
非嫡出子にも相続権があります。
婚姻関係のない男女の間に生まれた子を「非嫡出子」といいます。
今回は、そんな非嫡出子の相続でお悩みの方に向けて、
- 非嫡出子とは?
- 非嫡出子の相続分
- 非嫡出子の相続で大切な認知について
- 非嫡出子が相続の手続きをするとき知っておきたい3つのポイント
についてご紹介します。
ポイントを押さえて非嫡出子の相続権について知識を身につけましょう。
法定相続人に関して詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
関連記事目次
1、非嫡出子の相続について知る前に|非嫡出子とは?用語のおさらい
まずは「非嫡出子」の正確な意味についておさらいです。
「非嫡出子」を語るには「嫡出子」から。
以下、ご説明していきます!
(1)嫡出子とは
嫡出子とは「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」のことです。
以下、スタンダードなケースからこんな場合は?というケースまで解説します。
①入籍前に妊娠して、入籍後200日以上経過後に出産
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」になります。その後離婚しても変わりません。
<ここがポイント!>
仮に夫の子どもじゃなくても嫡出子です。
もし、夫がそのことに気づき、「俺の子じゃない!」と声をあげたい場合は、「嫡出否認」や「親子関係不存在確認の訴え」をすることができます。
なお、これらの制度で夫の主張が認められた場合は嫡出子ではなくなります。
関連記事 関連記事②婚姻期間中に妊娠し、離婚してから出産
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」になります。
<ここがポイント!>
婚姻中に妊娠した、ということは、妊娠期間は約300日間ですので、離婚から300日以内には生まれる、ということです。
そのため、法律上、婚姻の解消日(離婚)から300日以内の出産なら元夫の嫡出子と推定されることになっています。
③婚姻期間中に妊娠し、婚姻期間中に出産したが、夫の子どもではない
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」になります。
<ここがポイント!>
もし、夫が自分の子どもでないことに気づき、「俺の子じゃない!」と声をあげたい場合は、「嫡出否認」、場合によっては「親子関係不存在確認の訴え」をすることができます。
関連記事 関連記事④婚姻期間中に妊娠し、婚姻期間中に出産したが、その後離婚した
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」になります。
⑤離婚後に元夫の子どもを妊娠し、出産した
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」にはなりません。
⑥他に奥さんがいる彼の子どもを妊娠し、結婚せずに出産した
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」にはなりません。
⑦事実婚の夫の子どもを妊娠し、事実婚のまま出産した
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」にはなりません。
⑧彼氏の子どもを妊娠し、そのまま結婚せずシングルマザーとして出産した
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」にはなりません。
⑨彼氏の子どもを妊娠し、入籍前に出産、その後結婚した
「婚姻関係の夫婦から生まれた子ども」にはなりません。
(2)非嫡出子とは
非嫡出子とは、「婚姻関係にない男女の間にできた子ども」のことです。
具体的には(1)で嫡出子にはならないとした⑤〜⑨のことです。
(3)知っておくべき!「準正」
(1)⑨のケースでは、結婚後に認知をすることで嫡出子となります。
これを「準正」と言います。
2、非嫡出子に相続権はあるの?
非嫡出子にも相続権はあります。
(1)2013年まで、民法の規定は非嫡出子の相続分は嫡出子の半分
長らく日本の民法においては、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分でした。
理由は、正当に婚姻してできた子どもが多く相続できるのは当たり前だという考えがあったからです。
突然同居もしてこなかった赤の他人に被相続人の財産を相続させるのは、あまりにも相続人にとって理不尽だという考えです。
しかし、2013年の民法改正で、非嫡出子の相続分は嫡出子と同じになりました。
(2)2013年9月4日の最高裁判決で違憲判決
以前の民法では、非嫡出子に対して不公平だという考えから、2013年9月4日に最高裁判決で違憲判決が下されました。
(3)2013年9月から嫡出子・非嫡出子の相続分は同じに
この最高裁判決を受けて、2013年12月5日に法改正が実施されました。
具体的には民法900条から非嫡出子は嫡出子の1/2の相続分と定めた部分が削除されました。
1 法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)を削除し,嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にしました(注)。
法改正は2013年12月ですが、実質的な平等な相続の施行は2013年の9月4日からです。
3、重要!「認知」がなければ相続権はゼロ
(1)相続には認知が必要
非嫡出子と嫡出子はその相続分は同等になりましたが、非嫡出子は男性の「認知」がなければそもそも相続権が発生しません。
「認知」は法律上のお父さんとする、という意味では有名ですが、次の認知の2つの効果はぜひ覚えておいてください。
「男性の養育費の支払い義務の発生」と「子どもの相続権の発生」です。
(2)認知をすれば嫡出子になるの?
上記の「準正」は、「嫡出子」になるための認知でしたが、これは「入籍前に出産、その後結婚」というケースのみです。
その他の非嫡出子では、認知をしても、嫡出子になるわけではありません。
(3)死後でも認知してもらえる!
認知は、遺言により認知する「遺言認知」というものがあります。
相続権の発生に関することなので、遺言があれば認知があるか確認しましょう。
さらに、非嫡出子には、被相続人の死後に「強制認知」を要求する権利があります。
強制認知は、家庭裁判所に訴えを起こす必要があります。
ただし、強制認知は父親の死後3年以内です。この期限に注意してください。
関連記事4、認知を受けた非嫡出子が相続するとき知っておくべき4つのこと
(1)遺留分侵害額請求ができる
「遺留分侵害額請求」はご存知でしょうか?
「遺留分」とは、侵害されることのない絶対的な相続分です。
どんなに強欲な他の相続人がいても、また、関係性を壊してしまった被相続人(なくなった方)が遺言であなたには相続させないと遺していたとしても、「これだけはもらえる」というのが「遺留分」なのです。
「子(非嫡出子を含みます)」の遺留分は、法定相続分の1/2です。
つまり、法律上の相続分の半分は、必ず相続できるということになります。
(2)生計を共にしていて養育費をもらっていたなら遺族年金ももらえる
亡くなった方から養育費をもらって生活をしていた場合は、(原則)18歳までであれば遺族年金ももらえます。
お近くの年金事務所へお問い合わせください。
(3)相続放棄を迫られたら
非摘出子の場合、正妻など他の相続人から相続放棄を迫られるかもしれません。
このような場合は弁護士に相談しましょう。一人で対応するには精神的に限界があります。
泣き寝入りにならないよう、弁護士が味方になります。まずは無料相談をしましょう。
費用倒れになるのかどうか、諦める前にまずは相談をしてみるべきです。
(4)相続税も発生する可能性あり
遺産総額(不動産や株式など、預貯金以外も全て)が3、600万円未満であれば相続税は発生しません。
逆に、それ以上であれば発生します。
事前に対策をしたい場合はこちらをご覧ください。
関連記事 関連記事 関連記事5、相続でお困りの際は弁護士へご相談を
相続問題は法律も難しく、親族が多ければ多いほど、また資産家であるほど問題が発生しやすいのです。
ご自分一人で解決しようとせず、相続でお困りの場合にはぜひ一度弁護士に相談することをおすすめします。
非嫡出子への相続に関する悩みも、納得できる解決へと導いてもらえることでしょう。
関連記事まとめ
非嫡出子の相続分は嫡出子と同等です。
例え結婚をしていなかったとしても、法律では同じだけの相続分があるのです。
ただし、非嫡出子が認知された場合に限ります。認知されない非嫡出子に相続権はありません。
そして、前妻の子どもは非嫡出子ではなく嫡出子です。
両親が離婚していても相続権がなくなるわけではありませんのでご注意ください。
非嫡出子にも相続権はあります。
権利を侵害されないよう相続問題を解決していきましょう。
そのためにも、信頼できる弁護士に相続問題を依頼し、みんなが納得できる相続をしましょう。
それが被相続人の願いでもあるはずです。