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【厳選】コンプライアンス違反の事例15選!危機管理と防止策を徹底解説

2021年11月19日
【厳選】コンプライアンス違反の事例15選!危機管理と防止策を徹底解説

目次

近年多くの、企業におけるコンプライアンス違反事例が報道され、コンプライアンスについてしっかり理解したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、「コンプライアンスの概念や適切な対処法」が分からないとお困りのこともあるかと思います。
そこで今回は、

  • コンプライアンスの意味や重視される背景
  • 企業のコンプライアンス違反事例
  • コンプライアンス違反への対処法や防止策

等について、ご説明したいと思います。ご参考になれば幸いです。

[nlink url=”https://best-legal.jp/compliance-meaning-26636/”]

1、コンプライアンス違反事例を知る前に|コンプライアンスとは

(1)コンプライアンスの意味

コンプライアンス(compliance)の語義は、受けいれること、迎合、人のよさ、親切などで、従順な対応を表現する言葉です。

「法令遵守」は、「Legal Compliance」と表現される場合もあれば、「compliance」だけで法令遵守の意味を持つ場合もあります。

今日、我が国では、カタカナの外来語として、後者の意味で用いられることが多いようです。

(2)コンプライアンスが注目される背景

コンプライアンスが法令遵守の意味であるならば、特殊な概念ではありません。どんな時代でも、社会のあらゆる場面で、法に従うことは要求されてきたのであり、ことさら取り上げるまでもありません。

しかしながら、今日では、コンプライアンスという言葉は、特に、企業・職場における法令遵守という文脈で注視されています。

何故でしょうか。

それは、近年、有名な米国エンロン事件に代表される世界的な企業不祥事が多発し、世界経済に多大な悪影響を与えたこと、そしてこれに対処し、再発を防止するための方策として、コーポレート・ガバナンス(企業統治)、インターナル・コントロール(内部統制)の概念が提唱され、米国のみならず、我が国の法制(会社法、金融商品取引法)にも取り入れられたことから、企業における法令遵守体制の構築に、とりわけ注目が集まるに至ったからです。

(3)拡大するコンプライアンス

今日では、コンプライアンス違反は、法令違反だけにとどまらず、社内ルール違反、企業モラル違反の意味にまで拡大しています。

法令に違反していなくとも、何らかのルール、社会倫理に反していることが、企業外に漏洩すると、直ちに、コンプライアンス違反のニュースとして報道されてしまい、社会的批判を受けます。

こうなると、消費者や取引先からの信用失墜の危険があり、築いてきた企業価値が失われ、業績悪化にとどまらず、事業継続そのものが困難となるケースも多発しています。

まさに、現在では、コンプライアンス保持は、企業のリスク回避の問題として、経営の最重要課題のひとつとなっているといえます。

以下では、コンプライアンス違反の具体的な事例をあげていきます。

2、粉飾決算などの不正会計

(1)先代経営者の不正会計が、社長交代で発覚したケース

2016(平成28)年10月、昭和25年創業の金属専門商社である藤崎金属株式会社が、東京地裁から破産開始決定を受けました。

同社は、自動車産業向け製品を主力とし、ピーク時には、売上高約50億円を誇っていましたが、リーマン・ショック後の経済環境の変化に対応しきれず、低迷し、かろうじて黒字を維持してきました。

ところが、2015(平成27)年、二代目社長の急死によって、その長女が三代目社長に就任すると、それまで不正な会計処理が行われていたことが発覚しました。

仕入れの決済を翌期に回したり、在庫の商品価値を過大評価するなどして、虚偽の黒字を維持してきたのです。

新社長の体制下で、不正をただして赤字を計上し、金融機関及び取引先に事実を説明して、支援を求めました。

しかし、理解を得ることはできず、破産申立に至りました。

このような不正会計の例は枚挙にいとまがありません。一流といわれた企業においても多発してきました。

山一證券株式会社やカネボウ株式会社は、粉飾決算のあげく、倒産しました。

オリンパス株式会社は、旧経営陣が逮捕、起訴されて有罪判決を受けたうえ、株主代表訴訟の判決で、会社に対し約586億円という巨額の賠償金を支払うことを命じられました。

経営陣は、業績低迷の事実を隠すことが、対外的信用を維持し、株主のみならず従業員も含めた「会社を守る」ことになるという意識を持ちがちです。

しかし、会計の不正は、市場からの資金調達を原則とする株式会社制度に対する信頼を根本から否定する行為であって、発覚したときには、強い社会的非難を受けるだけでなく、違法配当罪(5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、又はこれを併科)や、特別背任罪(10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科)などの重い刑事罰を受けます。

(2) 赤字を隠蔽し続け、海外旅行先の顧客をトラブルに巻き込んだケース

2017(平成29)年3月、格安ツアーを販売する旅行会社である株式会社てるみくらぶが、東京地裁に破産申立を行いました。

同社は、2016(平成28)年9月時点で、約75億円の債務超過に陥っていたにもかかわらず、これを隠蔽して、破産申立の直前まで営業を続けました。

この結果、同社を通じて宿泊代などの旅行費用を支払い済みであったにもかかわらず、渡航先の海外ホテルで代金を請求されるなど、数万人もの旅行者に被害が生じたとされています。

同社は、決算書の数値を操作して赤字の実態を隠し、提出先別に複数の決算書を作成していたとも報じられています。

このように、財務悪化の実態を隠したまま企業活動を遂行することは、被害者を拡大してしまう危険があります。

代表取締役、取締役は、その不適法な業務執行で会社外の第三者に損害を生じさせたときは、故意又は重過失がある限り、賠償責任を負います。

本件では、ツアー料金を支払い済みであったのに、現地で費用を請求された顧客らから、代表者個人に対する損害賠償請求がなされる可能性もあります。

被害者は約9万人、被害総額99億円にものぼるという報道もあり、動向が注目されます。

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3、偽装事件

(1)東洋ゴム事件 免震ゴムの性能を偽装

2015(平成27)年3月、自動車タイヤなどを主力とする東洋ゴム工業株式会社が製造・販売した建築用の免震ゴム部品に、性能データーなどの偽装があったと、国土交通省が発表しました。

同製品は、地方自治体の庁舎、各地のマンションや病院の建設に用いられており、性能不足の製品約2900基が全国約150棟に使用されていました。

大阪地検特捜部は、不正競争防止法違反の罪で、同社の製造子会社である東洋ゴム化工品株式会社を起訴しました。

公判では、検査の数値を偽って、同製品につき、不正に国土交通大臣からの認定を取得していたこと、生産部門から社長らに不正が報告されたにもかかわらず、出荷を続け、性能検査では虚偽の数値で合格判定をしていたことなどが指摘されました。

本件で適用された、不正競争防止法の虚偽表示(品質を誤認させる表示)は、個人であれば5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれを併科され、法人であれば3億円以下の罰金となる犯罪です。

さらに、ある商品の性能を偽った結果、顧客が購入した場合、代金を騙し取ったのですから、詐欺罪(10年以下の懲役刑)が適用されることもあり得るのです。

このような偽装行為は、真実を秘匿する点では、不正会計と共通しますが、その企業が販売している商品自体の欠陥を偽っているという点で、より深刻です。

いわば、偽物を販売していたわけで、顧客からの信用はゼロになってしまいかねません。

(2)船場吉兆事件 期限切れ食品、食品産地偽装、食品使い回し

思い出すのは、船場吉兆事件です。2007(平成19)年、高級料亭船場吉兆が、賞味期限切れ食品を販売していたことが発覚しました。

これを端緒として、産地を偽装して販売したり、あろうことか食べ残しを使い回していたことが、次々と発覚し、廃業を余儀なくされました。

(3)三菱自動車事件 リコール隠し、燃費データー偽装

商品の偽装という点では、三菱自動車工業株式会社の一連の事件もあります。

同社は、2000(平成12)年と2004(平成16)年に、リコールにつながる車両の不具合を届け出ず、2002(平成14)年、2件の死亡事故が発生しました。

関係者らは、リコール隠しにつき道路運送車両法違反、2件の死亡事故につき業務上過失致死傷罪で、いずれも有罪判決を受けました。

次いで、2005年(平成17年)には、エンジンオイル漏れの不具合を把握したにもかかわらず、リコールを届け出るまで5年以上かかり、国土交通省から立入検査を受け、改善指示を受けました。

さらには、2016(平成28年)には、軽自動車の燃費を実際よりも良い数値として、虚偽のデーターを国土交通省に提出していたことが発覚しました。

同年10月、同社は、とうとう日産・ルノーグループの傘下となって再建を目指すことになったことは記憶に新しいことです。

4、不正受給

(1)震災関連の助成金を不正に受給

2016(平成28)年11月、事業用大型プリンターの製造・販売を主力とする株式会社ルキオは、福島県南相馬市に工場を新設するにあたり、社長自らが、納入業者に虚偽の書類作成を指示して機械代等の購入費用を水増請求させ、「ふくしま産業復興企業立地補助金」を不正に受け取ったことが発覚しました。

福島県と南相馬市は、補助金計6億2700万円の返還を命令するとともに、詐欺などの容疑で、福島県警に告訴、告発する方針を示しました。

信用が悪化した同社は、資金繰りに窮し、2017(平成29)年3月、約20億円の負債を抱えて、事業を停止しました。

(2)介護報酬を不正に受給

サービス付き高齢者向け住宅を主力としていた株式会社エヌ・ビー・ラボが、2017(平成29)年3月、東京地裁から破産開始決定を受けました。

同社は、約114施設を展開し、社員数約800名を誇っていました。

ところが、埼玉県で経営していた訪問介護事業所において、介護報酬を水増し請求していたことなどが発覚し、約700万円を不正受給したとして、2016(平成28)年8月、介護保険施設の指定の取り消しを受けました。

これによって、信用が悪化した同社は、施設を全て他社に引き継ぎ、負債約14億円を残して破産申立を行いました。

これらの補助金や介護報酬、診療報酬などを不正に取得する行為は、最悪、詐欺罪となり、懲役10年の刑罰を受けます。

また、国が支給する補助金については、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の適用もあり、詐欺にあたらない場合でも、不正の手段により補助金等の交付を受けた場合は、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又は併科に処せられます。

5、労働環境

(1)過労死 女性新入社員が自殺

2017(平成29)年9月、大手広告代理店株式会社電通が、2015(平成27)年10月から同年12月の間、従業員4人に対し、労使間協定(36協定)で定めた1カ月の残業時間の上限を最大で約19時間超えて働かせ、違法残業をさせたとして労働基準法違反で、東京簡裁に略式起訴されました。

この事件では、2015(平成27)年、新入社員の女性が過労死自殺しており、東京簡裁は、事件の社会的影響を考慮してか、略式起訴を不相当として、通常の公判手続を行い、被告人株式会社電通の社長が出廷しました。

冒頭陳述では、2014(平成26)年度には、全社で毎月1400人前後にものぼる従業員が、労使間協定の上限を超える違法残業をしたと指摘されました。

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(2)賃金の未払いで、経営者が逮捕

2017(平成29)年9月、彦根労働基準監督署は、木造建築工事業者の代表取締役の男性を逮捕し、法人としての同社を書類送検したと発表しました。

容疑は、従業員2人の3ヶ月分の給与計約80万円を支払わなかった最低賃金法違反の疑いです。

同法違反容疑での逮捕は珍しく、出頭要請に応じず、逃亡・証拠隠滅の可能性があったとされています。

これらの労働条件に関する法律違反は、従来、ほとんど事件として立件されてきませんでした。

違法残業は、労働基準法違反により、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金刑があり、賃金不払いも、同法違反で、30万円以下の罰金刑が規定されています。

また、最低賃金法違反は、50万円以下の罰金刑が規定されています。法律に規定されているのに、事実上、放置されてきたのです。

しかし、いわゆるブラック企業に対する社会的批判が広く浸透したように、労働条件に対する国民の意識は変化しています。

たとえ、その企業の製品、サービスの内容が良かろうとも、それが従業員の労働環境を犠牲にして成り立っているものであれば、もはや消費者からの支持は得られません。

労基署等、行政側の対応も厳しいものに傾斜してきました。労働法遵守、労働環境の整備は、コンプライアンスの第一項目となっています。

6、食品の衛生管理に問題があったケース

(1)不二家事件

2007(平成19)年、洋菓子製造販売の株式会社不二家が、社内規程の賞味期限を過ぎた牛乳を使用してシュークリームを製造していたことが内部告発され、報道された結果、それ以外の食品衛生管理の不備も判明し、製造販売の休止を余儀なくされ、大阪府所在の工場が保健所から食品衛生法に基づく業務改善命令を受けました。

(2)食中毒で多数の死者

2011年4月、富山県などで焼肉チェーンレストラン等を20店鋪展開していた株式会社フーズ・フォーラスの複数の店鋪において、ユッケなど生肉を食べた客100人以上が食中毒となり、うち5人が死亡しました。

富山県は、県内の2店舗に対し、無期限の営業禁止処分を下し、これを受けて、株式会社フーズ・フォーラスは、全店舗の営業を停止し、その後、営業を再開することなく廃業しました。

同社の社長と、生肉の卸業者の役員は、業務上過失致死傷罪の疑いで書類送検されましたが、事件当時、集団食中毒を引き起こした大腸菌が強い毒素を持つとは知られておらず、事件を予見できなかったとして、2名とも嫌疑不十分で不起訴処分とされました。

最悪の事態に至ったものの、刑事事件としては、立件されませんでした。

しかし、当時、厚生労働省が通知していた、菌が付きやすい生肉の表面を削るトリミングを実施していなかったことが明らかとなっており、事件後、生食用牛肉のトリミングは義務化され違反には罰則が科されるようになり、牛と豚のレバーなどの生食用の提供や販売が禁止されるようになりました。

7、個人情報の流出

2014(平成26)年、通信教育、出版事業の株式会社ベネッセコーポレーションの3500万件にのぼる膨大な顧客情報が不正に持ち出されていたことが発覚しました。

同社がシステムの保守を委託していた会社の派遣従業員が、データーを持ち出し、売却していたものでした。

ベネッセは、被害者でもありましたが、見舞金の支出や顧客の流出などで、大幅な赤字に転落しました。

これと同様の事態は、今日では、どの事業所でも起こる可能性があります。

パソコンやメディアの持ち出し禁止、ウィルス感染対策の徹底など、身近なルールを守ることが重要です。

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8、著作権侵害

2001(平成13)年、大手司法試験予備校を経営する株式会社東京リーガルマインドが、社内で組織的にソフトウェアの不正コピーを行っていたとして、アップルコンピューター、アドビシステム、マイクロソフトに対する著作権侵害を理由として、8400万円以上もの損害賠償を命じられました。

最終的に今後の社内コンプライアンスを徹底することなどを内容とする和解が東京高裁で成立しました。

本件は、会社ぐるみの組織的行為とされましたが、職場内で同僚からソフトウェアをコピーさせてもらう行為も、間違いなく著作権法違反行為なのです。

著作権法違反は、犯罪行為であり、刑事告訴されれば、個人では10年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金又はその併科を、法人の場合、3億円の罰金を受ける可能性まであるのです。

9、景品表示法違反

フリーテルのブランド名で格安SIMを販売する通信業者プラスワン・マーケティング株式会社が、2017(平成29)年4月、消費者庁から、「業界最速の通信速度」、「SIM販売シェアNo・1」等との表示に合理的根拠がなく、消費者の誤認を生じさせる危険がある表示であることなどを指摘され、景品表示法違反を理由として、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令を受けました。

これを受けて、同社は、この事実を公表し、その表示内容を訂正する公告を行いました。

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10、出資法違反

科学雑誌「ニュートン」の出版元である株式会社ニュートンプレスは、2017(平成29)年2月、民事再生法の適用を裁判所に申請しました。

同社と同社の関連会社でデジタル教材開発会社である株式会社ニュートンは、デジタル教材の開発資金として、金融機関のみならず、個人からも資金を借り入れしていましたが、教材の販売が目論見どおりにゆかず、資金繰りに窮しました。

そこで、株式会社ニュートンプレスは、金融機関ら債権者と協議し、債権計画を詰めてきましたが、株式会社ニュートンの前社長らが、雑誌の定期購読者らから違法に資金を募ったとして、出資法違反で逮捕されてしまいました。

このため、株式会社ニュートンプレスは、債権者との任意協議による経営再建を断念し、裁判所の監督下に再生を目指すべく、民事再生法の申立を行ったものです。

逮捕された元社長は、懲役2年、罰金100万円、執行猶予3年の有罪判決を受けました。

出資法違反の起訴事実は、元本保証と年5%の利息を約束して出資を勧誘したというもので、融資の申込であれば何らの違法性もなかったものの、出資として勧誘してしまったために違法行為(法定刑は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科)となってしまったものです。

11、コンプライアンス違反への対処(危機管理)

コンプライアンス違反が明らかになった場合、企業はどのように対処するべきなのでしょうか。

(1)危機管理はスピードが命

まず、違反の存在を把握したならば、外部に発覚していない段階から、危機管理の事態がスタートしたことを認識するべきです。

情報をコントロールし切れず、対応の準備が整わないうちに、外部に情報が漏れることは避けなくてはなりません。

事実を正確に把握し、違反事実が重大か否かを判定できなくては、公表すべきかどうかの判断もできません。

トップ主導で、調査チームを立ち上げ、事実関係を調査します。初動調査は何よりもスピードが求められます。

結果が判明する前に、社会に発覚すれば、隠蔽を疑われます。調査中でしたという言い訳は、簡単には信じてもらえません。

外部から指摘される以前に、自ら公表することが最も重要なのです。

(2)まず謝罪を先行させるべき

一旦、事実を公表したら、次は、マスコミ対策です。我が国で求められるのは、まず謝罪です。

真実の相手は、マスコミではありません。

その背後には、株主、顧客、取引先、膨大な消費者が控えているのです。彼らは、事実よりも、まず頭を下げる姿勢を求めます。

例えば、仮に不祥事ではあるが、法令には違反していないという場合、それを強調することは逆効果です。

法律論は、世間には理解できませんし、関心もありません。

法的主張を過度に控える必要はありませんが、それは弁護士に任せ、法廷や捜査機関、監督庁とのやりとりの中でこそ行うべきことで、マスコミの前で、前面に押し出すことは得策ではないのです。

(3)自ら積極的に事実の発信を

謝罪の次に、詳細な事実説明です。マスコミとその背後の世間は、情報を欲しているのです。

断片的な情報は、より猜疑心を生み、逆効果です。自ら積極的に、細かい経過を説明してゆくことが重要です。

事実を調査し、今後の再発防止策を考えて、対策を講じてゆく。その問題をひとつひとつ克服してゆく行動を外部に発信し続けることが一番大切です。

取り戻したいのは、社会からの信用です。信用されるべく努力している姿を見てもらえなくては、信用されるはずがありません。

また、自ら詳細な事実を発信してゆくことは、ネットなどの無責任な書き込み、憶測にもとづくマスコミの記事による風評被害を防止する意味でも、とても重要です。

(4)関係者の処分は慎重に行うべき

さらに、違反行為の関係者の処分です。これも、法的責任とは別次元のこととして、要求されます。

代表取締役はじめ役員は退任するのか、役員報酬の減額にとどめるのか、法的観点よりも、世間や株主の目をにらんで決める必要があります。

他方、関与した従業員に対する処分は、対外的には、社会へのけじめであっても、社内的には、従業員に対する懲戒権の行使であり、軽々に結論を出せるものではありません。

当の従業員が処分に納得しない場合は、新たな紛争となり、さらに企業イメージを低下させかねません。

特に、違反行為が会社ぐるみであったとき、幹部の保身のために、トカゲの尻尾切りが行われるならば、社内の士気にもかかわり、再生が難しくなります。

調査委員会を設け、外部の弁護士など公正な立場の第三者を招き、慎重に判断してもらう必要があります。

(5)業務再開の目安は?

対外的な対応と並んで、営業の自粛も必要な場合があるでしょう。

その再開は、いつにするべきか。比喩的に言えば、再発防止策が整い、それをきちんと社会に説明できるレベルになった段階と言えましょう。

つまり、問題点を全て洗い出し、質問を受けても、その対策について、即答できる準備が全て整ったときです。

仮に、被害者らとの賠償責任問題、監督庁からの処分問題、あるいは刑事責任問題が解決済みでなくても、それは再開の障害となりません。

なぜなら、それらは結論が出ていなくとも、いずれ決着がつく公的ルートに乗っているからです(したがって、被害者側とは訴訟となっているか、弁護士を窓口として交渉を開始していなくてはなりません)。

12、コンプライアンス違反の防止策

コンプライアンス違反の防止策は、3つの柱からなります。

第1にトップの姿勢、第2にチーム体制、第3にルールの明確化です。

(1)違反を許さない強い決意をトップが示す

まず、最も重要なのは、経営トップが、コンプライアンス違反は許さないという揺るぎない決意を示すことです。

どのような施策を行おうとも、それが対外的なポーズに終始し、本音では、ルールよりも目先の利益を求めていると従業員に思われてしまえば、違反を許容する企業風土の改善は望めません。

コンプライアンス保持が、企業価値を守り、株主を守り、従業員の生活を守るものであること、したがって、利益追求とコンプライアンス保持は、車の両輪であることを、トップが力強く宣言し、従業員の意識を変える必要があります。

(2)コンプライアンス保持の専門チームを設置

次にチーム体制です。

従業員に、コンプライアンス保持をやかましく言うだけで、あとは個々人の判断に委ねてしまったのでは、精神論を伝えたに過ぎず、何らの効果も望めません。

必ず、コンプライアンス保持を担当する部署を設ける必要があります。

大きな組織ならば、外部の弁護士を参加させることが望ましいですが、人員に余裕がなければ、兼任体制でも良いでしょう。

コンプライアンス担当チームは、重要な役割ですから、名ばかりのものにならないよう、できれば社長直属として、通常のラインからは独立した部署とすることが望ましいでしょう。

コンプライアンス担当チームは、社内ルールの作成の統括、コンプライアンス関連文書の管理、コンプライアンス教育の計画と実施の統括、従業員からの相談、報告の受付など、コンプライアンスに関する業務を総合して担当します。

(3)社内ルールの策定とメンテナンス

最後に、ルールの明確化です。

まず、関連法令の管理です。
法令については、業務に関連する法令とその資料を集約し、従業員がすぐにアクセスできるよう、コンプライアンス担当チームが情報を管理します。

次に、業界の独自ルール、社内のローカルルールの明確化です。

各事業所、各部署において、生じ得る違反リスクの洗い出しを行い、これを明文の社内ルール化し、従業員教育を通じて、これを徹底します。

これらも、コンプライアンス担当チームが統括します。こうして出来上がったルールは、いわば企業を守るための財産とも言えます。

一度、作成して終わりではありません。常に、ルールのメンテナンスを行うことによって、より実効性のある規範となってゆくのです。

そのためにも、各部署から、問題となった事例を報告させ、コンプライアンス担当チームが集約してゆく必要があります。

まとめ

コンプライアンス違反について、基本的知識を理解していただけたと思います。

今日、企業は利益追求するだけの存在ではなく、社会の重要な構成員としての社会的責任を果たすことが求められています。

コンプライアンス保持は、利益獲得と並ぶ企業活動そのものとなったと言っても過言ではないでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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