法テラスをご存知ですか。
この記事を読んでくださっている皆さんは、
- 法テラスを聞いたことはあるが、誰でも利用できるものなのか
- 法テラスを利用するとどのようなメリット・デメリットがあるのかわからない
- 何らかのトラブルを抱え、これは法律トラブルではないか、弁護士・司法書士に相談してみたい
といったお悩みがあるかと思います。
この記事では、
- 法テラスの利用条件
- 法テラスのメリット・デメリット
を分かりやすく説明します。
この記事が、あなたの問題が1日でも早く解決するために、適切な相談先を選ぶための助けになれば幸いです。
目次
1、法テラスとは
法テラスとは、収入・資産などを十分に保有していないため、法律トラブルに直面しても、弁護士や司法書士を自ら依頼することができない方のために、無料相談などの支援を行う、国が運営する機関です。
正式名称は「日本司法支援センター」といい、全国各地に事務所があります。
法テラスのサービスは、大きく分けると、サポートダイヤルのサービスと、民事法律扶助に分けられます。
以下では、民事法律扶助制度の内容をご紹介し、最後にサポートダイヤルの概要をご紹介します。
2、法テラスが提供している民事法律扶助制度とは?
(1)法律相談援助
法テラスと契約している弁護士・司法書士に、無料で相談をすることができる制度です。
相談できる場所は法テラスの事務所か、法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所です。
どちらに行く場合も、事前に予約していただくことが必要です。
同一の案件についての相談は、3回までに限られます。
(2)代理援助
弁護士・司法書士に手続の代理を依頼したい場合に、弁護士・司法書士の費用など手続に必要な費用を、法テラスが立替払いしてくれる制度です。
ご自身は、法テラスの決定に従い、月額5000〜10000円ずつ分割して、法テラスに立替金を支払っていくことになります。
費用の総額は、法テラスの決定によって定まりますが、一般的に弁護士・司法書士に依頼するよりも低い金額に設定されています。
(3)書類作成援助
このほか、例えば訴訟などの手続そのものはご自身で行うが、裁判所に提出する書類を弁護士・司法書士に作成してほしいといった場合にも援助を受けることができます。
3、法テラスのメリット
法テラスの民事法律扶助のメリットをご紹介します。
(1)3回まで無料の法律相談を受けられる
弁護士・司法書士に対して無料で相談をすることができ、相談の回数も1回限りではなく、3回まですることができます。
そのため、一度相談して疑問などがあった場合に、疑問を解消するために、さらに相談をすることができます。
(2)立替払いを利用できる
一般的に、弁護士・司法書士に手続を依頼すると、依頼の時点で、事務処理にかかる費用を一括して支払うように求められることが多いです。
これに対し、法テラスと契約している弁護士・司法書士に依頼する場合には、法テラスが弁護士・司法書士に費用を立替払いしてくれますので、依頼の時点で一括払いする必要はありません。
法テラスが立替払いをした費用については、法テラスの決定に従って、5000~10000円ずつ、分割して支払うことになり、一括払いと比べて利用者の負担が少なく、他の支出を含めてやりくりしながら、無理のない範囲で支払っていくことができるといえます。
(3)費用を安く抑えられる
法テラスが決定する弁護士・司法書士の費用は、一般的に依頼する場合と比べて低く設定されていますので、利用者からすれば、分割して支払う総額も安くて済むといえます。
4、法テラスの利用条件
(1)収入と資産が一定額以下であること
法テラスは、弁護士・司法書士に相談・依頼する費用を自分では負担できない方のための制度ですので、収入と資産の両方が以下の額を下回ることが必要です。
①収入の要件
家族の人数により異なり、具体的には次のようになります。
家賃や住宅ローン、医療費や教育費などの出費の一定額も考慮されます。
家族の人数 | 月収の条件(東京、大阪、横浜など都市圏の場合) |
単身者 | 182,000(200,200)円以下 |
2人家族 | 251,000(276,100)円以下 |
3人家族 | 272,000(299,200)円以下 |
4人家族 | 299,000(328,900)円以下 |
それ以上 | 家族1人につき30,000(33,000)円を加算 |
なお、「家族」に含まれるのは、配偶者(内縁関係を含む)と、同居している親族で本人または配偶者の扶養家族にあたる人のみです。
離婚事件の場合、配偶者の収入を考慮しません。
②資産の要件
下表のとおりで、収入と同様の注意事項が当てはまります。
家族の人数 | 保有資産の条件 |
単身者 | 1,800,000円以下 |
2人家族 | 2,500,000円以下 |
3人家族 | 2,700,000円以下 |
4人家族以上 | 3,000,000円以下 |
(2)勝訴の見込みがないとはいえないこと
例えば、全く成り立たないことが明らかな請求をしようとする場合などは、この要件を満たさないことになります。
(3)民事法律扶助の趣旨に適すること
例えば、他人に報復するためや犯罪行為のためなど、反社会的な行為や違法行為を目的とした相談・依頼はできません。
5、どんな相談ができるのか
法テラスでは、法律に関する相談であれば、以下のようにあらゆる分野の相談をすることができます。
- 借金問題(消費者金融からの借入金額が大きくなり返済できず困っている、など)
- 離婚問題(離婚したいが相手が応じてくれないや、離婚にあたり親権を獲得したい、など)
- 詐欺被害(架空の投資話を持ちかけられて数百万円騙し取られてしまった、など)
- 相続(父親の死をきっかけに兄弟間で相続分に争いが発生した。できるだけ多くの財産をもらえるようにしたい、など)
など。
法テラスの以下のページによくあるお問い合わせが掲載されているので、相談前に関連する項目に目を通しておくとよいでしょう。
6、どんな弁護士がいるのか
(1)スタッフ弁護士(スタ弁)とは?
法テラスに勤務する弁護士は「スタッフ弁護士」(略称「スタ弁」)と言われています。
スタッフ弁護士は、法テラスから給与が支給されて勤務していますが、個別の事件処理については、法テラスから独立して職務を行い、法テラスからの指揮命令を受けません。
スタッフ弁護士は任期のある公務員です。
(2)依頼するか否かは信頼できるか否か
法テラスの利用者は、法テラスのスタッフ弁護士と法律事務所の弁護士の違いを意識する必要はなく、その弁護士が信頼できそうかどうかという観点で依頼するかどうかを判断しましょう。
法律相談は一つの事件につき3回まで無料で受けられるので、対応したスタッフ弁護士で問題が解決しなかった場合等に、別のスタッフ弁護士に相談することも可能です。
なお、後述の通り、法テラスの利用する場合においても、スタッフ弁護士ではない一般の弁護士に依頼することも可能ですが、その場合は、その弁護士が法テラスと契約していることが必要です。
7、法テラスに関する誤解
(1)法テラス以外では民事法律扶助を利用できない
法テラスを利用するには、法テラスの事務所に行かなければいけないのでしょうか。
よくそのように考えている方がいますが、実際には、ご自身が相談・依頼したい弁護士・司法書士が法テラスと契約していれば、専門家から、法テラスに持ち込んでもらうという方法があります。
意中の弁護士・司法書士がいる場合には、その専門家や事務所に電話をして、法テラスに対応しているか確認してみると良いでしょう。
(2)収入が月額182,000円以上ある人は民事法律扶助を利用できない
法テラスは、一定の収入基準を定めており、これを上回る場合、法テラスを利用できないと考える方もいます。
しかし、実際には、上でもご説明したように、法テラスの収入基準では、家賃や住宅ローン、教育費や医療費といった負担があればこれらを考慮することになっています。
特に、家賃や住宅ローンの負担がある場合、そのうちの一定額が加算されますので、基準額も上がることになりますので、月収が基準より多い場合は絶対に使えないということではありません。
(3)審査が通りにくい
法テラスは、上に述べた一定の条件を満たしており、審査に必要な書類をきちんと提出すれば、基本的に審査が通る制度になっています。
したがって、審査が通りにくいということはありません。
なお、過去に法テラスを利用したことがあって、費用の分割払いが滞っている場合には、新たな事件の手続を依頼しようとしても、立替払いの決定が出されないことはあり得ます。
税金が使われている制度でもあり、分割払いをきちんとすることが大事であることはご理解いただければと思います。
こうした場合は、まず前の事件の費用の支払いに目途をつけていただく必要があるでしょう。
8、法テラスのデメリット
(1)飛び込み相談では、弁護士・司法書士を選べない
デメリットとしては、法テラスの各地の事務所への飛び込み相談では、担当するスタッフ弁護士・司法書士を選ぶことができないことが挙げられます。
例えば、「離婚の相談・依頼をしたいので、離婚をたくさん取り扱っている弁護士に相談・依頼したい」と思っても、飛び込み相談ではこうしたニーズにはこたえられません。
その結果、ご自身が抱えている問題に精通していない弁護士が対応するなど、ミスマッチが起こることもあり得ます。
また、弁護士・司法書士に相談・依頼してみたところ、ご自身には合わないとか、感じが悪いとか、丁寧に説明してくれない、やる気が感じられないといった、あまり良くない印象を持つこともあるかもしれません。
その場合は、法テラスと契約していて、かつ、信頼できそうな弁護士を自分で見つけてくる必要があります。
(2)弁護士・司法書士が熱心に対応してくれない懸念がある
そして、法テラスを利用すると、費用が安いため、弁護士・司法書士が熱心に対応してくれないのではないかという懸念もあります。
確かに、他のルートで依頼を受けるよりも、法テラスを通じて受ける方が、費用が安いのは事実ですので、依頼しようとする場合には、実際に依頼する前に、法テラスの決定した費用でもきちんと対応してくれるか、弁護士・司法書士の態度や言動などをよく見て、判断することが大切です。
また、スタッフ弁護士は任期のある公務員ですので、弁護士がサービス業であると意識(相談者・依頼者に法的サービスを提供するという意識)が、民間の弁護士に比べると、構造上の問題で低い可能性があることは否めません。
信頼関係を築けないまま依頼すると、精神衛生上もよくありませんし、望んでいたとおりに事件が解決しないおそれもあります。
そのような場合は、法テラスの利用を諦め、自分で弁護士や司法書士を探すことも必要でしょう。
(3)スタッフ弁護士には経験の浅い弁護士が多い
法テラスの弁護士は10年未満の弁護士がほとんどですので、経験年数では民間の弁護士に劣ることが多いでしょう。
(4)審査が通るまで時間がかかる
法テラスを通じて弁護士・司法書士に依頼する場合、通常、相談後に、必要書類を取り揃え、審査を経て契約を取り交わしてから手続を進めてもらうという流れになります。
審査には、2週間程度かそれ以上かかることが多いと思われます。
急いでいる場合は、法テラスの利用は難しいかもしれません。
ただ、例えば、法テラスに審査を急いでもらうこともできないわけではなく、弁護士が審査を待たず事件に取りかかってくれることもあるかもしれません。
9、法テラスを利用した方がよい方とは?
例えば、生活保護を受けている場合など、法テラスを利用しなければ弁護士への報酬を捻出することが極めて難しいという場合は、法テラスが、弁護士に依頼するほとんど唯一の手段になりますので、法テラスを利用したほうが良いでしょう。
生活保護を受けている場合は、当然、収入・資産の条件を満たしていますし、生活保護を受け続けている限り、立替払いの費用が免除されます。
つまり、生活保護を受けている方は、ご自身の負担なく、弁護士・司法書士に依頼することができますので、法律トラブルでお困りの場合は、積極的に利用された方が良いといえます。
また、民事法律扶助制度を利用する前述の要件を満たしている場合も、法テラスの利用が選択肢に入ります。
しかし、前述の通りデメリットもあるので、経済的に極めて困窮している場合でなければ、法テラスの経済的なメリットと前述のデメリットを比較して、法テラスを利用するかどうかを決めるべきでしょう。
一方、収入や資産が前述の基準を上回る場合は、法テラスを利用することはできません。
10、法テラスの場所
法テラスは、全国100ヶ所以上に拠点があります。
後述のサポートダイヤルに確認のうえ、お近くの法テラス事務所に行くとよいでしょう。
法テラスの各拠点の場所は、法テラスの以下のページで確認することができます。
まとめ
いかがでしたか。
法テラスについては、インターネット上などで様々な情報が飛び交っていますが、この記事を通じて、ぜひ正確な情報を身につけていただき、ご自身にとって、法テラスの利用を検討する際の一助になれば幸いです。