
「離婚することになったので慰謝料請求をしたい。弁護士に頼みたいけれど、弁護士費用が高そうだな……」
このように慰謝料請求時の弁護士費用の相場感を知らずに見込みが持てない方が少なくないと思います。
単に離婚するだけなら夫婦間の話し合いだけで済むことも多々ありますが、慰謝料請求をするとなると、専門的な知識がなければ適切な金額を獲得するのは難しいものです。
そのため、離婚の慰謝料請求は弁護士に依頼するのが有効ですが、弁護士費用がかかってしまうのも事実です。
せっかく慰謝料を獲得できても、費用倒れの状況になってしまっては意味がありません。
そこで今回は、
- 離婚慰謝料請求の弁護士費用の相場
- 弁護士費用を払ってでも慰謝料請求を依頼するメリット
- 離婚慰謝料請求の弁護士費用を抑える方法
などについて解説していきます。
その他にも、弁護士費用で損しないために良い弁護士の選び方もご紹介します。
慰謝料請求時の弁護士費用の相場を知るだけでも、自分に合う弁護士を見つけるヒントとなります。
この記事が、離婚の慰謝料請求を弁護士に頼みたいけれど弁護士費用が気になって躊躇している方の手助けとなれば幸いです。
目次
1、離婚の慰謝料請求にかかる弁護士費用は一律ではない!
まず知っておいていただきたいのは、離婚の慰謝料請求を依頼する場合に限りませんが、弁護士費用は一律に決まっているわけではないということです。
かつては、日本弁護士連合会と各地の弁護士会が定めていた報酬規程によって弁護士費用が規制されていましたが、平成16年に報酬規程が廃止され、弁護士費用は自由化されました。
現在では、法律事務所ごとに独自の料金体系が定められています。
それなら、良い弁護士に依頼するためには、やはり高い弁護士費用が必要になるのでは……と思われるかもしれませんが、そうとも限りません。むしろ、相場よりも大幅に高い料金を請求するような事務所は利益のみを追求している可能性があり、弁護士の能力が料金に比例して高いというわけではないのです。概して、実績が豊富な事務所ほど、多くの相談者・依頼者にとって利用しやすい料金体系を用意しているので、リーズナブルな費用で依頼できることが多いものです。
いずれにせよ、離婚の慰謝料請求で弁護士に依頼するときには、事務所選びによってコスパが左右されるということを知っておきましょう。
2、離婚慰謝料請求の弁護士費用の内訳と相場は?
それでは、離婚の慰謝料請求にかかる弁護士費用の相場をご紹介します。
ひと口に弁護士費用といってもさまざまな費目がありますので、それぞれについて解説していきます。
(1)離婚と慰謝料請求の両方を依頼する場合
これから離婚する人の場合は、離婚問題そのものの解決と慰謝料請求の両方を一緒に依頼するのが一般的です。
この場合、弁護士費用が2倍かかるのかというと、必ずしもそうではありません。
多くの事務所では、慰謝料請求の着手金は離婚事件の着手金の中に含まれ、報酬金のみ離婚事件と慰謝料請求とで別々に計算して請求しています。
ただ、事務所によっては着手金も離婚事件と慰謝料請求とで別々に請求するところもあります。
以下の表で、離婚事件と慰謝料請求それぞれの弁護士費用の相場をまとめましたので、参考になさってください。
【離婚事件の弁護士費用の相場】
依頼内容および費目 | 料金の相場(税別) |
【法律相談料】 | 30分につき5,000円 |
【交渉事件および調停事件】 |
|
着手金
| 20万円~50万円 交渉事件に引き続き調停事件を依頼する場合は、さらに上記の額の2分の1 |
報酬金 | 20万円~50万円 |
【訴訟事件】 |
|
着手金
| 30万円~60万円 交渉事件に引き続き調停事件を依頼する場合は上記の額の2分の1 |
報酬金 | 30万円~60万円 |
【日当】 |
|
半日(往復2時間~4時間) | 3万円~5万円 |
1日(往復4時間超え) | 5万円~10万円 |
【実費】 | 交渉事件・調停事件の場合は数千円~数万円程度。 公正証書を作成する場合や訴訟事件の場合は5万円~10万円程度かかる場合あり。 |
上記の金額は、あくまでも目安としてお考えください。
法律相談料は初回無料としている事務所も多いですが、原則は有料です。無料相談を希望する場合は、必ず相談前にご確認ください。
【慰謝料請求の弁護士費用の相場】
慰謝料請求の弁護士費用のうち、「法律相談料」「日当」「実費」については上記の離婚事件の場合と同様です。
着手金と報酬金については、「経済的利益の額」に一定の割合をかけて算出するのが一般的です。
経済的利益の額とは、慰謝料請求の場合、弁護士に依頼することによって得られる慰謝料額を指します。
着手金については請求額、報酬金については実際に回収できた金額をベースとして計算します。
それぞれの相場を表にまとめると、いかのようになります。
経済的利益の額 | 着手金(税別) | 報酬金(税別) |
300万円以下 | 8%(最低10万円) | 16% |
300万円超え3,000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3,000万円超え3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
(2)離婚後に慰謝料請求のみを依頼する場合
すでに離婚した人が元配偶者に対する慰謝料請求のみを依頼する場合は、上記の弁護士費用のうち慰謝料請求の部分のみが必要となります。
そのため、離婚事件と一緒に依頼する場合よりは弁護士費用の負担が軽くなります。
しかし、だからといって、これから離婚する人が先に離婚を成立させて、慰謝料請求のみを弁護士に依頼することはおすすめできません。なぜなら、離婚を成立させてしまうと、それで相手方の目的が達成されてしまって慰謝料請求に任意には応じなくなり、慰謝料の回収が難しくなるケースが多いからです。
それに、離婚する際には慰謝料の他にも財産分与、親権、養育費、年金分割など、他にも適切に取り決めなければならない事項がいくつもあります。
安易に離婚を成立させると離婚後の生活が苦しくなり、後悔してしまう可能性があるので、これから離婚する方は離婚問題と慰謝料請求とをセットで弁護士に相談することをおすすめします。
(3)離婚原因によって弁護士費用の相場が異なる?
慰謝料請求の弁護士費用の金額は、先ほどご説明したように「経済的利益の額」に応じて異なります。
つまり、請求する慰謝料の金額によって異なるということです。
そして、離婚慰謝料の金額は、離婚原因によって相場が異なります。
主な離婚原因ごとの慰謝料の相場は、以下のようになっています。
離婚原因 | 慰謝料額の相場 |
不倫・浮気 | 数十万円~300万円程度 |
DV・モラハラ | 数十万円~300万円程度 |
悪意の遺棄 | 数十万円~200万円程度 |
セックスレス | 数十万円~100万円程度 |
上記の金額を参考に、まずは自分が請求したい金額を決めて、上記(1)でご紹介した着手金・報酬金の表に当てはめてみると、おおよその弁護士費用が分かります。
3、実際に慰謝料請求でかかる弁護士費用のシミュレーション
慰謝料請求の弁護士費用についてより具体的にイメージしていただくために、いくつかの例を挙げて実際に弁護士費用を計算してみましょう。
(1)協議離婚で慰謝料を獲得できたケース
まず、弁護士に離婚協議を依頼し、協議離婚が成立して慰謝料200万円を獲得した場合の弁護士費用は以下のようになります。
①法律相談料:0円
初回相談料無料の事務所を選べば、法律相談料はかかりません。
②着手金:30万円
着手金の相場は20万円~50万円ですが、このケースでは事案の内容がさほど複雑ではなかったので低額となり、ただ慰謝料請求をすることから30万円と定められました。
③報酬金:52万円
報酬金は、無事離婚が成立したことに対する報酬金20万円と、慰謝料200万円を獲得したことに対する報酬金32万円の合計52万円となりました。
④日当:0円
弁護士の事件処理に際して、特に長時間の出張等は必要なかったので、日当は請求されませんでした。
⑤実費:3,000円程度
実費は郵送料等のみで3,000円程度でした。
結局、このケースで弁護士費用の総額は約82万円(+消費税)となり、獲得した慰謝料の中から支払っても十分に利益を確保することができました。
(2)調停離婚で慰謝料を獲得できたケース
次は、弁護士に離婚調停を依頼し、慰謝料200万円を獲得したケースです。
①法律相談料:0円
上記のケースと同様、無料相談を利用したので法律相談料は0円でした。
②着手金:30万円
離婚調停を依頼する場合は、離婚協議を依頼する場合よりも着手金は高額になるのが一般的ですが、このケースでは慰謝料を獲得できるかどうか不安な事情があっため、着手金は30万円に抑えられました。
③報酬金:52万円
報酬金は、上記の協議離婚のケースと同様、合計52万円となりました。
④日当:9万円
このケースでは調停期日が3回開かれ、いずれも弁護士が2時間以上同席しましたので、合計で9万円の日当がかかりました。
⑤実費:1万円程度
郵送料等のほか、調停の申し立て費用や必要書類の取得費用などで約1万円の実費がかかりました。
このケースで弁護士費用の総額は約92万円(+消費税)となり、やはり十分な利益を確保できました。
(3)裁判離婚で慰謝料を獲得できたケース
次のケースは、最初に離婚調停を依頼したものの不成立となり、続けて離婚裁判を依頼して慰謝料300万円を獲得したケースです。
①法律相談料:0円
このケースでも無料相談を利用したので、法律相談料はかかりませんでした。
②着手金:45万円
着手金は調停を依頼する際に30万円、裁判を依頼する際にさらにその半額の15万円が必要となり、合計で45万円となりました。
③報酬金:78万円
報酬金は、離婚事件の報酬金30万円と、300万円の慰謝料を回収したことによる報酬金48万円の合計で78万円となりました。
④日当:15万円
このケースでは調停期日3回に加えて、裁判における証人尋問期日と本人尋問期日の合計5回、弁護士が2時間を超えて出廷しましたので、合計で15万円の日当がかかりました。
⑤実費:3万円程度
郵送料等や必要書類の取得費用、調停の申し立て費用のほか、裁判を起こす際の印紙代等で合計約3万円の実費がかかりました。
このケースで弁護士費用の総額は約141万円(+消費税)となりましたが、やはり十分な利益を確保できました。
(4)離婚後に慰謝料を獲得できたケース
最後は、すでに離婚した人が慰謝料請求のみを弁護士に依頼し、裁判の結果、200万円の慰謝料を獲得できたケースです。
①法律相談料:0円
このケースでも無料相談を利用したので、法律相談料はかかりませんでした。
②着手金:16万円
慰謝料の請求額が200万円ですので、着手金はその8%の16万円となりました。
③報酬金:32万円
裁判で勝訴し、200万円の慰謝料を回収できたので、報酬金はその16%の32万円となりました。
④日当:6万円
このケースでは、裁判における証人尋問期日と本人尋問期日の合計2回、弁護士が2時間を超えて出廷しましたので、合計で6万円の日当がかかりました。
⑤実費:2万円程度
郵送料等や必要書類の取得費用、裁判を起こす際の印紙代等で合計約2万円の実費がかかりました。
このケースで弁護士費用の総額は約50万円(+消費税)となりましたが、依頼者は十分な利益を確保できたといえるでしょう。
4、弁護士費用を支払ってでも慰謝料請求を依頼するメリット
以上の弁護士費用を高いと見るか、低いと見るかは人それぞれかもしれませんが、それなりの費用がかかってしまうのは事実です。
しかし、慰謝料を請求するなら、弁護士費用を支払ってでも弁護士に依頼した方が最終的なメリットは大きくなるケースが多いものです。その理由は、以下のとおりです。
(1)あなたの味方として相手方との交渉を代行してもらえる
相手方と意見が食い違う場合、話し合いで高額の慰謝料を獲得するためには高度な交渉力が要求されます。
弁護士はあなただけの味方として、法的根拠を持って相手方との交渉を代行してくれます。
あなたは自分で相手方と直接やりとりをする必要はありませんので、交渉に時間や労力をとられることはなくなりますし、精神的にも楽になるはずです。
(2)調停や裁判になっても全面的なサポートが受けられる
調停や裁判の手続きは複雑で、有利に進めるためには高度な専門知識も必要となります。
弁護士がついていれば、法律のプロとして複雑な手続きをすべて代行してくれますので、安心して任せることができます。
(3)高額な慰謝料の獲得が期待できる
何よりも、自分1人で戦うよりも、弁護士の力を借りた方が高額な慰謝料を獲得できる可能性が飛躍的に高まります。
慰謝料を請求するには証拠が重要ですが、1人で戦っていると、どのような証拠を用意すればよいのかも分からず、証拠の集め方も分からないことが多いでしょう。
その上に、相手方と交渉する際のポイントや、調停・裁判の起こし方、有利に進める方法など、分からないことだらけかもしれません。下手をすると裁判で負けてしまい、苦労したのに何も得られないということにもなりかねません。
その点、プロの弁護士に依頼すれば、証拠集めの段階からサポートが受けられますし、交渉・調停・裁判などはすべて、的確に進めてもらえるのです。
どれだけの慰謝料を獲得できるかはケースバイケースですが、弁護士費用を払っても余りある利益を確保できるよう、弁護士が戦ってくれます。
5、離婚慰謝料請求の弁護士費用を抑える方法
弁護士に依頼することで慰謝料請求を有利に進めることが期待できるとしても、なるべくなら弁護士費用は低く抑えたいところでしょう。
弁護士費用を抑えるためには、以下の方法があります。
(1)安価な料金体系の法律事務所を探す
前記「1」でご説明したように、弁護士費用は自由化されていますので、料金体系は事務所によってまちまちです。
そこでまずは、インターネットで検索するなどして、安価な料金体系の法律事務所を探すのがおすすめです。
ただし、料金が安すぎる弁護士は経験が浅いなどのケースもありますので、前記「2」でご紹介した相場の範囲内で探す方が無難といえます。
(2)着手金無料の法律事務所を探す
手持ちのお金に不安がある方は、着手金無料の法律事務所を選べば、初期費用なしで依頼することができます。
慰謝料請求の事件については、「成功報酬制」といって、着手金無料で受任し、最終的に回収した慰謝料の中からすべての費用を精算するシステムを採用している事務所もあります。
気になる方は、インターネットなどで探してみるとよいでしょう。
(3)分割払いに対応している法律事務所を探す
着手金無料ではなくても、分割払いに対応している事務所は数多くあります。
ホームページに「分割払い可」と明示していなくても、個別に相談すれば分割払いに応じてくれるところも多いです。
着手金の分割払いを希望する場合は、相談の予約を取る際に確認しておきましょう。
(4)法テラスを利用する
弁護士費用を全体的に抑える方法として、法テラスの利用を検討するのもよいでしょう。
法テラスの「民事法律扶助制度」を利用できれば、相場よりも安価な料金で弁護士に慰謝料請求を依頼できる上に、弁護士費用は原則として月1万円ずつの分割払いとなります。
民事法律扶助制度を利用するには一定の条件を満たす必要がありますが、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
6、慰謝料請求の弁護士費用で損しないために!良い弁護士の選び方
弁護士に依頼する際には、弁護士費用の問題も大切ですが、何よりも良い弁護士を選ぶことが重要です。
弁護士選びで失敗すると、せっかく弁護士費用を支払っても満足できる結果が得られない可能性があるからです。
良い弁護士を選ぶためには、次の3つのポイント意識して弁護士を探しましょう。
(1)慰謝料獲得の実績が豊富な弁護士を探す
弁護士を選ぶ際に最も重要なことは、依頼する事件の解決実績がどの程度あるのかという点です。弁護士といえども得意分野・不得意分野が必ずありますので、すべての弁護士が慰謝料請求を得意としているわけではありません。
慰謝料請求を依頼するなら、慰謝料獲得の実績が豊富にある弁護士を探しましょう。
探し方は、やはりインターネットで検索するのが便利です。事務所のホームページに実績が掲載されている場合もありますし、そうでなくても、離婚慰謝料の問題に関するコラム等を豊富に掲載している事務所なら、慰謝料請求に力を入れていると判断できます。
(2)複数の弁護士に相談して比較する
弁護士は数多くいますし、実績や得意分野・不得意分野もそれぞれ異なります。1人の弁護士にだけ相談して良い弁護士に当たるとは限りませんので、できる限り複数の弁護士に相談してみて比較するのがおすすめです。
そのためには、実績が豊富な事務所の中から無料相談を受け付けているところをいくつかピックアップして、実際に相談してみるのがよいでしょう。
(3)相性の良い弁護士を選ぶ
最終的に弁護士を選ぶ際には、自分と相性が合うかどうかという点も重要となります。
弁護士は、あなたの悩みの解決のために一緒に戦うパートナーです。
そのパートナーと相性が合わなければストレスがたまります。スムーズに意思疎通ができなければ、結果に悪影響が及ぶおそれもあります。
相性の良い弁護士とは、ひとことで言うと「話しやすい」弁護士ともいえます。相談の際にあなたの話をじっくりと聞き、解決方針についてはあなたの希望を尊重しつつ一緒に考え、熱意を持って活動してくれる弁護士が「相性の良い弁護士」といえるでしょう。
複数の弁護士に実際に相談してみて、その中から最も相性が良いと思える弁護士を選ぶようにしましょう。
まとめ
ベリーベスト法律事務所では、初回相談は60分まで無料で受け付けています。
着手金・報酬金についても、相場よりもリーズナブルな料金体系を用意しています。
「離婚専門チーム」に所属している経験豊富な弁護士があなたのお悩みをお聞きし、最善の解決策を一緒に考え、戦っていきます。
離婚慰謝料請求の弁護士費用が気になる方は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。