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相手のうつ病を理由に離婚するために知っておくべき7つのこと

うつ病 離婚

現在パートナーがうつ病になり、離婚を考えていませんか?

うつ病の発病当初、心配して相手に気を配ったりされたことでしょう。
しかし、うつ病が悪化し、パートナーとの結婚生活が破綻してしまった場合には、離婚を考える方もいてもおかしくはありません。

今回は多くの離婚事件を解決してきたベリーベスト法律事務所の弁護士が、パートナーがうつ病になった方に向けて、

  • うつ病の場合に離婚できるか?
  • うつ病の相手と離婚する方法

など、精神病を理由に離婚するために知っておくべき7つのことをご紹介していきます。

自分だけで悩みを抱え込まずに、夫婦双方が幸せになるための参考になれば幸いです。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、うつ病での離婚の可否の前に知っておきたい!離婚できるケースとは?

うつ病での離婚の可否の前に知っておきたい!離婚できるケースとは?

パートナーの精神病で離婚は可能です(ただし重度の精神病である必要)。
民法770条1項4条にはっきりと「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」は離婚事由になると記載されているからです。

ポイントは、「強度」な精神病で「回復の見込みがない」ということ、つまりそれらを立証できれば裁判に発展したとしても、離婚が認められるというわけです。

そもそも離婚の種類としては基本的には、

の3種類が存在します。
うつ病などの精神病の有無にかかわらず、当事者間の合意で協議離婚・調停離婚は十分に可能です。
そのため、重篤なうつ病になっていない場合には、本人に意思能力があり、かつ本人が離婚に同意してさえいれば離婚できることになります。

しかし、問題は意思能力がない場合です。
精神病が「強度」な状態になればそれだけ意思能力が失われた状態と言えるでしょう。
この場合には、裁判離婚を行う方法しか道は残されていません。
代理人が勝手に離婚の意思を表明することも禁じられています。
こうなってしまうと法定離婚事由が必須となりますから、「強度」な精神病であること、「回復の見込みがない」、つまり「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」ことを証明する必要があるのです。

2、配偶者のうつ病を理由に離婚できるか?

先ほどもお伝えした通り、パートナーがうつ病でも話し合いで合意があれば協議離婚や調停離婚は可能です。

では、パートナーのうつ病を理由に裁判離婚できるのか?については、その症状や診断によります。
過去の判例を見てみると、躁うつ病が強度な精神病だと認められた事例は存在します。
ただし、「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」ことが証明されない限りは難しいケースかもしれません。

強度な精神病とは、統合失調症のことを裁判所では指しているケースが多いのが現実です。
統合失調症とは、昔でいう精神分裂病のこと、うつ病やアルツハイマー病では強度な精神病とは認められない判例が目立っています。
ただし、うつ病によって、夫がDVを行うケースや夫が働けなくなってしまった場合や、夫婦の営みがなくなってしまったケースなどでは「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法第770条1項5号)に相当するため、うつ病でも離婚できる可能性は高いといえるでしょう。

具体的にうつ病でも離婚できる条件を次の項目で説明していきます。

3、「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」とは?相手がうつ病の場合に裁判離婚するための具体的条件について

「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」とは?相手がうつ病の場合に裁判離婚するための具体的条件について

では、具体的にどのような精神病の症状があれば離婚できるのかを見ていきましょう。

精神病が、

  • 「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたる場合
  • うつ病などの精神病を発症したことによって婚姻の継続が難しい状態

の2つのケースが存在します。

(1)パートナーが「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたる場合 

「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたるかは、以下のような事情を裁判所が総合的に考慮して判断します。

  • 精神病の重さ→重いほど「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたりやすい
  • 精神病の治療期間→長いほど「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたりやすい
  • 精神病の治療への取り組みの程度→様々な治療方法を試したのに完治しない、という事情があれば「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたりやすくなります
  • 医師の診断結果の有無→医師が重症である旨の診断を下していると強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたりやすい
  • 離婚後の精神病患者のお世話ができる環境が整っていること→整っているほど離婚が認められやすい

①精神病の重さ

精神病が重いことが重要です

具体的には、「統合失調症」の精神病は「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたる可能性があります。

一方で以下の精神病は「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」と認めづらいとされています。

  • うつ病
  • アルコール中毒
  • 薬物中毒

②治療が長期間に渡っていること

回復の見込みがない状態であるかは、病気を発症してからの期間も裁判所では重視されます。
発症して間もないケースではうつ病が回復する可能性もまだ高いと判断されることでしょう。

うつ病は必ずしも不治の病というわけではありません。
原因を取り除いたり、環境を変えることで快方に向かう可能性もある病です。
そのため、長期間に渡って治療を行っているのかどうかは大事な判断材料になります。 

③精神病の治療への取り組みの程度

強度の精神病にかかり回復の見込みがない」と言えるためには、精神病の患者本人が十分に治療に取り組んだのに治癒しない、という事情が必要となります。

加えてパートナー側の努力も必要となります。
パートナーがこれまでにどれほど尽力し、心を込めて看病をしてきたのかも大事な条件です。
何もせずにただ「うつ病の夫が嫌いだ」と主張したところで裁判所では離婚を認めてはくれません。

大切なことは、回復させようと努力したのかどうかです。
きちんと通院し、治療を施し、それでも快方に向かわない場合には、裁判所では「回復の見込みがない」ものだと判断します。

④医師の診断結果の有無 

当然ながら医師の診断書も重視されます。
しっかり通院させていたのか、回復の見込みがないのか、などの医師の診断書が必要です。
もしも離婚を決意したなら、きちんとうつ病が強度であることなどを記載してもらいましょう。
ただし、医師の診断書だけで判断されるわけではないことを念頭に入れておいてください。 

⑤離婚後の精神病患者のお世話ができる環境が整っている場合

実は、うつ病で離婚する場合には、大事な条件があります。
それは、離婚が成立した後のうつ病患者の社会で生きていく能力の有無です。
うつ病患者と離婚した後にその患者の面倒を見る人が存在するのか、金銭面でも、精神面でも生活面でもサポートできる人がいるのかが大きな条件になってきます。
裁判所では離婚を正当だと認めてしまった場合には、その後の患者の社会性を考える必要があるからです。
具体的にはパートナーの両親や親戚などがしっかりケアできるのかどうかということ、裁判所では精神病患者を社会に放り投げるわけにはいかないのです。 

(2)うつ病などの精神病の発症によって婚姻の継続がしがたい重大な事由がある場合 

残念ながら、上記のような「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」と言えない場合には、うつ病だけの理由では離婚は難しいかもしれません。

しかし、諦めるのはまだ早いです。
うつ病が発症したことによって、他に、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があれば離婚を成立させることができます。
働かず家計を支えない、暴力を振るうなど、何か離婚の原因になることがあれば裁判所は離婚させてくれる可能性が高いでしょう。

4、それでもやはり離婚したいのであれば!うつ病の相手と話し合いで離婚する方法

それでもやはり離婚したいのであれば!うつ病の相手と話し合いで離婚する方法

うつ病で離婚するための条件を確認した上で、

  • 「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」にあたる場合
  • うつ病などの精神病を発症したことによって婚姻の継続が難しい状態

のいずれにもあたらない場合、それでもやはり離婚したいのであれば、パートナーを説得する必要があります。

ここでは具体的な説得方法を紹介していきます。

(1)離婚後の生活プランを具体的に提示する

うつ病患者が離婚に合意しない理由は主に、離婚後の生活に不安を感じるからかもしれません。
本人もあなたに迷惑をかけていることは重々承知しているはずですよね。
そのため、離婚後のケアを両親がしっかりしてくれることなどを具体的に説明すれば納得してくれる可能性が高まります。

(2)慰謝料の交渉で離婚に合意する可能性も 

うつ病が原因であなたにDVなどを行っていたケースでは、慰謝料の請求も可能です。
しかし、離婚の意志が固く、とにかく離婚してくれればそれでいいと感じている場合には慰謝料の放棄を訴えることで夫は離婚に合意してくれる可能性があります。

ただし、うつ病の原因が、あなたにある場合には逆に慰謝料を請求される可能性もあります。
状況を判断して交渉するようにしてくださいね。

(3)子どもに会える頻度などを設定することで離婚の意志が芽生える可能性も 

離婚に合意しない原因が子どもの養育などに関することなのであれば、離婚後も子どもに会えるように取り計らうなどの具体的な提案をすることで離婚に合意してくれるかもしれません。
うつ病はとにかく不安を抱えている状態になっているものです。
そのため、不安要素をできるだけ取り除く説得方法を試みてみましょう。

(4)証拠を揃えて交渉する

うつ病が原因で夫が浮気をした、DVを行ったなどの場合には、しっかり物証を抑えましょう。
証拠があるということは裁判に発展すると勝訴するのはあなたです。
そのことを夫に訴えることで、夫は離婚に合意する可能性が高まります。

(5)裁判のデメリットを説明する

夫が協議離婚に応じないケースでは家庭裁判所での調停離婚や裁判離婚に発展します。
昨今では、電話会議システムでの調停離婚も認められるようになりました。
ですが、裁判離婚では裁判所に1年程度出向く必要があります。
仕事を行っているケースでは相当の金銭的・時間的な負担があるでしょう。
また、裁判離婚では赤裸々にお互いの私生活まで話をしなければならないケースもあり、精神的な苦痛もあるかもしれません。
社会的な立場もあることでしょう。
裁判に発展した場合の弁護士費用は勝訴に関係なく自己負担です。
これらの事由をしっかり伝えて裁判はできるだけ避けたい旨を夫に説明し、上手に説得する方法があります。

5、離婚しない道を選ぶのであれば!うつ病の相手をケアする方法

離婚しない道を選ぶのであれば!うつ病の相手をケアする方法

もしも、離婚を思いとどまり、パートナーと婚姻を継続していこうと考えるなら、うつ病の夫をケアする必要があります。相当な覚悟を持ってケアしていくことになるでしょう。

ケアの方法をご紹介します。

(1)夫の話をよく聞く

うつ病患者にはとにかく否定をせずに話を聞く必要があります。
大事なパートナーですからしっかり時間を取り、話を聞くようにしてください。
うつ病になる大きな原因は心を開いて話せる相手がいないことが挙げられています。
愚痴や悩みなどを夫に吐き出させ、あなたが受け止めてあげてくださいね。

このとき、良かれと思って下手なアドバイスや説教などはしてはいけません。
心を受け止めて肯定しながら聞くことが大切です。 

(2)働きやすい環境を整える

夫が働きやすい環境を整えることも妻の役目です。
うつ病の夫であれば、仕事に行く気力も衰えていることでしょう。
無理に出勤を促さずに、休職や働きやすい環境を妻が提案する必要があります。
会社の上司に相談してみたり、家庭内の環境を落ち着いたものにして精神を安定させてから出社させるなど、できる限りのサポートを行ってくださいね。

(3)仕事の負担を軽減する 

仕事の負担をできるだけ軽減することも必要です。
うつ病の原因が仕事にあった場合にはなおさらでしょう。
収入面よりも、適した仕事を行うように仕向けてみてください。
転職や異動なども必要かもしれません。
また、症状が重い場合、家事ができなくなる方もいます。 家庭内の家事を分担しているケースでは家事全般はあなたが引き受け、場合によっては、あなたが働き、家庭を支えていく必要があります。

 

(4)ストレス発散方法を見つける

大事なことはストレスの発散方法です。
悩みを1人で抱え込みすぎる真面目なタイプはうつ病を発症しやすいと言われています。
休日には一緒にストレスを発散できるような趣味を行うなども必要になるでしょう。

ただし、うつ病患者を無理に外出させる行為はNGです。
「外に出れば気分も晴れるわ」と言うのはうつ症状になったことのない人の思い込みです。
医師の指導の元で外出が適していると診断されない限りは外出は控えてください。
このように、ストレス発散の方法は熟慮するようにしましょう。

(5)定期的な通院を欠かさない

あなたは医師ではありませんからできることにも限界があります。
きちんと夫を通院させ、診断を受けてくださいね。
適した薬を適量決められた時間に飲ませるのがあなたの役割です。
うつ病の夫のケアは医師の診断に従って行うようにしてください。

(6)大事なことは十分な休

うつ病患者に大事なことはしっかり睡眠をとって休息することです。
不安な症状でよく眠れない状態の可能性もありますよね。
医師の処方にしたがってしっかり休ませられるような家庭内の環境づくりに励みましょう。
もちろん、栄養のある食事を用意し、寝る前の温かい飲み物など眠れるような工夫も必要です。

6、うつ病で離婚する際の子供の親権は?

うつ病で離婚する際の親権は?

夫がうつ病での離婚では、親権は基本的に母親が勝ち取れます。
反対に夫のせいで妻がうつ病になり、離婚するケースでは子どもの親権は父親が持つことになる可能性が高まります。

ただし、その他の事由があるケースでは親権が取れない可能性もあります。

例えば、あなたのモラハラが原因で相手がうつ病を発症したケースで、あなたのモラハラや暴力などが子どもにも及んでいるケースでは親権を取れない可能性があります。
またあなたが金銭面などで自立した生活を行えないと認められた場合には、親権が勝ち取れない場合もあることでしょう。

離婚を考える際には、子どもをしっかり育てられる環境を作った上で離婚をした方が得策です。

7、うつ病で離婚する際に知っておきたいお金のこと

うつ病で離婚する際に知っておきたいお金のこと

前述しましたが、うつ病の原因があなたにあるケースでは慰謝料を請求される可能性があります。

しかし、夫のうつ病が原因でDVやモラハラ、浮気などを夫が行っていたケースでは反対に慰謝料を請求することが可能です。

夫がうつ病で離婚に発展した場合にでも、養育費は一般的にはもらえるので安心してください。
財産分与も通常通りにもらえる可能性が高いでしょう。

うつ病で裁判離婚に発展したケースでは印紙代13,000円と、戸籍謄本取得代450円だけで裁判が行えます。

ただし、これは弁護士を立てないケースです。
より有利に離婚を成立させたいなら弁護士を立てることになりますよね。その費用は当然必要です。
離婚が成立した際の成功報酬など50万円程度の費用が必要になります。
また裁判にかかった実費も全て請求されることになるでしょう。相談料や着手金なども必要です。
例え勝訴したとしても、これらの裁判にかかる費用は自己負担になります。
そのことを念頭において裁判離婚に踏み切ってください。

まとめ

いかがでしたか?夫がうつ病のケースでも十分に離婚できる可能性があります。
1人で悩まずにまずは身近な人に相談してみましょう。あなたまでもがうつ病になってしまっては意味がありません。

しかし、うつ病はしっかりケアすることで十分治る見込みのある病気です。
パートナーを愛しているなら、再度離婚を考え直してみましょう。
しかし、それでもやはり離婚をしたいと感じるなら、条件をしっかり把握して離婚に踏み切るのもありです。

いずれにしても、うつ病が原因で離婚した場合には後悔をしないように慎重に行動しましょう。
あなたと子ども、夫みんなに明るい未来が来る方法を選んでください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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