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取締役会をリモートで開催する際の5つの注意点を弁護士が解説

2021年11月18日
取締役会をリモートで開催する際の5つの注意点を弁護士が解説

取締役会のリモート開催は可能なのでしょうか?

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、テレワークが進展しています。
それだけでなく、取締役会についても、各種会議システムを用いて、リモートで開催しても良いのではないか、という声が上がっており、実際に対応される事例も増えてきています。

取締役会のリモート開催は、従来から想定されており、法令上も可能と考えられていました。
最近のオンライン会議の進展は、リモート開催の要件である「即時性」や「双方向性」が容易に満たせるようになった、ということなのです。

単に出席の容易さ・議論の充実、という問題だけではありません。取締役人材候補の範囲を著しく拡大させます。
例えば、遠隔地、海外、社外有識者等の多様な人材に、取締役に就任していただける機会を増します。

また、臨時取締役会等の機動的運営も可能になります。会社としての的確・迅速な意思決定、未来への戦略の検討・決定の大きな助けとなるでしょう。

このような取締役会リモート開催について、弁護士が簡潔・明瞭にまとめました。皆様のお役に立てれば幸いです。

1、取締役会のリモート開催と署名

取締役会のリモート開催と署名

(1)リモート開催の法令の根拠

会社法上では、取締役等が、取締役会の開催場所に、物理的に出席すべきとはされていません。
取締役が、当該取締役会の実際の場にいないことも、前提にされています。

その場にいない取締役等が出席した場合の出席方法を、議事録で明確にしておくことが定められています。
以前より、テレビ会議システム等で、遠隔地の取締役等が、取締役会に出席することは行われてきたのです。

(参考)

会社法施行規則第101条(取締役会の議事録)

3 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。

一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)

(2)議事録の電子署名等も可能に!

さらに、法務省では、取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認について、クラウドを使った電子署名を認めることを明確にしました。

これにより、取締役会そのものをリモートで運営し、その署名もリモートで可能になります。
紙の議事録を、遠隔地の取締役等に送付して持ち回り、署名をもらう必要もなくなります。

(参考記事等)

31日日経新聞朝刊

取締役会の議事録承認 クラウドで電子署名 法務省、手続き簡素に

サインのリ・デザイン サイト記事

取締役会議事録もクラウド型電子署名で—2020年5月29日付法務省新解釈の解説

2、リモート開催の要件

リモート開催の要件

(1)取締役会運営そのものの要件

以前より、テレビ会議や電話会議等で、取締役会が行われることはありました。

法務省の解釈では、どのようなやり方でも、次の2つの要件が満たされれば、取締役会の開催と認められるとされています。

①即時性

各取締役の発言内容等が、即時に他の取締役に伝わること

②双方向性

取締役間で、協議と意見の交換が自由にできること。これにより、適時的確な意見表明が互いにできること。

例えば、テレビ会議システムによる取締役会開催については、「取締役間の協議と意見の交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が、即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」ならば可能との解釈が示されています。

また、映像なしの「電話会議システム」による取締役会開催も、「出席取締役が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態ならば可能」と解されています。

このようなことから、携帯電話やインターネットを介した音声通話サービスを利用して、取締役会に出席することも可能と思われます。

(2)全員のリモートには疑義あり

なお、取締役全員がリモートでよいか、ということについては、疑義があります。
取締役会議事録に、「取締役会が開催された日時及び場所」を記載する必要があるからです。

しかし、結論としては、議長のいる場所を「取締役会の開催場所」として、他の取締役等と通信回線でつないで、取締役会を開催することはできると考えられています。

(3)取締役会書面決議には制約あり

いっそのこと、取締役会開催そのものをやめて、書面決議をする場合はどうでしょう。
決議事項の内容やこれまでの審議状況等から、会議を開催するまでもない、という場合です。
これには、次の要件を満たす必要があります(会社法370条)
法の定める要件が満たされれば、案件次第では、書面決議も活用すべきでしょう。

①書面決議に関する定款の定めがあること

②取締役が取締役会決議の目的事項について提案したこと

③当該提案について、特別利害関係取締役を除く取締役の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたこと

④監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べていないこと

(4)取締役会への出席として認められないケース

書面決議でなく、実際に取締役会を開催する場合には、各取締役について、取締役会に出席したと認められる必要があります。リモートの取締役会で、取締役会への出席と認められないケースを検討してみましょう。定足数ぎりぎりの人数で、取締役会を開催している場合、出席として認められないと、そもそも取締役会決議そのものが無効となってしまいます。

以下のケースは、避けようと思えば避けられるはずの問題です。
取締役会の重要性を理解していれば、このようなお粗末な対応はされないはずです。注意して取り扱うべきです。

①書面提出だけでは不可

ある取締役が、所用で取締役会に出席できないので、議案に「賛成」の旨を書面で提出した、というケースはどうでしょうか。

そもそも、取締役会は、取締役相互の議論を通じて、適切な意思決定をすることを目的として開催するものです。
従って、事前に書面で決議の賛否を提出しても、賛否の意見を取締役会で表明したことにはなりません。
出席とも認められません。

②通信不調の問題

会議中に、通信不調等で即時性・双方向性が妨げられた場合には、少なくとも、その時間帯については、当該取締役が取締役会に出席していなかったと扱われます。

通信不調でも、音声が途切れずに、全員の取締役に伝わるのであれば、ぎりぎりセーフかもしれません。
しかし、例えば、画像だけが見えて、当該取締役の発言の音声が伝わらないならば、当該取締役は、その時間について、出席していたとは認められないと考えられます。

実務的には、音声であれ、画像であれ、通信不調が解消したときに、もう一度、当該時間帯のやりとりを再度伝え合い、改めて議論をして、取締役会の即時性・双方向性が満たされるように対応すべきでしょう。 

③遠隔地の取締役との固定電話だけでの接続

遠隔地にいる取締役の携帯電話と取締役会の会議室の固定電話を接続した事例について、当該取締役について、取締役会への出席と認められなかった裁判例があります。

取締役会開催場所の会議室の固定電話にスピーカー機能がなく、固定電話で通話している取締役しか、当該遠隔地の取締役の発言を聴くことができなかった、また、遠隔地の取締役自身も、会議室の中のやりとりを聴くことができなかった、というものです。

「即時性と双方向性の確保ができたといえない」として、遠隔地の取締役は、取締役会に適法に出席したとはいえないと判示されました。 

④LINEのやりとりは疑問

最近普及しているLINEについては、どうでしょうか。

あるベンチャー企業で、LINEで、役員が文字で議題についてやりとりし、最後に一人の役員から「異議なし」、別の役員も「異議なし」といった言葉が「吹き出し」内に表示されている、そのようなイメージです。

他の方式と比較してみましょう。

テレビ会議=「画像」と「音声」が、参加者に共有される。

電話会議=「音声」のみが、参加者に共有される。

LINEによる会議=「画像(文字)」のみが、参加者に共有される。

少なくとも、音声であれば、即時性・双方向性は担保できるでしょう。

しかし、画像(文字)だけなら、即時性・双方向性が満たされているのか、疑問があります。

現在では、画像と音声を同時に、容易に伝える様々なシステムが簡単に使えます。
わざわざ、LINEを使う意味があるとも思えません。
取締役会が、会社の意思決定の重要な機関と認識しているのであれば、画像・音声で、できるだけリアルに近い意思疎通を図るべきでしょう。

率直に申し上げれば、LINEでの取締役会開催というのは、その会社の取締役が、取締役会の重要性を認識していないと疑われても仕方ないでしょう。

(5)招集通知・議事録・署名

①招集通知

取締役会の招集通知の具体的内容は、法令上定められていません(会社法368条第1項参照)。
しかし、取締役会が開催される日時や場所の通知は必要です。
リモートで、各種会議システムを利用するのであれば、参加方法について、招集権者が決定して、通知します。
各取締役等に伝達できるのであれば、通知の方法は問わないと考えられます。

例えば、ZOOMシステムで開催するのであれば、その旨を招集通知に明記します。

その上で、ID・パスワードをメール等で送るというようなことも、問題はないでしょう。
当然ながら、メールの不着や未読等を避けるため、開封通知を求めるといった実務的な配慮は欠かせないでしょう。

②議事録の記載方法

取締役会が開催された場合には、議事録を作成します。
書面・電磁的記録いずれでも可能です(会社法369条第3項、同法施行規則101条第2項)。

取締役会の開催日時・場所等、一定の事項を記載する必要があります(同法施行規則101条第3項各号)。

開催場所は、「当該場所に存しない取締役…が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法」も記載する必要があります(同項第1号括弧書)。

議事録の上では、次のように記載する事が考えられます(電話会議の例)。

「議長は、電話会議システムにより、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認して、議案の審議に入った。」

③議事録への署名方法

前述「1」(2)のとおり、議事録への署名については、クラウドでの署名等も認められており、遠隔地でも、問題がなくなりました。

3、リモート開催が拓く新しい可能性

リモート開催が拓く新しい可能性

以上のように、取締役会のリモート開催(遠隔地の取締役でも、出席可能)ということは、様々な可能性を拓くことになります。
この点にこそ、経営者としては注目しておくべきでしょう。

(1)現在の取締役への利点

現在選任されている取締役については、次のようなメリットがあります。

①場所を問わず、参加できる

遠隔地の取締役、とりわけ海外在住等の取締役については、出席が容易になります。
移動時間も節減できます。
何といっても、新型コロナウイルスが世界中で蔓延しているときですから、自分の本拠地を離れずに済むというメリットは、かけがえのないものです。

また、業務の都合やプライベートな事情で、取締役会の場所に出席できない取締役にとっては、取締役会の時間だけ、リモートで参加すればよいわけです。大事なお客様との商談を優先させることができます。

②画面上で、平等な立場での闊達な議論

リアルの会議と違って、オンライン会議では、周りの人(例えば、上席者とか先輩)の顔色を窺わずに、自由闊達な議論が期待できます。
ZOOM等のオンライン会議に参加した方は、肌感覚で理解いただけると思います。

③録画の活用等

オンライン会議システムでは、録画の機能も有していることが普通です。
録画しておくことで、社内外への後日の説明責任を果たすこともできます。
自らの発言がそのまま記録されることで、将来の紛争に備えることもできるでしょう。

④各種資料のペーパーレス化

各種の会議資料も、社内イントラや場合によっては、クラウド等で閲覧可能にしておくことで、事前チェック、提案者への質問等、充実した事前準備が可能になるでしょう。

これは、取締役会のリモート開催そのものの利点というよりは、オンライン化がもたらす大きなメリットです。
さらに言えば、改ざんが難しくなる、といった文書管理上のメリットもあるでしょう。

(2)機動的な臨時取締役会も可能

物理的に、一堂に会することができなくても、必要に応じて、簡単に開催できます。
変化の激しい時代に、臨時取締役会の必要性は大きいはずです。

(3)取締役候補人材を広く考えることができる

遠隔地から取締役会に参加できることが、将来の取締役候補人材を、広く考えることができます。
遠隔地の取締役、海外のキーパーソン、多忙な社外取締役候補等です。

さらに言えば、家事・育児に追われる女性取締役候補、病気治療中の方、障害者等も取締役候補になりうるのです。
日本の取締役一般のイメージ(仕事一筋の中高年男性)と全く異なる人材です。
まさしく、ダイバーシティです。

取締役会のリモート開催で先行している会社は、多忙な人材でも、取締役就任の依頼をしやすくなるでしょう。
現在は、社外取締役の奪い合いになっています。
こんな時こそ、他社に先んじて、取締役会のリモート開催に取り組むべきです。

4、新しい試みには、専門家の法的なチェックが必須

新しい試みには、専門家の法的なチェックが必須

このような取締役会のリモート開催には、様々な可能性があります。

一方で、万が一、手続不備で、取締役が出席と認められないとか、取締役会決議が無効になったり、対立する取締役の間での紛争が生じたら、取り返しがつかないことになります。

企業法務に詳しい弁護士に、法的な問題も、技術的な問題も、丁寧にチェックしてもらうことが必須です。

まとめ

「取締役会のリモート開催」は、技術的な対応策にとどまる問題ではありません。
上述の通り、会社経営の新しい未来を拓くものです。18速やかに着手し、先手を取っていくべきでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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