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打切補償で労働者を解雇できる条件は?使用者が知っておくべきルール

打切補償で労働者を解雇できる条件は?使用者が知っておくべきルール

労働者が、業務上の理由による病気やけがで療養を余儀なくされた場合、療養による休業期間中は、使用者は労働者を解雇することができません。

しかし、あまりにも病気やけがが長引いた場合、稼働できない労働者をいつまでも雇い続けなければならないとすると、使用者にとって酷です。

そこで、労働基準法は「打切補償」という制度を設けて、使用者の救済を図っています。打切補償を行うことにより、使用者は労働者に対して、それ以降の補償打切りや解雇を行うことができるようになります。

この記事では、打切補償の要件・効果、労働者に対して支払わなければならない金額等について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

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1、打切補償とは?

まず、打切補償についての基本的な事項として、打切補償の意義と効果について見ていきましょう。

(1)打切補償の意義

打切補償は、業務上の病気やけがで療養中の労働者に対して、使用者が療養費を支払っているケースで、療養開始から3年経過しても負傷・疾病が治らない場合、使用者はその労働者の平均賃金の1200日分を支払うことで、労働者に対する療養費等の補償を終了することができる制度です(労働基準法第81条)。

労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合、使用者は療養に必要な費用を負担しなければならないとされています(労働基準法第75条第1項)。

しかし、療養があまりにも長期間に及んでしまう場合、負傷や疾病について使用者に責任があるとはいえ、いつまでも療養費を支払わなければならないとするのは使用者にとって酷でしょう。

上記を踏まえて、使用者と労働者の利害を調整するための制度として、「打切補償」の制度が設けられています。

(2)打切補償の効果

打切補償を行うことの効果には、大きく分けて、①療養費等の補償の打切りと、②解雇制限の解除の2つがあります。

療養費等の補償の打切りについてはすでに解説したとおりで、打切補償を行った後は、療養費を含む労働基準法に基づく補償を行わなくても良い旨が明記されています(労働基準法第81条)。

労働者が業務上負傷し、または疾病にかかって療養のために休業する場合には、休業期間およびその後30日間については、使用者は労働者を解雇することはできません(労働基準法第19条第1項本文)。

ただし、打切補償を行った場合には、例外的に労働者を解雇することができます(同項ただし書き)。

2、打切補償を行うことができる要件

打切補償を行うためには、以下の要件のすべてを満たすことが必要です。

(1)労働者が業務上の原因による病気やけがで療養中であること

病気やけがが業務上の原因に起因していることが必要となります。

逆に、業務外の原因による病気やけがの場合、打切補償を行うことはできません。

(2)使用者が治療費を負担している

打切補償は、あくまでも労働基準法第75条第1項の規定に従い、使用者が労働者の療養費を負担しているケースに限り認められます。

そのため、労働者が自腹で治療を行っている場合には、打切補償を行うことはできません。 

ただし、使用者による療養費負担の代わりに、労災保険の療養補償給付が行われている場合は、例外的に打切補償を行うことができます。

この点は後で解説します。

(3)療養開始から3年経過している

打切補償は、労働者が療養を開始してから3年が経過して、初めて行うことができます。

「3年」という期間は、使用者と労働者の利害を調整する妥協点として設定されているといえます。

労働者が業務によって負傷し、または疾病にかかった場合、その療養費を支払う責任は本来使用者にあります。

しかし、療養が完了するまでずっと療養費を支払い続ける義務を負わせるのは使用者に酷です。

このような観点を踏まえて、「3年経過」+平均賃金1200日分の打切補償を支払うことと引き換えに、使用者を補償義務から解放することとされたのです。

3、平均賃金1200日分に相当する打切補償金額の計算方法

労働基準法の規定に従った打切補償の金額を計算する方法について、具体例を用いて解説します。

(1)平均賃金とは

打切補償の金額は、「平均賃金の1200日分」とされています(労働基準法第81条)。

「平均賃金」とは、原則として、労働者が休業を開始する直前の賃金締め日からさかのぼって3か月間に支払われた給与の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます(労働基準法第12条第1項、第2項、第3項第1号)。

なお、臨時に支払われた賃金や、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)については、平均賃金の算定にあたって考慮されません(同条第4項)。

(2)打切補償金額の計算の具体例

それでは、以下の例を用いて、打切補償の金額を計算してみましょう。

<設例>

  • 2017年4月1日から療養により休業
  • 同年1月から3月までに支払われた賃金(ボーナス等を除く)の総額は、それぞれ40万円、45万円、50万円
  • 2020年4月1日をもって打切補償を決定

まず、打切補償を計算するための基礎となる平均賃金を算出します。

平均賃金

=休業開始前3か月間に支払われた賃金の総額÷その期間の総日数

=(40万円+45万円+50万円)÷(31日+28日+31日)

=1万5000円

この平均賃金を用いて、打切補償の金額を計算すると、以下のとおりとなります。

打切補償の金額

=平均賃金×1200日

=1万5000円×1200日

=1800万円

4、労働者が傷病補償年金の支払いを受けている場合

労働基準法第19条第1項本文により、業務上負傷し、または疾病にかかった労働者は、休業期間中およびその後30日間は解雇することができません。

休業期間中にかかる解雇制限を解除するためには、平均賃金1200日分の打切補償が必要となりますが、使用者にとっては非常に重い負担であることも事実です。 

しかし、もし労働者が傷病補償年金を受給している場合には、打切補償を支払うことなく、労働者を解雇できることがあります。

傷病補償年金とは、業務または通勤が原因となった負傷や疾病の療養開始後1年6か月が経過してもなお重篤な傷病が治っていない場合に、労働基準監督署長の職権により支給される年金です。

労働者災害補償保険法第19条により、療養開始後3年を経過した日以降に労働者が傷病補償年金を受けている場合には、打切補償の支払いを要することなく、労働者を解雇することが可能になります。

つまり、療養開始から3年後以降に労働者が傷病補償年金を受給していることが確認できれば、使用者は、打切補償の重い負担を免れたうえで、労働者を解雇することができます。

ただし、傷病保障年金は、労働者災害補償保険法施行規則に定められる傷病等級表に従い、傷病等級第3級以上の重篤な傷病に対してのみ支給される点に注意が必要です。

傷病補償年金の例外が適用できると使用者自身で判断して労働者を解雇した場合、後から要件を満たしていなかったことが判明すると、不当解雇の問題が発生してしまいます。

そうならないように、打切補償なしで労働者を解雇しようとする際には、事前に弁護士に相談することを強くおすすめします。

5、使用者が療養補償を支給していなくても打切補償は可能?

業務上負傷し、または疾病にかかった労働者に対しては、使用者が療養補償を行う義務があります(労働基準法第75条第1項)。

しかし、この療養補償は、実際には労災保険により賄われるケースも多いところです。

このような場合にも、打切補償を行うことは認められるのでしょうか。

(1)労働基準法第81条の文言上は明確でない

労働基準法第81条の規定上、使用者が打切補償を行うことができるのは、労働者が同法第75条の規定による補償を受けている場合、つまり使用者から療養補償を受けている場合である旨が定められています。

一方、労災保険から療養補償金が支払われた場合、形式的に見れば、使用者から労働者に対して直接療養補償が行われているわけではありません。

しかし、労災保険は使用者が加入している保険ですので、実質的には、使用者による療養補償が行われていると見ることもできます。

このように、労働基準法第81条の文言からは、労災保険から療養補償金が支払われている場合に打切補償を行うことができるかどうかは、必ずしも明確ではありません。

(2)労災による療養補償の場合も打切補償が可能|判例

この問題について規範を示したのが、「専修大学事件」と呼ばれている最高裁第二小法廷平成27年6月8日判決です。

同最判では、まさに労災から療養補償給付が行われている労働者に対して、打切補償による解雇が行われた事案が問題となりました。

最高裁は、労働基準法において使用者の義務とされている災害補償(療養補償)に代わるものとして、労災保険法に基づく保険給付が行われている場合には、使用者による災害補償(療養補償)が実質的に行われていると判示しました。

したがって、使用者自身で療養補償を行う場合と、労災による療養補償給付が行われている場合とで取扱いを異にすべきものとは言い難いとして、打切補償を行った上での解雇を適法と判断しました。

同最判により、労働者に対する療養補償が使用者自身により行われておらず、労災保険からの療養補償給付により行われている場合にも、打切補償を行えることが明らかとなりました。

6、打切補償と退職金・解雇予告手当の関係

打切補償を行った上で労働者を解雇するケースで、打切補償以外にも使用者による支払いが問題となるのが、退職金と解雇予告手当です。

結論からいうと、これらは打切補償とは別の制度なので、それぞれの支給要件に該当する場合には、打切補償とは別に、労働者に対して支払いを行う必要があります。

(1)退職金

退職金は、労働契約や就業規則、または社内規程のひとつである退職金規程等に基づいて支払われます。

これらの契約・社内規則等に従って、退職金の支給要件に該当する場合には、使用者は労働者に対して、打切補償とは別に、退職金を支払わなければなりません。

(2)解雇予告手当

労働基準法第20条第1項に基づき、使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、原則として少なくとも30日前に解雇の予告をしなければなりません。

解雇予告をしない場合には、使用者は労働者に対して、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。

解雇予告手当の支払い義務は、打切補償を行った上で労働者を解雇する場合にも同様に適用されます。

したがって、30日前の解雇予告を行わない場合には、使用者は労働者に対して、打切補償とは別途で解雇予告手当を支払う必要があります。

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まとめ

使用者の方が打切補償を行うことを検討する場合には、打切補償を行うための法律上の要件を満たしているかどうか、きちんと確認する必要があります。

もし打切補償の要件を満たしていないのに、独自の判断により打切補償を行い、労働者を解雇してしまうと、不当解雇として労働者から訴えられてしまうという事態になりかねません。

そのため、打切補償を行おうとする際には、労働法に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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