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新型コロナで商業施設のテナントが休業する場合の家賃減額請求の可否

2021年2月4日
新型コロナで商業施設のテナントが休業する場合の家賃減額請求の可否

新型コロナの感染拡大を受けて、出店していた商業施設内のお店を休業せざるを得ない場合、家賃を減額請求できるのでしょうか?

商業施設のテナントを借りている場合、当然ですが貸主に対して家賃を支払わなければなりません。
休業によって収入が絶たれた借主にとって家賃の負担は重く、事業の存続に関わる重大な問題となっています。既に未払いとなった家賃の支払いについて貸主と交渉中の借主もいれば、営業を再開したものの客足が戻らず、今後の家賃の支払いが厳しいという借主もいることでしょう。

新型コロナによる生活様式は、2021年1月には再び緊急事態宣言が発出され、同年2月現在、未だ継続しています。

そこで今回は、

  • 新型コロナの緊急事態宣言を受けて休業した場合に商業施設テナント家賃の減免請求は可能か
  • 新型コロナの緊急事態宣言解除後の商業施設家賃の減免請求は認められるか

といった問題について、商業施設が休館した場合・休館しなかった場合に分けて解説していきます。
休業中の家賃を支払えなかった方や、家賃の負担が苦しいために事業の継続に悩んでいる方のお役に立つことができれば幸いです。

1、新型コロナで商業施設のテナントが休業する3つのパターン

新型コロナで商業施設のテナントが休業する3つのパターン

新型コロナの影響で商業施設のテナントが休業した場合に家賃の減免を請求できるかどうかについては、休業が不可抗力といえるかどうかが大きく関わってきます。
どのテナントも休業したくて休業したわけではないはずですが、休業した状況によっては不可抗力とはいえないケースもあります。

そこでまずは、新型コロナで商業施設のテナントが休業するケースを3つのパターンに分けてみましょう。

(1)商業施設の休館によりテナントも休業するケース

まず1つめは、商業施設そのものが休館したために、その施設内に出店しているテナントも休業せざるを得なかったケースです。緊急事態宣言の発出後、多くの都道府県では知事からの休業要請を受けて、床面積1,000㎡を超える商業施設が休館しました。
休業要請の対象とならなかった商業施設でも、新型コロナの感染拡大防止のために自主的に休館した商業施設も少なくありません。
商業施設が休館した以上、必然的にテナントも休業を余儀なくされました。

(2)休業要請を受けてテナントが休業するケース

2つめは、商業施設そのものは休館しなかったものの、テナントが知事からの休業要請を受けて休業したケースです。映画館やスポーツクラブ、ヨガスタジオ、ゲームセンター、ネットカフェなど商業施設内のテナントも業種によっては休業要請の対象となりました。

休業要請に法的義務はないものの、応じなければ法的義務を伴う指示が出されることから、事実上は休業要請を受けて休業せざるを得ないのが実情です。

(3)テナントが自主的に休業するケース

3つめは、商業施設が休館せず、テナントも休業要請の対象とはなっていないものの、新型コロナの感染拡大防止のためにテナントの自主的判断で休業したケースです。
緊急事態宣言の発出中はテナントを営業しても客足が乏しいため、費用対効果の観点からも自主的休業に踏み切ったテナントもあったようです。

2、新型コロナで商業施設休業時の家賃の減額請求の可否について

新型コロナで商業施設休業時の家賃の減額請求の可否について

新型コロナで商業施設のテナントが休業するケースを3つのパターンに分けてみてきたところで、次に休業中の家賃の減額請求が可能かどうかを考えていきましょう。

3つのうちのどのパターンでも、まず第一に貸主との賃貸借契約書を確認する必要があります。

(1)賃貸借契約書に規定がある場合

商業施設のテナントを借りている場合、大手のデベロッパーと賃貸借契約を結んでいることがほとんどでしょう。
その場合、不可抗力によって賃貸借物件の使用収益ができなくなった場合の家賃の負担について規定があることが多いので、その文言を確認してください。
不可抗力の事由として、地震・台風・洪水・火災・伝染病などが例示されていることが多いと思われます。
新型コロナの感染拡大が例示されている不可抗力事由に該当すると判断される場合は、その規定に従って家賃の減免について判断されます。

例示されている不可抗力事由に該当すると判断できない場合は、次にご説明する賃貸借契約書に規定がない場合と同様に考えていきます。

(2)賃貸借契約書に規定がない場合

新型コロナの影響で商業施設が休館した場合の家賃の取り扱いについて賃貸借契約書に規定がない場合は、民法や借地借家法の原則に則って判断することになります。

大手デベロッパーとの賃貸借契約書にはほとんどの場合、不可抗力事由に関する規定がありますが、新型コロナの感染拡大が不可抗力事由に該当するかどうかを判断しづらいケースが多いと考えられます。
したがって、多くの場合で民法や借地借家法に則った判断が必要になるはずです。

以下、休業中のテナントの家賃について、民法や借地借家法に則ってどのように考えるべきかをご説明します。

なお、2020年4月1日から改正民法が施行されていますが、この記事では基本的に旧民法の規定に基づいて解説します。なぜなら、2020年3月31日までに締結された賃貸借契約については、4月1日以降も旧民法が適用されるため、現在問題となっている事案のほとんどは旧民法で解決すべき問題だからです。
もっとも、改正民法が適用されるケースでも基本的な考え方は同じであり、結論もほぼ異なることはありません。

3、新型コロナで商業施設が休館した場合のテナント家賃

新型コロナで商業施設が休館した場合のテナント家賃

まず、商業施設の休館に伴ってテナントも休業を余儀なくされた場合についてみていきましょう。

(1)テナント側は家賃の支払いを拒否できる

商業施設が休館すると、テナントは賃借物件を使用収益することができなくなります。
この場合、貸主が借主に使用収益させるという債務が不履行となります。
休館が「特措法」(新型インフルエンザ等対策特別措置法)に基づく休業要請や自治体による自粛要請を受けてのものである場合、通常は貸主・借主双方の責めに帰することができない事由による債務不履行に当たると考えられます。

この場合は、民法第536条1項に基づき、テナントは家賃の支払い義務を免れることになります。

(2)営業補償を請求できるか

休業要請を受けて商業施設が休館した場合は、貸主にとっても不可抗力による債務不履行といえます。
そのため、テナントが貸主に対して営業補償を請求することはできない可能性が高いと言えます。

ただし、休業要請の対象でない商業施設が自主的判断によって休館した場合は、貸主に責めに帰すべき事由による債務不履行に当たると判断される場合もあり得ます。
その場合は、テナントが貸主に営業補償を請求できる余地もあるでしょう。

このあたりは個別具体的な事情によって異なってきますので、判断に迷う場合は弁護士に相談してみましょう。

4、新型コロナで商業施設が休館しない場合のテナント家賃

新型コロナで商業施設が休館しない場合のテナント家賃

次に、商業施設は休館しないもののテナントが休業した場合についてご説明します。

(1)休業要請を受けてテナントが休業した場合

商業施設が休館していない場合は、上記の休館した場合と債権者・債務者の立場を逆にして考える必要があります。

商業施設は休館しない以上、賃貸物件を使用収益させるという貸主としての債務は履行していることになります。
この場合に、休業したテナントが家賃の支払いという反対債務の履行を拒むことができるかどうかが問題となります。

この点、金銭債務の支払い債務については、たとえ不可抗力による障害事由があったとしても拒むことはできないとされています(民法第419条3項)。
したがって、テナントはたとえ休業要請を受けて休業した場合であっても、家賃の支払いを拒むことはできません。

ただし、テナントとしては不可抗力によって賃借物件を使用収益できなかった以上、民法第611条1項に基づいて家賃の減額を請求できる余地はあります。
また、コロナ禍が長引いて近隣の家賃相場が下がった場合には借地借家法第32条1項に基づいて家賃の減額を請求できる可能性があります。

(2)テナントが自主休業した場合

商業施設が休館せず、テナントも休業要請を受けていない場合にテナントの自主的判断によって休業した場合は、テナントが家賃の減免を請求できる法的根拠はありません。
つまり、この場合はテナントは家賃の全額を支払う義務を負います。

家賃の支払いが厳しい場合、テナントとしては貸主との交渉によって減額や一時的な支払い猶予を求めるしかないでしょう。

ただし、国土交通省は2020年3月31日に不動産賃貸事業者に対して、新型コロナの影響で家賃の支払いが困難となったテナントに対しては、支払い猶予に応じるなど柔軟な措置をとることを検討するように要請しています。この要請に強制力はありませんが、テナントが大手デベロッパーと交渉する際にはある程度の根拠となるでしょう。

5、新型コロナの緊急事態宣言解除後も商業施設家賃の減額請求は可能か

新型コロナの緊急事態宣言解除後も商業施設家賃の減額請求は可能か

ここまでご説明してきたように、緊急事態宣言を受けての休業中の家賃については、テナントが支払いを拒んだり、減額を請求したりできる場合もあります。

しかし、緊急事態宣言は2020年5月25日に全面的に解除されました。

とはいえ、営業を再開しても客足が戻らないなどの理由で収益が回復せず、家賃の支払いがなお厳しい企業や店舗も多いことでしょう。
緊急事態宣言解除後に家賃の減額を請求することはできないのでしょうか。

(1)従前の家賃が不相当となった場合は減額請求が可能

まず、近隣の家賃相場が低下して従前の家賃が不相当となった場合は、借地借家法第32条1項に基づいて家賃の減額を請求することが可能です。
この規定は、さまざまな社会経済事情の変動などによって近隣同種の賃料と比較して不相当となったときに、将来に向かって家賃額の増減の請求を認めるものです。
緊急事態宣言の発出中の休業は一時的なものなので、この規定に基づいて休業中の家賃の減額を請求しても認められる可能性は極めて低いと考えられます。

しかし、コロナ禍が長引いて商業施設のテナントから撤退する企業や店舗が増えれば家賃相場が低下し、この規定に基づいて家賃の減額を請求されるケースが増えてくるでしょう。

(2)未払い家賃についても減免請求が可能

休業中に家賃を未払いにしてしまい、その支払いの目処が現在もついていない企業や店舗も少なくないことでしょう。
未払い家賃については、緊急事態宣言の解除後でも減免を請求することが可能です。

民法第536条1項では当事者双方の責めに帰することができない事由により貸主が使用収益させる債務を履行することができなかった場合は、反対給付である家賃の支払いを受ける権利を有しないとされています。
したがって、商業施設が休館したケースでは通常、家賃の支払いを拒むことができます。

(3)休業中に支払った家賃の返還請求が可能な場合もある

旧民法の第536条1項では、上記のとおり貸し主は反対給付である家賃の支払いを受ける権利を有しないこととされています。
したがって、休業中の家賃を既に支払ってしまった場合は、貸主に対して不当利得として返還を請求することができる可能性があります。

6、コロナ渦対策|テナント側は家賃の減額請求をしつつ支援制度も活用すべき

コロナ渦対策|テナント側は家賃の減額請求をしつつ支援制度も活用すべき

家賃の支払いが厳しくなったテナント側としては、貸主に減免請求をすることも大切ですが、同時に政府による支援制度を活用することも重要です。
なぜなら、状況によっては減免請求が認められないケースも多々ありますし、その場合は交渉によっても家賃の減額や支払い猶予に貸主が応じるとは限らないためです。

(1)政府による商業施設への対応

政府も、新型コロナの影響で家賃の支払いが困難となったテナントへの救済策については以前から検討を進めてきました。
前記「4(2)」でもご紹介しましたが、国土交通省は2020年3月31日に不動産賃貸事業者に対して、家賃の支払いが困難となったテナントに対して支払い猶予に応じるなど柔軟な措置をとることを検討するように要請しました。

ただし、この要請はあくまでも「お願い」に過ぎず、テナントからの家賃減額や支払い猶予の要求に対してどう対処するかは不動産の所有者の判断によります。
そこで、政府からの支援によってテナントが家賃を支払うことができれば、貸主・借主双方にとってベストな解決策となります。

(2)テナント側が活用できる支援制度

売り上げが大幅に減少した事業者の家賃の負担を軽減する「家賃支援給付金」の実施が盛り込まれた2020年度第2次補正予算が6月12日に成立しました。
一定の要件を満たせば、家賃の補助を受けることができます。

もっとも、それでも資金繰りが持たないおそれがある事業者は、既に実施されている「持続化給付金」の申請を検討しましょう。
持続化給付金は、新型コロナの影響により1ヶ月の売り上げが前年の同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小企業については200万円、個人事業主については100万円を上限として支給されるものです。
こちらも申請後に2週間程度の審査期間を要すると言われているので、要件に該当する場合は早めに申請しましょう。

まとめ

この記事では、商業施設のテナントが新型コロナの影響で休業した場合に家賃の減免を法的に請求できるかどうかという点を中心に解説してきました。
簡単に結論をおさらいすると、次のようになります。

  • 商業施設が休館した場合:家賃の支払いを拒める
  • テナントが休業要請を受けて休業した場合:家賃の減額を請求できる可能性がある
  • テナントが自主的に休業した場合:家賃の減免を請求できる法的権利はない

ただし、必ずしもこのとおりになるとは限らず、個別具体的な事情に応じて結論が異なるケースも少なくないはずです。
また、家賃の減額請求が認められるとしても、どの程度の減額が相当であるかの判断もケースバイケースとなります。
こういった判断を一般の方が適切に行うことは難しいため、専門知識を有する弁護士に相談することが得策です。

貸主との交渉がスムーズに進まない場合は、早めに弁護士に相談した方がよいでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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