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賭け麻雀で賭博罪?逮捕の可能性と法的リスクについて解説

賭け麻雀で賭博罪?逮捕の可能性と法的リスクについて解説

賭け麻雀は法律上で許されていない行為です。

最近、高等検察庁の元検事長が新聞記者との接待中に賭け麻雀を行っていたという報道があり、社会的な注目を浴びました。

この記事では、賭け麻雀がなぜ違法とされるのかなど、弁護士が分かりやすく解説しています。

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1、賭け麻雀は違法?賭けマージャンをした場合に問われる罪

そもそも、賭け麻雀が行われた場合、問われる可能性のある犯罪とは何罪なのでしょうか。

以下、ご説明します。

(1)賭博罪

賭け麻雀を行った場合に最も問われる可能性が高いのが、刑法185条が定めている賭博(とばく)罪です。次に触れる常習賭博罪と区別する目的で、「単純賭博罪」と呼ばれる場合もあります。

刑法185条

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

刑法にいうところの賭博というのは、「偶然の勝ち負けによって財産を得たり失ったりする争い」のことをいいます。

この点、麻雀は、牌の配置などの偶然の要素によって勝ち負けが左右されることが多く、賭博に該当するものとされています(大判昭和6年5月2日刑集10巻197頁、大判昭和10年3月28日刑集14巻343頁)。

なお、ただし書きの規定については、後に別途解説を加えます。

(2)常習賭博罪 

刑法186条1項

常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。

賭け麻雀が習慣になっているという人の場合には、賭博罪よりも罪の重い常習賭博罪に問われる可能性があります。賭博罪は罰金50万円が刑の上限であるのに対し、常習賭博罪は三年以下の懲役刑となっており罰金刑の余地がないのでかなり重い罪とされていると言えます。

刑法のいう「常習」というのは、賭博を反復累行して行う習癖が存在することとされています(最判昭和24年2月24日集刑7号553頁、最判昭和26年3月15日集刑41号871頁)。

また、常習性の判断は、「○日間で×回」といったような数的な頻度だけでなく、さまざまな事情を総合的に判断されるといえます。

具体的には、現に行われた賭博の種類、賭金の多寡、賭博の行われた期間、頻度、前科の有無等の具体的事情をもとに判断されています(最判昭和25年3月10日集事16号767頁)。

過去の判例では、賭博遊技場を3日間営業しただけであったケースでも長期間の営業を行う意思があったこと、多数の客と賭博行為を行っていることから、常習性ありと判断したものがあります(最決昭和54年10月26日刑集33巻6号665頁)。

さらには、初めて賭け麻雀で逮捕されたという場合であっても、賭け麻雀自体の常習性によってはいきなり常習賭博罪に問われる可能性があることに注意する必要があります。

(3)賭博場開張図利罪

2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

賭博場開張図利罪を問うためには、「賭博を主宰している」という点が非常に重要になります。自宅で賭け麻雀を主宰していたという場合には、賭博場開張図利罪というさらに厳しい罪に問われる可能性もあります

たとえば、麻雀店であっても、いわゆるセット雀荘(場の提供しかしていない麻雀店)の場合には賭博場開張図利罪を問われることはありません。場の提供だけでは、賭博の主宰とはいえないからです。

他方、客が1人でも遊べるいわゆるフリー雀荘で、麻雀店側にレートの決定権があり(フリーではノーレートで遊べない)、麻雀店がトップ賞を徴収する(いわゆるテラ銭の徴収)がある場合には、賭博場開張図利罪に該当する可能性がかなり高いといえます。

(4)賭博(賭け麻雀)は何が悪いのか?

そもそも、賭博(賭け麻雀)は何が悪いのでしょうか? 

友人同士の賭け麻雀の場合であれば、賭け行為について参加者全員の同意があるため「誰にも迷惑をかけていない」、「何が悪いのかわからない」と思う人も少なくないでしょう。

賭け麻雀が問題となるのは、対戦相手から金品をせしめる(ことが問題であるという学説がないわけではありません)ということよりも、賭け麻雀がはびこることによって、公序良俗が脅かされる(真面目に働こうとする人が減ってしまうリスクが増える、賭け麻雀に付随して暴力団などの反社会的組織が収益をあげる)ことが問題であるとされています

実際にも、賭け麻雀が摘発されるのは、背後に反社会的組織の存在が疑われる麻雀店などが多いという実情があるようです。

2、賭け麻雀が違法となるのはどこからか?

先の元検事長の賭け麻雀の際にも、いわゆるテンピンレート(1000点100円のレート)であったことが大きな話題となりました。そこで、この記事を読んでいる人中には、「レート幾らまでであれば賭け麻雀は違法にならないのか」ということに関心を持っている人もいるかもしれません。

(1)刑法が定めている賭博罪の適用除外

法律論としては、賭け麻雀が賭博罪に該当しない(違法とはいえない)のは、「一時の娯楽に供するものを賭けたにとどまる」場合です(刑法186条1項但し書き)。

(2)「一時の娯楽に供する物」とは?

「一時の娯楽に供する物」というのは、判例によれば、(賭け麻雀を行った)関係者が一時の娯楽のために消費する物のことを指すとされていて(大判昭和4年2月18日刑集8巻72頁)、典型例としては「負けた人が飲み物や食べ物をおごる」というような場合を挙げることができます

これに対して、金銭が賭けの対象となった場合には、その金額が少額であったとしても一時の娯楽に供するものとはいえないという判例があります(最判昭和23年10月7日刑集2巻11号1289頁)。

したがって、法律論としては、金銭が賭けの対象となっている賭け麻雀は、レートがテンピンの場合に限らずそれよりも低いテンゴ(1000点50円)、テンイチ(1000円10円)の場合であっても、金銭が賭けの対象になっている以上、賭博罪が成立するといえるでしょう。

(3)麻雀大会のような形式は違法になるのか?

それでは、麻雀仲間が集まって優勝者に賞金を提供するような大会形式であった場合はどうでしょうか。

この場合には、「賞金を負担しているのは誰か」という点が大きなポイントになるといえます。たとえば、大会の参加者から徴収した参加費が賞金に充てられている麻雀大会は、賭博罪に該当する可能性が高いといえます

これに対し、大会のスポンサーが賞金の全額を負担している場合には、大会の参加者と賞金の提供者に勝ち負けの関係が成立しないので、賭博罪は成立しないと考えることができます。

もっとも、このような方式であっても、いわゆるeスポーツの賞金問題などで議論されているように、別途、景品表示法上の問題が生じうることは注意する必要があるでしょう。

(4)イカサマ賭け麻雀に巻き込まれてしまった場合 

賭け麻雀が行われるときには、イカサマ行為などが行われることもないわけではありません。

イカサマ麻雀では、麻雀の勝ち負けがイカサマ行為によって支配されていると考えられるため、そもそも賭博の前提(関係者全員が公平に負ける危険を負担すること)を満たさないと考えられています(最判昭和26年5月8日刑集5巻6号1004頁)。もっとも、イカサマ行為をした側には詐欺罪(刑法246条1項参照)が成立するため、全く刑事罰に問われないわけではありません。

3、万が一、賭け麻雀で逮捕された場合はどうなってしまうのか?

すでに解説したように、金銭を賭けの対象とする賭け麻雀は、その金額が少額であったとしてもレートに関係なく賭博罪が成立する可能性があります。

しかし、実際には、常習性のない少額の賭け麻雀を警察が狙い撃ちをして摘発するというケースはほとんどないといえます。警察や検察は、多数の事件処理に追われており全ての事件について捜査を行うことは現実的には不可能です。

実際にも、一般人が多少の賭け麻雀をしたとしても、社会秩序を大きく損なわせる(保護法益を侵害している)とまではいえないともいえるでしょう。

とはいえ、暴力団対策などの別件で調査中の麻雀店でたまたま賭け麻雀をしていたら警察が踏み込んできたというような場合には、賭博罪として逮捕等されてしまう可能性が高いといえます。

さて、このような場合にはどうなってしまうのでしょうか?

(1)自宅に帰ることはできるのか?

賭け麻雀が摘発されるケースのほとんどは、現行犯での逮捕となります。したがって、賭け麻雀で逮捕されてしまったという場合には、「自宅にすぐに帰れるか」という点が、最初の関心事といえるでしょう。

賭け麻雀で逮捕された場合には、犯罪それ自体も軽微であると判断される場合が多いといえますので、警察での必要な取り調べが終われば証拠の隠滅や逃亡のおそれがない限りは、自宅に帰ることが許されるのが一般的といえます。

証拠の隠滅などを疑われないためには、賭け麻雀をしていたことが事実であるのであれば、嘘をつかず、素直に罪状を認めることが一番といえます。

ただし、逮捕された時間帯や警察の取り調べの都合によっては、「その日一晩は警察に留置される」ということもあるかもしれません。

なお、逮捕直後から最大72時間までの間は、被疑者は弁護士以外の他人との一切の接触ができません。したがって、「家族などへの連絡を急ぐ」という場合には、弁護人を選任する必要があります。

(2)起訴される確率は?

元検事長の賭け麻雀行為を行った件が不起訴処分で終わったように、賭け麻雀で逮捕されると必ず起訴される(刑事裁判で罪に問われる)わけではありません。

しかし、それぞれの事件について起訴すべきかどうかを判断する権限は、その事件を担当する検察官にあります。

賭け麻雀をしたことが事実である場合、不起訴処分にしてもらうためには真摯に反省している態度を検察官に理解してもらうほかありません。まずは、警察官・検察官の取り調べにきちんと協力することが、有効な方法となるでしょう。

(3)起訴されてしまった場合はどうなるか?

賭博罪の法定刑は、「50万円以下の罰金」です。したがって、常習賭博罪や賭博場開張図利罪に問われるケースを除いては、懲役刑で刑務所に収監される心配はありません。

罰金刑が問われるケースでは、略式起訴という簡易な刑事裁判手続で終わらせることも可能です。略式起訴とするためには、被告人が犯罪事実を認めていることが必要になります。また、略式起訴とするかどうかを決める権限を持っているのは検察官です。略式起訴では、被告人は罪状に異議を述べることはできませんが、賭け麻雀の案件では、罪状を争えない場合の方が多いでしょうから、被告人としても略式手続でも問題がない場合が多いといえます。ただし、罰金刑とはいえ、「前科」には該当します。

まとめ

賭け麻雀は、法律論としては犯罪(賭博罪など)に該当してしまう行為です。 

実際に逮捕・摘発されるリスクは高くないとはいえ、「運が悪いタイミングで麻雀店が捜査の対象になった」ことで、いわば芋づる式に逮捕されてしまうリスクがないわけではありません。逮捕後に、起訴され罰金刑が確定してしまえば、仕事にも大きな影響が出るということも考えられますので十分に注意しましょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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