離婚後に元配偶者の浮気が発覚したら、どうすればいいでしょうか。
- 「それなら慰謝料を請求していた!」
- 「浮気していたなら財産分与もっと要求していればよかった」
- 「浮気していたなら相手に親権を渡したくなかった」
など、様々な気持ちになると思います。
離婚後でも、それら請求は可能です!諦めずに手続きを進めていきましょう。
今回は、
- 離婚した後になって浮気していたことがわかった場合、離婚後に法律上どんな請求ができるか?
について、見ていきたいと思います。ご参考になれば幸いです。
不倫の慰謝料についてお悩みの方はこちらの関連記事もご覧ください。
目次
1、離婚後に浮気が発覚していた際の4つの対処法
もし離婚前に浮気を知っていたら、どんな要求をしていたでしょうか?
本項では、考えられるそれら要求をまとめていきたいと思います。
(1)慰謝料請求
婚姻関係にある者は、配偶者に対して貞操義務を負っています。婚姻中の浮気は、この貞操義務違反にあたり、浮気された配偶者は、民法上の損害賠償請求(いわゆる慰謝料請求)をすることができます。
慰謝料を請求できる対象は、浮気した配偶者と、浮気相手の両方です。浮気した配偶者と浮気相手の双方が、連帯して慰謝料の支払義務を負います(民法709条、710条、719条)。
離婚後に浮気が発覚した場合でも同じです。婚姻中に浮気していたことが離婚後に分かった場合でも、元配偶者と浮気相手の双方に慰謝料請求ができます。
ただし、請求できる期間の制限がありますので、ご注意ください。詳しくは後で触れますが、基本的な目安としては離婚から3年が目途となります。
(2)有利な財産分与請求
婚姻関係を解消する(離婚する)場合、一方の配偶者は相手の配偶者に対して、財産分与の請求ができます(民法768条)。これは、簡単に言うと、結婚してから夫婦で築いた財産を平等に分けるための制度です(上記「慰謝料」とは法的に別の制度です)。例えば、夫が結婚後に給料を夫名義の口座で貯金していた場合に、離婚後にその貯金の半分を請求できます。
財産分与は、離婚の際に必ず決めなければならないものではないので、協議離婚の際に財産分与については何も決めずに離婚するケースも多々あります。ですから、「浮気していたことを知っていたら財産分与も請求したのに」とか、「もっと有利な財産分与を請求していたのに」ということは十分に起こり得ることでしょう。
このような場合に、離婚後に浮気が分かったことをきっかけに、財産分与も請求できるのでしょうか。以下、各ケースに分けてみてみましょう。
①離婚時に財産分与をしていなかった場合
離婚の際に財産分与について何も決めていなかった場合、離婚から2年以内なら財産分与の請求ができます。
財産分与を何も決めずに離婚した後でも、相手が浮気したことを知ったことで、財産分与も請求したいという場合には、離婚後2年以内なら財産分与請求ができます。
②離婚時に財産分与をしていた場合
離婚の際に、離婚協議書等で財産分与を決めた場合でも、その後に相手が浮気をしていたことを知ったことでもっと有利な財産分与を請求したい、財産分与をやり直したいと思う方もおられると思います。
この場合には、浮気していたことを知っていたらあんな財産分与をしなかったとして、財産分与の錯誤取消(民法95条)を主張して、財産分与のやり直しを求めることも考えられます。
(3)養育費請求
子どもがいる夫婦が離婚する場合、親権者は必ずどちらとするか決めなければいけませんが、養育費については必ず決めるべきものではありません。ですので、離婚の際、相手の収入が低いので特に養育費については決めなかったとか、少し低めの金額に決めたというケースがあります。
こうしたケースで、離婚後に相手が浮気したことを知ったことで、それなら養育費を要求したいとか、もっと養育費を払ってもらいたいと思う方もおられると思います。
こういった場合には養育費の支払い、増額を求めることができます。
ただし、過去の分をさかのぼって請求することはできませんので、ご注意ください。あくまでも今後の養育費について、養育費の支払い・増額を請求することになります。
(4)親権を渡さない
子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもの親権者をどちらにするかを決めなければいけません(民法766条)。
しかし、離婚後に相手が浮気していたことを知った場合に、例えば「当然のように妻に親権を渡してしまったが、知っていれば俺が育てたかった」というように、離婚の際に相手が浮気していることが分かっていたら親権を渡さなかったというようなケースも起こりえます。
このような場合には、親権者の変更を求めることが可能です。
ただ、浮気していたからといって必ず親権が変更されるものではありませんのでご注意ください。
相手が浮気相手との関係にのめりこんで子どもを放置するなどして、現在の子どもの養育環境が劣悪であるなどの事情がある場合には、親権者を変更して子どもの引き渡しを請求することも可能です。
2、各種請求は離婚後でも可能!請求において知っておくべき4点まとめ
これまでみてきたように、各種請求は離婚後でも可能です。
本項では、離婚後に請求するにおいて知っておくべき4点をまとめました。
(1)慰謝料、財産分与請求は時効等に注意
前でも軽く触れましたが、慰謝料と財産分与の請求については、請求期限があるので注意しましょう。
①慰謝料請求
慰謝料請求は、損害および加害者を知ったときから3年、あるいは浮気していたときから20年を経過することで、消滅時効にかかり請求できなくなります(民法724条)。20年前の浮気というのはあまり現実的ではないので、実際には3年を請求の目途とするのがいいと思います。
ここで、いつから3年なのか、つまり時効のスタートについては「損害および加害者を知ったとき」からです。
なお、「加害者を知ったとき」について判例は、「被害者において加害者の氏名、住所を確認するに至つた時」であると判断しています(最高裁判所昭和48年11月16日民集27巻10号1374頁)。
後述しますが、慰謝料の請求相手は「元配偶者」と「元浮気相手」の2名です。この点、元浮気相手については、氏名すら知らないということが起こり得ますから、元配偶者よりも時効のスタートが遅れるということが発生しやすいでしょう。
離婚後においては「元配偶者」に関しても住所がわからないということもありますが、元配偶者については連絡先を知っていて、すぐに住所を確認できるにもかかわらず、時効の進行を妨げるために確認しなかったという場合は「加害者を知ったとき」はすでに到来していると考えられる可能性が高いですので、ご注意ください。
また、慰謝料請求するには証拠が必要という点にも注意しなければいけません。
離婚後に当時の浮気を証明する証拠を揃えるのは相当なテクニックが必要です。一般的には浮気の証拠としてはメールや写真(ホテルに入るところや二人で腕を組んで歩いている写真等)が挙げられます。もし今が離婚前であれば、今のメールや写真を入手するということで対応ができますが、離婚前に浮気相手とやり取りしたメールなどの証拠を集める必要があるため、難易度は上がります。
本人の供述も浮気の証拠となりますので、今、「婚姻中浮気してたよね?」と確認し、相手の出方を録音し、その中で浮気を認める旨を述べていたら浮気の証拠とするというのは1つの方法です。
②財産分与
財産分与は、離婚から2年以内に行う必要があります。慰謝料と違って、「浮気を知ったとき」からではありませんので注意が必要です。離婚から2年経過すると、財産分与そのものが請求できなくなってしまします。
離婚の際に財産分与をしていたが浮気が発覚したことで財産分与をやり直したいという場合には、錯誤取消(民法95条)での財産分与のやり直しを請求することなり、これについては、浮気を知ったときから5年、浮気から20年で時効消滅することになります(民法126条)。
(2)養育費は過去分の請求は不可、早めに請求を
養育費は、離婚後に浮気が発覚した場合でも、過去の分をさかのぼって請求することはできません。
請求したときからの養育費の請求・増額しかできませんので、もし請求・増額を求めるなら早急に行うことが懸命です。
また、養育費は、法律上は浮気の有無とは関係ありません。双方の収入・生活状況によって決まることになります。その金額を決めるには家庭裁判所が指定してる算定表を用いることが一般的です。
したがって、増額を求めて裁判所に養育費の支払いを求める手続きを取ったのに、現在の相手の収入が離婚時より下がっていたり、相手が再婚して扶養人数が増えて生活状況が苦しいといった場合には、結果的に減額されてしまうということもあり得ますので要注意です。
(3)親権は変更の申し立てが可能
親権の変更については、相手が応じてくれない場合には家庭裁判所に申し立てることなりますが、家庭裁判所の一般的なルールとしては、「母親の原則」というものがあります。子どもは、母親のもとで生活するのが良いという考え方です。これは、相手が離婚前に浮気していた場合でも同じです。
ですので、父親が離婚時に母親(元配偶者)を子どもの親権者とすることに応じたものの、離婚後に離婚前から母親が浮気したことを知ったとしても、そのことを以って直ちに親権者の変更を認めてくれるわけではありません。
現在の子どもの母親の下での生育環境が劣悪であり、子どもにとってふさわしくないというような事情がない限り、親権者の変更は難しいということに注意が必要です。
(4)一切の請求を放棄する約束は取り消せる
離婚協議書等の書面で離婚条件を合意した場合、「本書面に定めるもののほかは、今後お互いに何らの金銭的請求を行わない」等のいわゆる清算条項というものが定められていることが多いです。これは離婚が成立したことを確認し、お互いの関係一切を断つために記載されるものです。
特に弁護士や行政書士等に書面作成を依頼した場合には、この清算条項が必ずと言っていいほど書面内に記載されています。一般の書式にもこうした清算条項が入っていることが多いでしょう。
こうした離婚協議書に清算条項が入っている場合、離婚成立後に浮気していたことが発覚しても慰謝料や財産分与等の何も請求できなくなるかというと、そうではありません。離婚条件合意の前提となる事実が違ってきますので、清算条項の錯誤取消(民法95条)を主張して、別途の慰謝料等の支払いを求めることができます。
3、離婚後に慰謝料請求をする方法
では、ここからは各種請求方法を順番にみていきましょう。
まずは慰謝料請求からです。
(1)離婚慰謝料は請求できない
離婚した際のいわゆる「離婚慰謝料」とは、離婚に至る原因を作った側に対して離婚原因を作ったことに基づいて請求できるもので、厳密には不貞行為の慰謝料とは別のものです。
ですので、離婚した後に浮気が発覚した場合には、浮気が離婚の原因となったわけではありませんので、離婚慰謝料の支払いを求めることはできません。
(2)請求相手は元配偶者と元不倫相手
離婚した後になって浮気していたことが発覚した場合に、慰謝料を請求できる対象は、浮気した元配偶者と、浮気相手です。浮気した配偶者と浮気相手の双方が連帯して慰謝料の支払義務を負います(民法709条、710、719条)。
なお、本来あるべき慰謝料額が100万円である場合、双方から100万円がもらえるわけではありません。双方合わせて100万円、ということです。どちらかから100万円もらえていれば、もう一方へは請求はできません。
また、2(1)①で触れたそれぞれの時効期間をチェックしておきましょう。
(3)慰謝料額の相場
浮気が原因で離婚する場合には、不貞慰謝料も含めた離婚慰謝料が算定されることになります。その金額は、婚姻期間や小さい子どもの有無などの事情により変動しますが、裁判離婚の場合に裁判所が支払いを命じる慰謝料額は概ね数十万円~300万円程度です。
離婚した後に浮気していたことが分かった場合には、浮気が原因で離婚に至ったわけではありませんので離婚慰謝料としての請求はできませんが、不貞行為を原因とする慰謝料となります。その金額は、浮気したが離婚しない場合の慰謝料に準じて決められることになり、概ね数十万円~200万円程度です。
(4)請求手順
①証拠を揃える
まずは浮気していたことを証明できるものを揃えましょう。過去のメール、ラインのやり取りや写真(ラブホテルに入るところなどの写真)、あるいは元配偶者や浮気相手が浮気していたことを認める旨の発言を録音したもの等が考えられます。
②内容証明郵便で請求
浮気していた証拠を集めたら、次に慰謝料の請求です。請求することで消滅時効を止めることもできますので、請求したことが明確に残るものとして、内容証明郵便で書面を送るのが良いです。
③交渉
内容証明郵便で慰謝料を請求したら、おそらく元配偶者、浮気相手から何らかの返答があると思います。その返答内容によって、金額や支払い方法等の交渉を行うことになります。
④調停・裁判
交渉してみて、金額や支払い方法で合意できない場合には、裁判所に調停か裁判を起こすことになります。
調停は、調停委員に間に入ってもらって裁判所で行う話し合いの手続きです。
裁判は、裁判所に判決で慰謝料の支払いを命じてもらうもので、判決を得れば、相手の財産への差押え等の強制執行をかけることができます。
3、離婚後に財産分与を請求する方法
次に、財産分与の請求方法をご説明します。
(1)財産分与は離婚時の夫婦の資産の2分の1請求できる
財産分与は、基本的には、夫婦が結婚後に築いた資産を2分の1ずつ(半分)に分けるというものです。ただ、相手が浮気していたことにより資産の形成に貢献していなければ、2分の1を超える額(割合)による財産分与を請求することも可能です。
また、慰謝料は単純に金銭の請求だけですが、財産分与の場合は住居等の不動産や有価証券等の資産すべてが対象となりますので、夫婦の財産で欲しいものがあれば、財産分与を検討してみるといいと思います。
(2)請求相手は元配偶者
財産分与は夫婦の資産を分けるもので、浮気の慰謝料とは違いますので、請求相手は元配偶者だけです。浮気相手には請求できません。
(3)請求手順
①証拠を揃える
浮気の証拠だけでなく、夫婦で築いた財産の目録などを整理してみましょう。目録から自分が欲しい資産を選定します。
②内容証明郵便で請求
財産分与は2年という期間制限がありますので、請求したことが明確になるように、内容証明郵便で請求するようにしましょう。
③交渉
どのように財産分与をするかを元配偶者と交渉します。
④調停・裁判
交渉がうまくいかない場合には、家庭裁判所で調停、審判を求めることになります。まずは調停で裁判所での話し合いから始まります。
4、離婚後に養育費を請求する方法
次に、養育費を請求する方法を説明します。
(1)過去分の養育費は請求できない
前にも述べたように、養育費は、過去の分をさかのぼって請求することはできません。離婚した以後の養育費の支払い、増額を求めることになります。
(2)請求相手は元配偶者
養育費は、子どもの扶養義務を負う元配偶者に対して請求できます。浮気相手には請求できません。
(3)養育費の相場
養育費の金額については、双方の収入、生活状況によって決まることになります。家庭裁判所で決めてもらう場合には、子どもの人数による算定表を用いることになります。
(4)請求手順
①内容証明郵便で請求
養育費は請求したとき以降のものが支払い・増額の対象となりますので、請求した時期がとても重要です。ですので、請求する場合には内容証明郵便で行うのが良いでしょう。
②交渉
元配偶者と話し合い、金額、支払い方法について交渉します。
③調停・裁判
話し合いがつかなければ、家庭裁判所に養育費の支払い、増額を求める調停を申し立てることになります。調停で話し合いがつかなければ、家庭裁判所の審判手続に移行し、家庭裁判所が金額を決めることになります。
5、離婚後に親権変更を申し立てる方法
最後に、親権変更についてです。
親権の変更は、元配偶者との話し合いでも可能です。元配偶者と話し合える状況ならばまず親権者変更したい旨を伝えてみましょう。元配偶者への申し入れは、特に記録に残す必要はないので、電話やメールなどでも可能です。
元配偶者が親権者変更に応じてくれない、あるいは、元配偶者と話し合えるような状況ではない場合には、家庭裁判所に対して、親権者変更の調停を申し立てることになります。
ただ、元配偶者が浮気していたからといって親権者変更が直ちに認められるわけではありません。元配偶者の下での子どもの生活が子どもの成長にとって劣悪であるなどの事情がないと親権者変更は認めてもらえません。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6、各種請求を成功させる方法
各種請求を成功させるためには、弁護士に相談するのが良いと思います。
というのは、各種請求でもっとも重要なのは、「交渉の仕方」です。そもそも相手は離婚において不利になることを避けるために浮気を隠していた可能性もあり、離婚後に各種請求を任意にしても、反論される可能性が高いでしょう。
特に、当時の浮気の決定的な証拠がない、時効が完成しているというケースでは、法的にも拒否され得る事態です。そのため、任意交渉で少しでも多く希望を叶えることが、この問題のゴールと言えます。そのゴールのためには、相手との駆け引き(交渉)が鍵となるのです。
この点、離婚問題を多く扱う弁護士であれば、相手との交渉の落とし所を的確に判断し、少しでも依頼者の希望に近づけるよう交渉を代理してくれます。相手も弁護士をつける可能性もあり、もし調停や裁判に移った際も、経緯を知っていればこそ迅速に対応することができるでしょう。
今は無料相談を行う法律事務所が増えています。まずは無料相談に行ってみましょう。
離婚後の浮気発覚に関するQ&A
Q1.離婚後に浮気が発覚していた際の慰謝料請求の対象は誰?
慰謝料を請求できる対象は、浮気した配偶者と、浮気相手の両方です。浮気した配偶者と浮気相手の双方が、連帯して慰謝料の支払義務を負います(民法709条、710条、719条)。
Q2.離婚時に財産分与をしていなかった場合は?
離婚の際に財産分与について何も決めていなかった場合、離婚から2年以内なら財産分与の請求ができます。
財産分与を何も決めずに離婚した後でも、相手が浮気したことを知ったことで、財産分与も請求したいという場合には、離婚後2年以内なら財産分与請求ができます。
Q3.離婚後に浮気が発覚していた際は慰謝料請求できる?
婚姻中の浮気は、この貞操義務違反にあたり、浮気された配偶者は、民法上の損害賠償請求(いわゆる慰謝料請求)をすることができます。
離婚後に浮気発覚した際の対応まとめ
離婚当時は知らなかったが、離婚したあとに浮気していたことが分かった場合、慰謝料請求はもちろんのこと、財産分与のやり直し、養育費の増額、親権者変更等、離婚当時に決めたことをすべて改めてやり直すことも可能です。
離婚してしまったからと言って諦めてしまう必要はありません。どのような請求ができるか、その見込みはどうかなどは個々の事情により異なりますので、まずは弁護士に相談してみましょう。
離婚や不倫についてお悩みの方はこちらの関連記事もご覧ください。