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配偶者暴力防止法(DV法)の基本知識~重要な8つのこと

DV(ドメスティック・バイオレンス)は深刻な社会問題であり、被害者の保護を目的とした法律が制定されています。
この記事では、

  • 配偶者暴力防止法(DV法)の基本知識
  • DV被害者への支援や法的手段

について説明します。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、配偶者暴力防止法(DV法)とは

配偶者暴力防止法は、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための法律です。
2001年(平成13年)に制定され、数回の改正を経て今の形になっています。

DV法が規定される前は「家庭内のトラブルに法律は介入しない」という考えが大勢で、家庭内で暴力が振るわれていても見過ごされていました。
しかし、それではDV被害が助長されるばかりで危険な目に遭う女性が増え、男女の平等も実現できないことからDV法が制定されるに至りました。

DV法は、暴力を振るった加害配偶者に対し、被害配偶者に近づくことを禁止する「保護命令」を定めるなどして、DV被害が大きくならないように取りはからっています。

2、配偶者暴力防止法(DV法)の目的

配偶者暴力防止法は、DVを減らし、危険な目に遭う女性を守り、人権を擁護することを目的としています。
また配偶者間の暴力によって夫が妻を抑えつけてしまう力の不均衡を是正して、男女が平等に活躍できる社会を作ることも目指しています。

3、配偶者暴力防止法(DV法)が定めていること

配偶者暴力防止法は、以下のようなことを定めています。

(1)基本理念

配偶者による不当な暴力を防止して被害者の人権を守り、男女の平等を実現するというDV法の基本理念が掲げられています。

(2)国及び地方公共団体の責務

国や地方公共団体は、配偶者からの暴力や被害者の自立を支援するための適切な措置をとらねばならないとされます。

(3)配偶者暴力相談支援センター

各都道府県は、女性センターや男女共同参画センターなど、配偶者暴力の相談を受けたり支援をしたりするための施設を設置しなければなりません。
この規定にもとづいて、全国各地には配偶者暴力相談支援センターが設置されています。

(4)一時保護

配偶者から暴力を受けて、家に帰ると危険があり保護を要する人は、DVシェルターなどで一時保護してもらえます。

(5)情報提供・通報

医師など、配偶者暴力を受けている人を発見できる立場にある人は、DV被害に遭っている人を見つけた時、なるべく配偶者暴力相談支援センターや警察に報告するよう努力すべきとされています。

また被害者(患者)に対しては、配偶者暴力相談支援センターで相談等できることを教えてあげるべきとされます。

(6)警察官による被害の防止・警察本部長等の援助

警察官がDV被害者からの相談を受けるときには、さらなる被害につながらないように慎重に対応しなければなりません。

また被害者が援助を求めたときには、適切なサポートをする必要があります。

(7)福祉事務所による自立支援

被害者が配偶者から自立するために生活保護などの支援が必要なときには、福祉事務所が自立支援を行います。

(8)各関係機関連携

配偶者暴力相談支援センターや警察、福祉事務所などの各機関は、DV被害者援助のために連携して対応すべきとされます。

(9)保護命令

配偶者から暴力を受けており、被害者を保護する必要性が高い場合には、裁判所が各種の「保護命令」を出すことによって、被害者を守ります。

(10)退去命令

保護命令のひとつです。
被害者が加害者から逃れるために別居したくても、現状同居のままでは身動きが取れないケースもあります。
そのような場合、裁判所が加害者に対して退去命令を発令し、一時的に加害者を退去させてその間に被害者が引越できるように取りはからいます。

4、配偶者暴力防止法(DV法)によって禁止される「暴力」とは

DV法では、配偶者に対する「暴力や脅迫」があった場合、保護命令によって被害者が保護されます。

ここで言う「暴力や脅迫」とはどのようなものをいうのでしょうか?

保護命令の対象となる暴力は、身体に対する暴力であり、脅迫は生命・身体に対する脅迫です。
警察の援助対象となっている暴力も、身体に対する暴力に限定されます。

そこで、相手から「殺すぞ」「殴るぞ」などと言われたり実際に殴る蹴るの暴力を受けたりしている場合には保護命令の申立ができます。

しかし、「お前は最低な人間」「お前のようなバカな人間は見たことがない」などの人格を否定する暴言や、無視し続ける場合、性的な嫌がらせの場合には、一般的には「DV」とされるものの、保護命令の対象になりません。

5、配偶者暴力防止法(DV法)の適用対象は拡大されている

配偶者暴力防止法は、これまで何度か改正されてきており、そのたび適用対象が拡大されています。
法律が制定された当初は「婚姻中の夫婦」における「身体的な暴力」だけが保護命令の対象でしたが、今では「離婚後の元配偶者」や「同棲中の恋人」のケースにも適用されるようになっていますし、「生命や身体に対する脅迫行為」も対象になっています。

これは、DVがなかなか減らない現状や、実際には結婚前(同棲中)であっても配偶者から暴力を受ける人が多いこと、脅迫的な暴言に苦しむ人も多いことなどに鑑みて、徐々に現状に応じて適用対象が拡大されてきたことによります。

6、配偶者暴力防止法(DV法)により保護命令や退去命令を適用できる

DV法には「保護命令」に関する規定があります。
保護命令とは、配偶者による暴力の被害に遭っている人の安全を確保するため、裁判所に申し立てることによって一定の保護措置をとるための命令です。

保護命令には、以下の種類があります。

  • 加害者が被害者に近づくことを禁じる「接近禁止命令」
  • 加害者が被害者の家から退去しなければならないとする「退去命令」
  • 電話やメールなどによる嫌がらせや監視していることを告げることなどを禁止する「電話等禁止命令」
  • 子どもや親族に近づいてはいけないとする「(子どもや親族への)接近禁止命令」

これらの保護命令を適用してもらうには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 婚姻関係の夫婦(事実婚を含む)または同棲している恋人
  • 同居中に、相手から「身体的な暴力」または「生命・身体に対する脅迫」を受けた
  • 今後も暴力や脅迫を受ける可能性がある

以前は同棲中の恋人には適用されませんでしたが、今は婚姻しておらず同棲中に暴力を受けたケースでも保護命令の対象になります。

上記の3つの要件を満たす場合に保護命令を申し立てれば、裁判所が相手に対する接近禁止命令や退去命令を出してくれるので、身に危険を感じているならば、是非とも利用しましょう。

7、配偶者暴力防止法(DV法)以外にも|緊急時はDVシェルターに避難

配偶者から暴力を受けている場合、すぐに家を出ることは難しい方が多いです。
夫がお金を握っているので賃貸住宅を借りるお金がないこともありますし、夫に探し回られて引っ越し先に押し掛けられ、暴力を振るわれるおそれがあるので怖くて出られないというケースもあるでしょう。

夫からの暴力にほとほと疲れてしまい、自分で賃貸住宅を探して引っ越しをする気力が残っていない方もいます。
そのような方は、「DVシェルター」と呼ばれる施設を活用してみてはいかがでしょうか?
DVシェルターとは、配偶者から暴力を受けて逃げている女性を一時的に保護するための施設です。
公営のものと民営のものがあり、施設の内容や対応もまちまちではありますが、DVシェルターに入っている限り夫は妻の居所を突き止めることができません。
シェルターの人が守ってくれるので安全ですし、子どもと一緒に入居することも可能です。

ただDVシェルターの場所は秘密になっており、シェルターに入っている限り外部との接触も制限されます。
ずっといるべき場所ではないので、数日あるいは数週間滞在して気持ちや状況が落ち着いてきたら、外に出て自活を始める準備をしましょう。

DVシェルターに入居したい場合には、警察に相談をするとつないでもらえます。
またシェルターを出た後、生活保護を受けたい場合には、福祉事務所に相談に行くと良いでしょう。
DV法にもとづいて福祉事務所の方も支援してくれますし、DVシェルターの職員の人が付き添ってくれるケースもあります。

8、配偶者暴力防止法(DV法)をふまえて|夫と接触せずに離婚する方法

DVを受け続けてきた人は、夫との離婚を希望されるケースも多いです。
別居した当初は夫による洗脳が解けないのでフラッシュバックしたり夫の元に戻りたい気持ちになったような気がするものですが、数日数週間が経過して状況が落ち着いてくると「許せない」「絶対に離婚したい」と強く思い始めるものです。

一般の方が離婚する場合には夫婦が話し合って離婚する「協議離婚」を選択することがほとんどですが、保護命令を必要とするほどの酷いDV事案では協議離婚は向きません。
DV夫は「離婚したくない」と思っていることが多く、妻から離婚を切り出されると怒って暴れ出したり「実家(友人)に洗脳されている」などと言い出して実家に逆恨みしたりして大きなトラブルになることがあるからです。

DV夫と離婚するならば、離婚調停を利用すべきです。
調停であれば、調停委員を介して話をするので、夫婦が直接顔を合わせて話をする必要がありません。
DVのケースでは、「別室調停」といって、夫と妻を別の部屋に待機させ、調停委員が間を移動することにより、絶対に二人が会わないようにしてもらうこともできる場合があります。
また、別室調停でなくても、呼び出し時間や終了時間をずらし、裁判所の外でも会わないようにする配慮は通常してもらえるでしょう。

さらに弁護士に依頼すると、弁護士がずっと一緒に行動してくれますし、裁判所の外まで同行してくれるので、安心感が高いです。
DVシェルターで離婚の相談をすると、職員が弁護士を探してくれるケースもありますし、シェルターを出てから、自分でネット情報などを参照して、離婚に強い弁護士を探す方法もあります。

まとめ

配偶者から暴力などの危害を受けている状態で我慢していると、あなたの身に危険が及びます。
今は配偶者暴力防止法ができて被害者を守る仕組みがあるので、要件に該当するならば保護命令を申し立てて、あなたやあなたのお子様の安全を守って下さい。

DVは違法行為であり、離婚の際には慰謝料も請求できます。夫婦の財産があれば財産分与も受けられます。
「運命だからどうしようもない」と諦める必要はないので、弁護士に相談するところから始めてみましょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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