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未成年者略取とは?同意がある場合でも気をつけるべきポイント

「未成年者略取罪とは?」

未成年者略取罪、は未成年を無理に連れ出すだけでなく、同意があった場合や別居中の配偶者による連れ去りにも適用されます。

この記事では、未成年者略取罪の要点、同意の有無にかかわらず適用される条件、未成年者略取罪で告発された時の対処法について、わかりやすく解説します。

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1、未成年者略取とは?

「誘拐」と異なり、何をしてしまったら未成年者略取罪に該当するのか具体的なイメージを持てていない人が多いのではないでしょうか?
未成年者に対してどんなことをしたら本罪が成立するのかを把握していないと、知らず知らずのうちに犯罪者となる可能性があります。
まずは本罪の具体的内容について確認していきましょう。

(1)未成年者略取罪の構成要件

未成年者略取罪(刑法第224条)の構成要件(犯罪が成立する要件)は、以下のとおりです。

  • 「未成年者」(18歳未満の者)
  • 「略取」
  • 故意

「未成年者」とは、現行法上は18歳未満の者を指します。

「略取」とは、暴行や脅迫行為をし、未成年者を従来の生活環境から離れさせて第三者が事実上支配できる場所に置くことをいいます。
未成年者は、成年に比べて判断能力が十分とはいえないので、たとえ未成年者本人が同意していても、従来の生活環境から離れさせることには危険を伴います。
「未成年者を危険な目に遭わせていない」「本人が嫌がることはしていない」「寝床や食事を無償で与えていた」等は言い訳にならないので注意しましょう。

「故意」とは、相手が18歳未満であることを知りながら略取したことをいいます。
本人が「私は19歳」「もう20代になった」などと嘘をついていて、本人がもう成年であると信じてしまったようなケースでは故意の存在が問題となります。
「被害者が18歳未満であることを知らなかった」という主張が必ず通用するわけではないので注意が必要です。

(2)略取と誘拐の違い

「略取」という言葉を聞いたことがない人でも「誘拐」という言葉は聞いたことがありますよね。

「誘拐」とは、人を欺きもしくは誘惑をすることで、未成年者を従来の生活環境から離れさせ、自己または第三者の事実的支配下に置くことをいいます。
身代金欲しさから子供を誘拐するケースは、現実だけでなく映画やドラマでも目にしたことがある人が多いでしょう。

略取は暴行や脅迫を手段とするのに対し、誘拐は人を欺きもしくは誘惑することを手段とする点で両者は異なります。

もっとも、未成年者を略取した場合も誘拐した場合も、同じく刑法第224条による処罰対象となります。

同条の罪名のことを「未成年者拐取罪」と呼ぶこともあります。
略取と誘拐を合わせた言葉が「拐取」となります。

(3)刑罰は略取の目的によって異なる

未成年者略取罪の刑罰は3ヶ月以上7年以下の懲役ですが、略取の目的によっては以下のような犯罪が成立する可能性があります。

  • 営利目的拐取罪(刑法第225条)

単に相手を略取・誘拐したに止まらず、自ら財産上の利益を得る目的または第三者に得させる目的で人を略取・誘拐した場合、営利目的拐取罪が成立します。

財産上の利益を得るという極めて個人的な事情で、人の身体を危険にさらしていることから、営利目的拐取罪の刑罰は未成年者略取罪よりも重く、1年以上10年以下の懲役となっています。

  • 身代金目的拐取罪(刑法第225条の2)

被拐取者(連れ去られた人)の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させる目的で人を略取・誘拐した場合は、身代金目的拐取罪が成立します。
映画やドラマで誘拐が題材となっている場合は本罪が問題となるケースが多いです。

この場合、単に人を拐取するにとどまらず、親や関係者などが連れ去られた人を心配する気持ちに乗じて金銭を得ようと、極めて利己的な目的で人を略取・誘拐しているので、刑罰は通常の未成年者略取罪よりも重く定められ、無期または3年以上の懲役となっています。

2、本人の同意があっても未成年者略取罪が成立する?

未成年者略取罪というと、相手が嫌がっているのに無理やり連れ出したというイメージをお持ちの方が多いですが、本人の同意がある場合であっても本罪は成立するのでしょうか?

(1)保護者の同意がなければ成立する

未成年者略取について、「未成年者の同意があれば問題ないだろう」「家出したいと未成年者自身が望んでいる場合に犯罪が成立することはないだろう」「無理やり連れ出したわけではなく、寝られる場所がほしいという本人の望みを叶えてあげたのだから罪に問われるはずがない」などと安易に考えている人がいますが、未成年者本人が家出等を希望していても保護者の同意がなければ本罪が成立します

(2)本人の同意があるのに有罪となる理由

未成年者本人の同意があるにもかかわらず、なぜ犯罪が成立するのか疑問に感じている人もいるでしょう。
自分が未成年者を自宅に連れて帰らなければ、未成年者が犯罪に巻き込まれたり、体調不良になったりする可能性さえあるのだから、自分はむしろ未成年者にとって良いことをしてあげたといえるのではないか?と感じる人もいるでしょう。

もっとも、未成年者略取罪の保護法益には、被拐取者(未成年者)の自由だけではなく、親権者等の保護監督権も含まれています

未成年者が同意していたとしてもその同意が真意に基づくものでない場合や、社会経験が乏しいことから冷静な判断ができずに同意してしまった場合等は、未成年者本人が「連れて行ってほしい」「家出している間かくまってほしい」などと口では同意していたとしても、被拐取者である未成年者の自由が侵害されたといえるでしょう。

また、未成年者略取罪の保護法益には、親権者の保護監督権も含まれることから、親権を有している自分の子供が略取されれば、自分の子供を自分の元で育てたり教育したりする保護者の権利が侵害されることになります。
そのため、保護者の同意がないケースでは、たとえ未成年者本人が「連れて行ってほしい」と同意していた場合でも本罪は成立します

3、要注意!知らずのうちに未成年者略取罪が成立するケース

犯罪の自覚がないにもかかわらず本罪が成立しているケースがあります。
「問題ないだろう」と安易に考えず、以下のケースでも本罪が成立することを十分確認しておきましょう。

(1)SNSで知り合った未成年者と会う

日常的にSNSを使う人が増えた今の時代、SNSで容易に知らない人と知り合うことができるようになっています。
「家出したい」「今晩泊めてくれる人を探しています」「外にいてとても寒いです。暖かい場所に連れて行ってください」「お腹が空いています。ご飯を食べさせてもらえませんか?」などとSNSに投稿した未成年者と会い、その未成年者を自宅に泊めたり自宅で生活を送らせたりすれば、未成年者略取罪が成立する可能性が高いです。

このとき、未成年者を自宅に泊めた側からすると「本人が家出を希望している」「帰る場所がないと未成年者が言うので、仕方なく自宅に連れて帰った」などの事情から罪に問われないと考えるかもしれません。
しかしながら、上述のように、親権者等の保護監督権も本罪の保護法益となっているので、本人が同意していたとしても保護者の同意がなければ犯罪が成立します。

(2)親権争いを有利にするために実子を連れ去る

離婚の話を進めているときに問題となるのが、配偶者に無断で子供を連れて家を出たり、配偶者のもとにいる子供を自分のもとに連れ去ったりする行為です。
子供に会いたいがために連れ去るケースもあれば、親権争いを有利にするために連れ去るケースもあるでしょう。

子供を連れ去る人の中には、「自分の子供なのだから自宅に連れて帰るのは当然」「子供と一緒に生活して何が悪い?」「離婚したわけではないのだから、自分にも親権がある」などと考え、子供を連れ去ることに何の問題も感じない人がいます。

確かに、離婚調停や離婚訴訟が終了していない段階では、子供と同居していない一方の親に親権がないわけではありません。
そのため、自分にも親権があるのだから子供と一緒に暮らすために子供を連れ出すのは親権者として当然の行為であると考える人もいるでしょう。
しかしながら、たとえ実子であったとしても、相手方配偶者の了解なく連れ去る行為は、相手方配偶者の保護監督権を侵害するものであるため、未成年者略取罪に該当する可能性がありますので注意しましょう。
「かわいい我が子に会いたい」「一緒に居たい」という気持ちが先走って犯罪を犯すことのないようにしてください。

(3)迷子を保護する

では迷子を保護する場合、本罪は成立するのでしょうか?

いつの時代でも、子供が自宅から勝手に出てしまったり親とはぐれてしまったりして迷子になることは珍しいことではありません。
小さな子供が迷子になり自宅に帰れずにいたら、親切心から助けてあげたり保護してあげたくなったりするのは人間として自然なことです。
ただし、すぐに警察に届け出ることなく車で連れ回したり、自宅に連れていったりすると本罪が成立する可能性があります

「迷子を保護してあげたのになぜ犯罪になるのか?」「泣きじゃくる子供を落ち着かせるために気分転換も兼ねて車でドライブをしてあげただけなのに、そのことが原因で犯罪を構成するのはおかしい」と考える人もいるでしょう。
たとえ親切心で迷子を保護する場合でも、すぐに交番に連れて行くなどし、略取や誘拐を疑われないようにするのが賢明な判断です。

4、未成年者略取罪が成立しない・または処罰されないケース

以上のように、一見すると犯罪が成立しないと思えるケースであっても未成年者略取罪が成立することがあるので注意が必要です。

一方、以下のケースでは未成年者略取罪は成立しないか、成立したとしても法律上処罰されません。

(1)相手が19歳以上の場合

民法改正前は、年齢20歳をもって成年とする旨が民法で規定されていたので、20歳未満が「未成年者」となっていました。

民法が改正され、令和4年4月1日以降は成年年齢が18歳になったことから、未成年者略取罪の「未成年者」には18歳未満の者が該当することとなりました。

したがって、被拐取者が18歳以上の場合は「未成年者」に該当しませんので、未成年者略取罪は成立しません

(2)告訴されていない

未成年者略取罪は親告罪なので、未成年者本人や未成年者の親権者から告訴されなければ起訴されません

親告罪とは、被害者からの告訴がなければ刑事事件として起訴をすることができない犯罪のことをいいます。

未成年者略取罪が成立しても、告訴がなされず起訴されなければ刑事裁判が行われませんので、刑罰が下されることもありません。

(3)未成年者だと知らなかった

実際は未成年者であっても、本人が成人であると嘘をついていたり、容姿が大人っぽいことから未成年者であるとは思わなかったりするケースがあります。

理論上は、未成年者だと知らなかった場合は、犯罪の故意がないため、犯罪不成立となります。

しかしながら、未成年者だと知らなかったとしても、未成年者である可能性を認識していた場合や未成年者であることを知り得た場合は未必の故意があるものとして未成年者略取罪が成立します
例えば、未成年者本人が20歳であると告げていたとしても、体格や顔つき等から未成年であることが明らかな場合には、未成年であることを知りえたと認められる可能性があります。

5、未成年者略取罪で逮捕されたらどうなる?

未成年者略取罪で逮捕されたら、その後の手続きはどうなるのでしょうか?逮捕後の流れを確認しておきましょう。

まず、警察に逮捕されたら48時間以内に事件が検察官に送致され、そこから24時間以内に引き続き身柄を拘束する必要があると判断されれば、勾留請求がなされます。
勾留請求するのは検察官ですが、その請求に対し裁判官が勾留の可否を判断します。
勾留が許可されるとさらに10日間、身柄を拘束されて取り調べなどの捜査を受けます。
ただし、その後勾留延長がなされることもあり、勾留期間は最長20日間となっています。

逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると、身柄拘束される日数が長引く傾向にあります。

この勾留期間が満了するまでに、検察官により起訴・不起訴の判断がなされます。
起訴されることになれば、被疑者段階の勾留が被告人勾留に切り替わって引き続き身柄を拘束されるケースも多いです。
その場合には保釈が認められない限り、刑事裁判で判決が言い渡されるまで身柄拘束がそのまま続きます

6、未成年者略取罪に問われたときの対処法

たとえ罪を犯した認識がなかったとしても、未成年者略取罪に問われた場合はしっかりと今後の対応を考えていく必要があります。
上記のように身柄拘束期間は勾留だけでも最長20日間、逮捕からの身柄拘束を考えると最長23日間拘束される可能性があります。
できるだけ早い釈放を目指し、以下の対処法を検討していきましょう。

(1)被害者と示談する

未成年者略取罪では保護者と示談交渉することが重要です
大切な我が子を略取された保護者に対しては、できる限り誠意を持って謝罪し、保護者に納得してもらえる示談金を支払う等して示談の交渉を進めていきましょう。
この際、加害者本人と保護者が示談交渉することは、物理的・心理的に難しいことが多いので、弁護士に依頼し、弁護士を通して示談交渉するのが賢明な判断です。

未成年者略取罪は親告罪なので、告訴を取り下げてもらえれば不起訴になります。
示談交渉の中で告訴を取り下げてもらうことを目指しましょう。

(2)取り調べでは有利な事情も話す

取調べでは、嘘をついたりごまかしたりすると証拠隠滅のおそれを疑われてしまうので、弁護士と相談しながら真摯に取調べに応じましょう。

罪を犯したからには反省することが大切です。
しかしながら、たとえば相手が未成年者だと知らなかった場合や、上記「3」のように罪になることを知らなかったといった事情は、起訴・不起訴の判断や量刑上有利に働く可能性があります。
そのため、反省の態度は示しつつ、言い訳と受け取られないように注意しながら、有利に働く事情についてはしっかりと主張しましょう

(3)弁護士に相談・依頼する

弁護士に相談しておくことで逮捕後の流れや逮捕されてからの取調べに関して説明を受けることができます。
また、弁護士に依頼をしておくことで身柄拘束中も弁護士から直接アドバイスを受けることができます
身柄拘束中は被害者と示談交渉をすることができませんので、弁護士に依頼をして示談交渉を弁護士に代行してもらいましょう。

未成年者略取に関するQ&A

Q1.未成年者略取とは?

未成年者略取罪(刑法第224条)の構成要件(犯罪が成立する要件)は、以下のとおりです。
「未成年者」(18歳未満の者) 「略取」 故意 「未成年者」とは、現行法上は18歳未満の者を指します。

「略取」とは、暴行や脅迫行為をし、未成年者を従来の生活環境から離れさせて第三者が事実上支配できる場所に置くことをいいます。
未成年者は、成年に比べて判断能力が十分とはいえないので、たとえ未成年者本人が同意していても、従来の生活環境から離れさせることには危険を伴います。
「未成年者を危険な目に遭わせていない」「本人が嫌がることはしていない」「寝床や食事を無償で与えていた」等は言い訳にならないので注意しましょう。

「故意」とは、相手が18歳未満であることを知りながら略取したことをいいます。
本人が「私は19歳」「もう20代になった」などと嘘をついていて、本人がもう成年であると信じてしまったようなケースでは故意の存在が問題となります。
「被害者が18歳未満であることを知らなかった」という主張が必ず通用するわけではないので注意が必要です。

Q2.略取と誘拐の違いとは?

「誘拐」とは、人を欺きもしくは誘惑をすることで、未成年者を従来の生活環境から離れさせ、自己または第三者の事実的支配下に置くことをいいます。
身代金欲しさから子供を誘拐するケースは、現実だけでなく映画やドラマでも目にしたことがある人が多いでしょう。
略取は暴行や脅迫を手段とするのに対し、誘拐は人を欺きもしくは誘惑することを手段とする点で両者は異なります。
もっとも、未成年者を略取した場合も誘拐した場合も、同じく刑法第224条による処罰対象となります。

Q3.知らずのうちに未成年者略取罪が成立するケース

  • SNSで知り合った未成年者と会う
  • 親権争いを有利にするために実子を連れ去る
  • 迷子を保護する

まとめ

未成年者略取罪の加害者の中には、犯罪になる旨の認識がなかった人が少なくありません。
特に、未成年者自身が同意している場合や離婚手続き中に実子を連れ去るケースでは、なぜ犯罪になるのか納得できない人もいるでしょう。

未成年者略取罪に該当するケースを理解していただき、万が一未成年者略取行為をしてしまった場合は逮捕される前に弁護士に一度ご相談ください。
逮捕された場合は、不起訴処分を獲得できるよう弁護士と相談しながら手続きを進めていきましょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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