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養子が相続する方法はある?知っておくべき6つのポイント

養子には、相続する権限があるのでしょうか。

自分の相続のことが心配になる年代ですか?
子供たちに迷惑をかけないように、準備しておきたいお気持ちのことでしょう。

節税対策として、養子縁組を利用する方法があると聞いたことがありませんか?
お孫さんと養子縁組をして、相続税対策をすることは、広く行われています。

今回は、

  • 養子とは何かという基礎
  • 養子による節税効果
  • 相続対策のための養子縁組のメリット ・ デメリット
  • 必ず知っておくべき注意点

などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事の内容が養子縁組を検討中の方のご参考になれば幸いです。

法定相続人に関して詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

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1、養子に相続する権利はある!

養子には、普通養子(民法792条以下)と特別養子(同法817条の2以下)という2つの種類があります。
どちらも、血のつながりがない者同士を、法律によって、親子と扱う制度であることは同じです。

(1)普通養子とは?

普通養子は、単に、法律上の親子関係を発生させるだけの制度であり、親となる者(養親)と子となる者(養子)という当事者の意思の合致があれば認められることが原則で、婚姻と同じく、一種の契約と捉えられます。

(2)特別養子とは?

これに対し、特別養子制度は、養子を我が子同様のものとして育てたいという養親側の希望をかなえる一方、実の親による育児放棄や虐待などで、実の親に監護を委ねられない子供の保護と福祉実現を図る制度です。
このため、対外的に養子であることが容易に発覚しないように戸籍の記載が配慮されています。
また、実の親との法的な血縁関係はすべて断絶させるという特別な制度です(普通養子の場合は、実親との親子関係がなくなるわけではありません)。
このような理由から、特別養子は、家庭裁判所の審判があって、初めて成立します(民法817条の2)。
普通養子も、特別養子も、どちらであっても、有効に成立した場合は、法定血族となり、法定相続人の地位を得ることになります。

2、ただ、相続税法上認められる養子の数には制限がある

養子とすることが認められる人数に制限はあるでしょうか。

(1)民法上は複数の養子を持つことは禁止されていない

まず、普通養子には、民法上は、人数制限はありません。

ただし、未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要です(民法798条)。
未成年者の養子縁組は、養親による監護教育を伴うため、子供の福祉の観点から、養親に看護教育の責任を負担する意思が本当にあるのか否かを、裁判所が審査するためです。
したがって、法的に養子の人数に制限がないといっても、単に、相続対策のために、複数の未成年者と養子縁組をするといった場合は、却下される可能性があります。

次に、特別養子も、民法上、人数制限はありません。
しかし、そもそも特別養子は、子の福祉に重点を置いた制度であり、子供と実の親との関係を断絶させることが、子供の幸せのために必要であると裁判所が判断した場合にのみ認められます(民法817条の7)。
したがって、少なくとも相続対策のために特別養子が認められることはありません。
また、相続対策でなくとも、養親の養育力、養育意思などは、厳しく審査されますから、不相応に多人数の特別養子をもらうことは認められません。

さて、このように、決して無制限ではありませんが、複数人の養子、特別養子をもつこと自体は禁止されてはいません。

(2)ただ、相続税法上認められる養子の数には制限がある

ただし、養親の相続が発生した場合に、相続税法上、基礎控除算定の法定相続人としてカウントしてもらえるかどうかは、別問題です。
この場合、法定相続人として、カウントしてもらえる養子の人数は、以下のとおり制限されています(相続税法15条2項)。

被相続人の実子の有無カウントしてもらえる養子の人数
実子あり(※)1名
実子なし養子1名1名
養子2名以上2名まで

※遺産に係る基礎控除にあたって、次の場合は、実子として取り扱われます(相続税法15条3項)。

  • 特別養子
  • 被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている者
  • 被相続人と配偶者の結婚前に、その配偶者の特別養子となっていた者で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった者
  • 代襲相続者

3、その理由は養子が相続税対策として悪用されないため

では、相続税法上、カウントしてもらえる養子の人数が制限されているのは何故でしょうか?

(1)前提として押さえたいポイント「法定相続人の数が多いと基礎控除額が増える」

相続税の計算をする場合、ひらたく言えば、遺産の総額から一定の金額を差し引くことが認められています。
これを「基礎控除額」といいます。

基礎控除額は、

3,000万円(※)+600万円☓法定相続人の人数

です。

ここに言う、「法定相続人」には、実子のみならず、養子も含まれます。
したがって、養子を増やして、法定相続人の人数を増やせば、基礎控除額も増加させることができますから、節税効果があります。
※平成27年1月1日以降に相続発生の場合

(2)悪用させない趣旨で相続権が認められる養子の数には制限がある

しかし、これを無制限に認めると、理屈上は、基礎控除額をいくらでも増やせることになってしまいます。
そこで、相続税法は、上記のとおり、養子を基礎控除の法定相続人としてカウントしてもらえる人数を制限したのです。

4、相続を目的に養子縁組するメリットとデメリット

(1)メリット

被相続人の人数は、相続税において、次の各非課税部分の算出基準となります。
したがって、基本的には、養子縁組することで、これらの控除枠(非課税枠)を増やして、節税することが可能となります。

①基礎控除額

これは、先に説明したとおりです。

②生命保険の非課税枠

被相続人の死亡を保険事故として、保険金(生命保険、損害保険)が支払われた場合で、被相続人が保険料(全部でも一部でも)を支払っていたときは、相続税の課税対象となります。
この保険金に対する非課税限度額は、次のとおりです。

非課税限度額=500万円 × 法定相続人の人数

③退職金の非課税枠

次の場合、相続人が受け取った退職金は、相続税の課税対象となります。

ア.被相続人が生前に退職し、退職金を受け取る前に死亡したが、死亡から3年以内に、退職金が支給されることが確定した場合

イ.被相続人が在職中に死亡したため、死亡退職となり、死亡から3年以内に、退職金が支給されることが確定した場合

この退職金に対する非課税限度額も、生命保険金と同じです。

非課税限度額=500万円 × 法定相続人の人数

④累進税率の引き下げ効果

相続税は、累進課税ですから、養子をとることで、基礎控除額が増えれば、適用される税率を下げることができる場合があります。

⑤遺留分を下げる効果

相続税対策ではありませんが、養子をとって、法定相続人を増やしておけば、一人あたりの遺留分を下げることができます。

例えば、相続人が子供3人であった場合、一人あたりの遺留分は、6分の1です(民法1028条)。
ここで、さらに3名を養子とすると、法定相続人は6人になりますから、各人の遺留分は、12分の1となります。
被相続人が、遺産を誰かに遺贈したいと希望している場合、3人の子供たちのうち、1人だけが文句を言って、遺留分を主張しそうだというときに、その者の遺留分を引き下げてしまう目的で養子縁組をするのです。
もちろん、増えた養子が遺留分を主張したら意味がないですから、文句を言わない子供2名の子供(つまり孫)を養子にする等の工夫は必要です。

(2)デメリット

①養子の人数の否認

養子をとることで、相続税の節税を図る手法は、常に認められるというものではありません。
税務署長は、養子の数を法定相続人の数に含めることが、相続税を不当に減少させる結果となる場合は、その養子の数を法定相続人に含めずに相続税を計算することができます(相続税法63条)。
適用例は少ないと言われていますが、注意が必要です。

②遺産紛争の激化、長期化の危険

相続人が増えれば、利害関係人が増えるのですから、遺産をめぐる紛争がこじれやすくなります。
特に、被相続人の死後、実子と養子が争いになるケースは頻発しています。
仮に、節税効果があったとしても、残された相続人にとって、良い結果を招来するかどうかはわかりません。

③相続税額が120%となる場合がある

相続人が、一親等の血族又は配偶者以外の場合は、その相続人の相続税額は、2割増しとなります(相続税法18条1項)。
一親等の血族とは、親子の関係です。
つまり、親子か夫婦以外の相続は、税額が20%加算となるのです。

ここに言う親子には、養親子も含まれますから、20%加算の対象外です。
ところが、被相続人の直系卑属(孫や曾孫)が、養子となっている場合は、一親等の血族とは扱われず、やはり20%加算の対象となってしまいます(相続税法18条2項)。
この点は、注意するべきです。

なお、直系卑属が、養子となっている場合でも、同時に、代襲相続人でもある場合は、加算の適用はありません(相続税法18条2項ただし書)。

④離縁は簡単ではない

相続目的で養子縁組をした後、事情が変わって、離縁したくなっても、被相続人の意思だけで離縁することはできません。
離縁については、養子側が任意に応じなければ、裁判所での調停、審判という手続を経ることになります。
しかも、離縁が認められるには、離婚に準じて、養子縁組を継続することが困難となる重大な理由が必要です(民法814条)。

また、養子が15歳未満の場合には、離縁によって、親権者として復活する者(多くは実の親)との協議を行うことが要求されます(民法811条2項)。
安易な養子縁組をして、離縁できなくなるリスクもあることを良く念頭に置くべきです。

5、よくある相続目的の養子縁組のケース

(1)孫 

ポピュラーな節税対策です。
孫は、子供よりかわいいと言いますし、将来的には、子供から孫に相続されるのですから、ほとんど抵抗感もない縁組です。前述の2割加算には注意して下さい。

(2)甥、姪

甥や姪を養子とすることも、よくある節税策です。
ただし、身内と言っても、本来、相続権がない者に相続権を与えるのですから、相続人間の紛争が起きる危険は、孫よりも遥かに高いものです。

(3)配偶者の子供(連れ子)

配偶者の子供は、血族関係にありませんから、そのままでは相続権はありません。
連れ子に、遺産を残したいという場合は、遺言で遺贈するか、養子として相続権を与えるかのどちらかの方法をとります。
前者の場合、他の法定相続人からの遺留分主張がなされる危険もありますので、確実なのは、養子にする方法でしょう。

(4)子の配偶者

これもよくあるパターンです。
多く場合、子の配偶者と同時に、その子供(つまり孫)も養子とされています。

6、養子縁組から相続までの流れ

相続対策目的で、養子縁組を行う場合、養子が成人である場合は、婚姻と同様に、当事者が合意して、役所の戸籍係に届出をすれば足ります。
養子が未成年の場合は、家庭裁判所の許可が必要ですが、被相続人又はその配偶者の直系卑属(子や孫)を養子とする場合は、この許可は不要です(民法798条)。

なお、養子が15歳未満である場合は、その法定代理人(多くは、実父母)の承諾を得ることになります(民法797条)。
養子縁組の届出が受理されれば、養子も実子と同様に扱われますので、その後、相続が発生すれば、いわば自動的に法定相続人となります。

なお、養子縁組の手続きについて詳しくは 養子縁組を検討するすべての人が知っておくべき全14項目 の記事をご参照ください。

まとめ

養子による相続対策について、十分に理解いただけたと思います。
節税効果はあるものの、注意しなくてはならない点も多くあります。
それを念頭におき、具体策は、専門家に御相談されるべきでしょう。

この記事の知識が、御相談のための予備知識となれば幸いです。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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