
離婚とは、結婚した夫婦が婚姻関係を解消して他人同士に戻ることです。
近年は夫婦の3組に1組が離婚する時代だと言われています。この記事をご覧になったあなたも、離婚したいと考えたことがあるかもしれませんね。
あるいは、パートナーから離婚を突きつけられてお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
夫婦のどちらかが離婚したいと思っても、結婚は法律で定められた制度ですので、勝手に離婚できるわけではありません。
離婚するとしても様々なことを決めなければなりませんし、実際に離婚するにはほとんどの場合、大変な苦労が伴うものです。
そこで今回は、
- 離婚できる場合とは
- 離婚時に決めるべきこと
- 離婚する方法
などについて、離婚事案の経験が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
離婚したいとお考えの方にとっても、離婚を突きつけられてお困りの方にとっても、この記事が手助けとなれば幸いです。
目次
1、離婚できるのはどんな場合?
冒頭でもご説明したとおり、離婚は勝手にできるものではありません。
離婚できるのは以下の事情がある場合です。
(1)相手と離婚の合意をしたとき
夫婦がお互いに離婚に合意すれば、自由に離婚できます。
2人の合意によって離婚することを「協議離婚」といいます。世間で離婚している夫婦の大半は協議離婚です。
(2)相手方に法定離婚事由がある場合
合意ができない場合でも、相手方に法定離婚事由がある場合は離婚できます。
法定離婚事由とは、強制的に離婚できる理由として法律で定められたものです。具体的には、民法第770条1項で以下の5つの事由が定められています。
自分に法定離婚事由がある場合、基本的には相手方からの離婚の求めがない限り、離婚は認められません。
ただし、自分にこれらの責任があるときでも、責任が生じたときに既に夫婦関係が破たんしいた場合には、自分からの離婚請求が認められることもあります。
2、なぜ離婚は「大変」なのか
離婚を考える人は多いですが、実際に離婚をする際には大変な苦労が伴います。
多くの離婚経験者が、「離婚には結婚よりも大きなエネルギーが必要だった」と、離婚の大変さを語っています。それほどに離婚が大変なのは、以下の理由があるからです。
(1)パートナー(家族)を失うから
いくら相手方のことが嫌いであっても、かつてはご自身がこの人と決めたパートナーであるはずです。
パートナーとは文字どおり人生の伴侶ですから、それを失うときに多大な喪失感を伴うものです。
(2)これまでの生活を一新せざるを得ないから
人間はほぼ「惰性」で生きていますから、日常生活を一新するのは基本的に苦痛なものです。
離婚すると家族構成が変わりますし、引越しや転職・就職が必要となる方も多いでしょう。日常生活がガラッと変わってしまいます。
結婚するときのようにポジティブに一新するときには突き進めるものですが、離婚は(したい側にとっても)ネガティブなものなので、日常生活を一新するのは苦痛以外の何ものでもないでしょう。
(3)子どもに迷惑をかけると思ってしまうから
自分が嫌いになったパートナーも、子どもにとってはかけがえのない父親(母親)です。
たとえ離婚がやむを得ないものであったとしても、子どもを「片親」の状態にしてしまうことに対しては、誰しも罪悪感を感じてしまうはずです。
また、離婚の際に親権者が引っ越すことに伴って子どもが転校を余儀なくされることもあります。
せっかく慣れ親しんだ学校や友達から子どもを引き離すことにも、罪悪感を感じてしまうでしょう。
(4)人(パートナー)を傷つけてしまうから
離婚するときには、パートナーに対する罪悪感も感じることも多いでしょう。
お互いに離婚を望んでいるのであればともかく、「別れたくない」と言う相手方と別れることは、たとえ相手方に法定離婚事由があるとしても辛いものです。
(5)人(パートナー)とうまくやれなかった自分を責めてしまうから
さらに、自分自身に対する罪悪感も持ってしまうのではないでしょうか。
離婚すると「バツイチ」というレッテルを貼られて、「我慢できない人」という印象を持たれることが多いようです。
この固定観念が自分自身に対しても向けられてしまい、自分を責めてしまう人も少なくありません。この人だと決めて結婚したにもかかわらず、良い夫婦関係を築けなかったのは自分の姓だと思ってしまうのです。
(6)パートナーとの交渉に精神的負担がかかる
離婚するときには、お金のことや子どものことなど、様々なことを取り決める必要があります。
しかし、そのための話し合いがスムーズに進まず、ストレスがたまることも多いです。
それでもお互いが冷静になって話し合える場合は、納得しつつ進めることができます。
しかし、どちらか(あるいは両方)が感情的になってしまうと、話し合いは思い通りに進みません。
離婚調停や裁判にまで発展してしまうと、その状態が何年も続くことがあります。
3、離婚での注意ポイントは婚姻期間や家族構成によって異なる
離婚するときに注意すべきポイントは、婚姻期間や家族構成によって以下のように異なります。
(1)子なし早期離婚のポイント
子どもがいない夫婦が比較的若い段階で離婚する場合は、財産分与はそれほど高額にならないことが多く、むしろ法律的な問題以外で離婚後の人生を考えることがメインとなります。
近年は夫婦の3組に1組が離婚する時代だとはいえ、「バツイチ」にマイナスイメージがあることは否定できません。今後の長い人生において「バツイチ」という社会的評価がつきまとうことは覚悟する必要があるでしょう。
別の人と再婚して新たにやり直したいと考える人が多いと思いますが、再婚する際に「バツイチ」がネックとなる可能性もあります。
関連記事(2)子あり早期離婚のポイント
子どもがいる夫婦が比較的若い段階で離婚する場合は、子どもの養育について考えることがメインとなります。
まずは、どちらが親権者になるのが子どもにとって望ましいのかをよく考えなければなりません。
また、子どもを養育するにはお金がかかりますので、養育費をきちんと取り決める必要がありますし、離婚後はひとり親家庭が受けられる支援制度も活用すべきでしょう。
お金の問題だけではなく、子どもが健全に成長するようにケアすることも重要です。
面会交流を適切に実施して、離婚後も2人で子育てができれば理想的です。
(3)熟年離婚のポイント
子どもが既に独立した中高年の夫婦が離婚する場合は、離婚後にどのようにして生計を立てるのかを考えることがメインとなります。
まだ働ける場合は働く方が望ましいですが、年齢的な理由や健康上の理由などで社会復帰が難しい場合もあるでしょう。
そのため、離婚の際に財産分与や年金分割を取り決めることによって、離婚後の生活費をできる限り確保することが重要です。
関連記事4、離婚時に夫婦で合意すべきこと
離婚する際には、様々な条件について夫婦で合意して取り決めなければなりません。
ここでは、どのような離婚条件について合意すればよいのかをご説明します。
(1)共通
どのようなケースでも共通して合意すべきことは「財産分与」です。
婚姻中に夫婦が共同して築いた財産は、離婚するときに分け合うこととされています。
財産を分け合う割合は、原則として2分の1ずつです。
夫婦は協力し合って生活するものですので、婚姻中に夫婦が取得した財産は、たとえどちらかの収入の中から購入したものであっても、基本的に夫婦共有財産となります。
専業主婦(夫)も家事労働によって夫婦共有財産の形成に貢献していますので、原則として2分の1の財産分与を請求できます。
なお、財産分与は基本的に離婚原因を問わず請求できますので、自分に法定離婚事由がある場合にも請求可能です。
関連記事(2)未成年の子どもがいる場合
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合は、以下のことを取り決める必要があります。
① 親権
婚姻中は夫婦が共同親権者ですが、離婚するときにはどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
お互いに親権を譲らないケースも多いですが、子どもの幸せを第一に考えて、どちらが親権者になるのが子どもにとって望ましいのかを話し合うべきです。
関連記事② 養育費
親権者が決まったら、非親権者が親権者に対して支払う養育費も取り決めます。
養育費の金額は、基本的に裁判所が公表している「養育費算定表」を参照して決めますが、個別の事情に応じて、子どもを養育するために適切な金額を割り出して話し合うべきです。
関連記事③ 面会交流
非親権者には、子どもと定期的に会って交流を図る「面会交流」を行う権利があります。
月に1~2回、それぞれ半日程度面会するのが相場的です。
子どもの成長にとっては両親の存在が大切なので、面会交流も適切に取り決めておきましょう。
ただ、ここでも第一に考えるべきことは子どもの幸せであり、子どもに過度の負担がかかるような頻度や方法による面会交流を取り決めることは望ましくありません。
関連記事(3)相手に法定離婚事由があった場合
相手方に法定離婚事由があった場合には、慰謝料を請求することができます。
慰謝料の金額はケースバイケースですが、「不貞行為」の場合は数十万円~300万円程度が相場です。
ただし、法定離婚事由の内容によっては少額にとどまるか、ほとんど請求できない場合もあることにご注意ください。
そもそも慰謝料とは相手方の不法行為によって受けた精神的損害に対して支払われる賠償金のことです。よくある性格の不一致も、どちらが悪いともいえない場合が一般的で、通常慰謝料は請求できません。
(4)妻(夫)が専業主婦(主夫)やパートだった場合
年金分割も財産分与と同じように、基本的に離婚原因を問わず請求できます。
ただし、分割できるのは厚生年金の部分だけであり、国民年金の部分は分割されません。
また、年金分割とは、婚姻期間に対応する年金の納付実績を一定の割合で分割するという制度です。そのため、年金分割をしても相手方に支給される年金の半額を受け取れるわけではないことにご注意ください。
年金分割を請求すべき主なケースは、夫婦のどちらかが給与所得者で、もう一方が専業主婦(夫)やパートだった場合です。
相手方が自営業者や個人事業主で、国民年金にしか加入していない場合には年金分割は請求できません。
また、自分も働いていて厚生年金に加入している場合には相手方からも年金分割を請求される可能性があります。
関連記事5、離婚する方法とその手順
次に、実際に離婚するための方法と、どのように手続きを進めればよいのかという手順についてご説明します。
(1)離婚協議をする
まずは、夫婦で話し合いを行います。
一方が「別れたくない」という場合は、まず離婚するかどうかをじっくり話し合う必要があります。
お互いが離婚に合意した場合は、前項でご紹介した離婚条件についての話し合いがメインとなります。
夫婦間での離婚に向けた話し合いのことを「離婚協議」といいます。
(2)離婚協議書を作成する
話し合いがまとまったら、合意内容を口約束で終わらせるのではなく、離婚協議書を作成しておくことが大切です。
離婚協議書は、公正証書で作成しておくのがおすすめです。
なぜなら、相手方が合意内容のとおりに金銭を支払わない場合に、公正証書があればすぐに相手方の財産を差し押さえることができるからです。
詳しくは、以下の記事を併せてご参照ください。
関連記事(3)話し合いがまとまらなければ離婚調停をする
夫婦間での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てることになります。
調停も話し合いの手続きですが、家庭裁判所の調停委員が中立公平な立場でアドバイスや説得を交えて進めてくれるので、夫婦だけで話し合うよりもまとまりやすくなります。
申し立て方法や調停を有利に進める方法について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
関連記事(4)調停もまとまらなければ離婚訴訟をする
調停もまとまらない場合は、離婚訴訟を提起することになります。
離婚訴訟では、当事者双方が提出した主張や証拠に基づいて下される判決によって決着がつきます。
そのため、自分の主張を裏づける証拠を提出することが非常に重要です。
訴訟の途中でも話し合いが行われ、和解が成立するケースも多いですが、有利な和解案を引き出すためにも有力な証拠を提出しておくことが大切です。
詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
関連記事(5)離婚届を提出する
協議離婚の場合、離婚届を提出することによって、法的に離婚が成立します。
調停や裁判で離婚する場合にも離婚届の提出が必要です。
ただし、その場合には署名・押印は提出する人の分だけでかまいません。
証人も不要です。
その代わりに、調停調書・判決書・和解調書のいずれかを離婚届と一緒に提出します。
詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
関連記事6、離婚を突きつけられても離婚したくない人が考えるべきこと
自分は別れたくないのにパートナーから離婚を突きつけられると、困ってしまうことでしょう。
そんなときは、以下の点について考えてみることです。
(1)相手方の本音を確認する
まずは、なぜパートナーが離婚したいというのかを正確に把握することです。
自分に法定離婚事由がある場合はわかりやすいかと思いますが、特段の原因が見当たらないケースもあるかと思います。
その場合、多くの人が「仕事が忙しくて家族の時間を持てなかった」「妻(夫)にかまってあげられなかった」と言います。
しかし、パートナーの本音は別のところにあるケースが非常に多いのです。
ほとんどの場合、本音を突き詰めていうと「私のことを考えてくれない」という点にあるものです。
そこを理解せずにただ家族で一緒にいる時間を増やしたとしても、事態を改善することは難しいでしょう。
パートナーに本音を尋ねても、わかりやすく答えてくれるとは限りません。本音を探るには、文字どおり、相手のことを真剣に考える必要があります。
簡単なことではないかもしれませんが、別れたくないのであれば、この姿勢は不可欠です。
(2)離婚ではなく別居を提案して様子を見る
自分の悪い点を反省して改善することを約束してもパートナーの意思が変わらない場合は、いきなり離婚するのではなく別居してみるのも良い方法です。
別居してみると、パートナーも冷静になって気が変わるかもしれませんし、自分も今後の対応策をじっくり考えることができるでしょう。
(3)専門家に相談する
別居したまま長期間が経過すると、そのこと自体が「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚が認められやすくなってしまいます。
そのため、復縁を望むならパートナーに対して適切に働きかける必要があります。
自分で働きかけても事態が改善しない場合は、専門家に相談した方がよいでしょう。夫婦の問題に詳しい専門のカウンセラーに相談すれば、良い方策が見つかる可能性もあります。
復縁の話し合いをする際には、弁護士などの専門家に間に入ってもらうのもよいでしょう。
その他、復縁するために有効な方策については以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。
関連記事(4)夫婦関係調整調停を申し立てる
復縁するために家庭裁判所の調停を利用することもできます。
一般的に「離婚調停」と呼ばれている手続きは、正式名称を「夫婦関係調整調停」といい、復縁する方向で話し合うためにも利用できるのです。
ここでも家庭裁判所の調停委員が中立公平な立場で話し合いを仲介してくれますので、申立人の言い分が正当なものであれば、調停委員がパートナーを説得してくれることも期待できます。
関連記事7、後悔しない離婚をするには弁護士へ相談を
離婚するにはパートナーとの交渉も大変ですし、様々な迷いもあるでしょう。
後悔しないためには、法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することによって以下のメリットが得られます。
(1)すべての手続きを任せられる
弁護士に依頼すれば、パートナーとの話し合いも、調停や裁判の手続きも、すべてを弁護士に任せることができます。
自分でパートナーと直接やりとりする必要はありませんし、複雑な手続きもすべて代わりにやってもらえるので、精神的に楽になります。
(2)有利な離婚条件を獲得できる
自分で対応する場合にはパートナーに押し切られたり、あるいは早く離婚したいために不利な離婚条件で泣き寝入りするケースが少なくありません。
しかし、弁護士に依頼すればその心配はありません。
正確な法律知識や相場に基づいて適切な離婚条件を検討してもらえますし、パートナーとの交渉や調停・裁判でも専門的なノウハウで対応してもらえます。
それによって、有利な離婚条件を獲得することが期待できます。
(3)最適な解決方法を提案してもらえる
離婚を考えるということは現在の結婚生活に問題があるということに他なりませんが、その解決方法は離婚だけではないかもしれません。
離婚問題に詳しい弁護士は、あらゆるケースを見てきていますので、柔軟な解決方法を提案することができます。
例えば、「まずは別居した方がスムーズに離婚しやすい」、「いきなり離婚するのではなく、夫婦で一定の取り決めをしてパートナーに誓約書を書かせる」など、現実的で効果的な解決方法が色々あるはずです。
離婚か修復かという二者択一ではなく、本当に望む解決が得られる可能性が高まるでしょう。
(4)離婚を回避することもできる
一方で、パートナーから離婚を突きつけられた人にとっても、弁護士への相談・依頼は有効です。
冒頭からご説明しているように、離婚は勝手にできるものではありません。感情的になって離婚を突きつけてくるパートナーに対しては、弁護士からの説得が有効です。
離婚問題に詳しい弁護士は修復の方法も知っていますので、まずは相談してみるとよいでしょう。
関連記事まとめ
離婚したい人も、離婚を突きつけられた人も、決着がつくまでは大変な思いをする可能性が高いです。
大変なときは、弁護士を味方につけることで楽になりますし、後悔のない選択をすることも可能になります。
ひとりで悩まず、まずは気軽に相談してみましょう。