離婚裁判を検討している方にとって、気になるのは「離婚裁判にかかる期間ってどのくらいなのだろう?」ということでしょう。
裁判所が公表している、令和3年1月から12月までの人事訴訟事件の概況によれば、離婚裁判の平均審理期間(訴えが提起されてから判決または和解により事件が終わるまでの期間)は14.1ヶ月です。
参考:令和3年 人事訴訟事件の概要
しかし、そんなに待っていられない!という方に向けて、離婚裁判の期間に影響を与える要因や、期間を短縮する方法について、ベリーベスト法律事務所の離婚専門チームの弁護士がまとめました。
離婚裁判をできるだけ早期に終了させたいと考えている方々へ、以下のポイントをご参考にしていただければ幸いです。
目次
1、離婚裁判にかかる期間はどのくらいか?
離婚裁判は早くても申立てから決着がつくまでは半年かかると思ってください。
離婚裁判の平均審理期間(訴えが提起されてから判決また和解により事件が終わるまでの期間)は14.1ヶ月(約1年2カ月)です。
これには一方が裁判に参加せずに欠席判決で早期に終了してしまうケースも含まれています。双方が裁判に出席し、かつ判決まで至ったものに限ると、平均期間は19.1ヶ月(約1年7カ月)となっております。
そして、この審理期間は年々長期化している傾向があるのです。
なぜこんなに長期化するのか。
次項ではその理由についてみていきましょう。
2、離婚裁判の期間の長短に影響を与えるのはどのような事情か?
どうして離婚裁判はそんなに時間がかかるのか。
まず第一に挙げられるのは、「3」で離婚裁判の流れをみていただけるとわかりますが、いわゆる「裁判」が行われるのが月に1回なのです。毎日連続、週1などで行われるようなものではないため、基本的に長期戦と考えてください。
またさらに、以下のような裁判の期間の長短に影響を与える事情もあります。
(1)決定的な証拠があるか?
離婚裁判において、あなたの主張を決定的な証拠があれば、裁判官は早期にあなたの主張が正しいと判断してくれます。裁判官の判断(事実認定)が早ければ裁判は早期に終了します。
具体的な決定的証拠として、以下のようなものが挙げられます。
- 不貞行為(不倫)を証明する場合に、探偵会社等の写真・動画付きの報告書
- 不貞行為を証明する場合に、相手方や不倫相手の不貞行為を認めるメールの画像やメモ
- 不貞行為を証明する場合に、ラブホテルの領収書など
- 婚姻関係が破綻していることを証明する場合に、原告が暴力や精神的苦痛を受けた事を証明する診断書など
- 婚姻関係が破綻していることを証明する場合に、被告の暴力により破られた洋服や壊れた物の写真など
もし以上のような決定的な証拠が当事者双方にないと、審理が長期化することが多いといえます。
(2)第一審で敗訴すると長期化する!
以上のように決定的な証拠がないと、場合によっては第一審で敗訴してしまう可能性があります。
それでも離婚したいというのであれば、高等裁判所に控訴せざるを得ません。この場合、かなり長期化する傾向があります。
(3)離婚するか否か以外に争っていることがある
離婚裁判においては、離婚するか否かに加えて以下の内容も争われることがあります。
- 慰謝料を支払うか、支払うとしたらいくらか
- 財産分与を支払うか、支払うとしたらいくらか
- 養育費を支払うか、支払うとしたらいくらか
- 親権はどちらが持つか など
離婚するか否かに加えてこれらの事情が争われているのであれば、裁判は長期化する傾向があります。
特に親権の帰属で争っている場合は長期化は避けられないかもしれません。
お互いに本気で子どもと暮らしたい、子どもを離したくないと考えているケースでは当然といえます。お互いに絶対に負けられない戦いになっていると言えるでしょう。
また、親権を主張することにより、早々に離婚できないように仕向けてくるケースも考えられます。親権は、お金には代えがたい問題です。早期決着は難しくなってきます。
3、離婚裁判の流れをおさらい
ここで、離婚裁判の流れについておさらいしておきます。
離婚裁判は、離婚調停を済ませていなければ申し立てることはできませんのでご注意ください(調停前置主義)。
【離婚裁判の流れ】
①争点の整理 →双方の言い分が食い違う点が整理されます
②原告からの証拠の提出 →争いとなる事実が存在することを証明する証拠の提出が必要となります
③被告からの証拠の提出 →原告の主張を否定する証拠が被告(相手方)から提出されます。
④以後、裁判官が納得するまで原告と被告の証拠の提出が繰り返されます。
第1回目の口頭弁論(言い分主張・証拠提出のための機会です。)は、訴状の提出から約1ヶ月後に行われます。
口頭弁論はその後1ヶ月に1回のペースで行われますが、審理の流れはおおまか以下の通りで進んでいきます。
- 争点の整理 →双方の言い分が食い違う点が整理されます
- 原告からの証拠の提出 →争いとなる事実が存在することを証明する証拠の提出が必要となります
- 被告からの証拠の提出 →原告の主張を否定する証拠が被告(相手方)から提出されます。
- 以後、裁判官が納得するまで原告と被告の証拠の提出が繰り返されます
⑤離婚裁判における事実の認定
⑥離婚裁判の判決
離婚裁判の流れについて詳しくは以下の関連記事をご参照下さい。
4、離婚裁判の期間を長引かせず早期に終わらせたいなら和解も視野に!
離婚裁判を進めていると、裁判官が和解提案を出してきます。
和解提案は、裁判官がよいと思ったタイミングで提案されるため、上記「流れ」のどのタイミングでもなされ得ます。
この和解提案にのって、和解で離婚することを「和解離婚」といいます。
和解離婚は早期終了を目指せる他、判決で離婚するよりもお互いにとってよい条件で離婚できるというメリットもあります。
和解離婚は早期終了を目指せる他、判決で離婚するよりもお互いにとってよい条件で離婚できるというメリットもあります。
もしその和解提案が納得いくもので、早期に離婚裁判を終わらせたいというのであれば、和解提案を受け入れてもよいでしょう。
5、離婚裁判が長期化するのに備えて婚姻費用分担請求をしておく!
離婚裁判まで発展する夫婦となると、多くのケースですでに別居をしています(同居のまま離婚裁判をすることもできます)。
この場合、離婚裁判が長期になると、どうしても経済的負担が気になるのではないではないでしょうか。もしあなたが相手と比較して収入が低い状況であればなおさらです。
そんなときは、生活費として婚姻費用分担請求することができます。
裁判が長期化するのに備え、婚姻費用分担請求も同時に行っておきましょう。
ちなみに、婚姻費用は離婚までの間支払い続けなければならないので、相手があなたの生活費を負担に思う場合は裁判を早期に終わらせることにも繋がります。
なお、同居のまま離婚裁判をすることができるかについては、離婚調停同様、同居のまま離婚裁判することは可能です。資料も別々に届きますし、仲直りの機会も増えるかもしれません。関係性によっては、同居していることにより、スムーズに離婚にいくケースもあります。
ただし、以下の点に注意してください。
- 別居状態は夫婦関係の破綻を意味する面もあるため、同居では破綻を認定されないケースもあり、離婚したい側にとっては有利になるとは言い難い
- 弁護士をつけている場合、自宅で弁護士を通さずに当人同士で合意するなどがあると、裁判が難航してしまう
6、離婚裁判の期間に関するQ&A
(1)離婚裁判中に、転勤等で引っ越ししても大丈夫?
離婚裁判中に引っ越すと、裁判所にいかれなくなるのではと思っている方も多いかもしれません。
しかし、「電話会議システム」という方法があり、実際に遠方の裁判所へ行かなくても裁判を進めることが可能です。
実際に足を運ばなければならないときもありますが、弁護士に依頼していればより一層遠方であることの不利益は回避することができるでしょう。
(2)離婚裁判中は別の人と再婚(交際)してはダメなの?
離婚裁判中は、裁判開始後に出会った相手であったとしても、裁判の進行を自分に不利にしてしまう可能性が大きいです。
浮気で離婚裁判になり、それでも別れずにいる人はどのようにすべきか、弁護士の無料相談でリアルなアドバイスを聞いてみてください。
(3)裁判が長引くと弁護士費用も増えるの?
基本的に、裁判の長いことをもって弁護士費用が増えることはありません。
基本的に弁護士費用は、あなたの要求を達成できたかできなかったか、によって決められます。
詳しいことは以下の関連記事をご覧ください。
まとめ
今回は離婚裁判にかかる期間について書いていきましたがいかがでしたでしょうか?
期間を知って頂いた上で離婚裁判を進めて頂ければ嬉しいです。