退職後の残業代請求について知っておきたい5つのこと

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「サービス残業が当たり前だったけど、在職中は会社に遠慮して残業代を請求することはできず、退職後は請求できないだろうと諦めていた」

このような経験がある方は多いのではないでしょうか。残業代は退職後でも請求できます。

今回は、退職後にする残業代請求についてご説明します。

目次

1、退職後でも残業代請求はできる?

2、もしまだ退職していないなら!残業代請求に向けて在職中に準備しておきたいこと

3、退職後の残業代請求の流れ

4、退職後の残業代請求はいつまでできる? 時効について

5、その他退職後の残業代請求の注意点

1、退職後でも残業代請求はできる?

在職中はもちろんですが、退職後であっても残業代の請求はできます。

むしろ、在職中に請求する場合と異なり、会社に遠慮する必要がないため、退職後に請求するケースの方が圧倒的に多いです。

2、もしまだ退職していないなら!残業代請求に向けて在職中に準備しておきたいこと

残業代を請求するためには、残業時間を立証する必要があります。そこで、在職中に準備しておくべきことは、残業時間を立証する証拠の収集です。

残業時間を立証するために強力な証拠になるのはタイムカードです。多くの裁判例では、タイムカードの打刻時間から実働時間が認定されています。

タイムカードによって労働時間の管理がなされていない会社の場合は、次のような証拠も残業代の請求において有力な証拠となります。

  • シフト表
  • 業務日報
  • 出退勤表
  • 会社への入退館に関するIDカードの記録
  • パソコンのログデータ記録
  • インターネット上のカレンダー
  • SuicaやPASMOの利用明細

これらの証拠は退職後では入手することが困難なことが多いため、在職中に収集しておくことが、退職後の残業代請求を有利に進める上で重要です。

3、退職後の残業代請求の流れ

(1)相談・依頼

残業代請求をする際、まずは請求する金額を確定する必要があります。その計算方法は複雑であり、資料がどの程度手元にあるかによっても大きく左右されますので、まずは弁護士に相談するのが有益です。

弁護士に相談する際は、手許にある資料はすべて持参してください。タイムカードなどの労働時間を証明する証拠や、給与明細、雇用契約書、就業規則等の労働契約に関わる資料を持参して、弁護士に確認してもらうこととなります。

(2)残業代の計算

残業代は、主として、次の計算式で算定します。実際には、専用の残業代計算ソフトを使用して残業代を算定します。

残業代=時間単価(※)×労働時間数×割増率(※※)

※時間単価=月給÷(1日の所定労働時間数×(1年の日数-1年の所定休日日数)÷12か月)

※※割増率は、次の表のとおりです。

深夜以外の労働※① 深夜労働※②
法定時間内の労働 0%(割増なし) 25%
法定時間外の労働 0時間~45時間(1月当たり) 25% 50%
45時間を超え60時間(1月当たり) 25%(超)※③ 50%(超)
60時間超(1月当たり)*④ 50% 75%
法定休日の労働 35% 50%
  • ※①原則午前5時から午後10時までの間の労働
  • ※②原則午後10時から午前5時までの間の労働
  • ※③努力義務
  • ※④一定の要件を満たす中小企業(中小事業主)の事業については不適用

(3)内容証明郵便の発送

弁護士は、依頼を受けると、会社に対して、内容証明郵便を送付して残業代の支払を求めます。

この請求は、残業代の支払いを弁護士名かつ正式に請求することで支払いを促すとともに、この後ご説明する消滅時効を一時的に(6カ月間)中断する意味があります。

(4)資料開示請求・交渉

上記内容証明を送った後、残業代等の金額を具体的に算定するために、就業規則、賃金台帳、タイムカード等の資料の開示を会社に対して求めます。会社(法律上、使用者といいます)には、労働者の労働時間を適正に把握する義務があり、タイムカードやICカード等によって労働時間を確認・記録すべきとされています。会社(使用者)は、それら労働関係に関する重要な書類を3年間保存する義務があります。そして、使用者が上記書類の開示を拒否する合理的な理由はありませんので、多くの会社は、任意の交渉の段階で、上記資料を開示してきます。

このようにして開示された資料をもとに、残業代を計算し、その金額の支払いを会社に対し請求することになります。

(5)労働審判申立・訴訟提起

交渉で会社から任意に残業代が支払われない場合、裁判手続での残業代請求を検討することになります。その際に検討する裁判手続は、主に労働審判と訴訟です。

どちらも裁判所で行う公的な手続きですが、以下のような相違点があります。

①労働審判と訴訟の関係

労働審判は、調停の一種で、原則として話し合いで解決を目指し、まとまらない場合は審判により判断が下される手続きです。裁判官と労働関係に関する専門的知識経験を有する民間人の労働審判員(労使各1名)によって構成される労働審判委員会が事件を審理・判断します。調停が成立せず下された審判に対し異議申し立てがなされた場合、訴訟手続に移行することとなります。また、労働紛争を早期に解決することを目的とする制度ですので、争点が複雑であったり、立証資料が膨大となるような事案の場合、訴訟手続に移行することがあります。

他方、訴訟は、判決により紛争の解決を目指す手続きですが、手続きの中で話し合いによる解決(和解)をすることもできます。和解が成立しない場合には、1名ないし3名の裁判官が、請求認容又は請求棄却の判決を下します。

②労働審判のメリット・デメリット

労働審判は原則として3回以内の期日で審理が終結するため、早期に調停案が得られるというメリットがあります。一方、早期解決のために金額面で相応の譲歩を求められることがありますし、また労働審判においては後述の付加金の支払が認められないことがあるというデメリットがあります。

③訴訟手続のメリット・デメリット

訴訟手続では、裁判所が判決で白黒をつけるため、請求金額全額が認容される可能性があります。また、訴訟手続では後述の付加金の支払いが認められることがあるため、これが認められると最終的な支払金額は高額になります。このように付加金の支払が会社にとって大きなプレッシャーとなるため、労働者としては和解で優位に交渉を進めることができます。

一方、訴訟手続は、当事者双方が主張・立証を尽くすため、最終的な解決まで概ね半年から1年以上という長期を要するというデメリットがあります。

(6)会社からのよくある反論

①残業代として手当を支払っているとの主張

会社からは、定額手当を残業代に対応する手当として支払っているとの主張や、残業代は基本給に組み込んで支払っているとの主張がなされることがあります。

手当を支払っているという主張については、当該手当の仕組みが残業代に対応する性質のものか否かが問題となります。基本給に組み込んで支払っているという主張については、基本給にあたる部分と残業代にあたる部分とが明確に区分されているかどうかなどが問題となります。

そして、いずれの場合も、労働基準法所定の割増率に従って計算された額を下回る月がある場合には、その限度で違法となり、会社はその差額分を支払う必要があります。

②管理監督者

会社からは、当該労働者は管理監督者に該当するため、残業代を支払う必要はないとの主張がなされることがあります。管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」であり、労働者が管理監督者に当たる場合は、労働基準法上、深夜の残業代を除き、管理監督者については残業代を支払う必要はないことになります。

管理監督者に該当するか否かの判断にあたっては、

  • 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているか
  • 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有しているか
  • 一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられているか

といった要素が考慮されます。もっとも、総じて裁判所は、管理監督者該当性を厳格に判断しています。

4、退職後の残業代請求はいつまでできる? 時効について

残業代の請求権は、当該残業代が支払われるべき賃金支払日から起算して2年間で時効により消滅し、請求できなくなります。

例えば、月末締めの翌月20日払いの場合、平成27年4月1日から同月30日までの期間に発生した残業代の請求権は、同年5月20日から請求することができるため、平成29年5月20日を過ぎると請求できなくなってしまいます。

そこで、時効の進行を一時的に止めるために、まず弁護士が内容証明で残業代の請求を行うのです。

5、その他退職後の残業代請求の注意点

(1)遅延損害金

未払いの残業代について、遅延損害金を請求することができます。在職期間中については支払期日の翌日から年6%の割合、退職日の翌日(退職日後に支払期日が到来する賃金については当該支払期日)以降は、年14.6%の割合による遅延損害金を請求することができます(もっとも、年14.6%の割合による遅延損害金については、労働審判や訴訟で争われている期間については適用されません)。

(2)付加金

会社が残業代の支払義務に違反した場合、会社が支払わなければならない未払いの残業代と同額の金額(付加金といいます)の支払いを裁判所が認容することがあります。付加金は、労働基準法違反の態様、労働者の受けた不利益の程度など諸般の事情を考慮して、裁判所が支払義務の存否・金額を決定します。

付加金は訴訟で判決が下される場合に認められ、多くの労働審判では付加金の支払いは認められていません。もっとも、付加金請求権は2年間の除斥期間が経過すると請求することができなくなるので、そのような事態を防止するために、労働審判では解決せずに訴訟に移行する場合に備えて、労働審判の申立書において付加金の請求をしておくのが一般的です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。残業代請求権は、法律で労働者に認められる正当な権利であり、退職後は会社に気兼ねなく請求することができます。

本記事をご覧になったのを機に、退職後の残業代請求を検討していただければ幸いです。

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