既婚女性の8割が夫に不満を抱えている調査結果があるほど、非常に多くの女性が夫に満足していないのです。そんな夫に不満を感じる生活の中で、職場の上司にキスされたら嬉しい反面、不倫にならないか心配になってしまうのではないでしょうか。夫との生活が反故にして露頭に迷うまで不倫関係に陥ることはしたくない、けれども夫以外に感じるドキドキ感を楽しみたいと願う女性も少なからずいるはずです。
そこで今回は、
- 夫以外の男性とキスをしたら不倫になるのか
- 離婚に発展する不倫とはどういうものか
- 既婚者同士のキスのリスク
などを中心に解説していきます。
どのような付き合い方をすれば不倫に該当しないのか気になる女性の不安を少しでも軽くできるよう、不貞行為の境界線や気を付けるべき風評被害などを男性トラブルに詳しいベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。ご紹介していきます。ご参考にしていただければ幸いです。
目次
1、離婚に発展する不倫について
原則として、離婚には夫と妻の二人の意思が必要です。つまり、夫又は妻だけの意思では離婚することはできません。
しかし、民法では相手の合意がなくても「法定離婚事由」に該当する理由がある場合には、相手が離婚を拒否しても離婚の訴えを提起することができると定められています(民法770条1項)。その法定離婚事由の一つが、配偶者の不貞行為です(民法770条1項1号)。
不貞行為があれば夫は離婚を請求することができるのです。キスが不貞行為に該当すれば、夫から離婚を請求される可能性がありますが、結論から申し上げますとキスは不貞行為に該当しません。
不貞行為とは肉体関係のことをいうためです。そのため、肉体関係のないキスだけでは、夫は離婚を請求することができません。腕を組んだり、メール出会いをささやいたり、二人きりでの食事など、プラトニックな恋愛であれば、不貞行為とはいえず、即時に離婚に発展することはありません。逆に一度でも肉体関係があれば不貞行為とみなされることとなります。
2、不貞行為(不倫)とは
法定離婚事由である不貞行為に該当しなければ、いわゆる「不倫」にはなりません。不貞行為に該当する要件を見ていきましょう。
(1)不貞行為には肉体関係が必須
不貞行為には肉体関係が必要です。既婚者が配偶者以外の異性と性行為を持つことが不貞行為と解されています。もっとも性行為がなくても、性行為に類似する行為も不貞行為に類似する行為として離婚原因になる場合があります。
(2)浮気や不倫は法律用語ではない
浮気や不倫という言葉は日常的に使われる言葉ですが、これらの用語は法律用語ではありません。浮気や不倫は人によって境界線が定まっておらず、手をつないだだけでも浮気や不倫と感じる人もいます。しかし、法律的には不貞行為は民法に書かれている法律用語であり、不貞行為は肉体関係を意味します。
(3)ただし男性側を触る行為は不貞行為に類似する行為として離婚原因に該当する恐れあり!
肉体関係を持つことが常に性行為を意味するとは限りません。性行為がなくても、性行為に準じた口淫、手淫、密室で裸で抱き合う行為や一緒にお風呂に入る行為などは性的に密接な関係があるため、不貞行為に類似する行為として離婚原因に該当する恐れがあります。
3、不貞行為でなくても離婚が成立してしまう可能性について
肉体関係のないプラトニックな関係だからとはいえ、以下の2パターンは不貞行為と同様に法定離婚事由に該当しますので離婚を言い渡される危険があります。
(1)悪意の遺棄
「悪意の遺棄」は馴染みのない言葉ですが、法定離婚事由として民法に定められた離婚原因の一つです(民法770条1項2号)。夫婦は互いに協力し扶助しなければならないことが民法で定められています(民法752条)。単身赴任などの正当な理由なく、夫婦生活に必要な「協力」や「扶助」を継続的に行わない場合には、悪意の遺棄と判断されて離婚が成立する可能性があります。悪意の遺棄の具体例は以下の通りです。
- 正当な理由なく同居を拒否する
- 共働き世帯なのに家事を一切しない
- 生活費を全く入れない
(2)婚姻を継続し難い重大な事由
離婚が認められる具体的な理由が民法には定められていますが、離婚を決意する背景には夫婦それぞれの事情があり、民法上定められていない事情を理由に離婚をしたい場合も多々あります。そのような場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります(民法770条1項5号)。婚姻を継続し難い重大な事由を理由として離婚が認められる具体的なケースはたとえば以下の通りです。
- ドメスティックバイオレンスなどの虐待が認められる場合
- セックスレス又は性行為の強要
- 過度の借金等の金銭問題
- 配偶者の親族との極度の不仲
(3)慰謝料の相場について
不貞行為の慰謝料の相場は、数十万円~300万円程度ですが、事情により相場を上回ることもあります。悪意の遺棄の慰謝料の相場は数十万円~100万円程度となることが多いですが、中には300万円の慰謝料となる場合もあります。婚姻を継続し難い重大な事由については、ドメスティックバイオレンスやセックスレスなどは慰謝料が発生しますが、配偶者の親族との不仲の場合などは、原則として慰謝料は認められていません。
また、よく離婚の原因として挙げられる性格の不一致でも慰謝料は認められません。慰謝料は精神的苦痛に対する賠償金の意味合いがあるため、夫婦どちらに原因があるのか立証が困難な場合やどちらかだけが悪いとはいえない場合などは慰謝料発生の対象外となります。
4、不貞行為でなくても風評被害に要注意
キスが不貞行為に該当しないからとはいえ、既婚女性が男性とキスをしている現場を職場の人に目撃されてしまえば、職場の噂の的になることは避けられません。肉体関係がなくても、既婚者が配偶者でない異性とのキスやハグを快く思わない人は沢山います。
職場という狭い世界における風評被害は仕事にも影響が及ぶこともあり、既婚女性が仕事以外で男性と親しくしているだけで世間から白い目で見られる可能性があることに注意する必要があります。
5、既婚者同士のキスにはどんなリスクがあるの?
キスが法的な離婚事由にならなくても、既婚者同士のキスには慰謝料以外のリスクが潜んでいます。貴女がプラトニックの恋愛ごっこを楽しんでいるつもりでも、相手の既婚者男性が本気にならない可能性は否定できません。そのような状況になれば、相手方妻から相手既婚者男性に悪意の遺棄などを申し立てられる可能性があります。
さらには、二人だけの秘密にしていた関係が公になることにより、キスをきっかけに夫婦関係が悪くなれば、婚姻を継続し難い重大な事由として自分自身も離婚の危機にさらされる危険性もあります。
6、夫側がキス不倫をしていた場合の対処法
もし夫側がキス不倫をしていた場合にはどのように対処すればよいでしょうか。ここでは、夫のキス不倫が発覚した場合に自分に有利となるような対象方法をご紹介します。
(1)悪意の遺棄で離婚する場合には記録が必要になる
夫婦関係を正当な理由なく破綻させたことを証明することは容易ではありません。しかし、浪費癖のひどい夫であれば、クレジットカードの明細書や消費者金融からの借用書など浪費に関するものや、生活費が入金されなくなった通帳記録など収入に関するものは証拠となります。家事をしない場合などは散らかった家の写真や、掃除をする妻の横でテレビを見ている夫の写真などを証拠として集めておくと良いでしょう。
(2)婚姻継続をし難い重大な事由は主張を考える
婚姻継続をし難い重大な事由を主張して離婚を申請する場合には、どのような主張を行うか考えておくことが必要です。重大な侮辱や性格の不一致などを主張して強行的に申請することになるかもしれません。これらの原因が夫婦関係の修復を阻害する大きな要素となることを証明する必要があり、夫のキス不倫により夫婦関係が修復できないほどに悪化し別居している状況やお互いの婚姻継続の意思などが総合的に考慮されます。
Q&A
Q1.不貞行為(不倫)とは?
不貞行為には肉体関係が必要です。既婚者が配偶者以外の異性と性行為を持つことが不貞行為と解されています。もっとも性行為がなくても、性行為に類似する行為も不貞行為に類似する行為として離婚原因になる場合があります。
Q2.不貞行為でなくても離婚が成立してしまう可能性は?
「悪意の遺棄」は馴染みのない言葉ですが、法定離婚事由として民法に定められた離婚原因の一つです(民法770条1項2号)。夫婦は互いに協力し扶助しなければならないことが民法で定められています(民法752条)。単身赴任などの正当な理由なく、夫婦生活に必要な「協力」や「扶助」を継続的に行わない場合には、悪意の遺棄と判断されて離婚が成立する可能性があります。悪意の遺棄の具体例は以下の通りです。
Q3.不貞行為でなくても風評被害に要注意?
キスが不貞行為に該当しないからとはいえ、既婚女性が男性とキスをしている現場を職場の人に目撃されてしまえば、職場の噂の的になることは避けられません。肉体関係がなくても、既婚者が配偶者でない異性とのキスやハグを快く思わない人は沢山います。
職場という狭い世界における風評被害は仕事にも影響が及ぶこともあり、既婚女性が仕事以外で男性と親しくしているだけで世間から白い目で見られる可能性があることに注意する必要があります。
まとめ
隣の芝生は青く見えるという諺があるように、配偶者以外の異性に恋心を抱いてしまうことは珍しくありません。気持ちが揺れ動くことを浮気と咎める人もいれば、キスをしたら不倫になると考えている人もいますが、法律上では肉体関係が無い場合には不貞行為に該当せず、慰謝料請求の対象にもなりません。
ただし、肉体関係のない関係すべてが慰謝料請求の対象外になるわけではなく、性行為に類似する行為をした場合など慰謝料が認められるケースもあります。
夫からキス不倫で慰謝料を請求されているのであれば、婚姻を継続し難い重大事由や悪意の遺棄といった不貞行為以外の法定離婚事由を主張される前に弁護士に相談しましょう。