専門的な企業法務サービスが、この価格。月額3980円(税込)から顧問弁護士。

お問い合わせ

【公式】リーガルモールビズ|ベリーベスト法律事務所がお届けする企業法務メディア企業法務事業再生・倒産処理経営者保証に関するガイドラインとは?適用条件とできることを解説
専門的な企業法務サービスが、この価格。月額3980円(税込)から顧問弁護士。
ベリーベスト法律事務所の弁護士・税理士等からのサポートが受けられます。
企業法務のご相談も受付中。お気軽にお問合わせください。
電話受付時間:平日 9:30~18:00 土日祝除く

経営者保証に関するガイドラインとは?適用条件とできることを解説

2021年9月1日
経営者保証に関するガイドラインとは?適用条件とできることを解説

経営者保証に関するガイドラインは、中小企業融資において経営者保証が抱える問題点を克服する目的で策定された中小企業融資についての指針(基本方針)です。

経営者保証に関するガイドラインを適用できれば、中小企業が金融機関から融資を受ける際に経営者の保証が不要となるだけでなく、すでに経営者保証によって受けた融資を債務整理する際にも経営者の負担が軽減されるなど、大きなメリットがあります。

しかし、経営者保証に関するガイドラインを適用してもらうためには、その要件を満たすために中小企業側にも一定の努力が必要となるケースが少なくありません。

そこで、今回は、

  • 経営者保証に関するガイドラインとは
  • 経営者保障に関するガイドラインの利用条件
  • 経営者保障に関するガイドラインの活用方法

について特に重要なポイントについてわかりやすくまとめてみました。

法人の債務整理に関してはこちらの記事をご覧ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/company-reconstruction-22753/”]

1、経営者の保証に関するガイドラインとは

経営者の保証に関するガイドラインとは

「経営者の保証に関するガイドライン」とは、金融機関が中小企業に融資を行う場合に、企業の経営者に個人保証を求める際の対応などについてのガイドライン(基本指針)のことです。

かつては、中小企業が銀行などの金融機関から融資を受ける際には、経営者個人がその債務についての連帯保証人となることを求められるのが当たり前のことでした。

しかし、経営者が個人保証をすることは、とても大きな負担でありリスクです。中小企業に融資をする際に必ず経営者保証を求めるという慣行は、中小企業の事業拡大・成長や、業績不振に陥った場合の早期処理を阻害する要因となることが指摘されてきました。
わが国の法人の圧倒的大多数は中小企業ですから、個人保証が必須であることが中小企業の事業拡大のネックとなっていることは、社会的にも大きな損失といえます。

また、個人保証をしていることで(生活基盤をすべて失うのは避けたいと考える経営者が)企業の早期債務処理・企業再建に躊躇してしまうのも社会的にはデメリットの方が大きいでしょう。

そこで、日本商工会議所・全国銀行協会が、国(金融庁・中小企業庁)などの協力を得ながら、中小企業への融資の条件として経営者保証を求める場合の適切な行動指針として平成25年12月に定められたのが、この経営者保証に関するガイドラインです(以下、「経営者保証ガイドライン」と示します)。

【参考】中小企業や小規模事業者の方へ ご存じですか?「経営者保証」なしで融資を受けられる可能性があります(政府広報オンライン)

2、経営者保証ガイドラインでできる3つのこと

経営者保証ガイドラインでできる3つのこと

経営者保証ガイドラインを適用することができるケースでは、中小企業の保証契約について、次の3つの対応をとれる可能性があります。

  • 経営者の個人保証を提供せずに、金融機関から新規融資を受けられる
  • 既存の経営者保証を見直してもらえる
  • 企業の負債を債務整理する際に、経営者の負担を軽減してもらえる

これらのメリットを享受するためには、一定の要件(3、の解説参照)を満たす必要がありますが、下記参考資料に示されるように、平成25年12月のガイドライン策定後、その利用は着実に拡がりつつあるといえます。

【参考】政府系金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績(中小企業庁ウェブサイト:PDFファイル)

以下、経営者保証ガイドラインで可能となる3つの対応の内容について、そのポイントを確認しておきましょう。

なお、経営者保証ガイドラインを用いた具体例の紹介などについては、下記の資料が特に参考になります。

【参考】「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集(中小企業庁ウェブサイト:PDFファイル)

(1)経営者の個人保証なしに金融機関から融資を受けられる

株式上場のような方法で資金調達のできない中小企業にとっては、金融機関からの融資は、大企業以上に企業活動の行方を左右させる問題です。
特に、業績に優れていても、経営者保証のリスクが大きいために、資金を確保できないことで業績拡大のチャンスを逃してしまうケースが少なくないことは、その企業だけでなく社会全体にとっても良いことではないでしょう。
経営者保証ガイドラインを適用することができれば、一定の条件の下で、経営者保証なしに金融機関からの融資を受けられる可能性が高くなります。

また、何かしらの保証などが必要となる場合でも、以下のような経営者保証にかわる手法によって、金融機関からの融資を受けることが可能となります。

  • 停止条件や解除条件付保証契約
  • 流動資産担保融資(在庫や売掛債権などを担保とする融資のこと。ABLともいう)
  • 金利の一定の上乗せ

(2)既存保証契約の見直し

経営者保証ガイドラインは、新規融資の場合だけでなく、既存融資の見直し(現状の経営者保証の解除)にも利用することができます。
「既存融資の見直し」は、特に事業承継の場面で効果的といえます。
たとえば、経営者が交代(代替わり)する場合や、第三者に譲渡するようなケースでは、既存融資について経営者保証があることが足かせとなるケースは少なくないからです。

近年では、中小企業のM&Aも積極的に行われるようになりましたが、経営者保証があることで、売却価格が大幅に下げられてしまい、M&Aの話それ自体が流れてしまうことも少なくありませんので、経営者保証ガイドラインへの期待は大きいものがあるといえます。

(3)企業の負債整理時における経営者の負担軽減

経営者保証のある融資を受けていることは、事業に行き詰まってしまった場合にも大きな足かせとなってしまいます。
経営者保証をしているときに会社の負債を整理することは、経営者の生活基盤を失うことに直結してしまうからです。

そのため、早期の対応ができないどころか、自力再建を目指そうと、高利の無担保融資による運転資金の工面や、博打的な取引によって、状況をさらに悪化させてしまうケースも珍しくありません。

融資を受けた中小企業が経営難に陥った場合でも、経営者保証ガイドラインを適用できれば、金融機関に対して次のような対応を求めることができます。

  • 債務整理の際に一定期間の生計費に相当する額を手元に残す
  • 華美ではない自宅を差押えせずに、経営者の生活基盤として残す
  • 経営者が引き続き事業の指揮を執ることも認める
  • 残存債務の(一部)免除(返済しきれない債務の原則免除)

事業や資金繰りの行き詰まりによって会社を清算する必要があるケースでも、経営者の当面の生活(や再チャレンジ)に必要な資金、生活基盤となる自宅を手元に残せることは、経営者にとっては、早期に事業整理を実施する大きなインセンティブとなります。

また、経営者の事業不振は、必ずしも中小企業に原因があるとはいえないケースも珍しくありません。
負債の一部を免除することで、経営状態が上向く蓋然性が高いのであれば、経営者保証のある債務を一部圧縮(免除)してもらうことで、事業継続の可能性が高くなるケースも多いでしょう。

3、経営者保証ガイドラインを利用するための条件

経営者保証ガイドラインを利用するための条件

経営者保証ガイドラインは、あらゆる企業融資に利用できるというわけではありません。
経営者保証ガイドラインの適用を無条件で許容することは、金融機関にとってあまりにも不利といえるからです。

経営者保証ガイドラインの適用を受けるためには、大きく分けて次の2つの要件を満たす必要があります。

(1)適用を受ける会社が中小企業であること

経営者保証ガイドラインは、中小企業・小規模企業に対する融資を、経営の実情に即したフェアなものとすることで、中小企業・小規模企業の各種の取り組みを促進することを目的に策定されたものです。

したがって、経営者保証ガイドラインの適用を受けるためには、融資の対象となる企業が、中小企業・小規模企業に該当するものでなければなりません。

中小企業・小規模企業の法律上の定義は、下記に記すとおりです。

なお、経営者・企業が反社会的勢力に属している場合には、経営者保証ガイドラインの適用を受けることはできません。

① 中小企業の定義

業種分類

中小企業基本法の定義

製造業その他

資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社

または

常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

卸売業

資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社

または

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

小売業

資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社

または

常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

サービス業

資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社

または

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

② 小規模企業者の定義

業種分類

中小企業基本法の定義

製造業その他

従業員20人以下

商業・サービス業

従業員 5人以下

(2)適用を受ける会社の経営状態が透明化されていること

中小企業に対して融資を実施する際に、経営者個人の連帯保証が必要となる一番の理由は、中小企業には経営状況・財務状況が不透明な企業や、企業と経営者の財産が明確に区分されていないことが多いことを理由としています。

そのため、経営者保証ガイドラインの適用を受けるためには、企業の経営・財産について、次の条件を満たしている必要があります。

  • 法人と経営者の資産等が明確に区分されていること、
  • 法人に財務基盤の強化が認められること、
  • 法人から財産状況の正確かつ適切な開示等が行われること

① 法人と経営者の財産などが明確に区分・分離されていること

いわゆるオーナー企業の中小企業では、オーナー個人の資産と法人との資産が混同されているようなケースも珍しくありません。

また、役員報酬・配当などについても、オーナーの便宜が優先されてしまう傾向があります。

しかし、企業への融資と経営者保証とを切り離すためには、オーナー自身の財産と法人の保有資産とを明確に区分しておく必要があります。

また、役員報酬などの会社と経営者との資金のやりとりについても「社会通念上相当な範囲内」に収まるように仕組み作りをする必要があります。

これらの体制整備などについては、公認会計士・税理士といった外部の専門家を活用することが特に有効でしょう。

② 財務基盤の強化

財務基盤の強化に務めることも、経営者保証ガイドラインを適用してもらうためには重要な要件です。
企業の財務基盤がいい加減であれば、万が一の場合に十分な返済をすることができない可能性も高くなるからです。

また、これとは逆に、内部留保率の向上など、財務基盤強化に向けた取り組みに一定の効果が認められるケースであれば、外的要因によって業績が悪化した場合でも、経営者保証なしにつなぎ資金や業態転換のための融資を受けられる可能性も高くなるといえます。
財務基盤の強化は、中小企業の客観的な信用力の強化に直結する指標といえるからです。

③ 経営の透明性確保と金融機関への誠実な対応

経営の透明性を確保することも、経営者保証ガイドラインの適用を受ける上ではとても重要です。
財務状態や、企業の意思決定プロセスが明確でなければ、現在の財務状況や今後の事業展開などについて正しい見通しを立てることができないからです。

また、融資を受ける以上、企業には金融機関に対して、これらの状況について、十分な情報開示・説明を誠実に行う義務があるといえます。

4、経営者保証ガイドラインについての相談窓口

経営者保証ガイドラインについての相談窓口

経営者保証ガイドラインの適用を受けるために満たしているべき要件は、上場企業(や上場を目指すような優良の中小企業)では、当然に行われている対応ばかりです。

とはいえ、多くの中小企業には、これらの要件を満たすことは、それなり以上の負担・努力を必要とすることの方が多いといえます。

したがって、経営者保証ガイドラインの適用を希望する場合には、いきなり申請をするというよりも、経営者保証ガイドラインの適用を目指して、会社の経営・財務基盤・体質の改善を図っていく方法を検討・実施していくことの方が多いといえます。

これらのための具体的な取り組みなどについては、下記の窓口が相談に応じてくれます。

  • 商工会・商工会議所
  • 中小企業基盤整備機構の地域本部
  • 経営者保証ガイドラインを取り扱っている金融機関(政府系金融機関など)

また、中小企業基盤整備機構が行っている「専門家派遣制度」を活用することは、企業の取り組みを実効的にする意味で特に有効といえるでしょう。
専門家派遣制度は、無料で最大年3回まで、弁護士・会計士・税理士などの専門家を派遣してもらい直接の支援を受けることができる制度です。

【参照】中小企業整備機構(中小機構)公式ウェブサイト

まとめ

経営者保証ガイドラインが策定されたこと、その利用が着実に広がっていることは、ほとんどの中小企業経営者にとっては朗報といえます。

ただ、経営者保証ガイドラインは、中小企業側にも一定以上の努力を求めるものであることは忘れるべきではありません。

オーナーの個人資産と企業資産の分離、財務基盤の強化、経営の透明化というものは、言葉でいうほど簡単なものではありません。
オーナー経営の色彩が強い会社であれば、自分たちでは透明化できている・分離できていると思っていることも、客観的にはそうではないと判断されることもあり得るでしょう。

その意味で、経営者保証ガイドラインの適用をうけるためには、会計士・税理士・弁護士といった外部の専門家を上手に活用することが大事といえます。

確定申告などの手続だけのお付き合いを超えて、顧問という形でより深く専門家に関わってもらうことの重要性は、今後ますます大きくなるといえるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
↑ページの先頭へ
0120-538-016
0120-538-016