換算して評価されることになります。

(2)各相続人の遺留分額の算定方法

「遺留分算定の基礎となる財産」に、民法1028条が定める遺留分率(2分の1か3分の1)を乗じ、さらに複数の遺留分権利者がいる場合は当該遺留分権利者の法定相続分割合を乗じ、当該遺留分権利者が特別受益を得ているときはその価額を控除して算定します。

(3)具体例

では、簡単な例で、具体的に遺留分減殺請求する金額を算定してみましょう。

被相続人:Aさん

相続人:Xさん(Aさんの妻)、Yさん(Aさんの子供)2人

被相続人の遺産:死亡時Aさんの預金は1000万円あった。

生前贈与:被相続人死亡の1ヶ月前、現金500万円を甲さん(他人)に贈与。

遺贈:遺言により、500万円を乙さん(他人)に遺贈。

相続債務:Aさんは生前500万円の借金をしていたがまだ返済していない。

「遺留分算定の基礎となる財産」

=1000万円(遺贈の500万円もここに含まれます)+500万円-500万円

=1000万円

遺留分額=1000万円×1/2=500万円(相続財産のうち500万円が遺留分全体の金額ということになります。

Xさんの遺留分減殺請求額500万円×1/2=250万円(遺留分に法定相続分をかけた金額がXさんの請求額)

5、遺留分減殺請求の方法

(1)行使できる者

遺留分減殺請求権を行使できる者は「遺留分権利者及びその承継人」と定められています(民法1031条)。この「承継人」には、相続人・包括受遺者などの包括承継人のほか、遺留分権利者から個別的に遺留分減殺請求権を譲り受けた特定承継人も含まれます。

(2)行使の相手方

遺留分減殺請求の相手方は、受遺者、受贈者など、遺留分侵害行為により利益を受けた者、あるいはその相続人など包括承継者になります。受遺者・受贈者が遺贈・贈与の目的物を第三者に譲り渡した場合、その譲受人を遺留分減殺請求の相手方として目的物そのものの返還を求めることができないのが原則です。

ただし、譲受人が遺留分侵害の事実を知りつつ当該目的物を譲り受けた場合には、その譲受人に対しても遺留分減殺請求を行って、その目的物の返還を求めることができます。

(3)行使の方法

実際に遺留分減殺請求をする方法としては、①相手方と交渉して遺留分減殺請求について合意を形成する、②遺留分減殺請求調停を申し立てる、③遺留分減殺請求に基づき訴訟を提起する方法が考えられます。

①相手方と交渉して遺留分減殺請求について合意を形成する

まずは、配達証明付き内容証明郵便で遺留分減殺請求の意思表示をした後(遺留分減殺請求は内容証明郵便で行使しなければならないという決まりはありません。しかし、将来紛争となった場合、消滅時効との関係で意思表示の有無が争点になる可能性がありますから、証拠として確実な内容証明を用いて意思表示をすることが一般的です。)、当事者間の交渉で条件を詰め、合意書面を作成することになるのが通常の流れです。

②遺留分減殺請求調停を申し立てる

当事者間で話し合いが付かない場合は、調停を利用することも多いと思います。

裁判所の調停委員を利用して、話し合いによる解決が可能かを探ることになります。裁判所を使う手続ですので、法律に従った、双方当事者が納得しやすい条件を調停委員が調整してくれること調停のメリットであるといえます。

③遺留分減殺請求に基づき訴訟を提起する

調停が不成立で終わったような場合、訴訟を提起することになります。また、当事者間で歩み寄りが難しいことが明らかな場合はいきなり訴訟を提起することもあり得ます。

遺留分減殺請求権の行使を理由として、不動産については持分移転登記手続請求、預貯金については一定金額の支払い請求等の請求について訴訟を提起することになります。

6、遺留分減殺請求の効果

遺留分減殺請求権は、物権的な効力を有する形成権と考えられており、その行使により、贈与や遺贈は失効し、受遺者・受贈者が取得した権利はその限度で当然に遺留分権利者に帰属するものと解されています。

受遺者・受贈者の手元に存在する対象財産について、たとえばそれが不動産であれば所有権(不動産の一部であれば持分)の移転登記手続をすることになりますし、現預金等であれば、相当額の支払いを受けることになります。

受遺者・受贈者が第三者に対象財産を譲渡してしまっていた場合、第三者に対しては遺留分減殺請求権を行使できない関係で、受遺者・受贈者に価額賠償を求めることになります。

遺留分減殺請求権の行使により、対象財産に共有状態が発生した場合、共有関係を解消するため、共有物分割請求手続をすることになります。

一方、相続分の指定や割合的包括遺贈について遺留分減殺請求権が行使された場合は、あらためて、遺産分割協議をすることになります。

7、遺留分減殺請求の消滅時効

民法1042条は、遺留分減殺請求権行使の期間制限として、「相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時」から1年間の消滅時効と、「相続の開始した時」から10年間の除斥期間を定めています。

一般に、消滅時効と除斥期間の違いは中断が認められるか否かです。

ただ、遺留分減殺請求権は形成権と解されていることから、一度行使してしまえば、そこから物権的な請求権が発生します。そして、物権的請求権は時効によって消滅しません。

遺留分減殺請求権については、速やかに何らかのかたちで権利行使の意思表示をすれば、その後の期間制限を心配する必要はなくなります。ただし、その意思表示をはっきりさせるため、内容証明郵便等を用いておくべきことは前述のとおりです。

8、遺留分の放棄

遺留分減殺請求権を行使するか否かは、本来相続人たる遺留分権利者の自由に委ねられています。したがって、相続開始後に遺留分を放棄することは自由です。

一方、相続開始前の遺留分の放棄については、民法1043条1項により、家庭裁判所の許可を受けない限り、放棄の効力は発生しません。

たとえば、ある相続人が、被相続人の生前、将来相続が発生した場合、自分の遺留分を放棄する旨の書面を作成していたとしても、家庭裁判所の許可を受けていない限り、遺留分放棄の効果は発生しないのです。

被相続人もしくは共同相続人らの圧迫により遺留分権利者が遺留分をあらかじめ放棄するよう強要されるおそれがあるからです。

まとめ

以上、今回は遺留分について説明させていただきました。遺言を作成したいけれど、遺留分に注意を払って遺言を作成したい場合や自分の相続分が少ないと思われるなど遺言書の内容に疑問や不満がある場合などは、早めに専門家に相談することをお勧めします。

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