B型肝炎訴訟は、どのように進めればよいのだろう……。
過去の集団予防接種等での注射器連続使用が原因で、B型肝炎に感染してしまった被害者の方々に対し、厚生労働省が救済の取り組みを行っています。それが、国からの給付金です。この給付金の支給を受けたいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、「給付金を受けるための必要な資料や裁判の進め方」が分からないとお困りのこともあるかと思います。
そこで今回は、
- そもそもB型肝炎訴訟とは
- そもそもB型肝炎訴訟の対象者
- B型肝炎訴訟提起から和解にかかる期間
- B型肝炎訴訟提起の方法
等について、ご説明したいと思います。ご参考になれば幸いです。
※この記事は2014年7月に公開したものを2016年8月に加筆・修正しました。
※※この記事は2016年8月に公開したものを2021年10月に加筆・修正しました。
目次
1、B型肝炎訴訟とは?国との和解後に支給される給付金の金額は?
まずはB型肝炎訴訟について再度知っておきましょう。
(1)B型肝炎とは?
そもそもB型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって引き起こされる肝臓の病気です。
(2)B型肝炎訴訟とは?
B型肝炎訴訟とは、幼少期の集団予防接種等の際に、注射器を連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに感染された方について、国がその責任を認め、これによりB型肝炎ウイルスに感染された方と、その方から母子感染された方(これらの方々の相続人を含む)を救済する制度です。
(3)なぜB型肝炎訴訟をしなければ給付金が支払われないのか?
給付金の支給にあたり、なぜ訴訟という手間がかかる手続きが採られたかというと、本当に集団予防接種等で感染したのかを裁判で審議するためです。 B型肝炎ウイルスに感染する原因としては、集団予防接種等での注射器の連続使用以外にも様々なものが考えられます。 例えば、B型肝炎ウイルスに感染された方からの輸血や母子感染などです。 そのため、注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染したと判断する手続きとして、裁判を利用することとしました。 これが、B型肝炎給付金の支給にあたって裁判が必要とされる理由です。 なお、注射器の連続使用による感染ではないことは国側が証明しなければなりません。 この証明は簡単ではないので、給付金が支給されるケースが多いのです。
(4)B型肝炎訴訟の給付金の金額は?
B型肝炎の給付金の金額は以下の通りです。対象者又はその相続人の方はこれらの金額を受け取ることができます。
病態等 | 給付金額 |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 3600万円 |
肝硬変(軽度) | 2500万円 |
慢性B型肝炎 | 1250万円 |
20年の除斥期間(※)が経過した慢性B型肝炎の方で、現在も慢性肝炎の状態にある方等 | 300万円 |
20年の除斥期間(※)が経過した慢性B型肝炎の方で、現在は治癒している方 | 150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 |
感染していて症状の出ていない方、20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア(特定無症候性持続感染者) | 50万円 |
なお、発症後20年を経過した死亡・肝がん・肝硬変の患者等に対しても給付金が支給されます。
具体的には、
- 死亡・肝がん・肝硬変(重度):900万円
- 肝硬変(軽度で現在も治療中のケース):600万円
- 肝硬変(軽度で現在は治癒しているケース):300万円
※除斥期間とは、損害賠償請求権が消滅してしまう期間のことをいいます。B型肝炎訴訟での、除斥期間のカウント開始のタイミングは以下の通りとなります。
- 無症候性キャリアの方 集団予防接種等を受けた日
- 慢性肝炎を発症した方 症状が発症した日
(5)救済を受けた方はまだまだ一部
このように、B型肝炎訴訟による給付金制度はB型肝炎ウイルスに感染された方に自動的に支払われるわけではなく、訴訟手続きをとらなければなりません。 また、集団予防接種等による感染被害の事実と本件救済制度についての周知が不十分であるため、自分が集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに感染されていることを知らないままでいらっしゃる被害者が未だ多数であります。 集団予防接種等による感染被害者数は、45万人ほどとされております(基本合意当時の国の推計)。しかし、現時点の提訴者数は約1万5千人程度にすぎません。
2、B型肝炎訴訟の条件は?対象者について
B型肝炎訴訟の対象者は下記の通りです。
- 集団予防接種等によりB型肝炎ウイルスに持続感染された方(一次感染者)
- 集団予防接種等一次感染者である母親からの母子感染によりB型肝炎ウイルスに持続感染された方(二次感染者)
以下、具体的な条件について書いていきます。
(1)集団予防接種等によりB型肝炎ウイルスに持続感染された方(一次感染者)
具体的な要件は以下の通りです。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること
- 集団予防接種等集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
- 母子感染でないこと
- その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
なお、B型肝炎訴訟ではこれらの要件を証明する必要があります。
(2)一次感染者である母親から母子感染により集団予防接種等B型肝炎ウイルスに持続感染された方(二次感染者)
具体的な要件は以下の通りです。
- 二次感染者の母親が上記の一次感染者の要件をすべて満たすこと
- 二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染であること
二次感染の場合でも、B型肝炎訴訟ではこれらの事実を証明する必要があります。
(3)ご自身が給付金を請求できるか気になる方は60秒でできる「B型肝炎給付金診断」をご利用下さい
以上のように給付金請求の対象者となる場合についてご説明していきましたが、それでも専門用語もありますし分かりにくいこともあるのではないでしょうか。 そのような方のために、当法律事務所のB型肝炎専門サイトでは、サイト上で「B型肝炎給付金診断」を受けられるようになっています。ご自身が給付金を請求できるか気になる方はこちらをご利用下さい。
3、B型肝炎訴訟はいつまでに提訴しなければならない?
B型肝炎訴訟は、以前は2017年(平成29年)1月12日までに提訴する必要がありました。しかし、今年の法改正によって、2022年(令和4年)1月12日まで請求期間が延長されました。
4、B型肝炎訴訟は法律事務所に依頼しなければならない?
ここまで読んで頂いてB型肝炎訴訟を検討されている方もいらっしゃると思います。 気になるのは、B型肝炎訴訟は法律事務所の弁護士に依頼しなければならないの?ということではないでしょうか。 B型肝炎訴訟は必ずしも弁護士に依頼する必要はなく、ご自身で行うことも可能です。 給付金の獲得方法やB型肝炎訴訟の流れについて詳しくは、「肝炎訴訟とは? B型肝炎訴訟で給付金を獲得する方法」をご覧下さい。
5、B型肝炎訴訟における弁護費用は?
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼するメリットは、一般の方では作成困難な裁判所に提出する書面作成や裁判所への出頭等を行ってもらえる点です。しかしながら、弁護士費用がかかるというデメリットもあります。 ここでは弁護士費用についてみていきましょう。
(1)B型肝炎訴訟の弁護士費用は決まっている?
まず、B型肝炎訴訟の弁護士費用はどの弁護士に依頼しても一律に決まっているのでしょうか? 2004年の1月から弁護士費用は各法律事務所が自由に決めることができるとされています。
(2)弁護士費用の一部補助
B型肝炎訴訟においては、国から給付金額とは別に、給付金額の4%が弁護士費用として支給されます。 弁護士費用を一部国が負担するので、ご依頼者様の弁護士費用もその分だけ負担は軽くなります。
6、B型肝炎訴訟の手引きについて
次は、B型肝炎訴訟を進める方法について書いていきます。
(1)B型肝炎訴訟の必要書類は?
B型肝炎訴訟提起にあたっては、集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染されたことを証明するための証拠が必要となります。一次感染の場合と二次感染の場合で異なりますので、以下それぞれ書いていきます。
(2)一次感染の場合の必要書類
まず、一次感染の場合、肝炎の検査結果や、母子健康手帳、カルテなどが必要となります。 必要資料について詳しくは、厚生労働省の作成したB型肝炎の手引きのP6〜P10をご参照下さい。
(3)二次感染の場合の必要書類
次に、二次感染の場合には母親が一次感染していることを証明する証拠に加えて、ご自身の肝炎の検査結果などが必要となります。 その他必要書類について詳しくは、厚生労働省の作成したB型肝炎の手引きのP11をご参照下さい。
(4)訴状の作成
B型肝炎訴訟を開始するために、裁判所に提出する訴状を作成します。
(5)弁護士費用以外でB型肝炎訴訟に必要な費用
B型肝炎訴訟にかかる費用として大きなものとしては以下の2点です。
①印紙代 5000円~
訴訟をするには印紙が必要となります。印紙は郵便局等で購入することができます。 必要な印紙の金額は症状により異なりますが以下の通りです。
病状 | 印紙の金額 |
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 12万8000円 |
肝硬変(軽度) | 9万5000円 |
慢性B型肝炎(発症後20年経過していない方) | 5万9000円 |
慢性B型肝炎(発症後20年経過、現在も慢性B型肝炎の状態にある方等) | 2万0000円 |
慢性B型肝炎(発症後20年経過、現在は治癒している方) | 1万3000円 |
無症候性キャリア(感染後20年経過していない方) | 3万4000円 |
無症候性キャリア(感染後20年経過した方) | 5000円~ |
②郵券代 6000円程度
郵券代は裁判所により異なりますが、おおよそ6000円程度です。 郵券は郵便局で購入することができます。
(6)提訴
裁判所に訴状を提出します。 提訴する裁判所は、集団予防接種等が行われた場所を管轄する地方裁判所、もしくは東京地方裁判所となります。
7、B型肝炎訴訟の提訴から和解成立までの期間について
裁判では、国との間で「予防接種等でB型肝炎に感染したのか否か」が争われます。 裁判から和解までの期間は1年ほどです。早ければ半年ほどで終了することもあります。
8、国と和解が成立!社会保険診療報酬支払基金からの入金
国との間で和解が成立すると、いよいよ給付金が支払われることとなります。 給付金は、和解成立後に社会保険診療基金に必要書類を提出することによってご指定の口座に振り込まれます。 B型肝炎訴訟で和解が成立しましたら、下記社会保険診療基金の連絡先に直接ご連絡下さい。
社会保険診療報酬支払基金 給付金等支給相談窓口 (当相談窓口は、裁判所で確定判決、和解、調停が成立した後の請求手続に関する相談窓口です。)
電話:フリーダイヤル 0120-918-027
受付時間:9時から17時まで (土曜日・日曜日・祝日及び年末年始(12月29日から1月3日)を除く。)
なお、弁護士に依頼している場合には、一旦依頼している法律事務所に入金され、そこからご本人入金されることとなります。
B型肝炎訴訟に関するまとめ
今回はB型肝炎訴訟について書いていきましたがいかがでしたでしょうか?B型肝炎の給付金請求権は正当な権利ですが、手続きが面倒なため、取り組むか迷っている方が少ないのが現状です。今回書いた内容がB型肝炎訴訟を進めるにあたって参考になれば幸いです。