「夫は仕事に没頭して毎日深夜まで帰ってこない」
「夫が趣味や友人との遊びに夢中で家庭のことを何も考えてくれない」
このような状態で夫との離婚を考えている奥さまも多いことでしょう。ただ、自分勝手な夫は家事や育児の大変さを理解していないため、離婚を切り出すともめることが多いようです。
そこで今回は、
- 家庭を顧みない夫と離婚できるのか
- 家庭を顧みない夫と離婚する方法
- 家庭を顧みない夫との関係を修復する方法
について解説していきます。
目次
1、家庭を顧みない夫によくある3つのパターン
ひと口に「家庭を顧みない夫」といっても、様々なパターンがあります。
あなたの夫がどのパターンに該当するかによって、離婚または夫婦関係を修復する際に注意すべきポイントが異なってきます。
そこでまずは、家庭を顧みない夫によくある3つのパターンをみておきましょう。
(1)仕事ばかりする
平日は連日の残業で深夜まで帰ってこない、休日も出勤するか家で仕事をすることが多く、仕事がないときは寝ているか自分の部屋に閉じこもっているパターンです。
付き合いの飲み会や接待、ゴルフなどに時間を奪われて、あまり家にいない夫も少なくないでしょう。
このタイプの夫は
- 男が外で働くのは当たり前だ
- 仕事だから仕方がない
という意識が強く、家族との時間を持たないことに問題意識を持っていないことが多いものです。
(2)趣味に熱中する
夫が自分の趣味に熱中するあまりに、家族とのすれ違いが生じるパターンです。
趣味にも様々なものがありますが、
- ゴルフ
- 釣り
- スポーツ
などアウトドア系の趣味に熱中する夫は休日のたびに出かけてしまい、あまり家にいないことが多いものです。
一方、
- パソコン
- ゲーム
- ものづくり
などインドア系の趣味に熱中する夫は、家にいても部屋に閉じこもって家族との会話が少ないというケースが多いでしょう。
お金がかかる趣味の場合は、その出費のために家計が苦しくなってしまうという問題もあります。
(3)遊びに夢中になる
平日・休日を問わず、夫が家族そっちのけで友人と遊ぶために出かけてしまうというパターンです。
家族とはどこへも出かけないのに、友人たちとは泊まりがけの旅行に行くようなことも少なくありません。
このパターンは、結婚して家族ができても独身のときと同じように自由に行動したいというタイプの夫に多いようです。
夫がこのタイプに該当する場合は、遊興費のために家計が苦しくなる場合がある他、夫が不倫しないかということも気になることでしょう。
2、家庭を顧みない夫と離婚できるの?
夫が前項のいずれかのパターンに該当するとしても、基本的にはそのことだけで離婚することはできません。
なぜなら、相手が離婚に反対する場合には、法律上の離婚原因がなければ一方的に離婚することはできないからです。
法律上の離婚原因は、民法第770条1項で次の5つが定められています。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法
夫が仕事ばかりすることや趣味や遊びに熱中することは、それだけでは上記の離婚原因に該当する可能性は低いです。
もっとも、夫が単に家庭を顧みないだけでなく、実は法律上の離婚原因が潜んでいるケースも少なくありません。
以下のような事情があることが判明した場合は、それを理由として離婚できる可能性があります。
(1)不倫をしているケース
夫が遊びに熱中するタイプの場合は、交友関係の中から不倫が発生することがよくあります。
また、夫が仕事ばかりすると思っていても、実は仕事を口実に外出して不倫をしているケースは少なくありません。
趣味仲間と不倫をするケースもありますし、インドア系の趣味であってもSNSなどで交流を持った女性と不倫に至ることもあるので要注意です。
夫が不倫をしている場合は、「配偶者に不貞な行為があったとき」として離婚原因に該当します。
(2)生活費を渡さないケース
家計が苦しいのに夫がそのことを意に介さず、自分の趣味や遊びにばかりお金を使って十分な生活費を渡してくれないケースもあるでしょう。
そのような場合は、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」として離婚原因に該当する可能性があります。
(3)浪費で借金を抱えているケース
夫に悪意はなくても、趣味や遊びで浪費して借金を抱えている場合もあるでしょう。
浪費で多額の借金を抱えた場合は、程度にもよりますが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として離婚原因に該当する可能性があります。
(4)顕著な離婚原因が見当たらないケース
上記3点のように顕著な離婚原因が見当たらなければ離婚できないのかというと、そうとは限りません。
家庭を顧みない夫との不仲が一定期間継続し、夫婦関係が破たんしていると認められる場合には「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として離婚することができます。
ただ、離婚が認められるほどに夫婦関係が破たんしているかどうかという点については、複雑な判断が必要になります。
3、家庭を顧みない夫と離婚する方法
家庭を顧みない夫との離婚を決意した場合は、以下の手順で離婚の手続きを進めることになります。
(1)離婚協議をする
まずは、夫婦で離婚について話し合います。
法律上の離婚原因がない場合でも、話し合いによってお互いが合意すれば協議離婚をすることができます。
法律上の離婚原因がある場合でも、有利な条件での円満な離婚を目指して、しっかりと離婚協議を行いましょう。
(2)別居をする
実際に離婚をする前に、まずは別居をするのも良い方法です。
別居した方が離婚協議でもお互いに冷静に話し合うことができるでしょう。
場合によっては、別居がきっかけとなって夫婦関係を修復することもできるかもしれません。
なお、顕著な離婚原因が見当たらない場合でご自身の離婚する意思が固い場合は、まず別居することをおすすめします。
一定の期間、別居を続けると、そのこと自体が「夫婦関係の破たん」の証拠となり、離婚が認められやすくなるからです。
(3)調停を申し立てる
夫婦間で話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てることになります。
調停では家庭裁判所の調停委員が間に入って話し合いを仲介してくれるため、当事者だけで話し合うよりも解決しやすくなります。
ただし、調停委員は中立公平な立場なので、あなたの味方になってくれるとは限りません。
相手方の言い分の方に説得力があると判断されれば、あなたが夫とやり直すように説得されてしまう可能性もあり得ます。
調停委員を味方につけるためには、ご自身の主張を説得的に伝える必要があります。
(4)離婚訴訟を提起する
調停でも離婚できなかった場合は、離婚訴訟の提起を検討することになります。
ただ、訴訟で離婚するためには、法律上の離婚原因があることと、そのことを証明できる証拠を提出しなければならないことにご注意ください。
訴訟を起こしてから証拠を集めることは困難なので、離婚を決意したらできる限り早期に証拠を確保しておくことが大切です。
4、本当に離婚していいの?夫が家庭を顧みない理由とは
前項で離婚する方法をご紹介しましたが、実際に離婚を切り出す前に今一度、本当に離婚していいのかということを考えてみていただきたいと思います。
そもそも夫が家庭を顧みない理由は何でしょうか。
その理由によっては、夫婦関係の修復を検討する方があなたの人生にとってもプラスになるかもしれません。
(1)心から家族の幸せを願っている場合
仕事ばかりする夫の場合、心から家族の幸せを願っていることも多いはずです。
家族が生活していくためには、たくさんのお金が必要になることも事実です。
夫は、自分が苦労してでもたくさんのお金を稼いで、それによって家族を笑顔にしたいと考えているのではないでしょうか。
もしかしたら、「仕事のためなら家庭を犠牲にしてもかまわない」という古くからの固定観念に夫自身も苦しんでいるのかもしれません。
(2)家庭に居場所がない場合
その一方で、家庭に居場所がないために仕事や趣味、遊びなどに逃げ込んでしまう夫が多いことも否定できません。
もし、このパターンに該当する場合は、夫一人を責めるのではなく、何が夫を追いつめているのかを奥さまも考えてみる必要があるのではないでしょうか。
(3)自分のことしか考えていない場合
もちろん、自分のことしか考えずに自由気ままな行動をする夫もいます。
妻としては、そんな自分勝手な夫を許せない気持ちになるかもしれませんが、ただちに離婚を切り出すことがベストな選択だとは限りません。
このタイプの夫は自分勝手な性格だからこそ、家族と向き合うことの重要性を今まで知らなかっただけという可能性もあります。
家庭の大切さに気付かせることができたら、夫婦関係の修復が可能な場合も多いはずです。
5、家庭を顧みない夫との関係を修復する方法
家庭を顧みない夫との関係を修復できる可能性があると思われる場合は、いったん、以下のような努力をされてみてはいかがでしょうか。
離婚を切り出すのはその後でも遅くはありません。
(1)話し合う
基本的には、やはり夫婦で話し合うことです。
修復に向けて話し合う際のポイントは、まず相手の話を十分に聞くことです。
- 仕事が大切なのはよく分かるけれど、なぜ家族に気持ちを向けてくれないのか
- 夫にとって家庭とはどういうものなのか
- 家族に対して不満があるとしたら何か
夫の立場を理解し、奥さまにも非があれば改善することも必要でしょう。
その上で、
- 週に○回は家族で食事をする
- 趣味や遊びに出かけるのは月に○回まで
- 週に○回は子どもと遊ぶ
などのルールを可能な範囲で提案してみましょう。
(2)カウンセリングを利用する
話し合いが大切だと分かってはいても、どうしても感情的になってしまったり、夫が聞く耳を持ってくれなかったりすることもあると思います。
そんなときには、カウンセリングを利用するのもおすすめです。
専門のカウンセラーに相談すれば、今まで思いつかなかったような視点からのアドバイスも受けることができるでしょうから、夫婦問題の解決に効果的です。
(3)夫婦関係調整調停を申し立てる
裁判手続きを使って夫婦関係の修復を図ることも可能です。
調停というと「離婚調停」を思い浮かべる方が多いと思いますが、正式名称は「夫婦関係調整調停」といい、夫婦関係を修復させる方向で利用することもできるのです。
家庭を顧みない夫の多くは離婚など考えていないことが多いものですが、家庭裁判所で調停委員を介して話し合うことで「離婚」の問題に直面せざるを得ません。
そのため、夫が真剣に話し合いに応じてくることが期待できます。
まとめ
家庭を顧みない夫に嫌気が差している方は、今すぐ離婚したいという気持ちになっているかもしれません。
しかし、離婚するためには、法律上の離婚原因があるかどうかを確認する必要がありますし、証拠も確保しなければなりません。
また、本当に離婚することがベストな選択肢かどうかも今一度お考えになってみるのも悪くはないと思います。
いずれにしても不安なことや分からないことがあると思いますが、一人で悩まずに弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
離婚問題の経験豊富な弁護士は様々なパターンのご夫婦を見てきていますので、あなたの状況に応じてベストな解決策を一緒に考えることができます。