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著作権侵害とは?文章や画像を引用・転載するルールを解説

2022年10月21日
著作権侵害とは?文章や画像を引用・転載するルールを解説

他人が作成した文章や画像、いわゆる著作物を利用したい場合、その著作権者の「許諾」が必要です。

しかし、著作権法上、「引用」「転載」であれば、この「許諾」は不要になります。

この「引用」「転載」をするには、どのようなルールがあるのでしょうか。正しくそのルールを理解しないと、結局著作権侵害になってしまいかねません。

そこで今回は、知らぬ間に著作権法に違反をしてトラブルにならないように、文章や画像の引用や転載についてまとめておきます。ぜひ参考にしてみて下さい。

1、著作権の引用を知る前に〜そもそも著作権侵害とならない場合

著作権の引用を知る前に〜そもそも著作権侵害とならない場合

著作権は、著作者が著作物から生ずる経済的利益を確保するための権利です。この著作権保護のために作られているのが著作権法です。

なお、以下で著作権法の条文を引用する場合には単に「法」と記載します。

(1)著作権保護対象とならない場合

そもそも引用・転載の対象が著作権法上保護されるものではない場合にはその引用や転載は問題にはなりません

その主なものは次のようなものです。

  1. 創作性のない表現(法2条1項1号)
  2. 事実の伝達に過ぎない雑報および時事の報道(法10条2項)
  3. プログラム言語、プログラムにおける規約(プロトコル、インターフェイス)および解法(アルゴリズム)(法10条3項)
  4. 法律、通達、裁判所の判決など(法13条)
  5. 著作者の死後70年以上経過した著作物(法51条2項)
  6. 公表後70年を経過した映画の著作物(法54条)
  7. 思想、感情に当たらない情報それ自体(例:実験データ、時刻表・料金表、レストランのメニュー)
  8. アイデア(例:推理小説のトリック)

これらのものには著作権法上の保護が及びませんので、引用・転載をしても問題はありません。

ただし、1. の創作性の有無などについては解釈上問題になる場合もあり得ますので注意が必要です。

(2)権利者の承認を得ている場合

著作権は著作物の創作者の権利を保護するためのものですから、引用や転載に関してその権利者自身の承認があれば引用・転載を行っても問題がないことは当然です。

もちろん、引用や転載の範囲は権利者が承認した範囲内に限られます。

2、引用が許される場合

引用が許される場合

権利者の許諾がなくても著作物の引用が許される場合があり、著作権法32条1項にこれに関する規定が置かれています。

引用とは、自分の著作物に他人の著作物の一部を取り上げて利用することですが、著作権法上、引用が許されるのは次のすべての要件を満たす場合です。

  1. 「既に公表されている著作物」であること
  2. 「公正な慣行」に合致すること
  3. 報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
  4. 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
  5. 引用部分が明確になっていること(明瞭区別性)
  6. 引用を行う「必然性」があること
  7. 「出所の明示」があること

以下に、それぞれの要件について簡単に説明します。

(1)既に公表されている著作物であること

「公表」は法4条(法3条も参照のこと)で定義されていますが、要は出版・放送等されていることです。したがって、いまだ出版されていないメモの段階の原稿や個人間の手紙などは引用はできません

(2)公正な慣行に合致すること

「公正な慣行に合致する」とは何かは明確な定義はありませんが、判例は上の④~⑥の要件がある場合にこれに当たるとしていることが多いようです。

(3)報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること

この要件も明確な定義はありませんが、裁判例では、この正当な範囲内の意義につき、「引用の目的上正当な範囲内とは、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり、具体的には、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない。」としているものがあります(大阪地裁平成25年7月16日判決)。

引用の目的に照らして、引用に必然性・必要性があり(⑥)、引用の分量や引用個所が適切であり、引用部分が明確に区別されているなどの条件を満たす必要があるでしょう。

(4)引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること

条文にはこのような規定はありませんが、判例はこれを要件としています。引用者の著作物が主であり、引用部分が従であるという関係があることです。

ただし、この主従関係は必ずしも量のみで判断されるものではなく、質的な関係でも判断されます。たとえ引用部分の量の方が多い場合であっても、引用の目的にとって必要なのであれば主従関係にあるものとみることができます。

(5)引用部分が明確になっていること(明瞭区別性)

これも判例が述べる要件で、要は、カギ括弧や段落分け、フォントを変えるなどの方法により、引用部分がはっきり区別できる状態にしてあることです。

(6)引用を行う「必然性」があること

判例はこれを独自の要件としているわけではないようですが、②や③の要件の判断に際し、引用を行う必然性があることに言及することがあります。

(7)「出所の明示」があること

引用をする場合には、引用者には著作物の出所を明示する義務が課されています(法48条)。なお、正確には出所の明示は引用の要件ではなく、出所を明示しなかったとしても著作権侵害になるものではありませんが、後記のとおり義務違反に対する罰則があります。

また、判例はこの要件を②の公正な慣行に合致することの一要素としているものもありますので、引用の際には出所を明示しておかないと引用の要件を満たさしていないと判断されることがあります。

具体的には、引用部分の著作者名、著作物名、出版社名、掲載ページなどを表示する必要があります。

3、引用の示し方

引用の示し方

イメージが湧きにくいでしょうから、具体的な書き方を以下に示しますね。上述の引用の条件は、文化庁のウェブページにも記載されていますので、これを引用します。


著作物の無断利用ができる引用の条件は、次のとおりである。

  • 著作物の無断利用ができる引用の条件は、次のとおりである。
  • 既に公表されている著作物であること
  • 「公正な慣行」に合致すること
  • 報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
  • 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
  • カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
  • 引用を行う「必然性」があること
  • 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

出典:文化庁「著作権なるほど質問箱


と、このように示します。

4、画像は著作権のほか肖像権とパブリシティ権も侵害しないように注意

画像は著作権のほか肖像権とパブリシティ権も侵害しないように注意

他人が写っている画像や映像を利用しようとする場合には、著作権だけではなく、肖像権・パブリシティ権の侵害にも注意する必要があります。

(1)肖像権とは

人が自分の肖像について有する利益のことを肖像権といいます。噛み砕いていうと、顔や身体など自分の容姿を他人に無断で利用されない権利のことと言っていいでしょう。

もともと法律に規定された権利ではありませんでしたが、人格権の一つとして判例上認められた権利です。

肖像権が侵害された場合、例えば無断で自分の姿が写った映像や画像が公表された場合には、損害賠償請求の対象となり、また公表の差止めを請求することもできます。

著作権は画像などの作成者に帰属することになりますが、肖像権や次に述べるパブリシティ権は撮影対象者(画像などに写っている人)に帰属する権利です。

他人が写った画像などを使用することが直ちに肖像権侵害となるというわけではなく、撮影の状況、内容、目的や使用の態様などさまざまな要素に基づいて肖像権の侵害があったと言えるかは判断されることになりますが、やはり他人が写った画像等の扱いには十分に注意する必要があります

(2)パブリシティ権とは

パブリシティ権とは、芸能人やスポーツ選手などの著名人が持つ、自身の肖像や氏名などから生ずる経済的な利益のことを言います。肖像権と同様、法律上に規定のある権利ではありませんが、判例で認められた権利です。

肖像権と似た権利ですが、著名人の経済的利益保護のための権利であり財産権的性質を持つという点で、純粋な人格権である肖像権とは異なるものといえます。

パブリシティ権の侵害に関し、最高裁判所は、顧客吸引力を有する者の肖像等の無断使用であっても正当な表現行為等として受忍されるべき場合もあるとしつつ、もっぱら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合にはパブリシティ権の侵害となると判断しています(最高裁平成24年2月2日判決。ピンク・レディー事件)。

このパブリシティ権も肖像権と同様に、侵害された場合には損害賠償や差止め請求の対象となりますので、著名人の画像等の使用にも注意が必要です。

5、転載が許される場合

転載が許される場合

先ほど述べた「引用」以外に著作者の許諾なしに著作物を利用できる場合として、「転載」(法32条2項、39条)があります。

転載とは、国や自治体などが作成した広報・調査統計資料、報告書などや、新聞・雑誌に掲載された政治・経済・社会上の時事問題に関する論説について、著作者の承諾なく他のメディアに掲載することです。

官公庁の資料を広く利用できる、または迅速な報道に接することができるという国民の利益のために特別に認められているもので、転載が許される著作物の対象は上に挙げた2種類のものに限定されています

転載には引用のような厳しい要件はありませんが、著作権者が転載を禁ずることを表示しているときは転載は認められませんし、出所を明示する義務があることは引用の場合と同様です。

6、著作権を侵害してしまった場合

著作権を侵害してしまった場合

(1)著作権者等からの民事上の請求

著作権を侵害された著作権者等権利者は侵害者に対して下記のような民事上の請求をすることができます。

①侵害行為の差止請求

著作権を侵害された、もしくは侵害されるおそれのある権利者は、その侵害の停止・予防を請求することができます(法112条)。この場合、相手方に故意・過失がある必要はなく、単に著作権の侵害または侵害のおそれがあれば差止請求をすることができます

②損害賠償の請求

権利者は、著作権の侵害行為をした者に故意・過失がある場合には、発生した損害について賠償を求めることができます

③不当利得の返還請求

著作権の侵害行為によって侵害者が利益を得た場合には、その利益は法律上の原因がないのに得た利益(不当利得)ということになり、権利者はその利益の返還を請求することができます(民法703条)

④名誉回復等の措置の請求

権利者は、著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)が侵害された場合には、名誉回復措置(謝罪広告など)を取るよう請求することができます(法115条)。これは損害賠償の請求と並行して請求することもできます。

(2)著作権法違反の罰則

著作権法に違反すると、民事的な請求のほか、刑事罰を科されることになります。

著作権の侵害をした者は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられ、懲役と罰金がともに科されることもあります(法119条)。

また、法人や個人事業の代表者や従業員がその法人や個人事業主の業務に関して侵害を行った場合には、行為者とともに処罰されます(法124条。両罰規定)。

この場合、個人事業主は上記の処罰、法人は3億円以下の罰金を科されます。

また、引用・転載に当たり出所を明示しなかった場合には、50万円以下の罰金に科されます(法122条。両罰規定あり)。

意外かもしれませんが、著作権法違反に対する刑事罰はこのように大変厳しいものになっています。十分に注意しなければなりません。

まとめ

インターネットが発達し、自分名義・自社名義での情報発信が簡単になった反面、それに伴う著作権侵害などのリスクも冒されやすくなっています。

著作権侵害は民事的にも刑事的にもかなりリスクの高いものです。安易に他人が作成した著作物を無断で利用すると、思わぬ結果を招きかねません。

本記事を参考にしていただき、他人の文章や画像などを利用する際には十分な注意を払って下さい。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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