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労働基準監督署への通報方法、期待できる労基署の対応やリスクを弁護士が解説

 労働基準監督署への通報方法、期待できる労基署の対応やリスクを弁護士が解説

労働基準監督署は、「公益通報」に関する事実について労働者から通報を受け、事業者に違反行為があれば、指導・是正勧告等を行ってくれます。

本記事では労働基準監督署への

  • 通報方法
  • 通報により生じるリスク
  • 通報後の労基署の対応

などについてご説明します。

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1、通報の基本ルール

労基署への通報は、どのようにすべきでしょうか?
訪問しなければならないとなれば、時間を要しそうでためらいもあることでしょう。
また、受け付けてくれる通報内容や、どこの労基署へ通報すべきなのかなどについて、以下、通報における基本ルールについて説明していきます。

(1)メールや電話でも可能

労基署への通報は、メールや電話でもできます。

電話は、全国各都道府県に複数ある労基署に「総合労働相談コーナー」が設けられておりますので、お近くの労基署の「総合労働相談コーナー」に電話して、通報内容を説明し、内容に応じた部署につないでもらいましょう。

また、土日や夜間などの時間帯には「労働条件相談ホットライン」という窓口がありますので、こちらに電話するのも可能です。

メールは、厚生労働省が「労働基準関係情報メール窓口」を設けていますので、こちらに通報することもできます。

もちろん、労基署を直接訪問して通報するということもできます。

(2)どこの労働基準監督署でもいいの?

労基署は、各都道府県に複数あります。各労基署ごとに管轄があり、原則としては事業所(会社)を管轄する監督署に通報するのが良いです。

下記ウェブサイトで、全国の労基署を探すことができます。

全国労働基準監督署の所在案内

(3)どんなことで通報できる?

労基署は、「事業者(会社)が労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法等の労働関連の各法規を遵守しているかどうか」を監督するところです。
ですので、通報する内容としては、基本的には「会社が行なっている労働関連の各法規に違反するような行為」ということになります。具体的には、賃金、残業代の未払いなどが挙げられます。

また、労基署は、国民生活を脅かす企業の不祥事について、いわゆる「公益通報」の通報先としても機能しています。
公益通報とは、具体的に、刑法、食品衛生法、金融商品取引法、大気汚染防止法その他の個人の生命、身体の保護、消費者の利益保護等に関わる法令違反行為(以下、これらをまとめて「通報対象事実」といいます。)の通報です。

2、通報したら会社にバレる?通報におけるリスクについて

通報する際、もっとも心配なのは、会社にバレてしまうのではないか、ということではないでしょうか。バレてしまえば、処分を受けることはもちろん、事実上仲間がいなくなり働きづらくなってしまうのではないかと、通報をためらう人は少なくありません。

本項では、通報制度をより有効性のあるものにするため、以下のように法律で安全性が担保されている点について説明していきます。

(1)会社に知られずに通報することもできる

労働基準監督官は、職務上知り得た秘密を漏してはならないという守秘義務を負っています(労基法105条)。
ですので、通報したことを秘密にしてもらいたい場合には労働基準監督官は秘密を守ってくれます。あなたが通報したことを会社に知られることはありません。

(2)通報しても労働基準法、公益通報者保護法により保護される

通報するあなたがその会社の従業員である場合、通報したことによって解雇されたり不利益な取扱いを会社内で受けたりすることは、労働基準法で禁止されています(労働基準法104条2項)。
ですので、通報したことで何らかの不利益な取扱いを受けた場合には、労働基準法違反の違法行為を受けたとして、会社に対して慰謝料や地位の確認を求める手続きを取ることができます。

また、通報内容が、通報対象事実について、正当な目的で通報した場合には、公益通報者保護法による保護を受けられます。具体的には、通報したことを理由とする解雇、派遣切り(雇止め)、降格、減給、その他の不利益取扱いをしてはならないと定めています(公益通報者保護法3条~5条)。その他の不利益取扱いの典型例としては、配置転換が挙げられます。

ただ、実態として、表向きは通報したことを理由とせずに何らかの形式的な理由を付けて、実態としては通報したことを理由に、減給等の通報者にとって不利益な処分を受けてしまうケースもあるでしょう。その場合は、その処分の効力を裁判所で争うことができます。

なお、労基署への通報で公益通報者保護法に基づいて保護されるには、以下の要件が必要です。

①不正の目的でないこと

会社への嫌がらせ目的や、何らかの不正な利益を得る目的で通報した場合には、公益通報者保護法の保護は受けられません。こうした不正の目的での通報はやめておいた方が良いでしょう。

②労務提供先の行為であること

通報内容が、通報者が労務を提供する会社のことである必要があります。派遣社員であれば派遣先、請負であれば受託先が労務提供先となります。

過去に労務を提供していたが辞めてしまった場合でも、公益通報者保護法により保護されますので、通報したことを理由として退職金が減額されたなどの不利益な取扱いを受けることは公益通報者保護法違反となります。

③通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由があること

通報対象事実を会社が行っている、又はこれから行おうとしているということを相当な理由・根拠を持って行った通報である必要があります。何の根拠もない単なる憶測による通報は保護されませんので注意しましょう。

3、通報したら労基署は何をしてくれる?

通報しても、「そうですか」で終わられては勇気を出して通報した通報者はたまりません。

では、一体、労基署は、何をしてくれるのでしょうか。

本項では、この点を明確にしていきます。

(1)違反内容について調査

労働基準監督署は、通報を受けた場合、事業者に労働関連法令に違反する行為があるかどうかを調査することができます。

事業所に直接立ち入ったり、帳簿等の書類を提出させたりすることができます。

調査については「通報があったから」とは言わず、「定期調査のためである」などとして配慮してもらえる場合がありますので、この点も安心です。

(2)違反内容の改善を求める指導

調査した結果、労働基準法違反等の法令違反行為が認められた場合には、まず、違反内容の改善を求める指導を行うことが一般的です。

その後、労基署は、指導後に指導内容について改善されたかどうかの状況確認を行います。

(3)指導に従わないなら是正勧告

指導しても従わない場合には、是正勧告を行います。違反内容が悪質な場合には、指導を省略して直ぐに是正勧告を行うことも可能です。

指導と同じく、是正勧告した後も改善されたかどうかを確認します。

(4)違反内容が悪質な場合には逮捕もあり得る

労働基準監督官は、労働基準法違反の罪について、司法警察官と同じ職務を行うことができます(労働基準法101条、102条)。

調査した結果、違反内容が極めて悪質である場合や、指導、是正勧告に従わない場合には事業主を逮捕することもできます。

また、労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、且つ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができます(同法103条、96条の3第1項)。このとき、労働基準監督官は、使用者に命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることができます(同法103条、96条の3第2項)。

4、まだある!労基署以外の通報(相談)先

本項では、労基署以外の通報(相談)先をみていきます。

事案の内容にしたがって、相談先を検討してください。

(1)労働法関連違反

①総合労働相談コーナー

労働局が設置している相談窓口で、多くは労働基準監督署内に設けられています。労働に関する相談全般を受けてくれます。労働法関連違反について、何か相談事があるならぜひ訪れてみるべきところでしょう。

②労働局の雇用環境・均等部

各都道府県にある労働局の部署です。主にパワハラや解雇、セクハラ、マタハラなどの雇用環境問題について相談に応じてくれます。企業への指導や紛争解決のあっせんなども行ってもらえます。

③法テラス(日本司法支援センター)

国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」です。
刑事・民事を問わず、誰もが法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにするという構想で、法務省所管の公的な法人です。電話やメールで適切な相談窓口を無料で案内してくれたり、無料法律相談などを行ってくれたりします。

④かいけつサポート

民事上の紛争を利害関係のない公正中立な第三者が、当事者の言い分を聞いた上で専門家としての知見を活かして柔軟な和解解決を図るもので、構想の下、法務大臣の認証を受けた民間業者が行っています。

日本各地に認証を受けた業者が存在しますので、お近くのところに相談してみるというのも一つの方法です。

(2)公益通報となる法律違反

①行政機関

公益対象事実の内容(事業者の違反行為の内容)によって、様々な行政機関に通報できます。

例えば、

  • 衛生に関する法令違反なら保健所
  • 消費者保護に関する法令違反なら消費者庁
  • 談合などの公正取引に関する法令違反なら公正取引委員会

等があります。

どの行政機関に通報すればよいか分からない場合には、まずは弁護士に相談し、事業者(会社)の行為がどの法律に違反するのか、どこに通報するのが最も適切かをみてもらいましょう。

②会社内の内部通報窓口

事業者(会社)によって、公益通報者保護法に基づいて社内の人事部等に内部通報窓口を設けている場合があります。自分が労務提供している会社が内部通報窓口を設けているか確認してみましょう。

内部通報窓口を設けている場合、公益通報者保護法により保護されますので、減給、降格等の不利益取扱いを受けることはありません。

内部通報の場合、行政機関への通報と異なり、通報対象事実が生じるか、またはまさに生じようとしていると思料する場合に保護されます(公益通報者保護法3条1号)。つまり、行政機関への通報の場合に必要とされる通報対象事実が生じるか、生じようとしていると信じるについて相当な理由があるとき(公益通報者保護法3条2号)よりも緩やかな条件で保護されることになります。

これは、内部通報と行政機関への通報とを比較して、行政機関への通報の方が企業にとっても損害が大きいため、行政機関への通報をより慎重に行うべきという考えによるものです。

ですので、会社内に内部通報窓口がある場合には、まず、内部通報を検討するのが賢明です。

③外部通報

マスコミ等、報道機関への通報も考えられます。報道機関には取材源秘匿の自由が保障されていますので、あなたが通報したことが会社側に知られるリスクは極めて少ないと言えます。

ただし、外部通報の場合は、通報対象事実が生じるか、まさに生じようとしていると信じるに足りる相当な理由に加えて、公益通報すれば証拠が隠滅されたり偽造されたりするおそれがある場合など、内部通報、行政機関への通報と比較してより厳しい要件を満たさないと保護されません(公益通報者保護法3条3号)ので、内部通報、行政機関への通報を先に検討した方が良いと言えます。

5、通報前に弁護士に相談するのもおススメ

安全性が確保されているとはいえ、実際通報するとなると怖い、抵抗があると思う方は多いのではないでしょうか。それは大きな会社を相手とするのですから、当然の感情だと思います。

そんなとき、力強い味方になるのが弁護士です。

以下、弁護士に相談するメリットをみていきます。

(1)安全な通報となる、保護要件の該当性を確認

弁護士であれば、事業者(会社)の行為がどんな法令に違反するのか、どこに通報するのが適切かをケースごとにリスクを説明の上、的確にアドバイスしてくれます。

公益通報者保護法により保護されるかどうかもアドバイスしてもらえるでしょう。

(2)労基署に素早く動いてもらうための工夫をアドバイス

証拠が不十分であるなどのケースにおいては、労基署の動きが鈍いケースもあります。弁護士に相談すれば、労基署から事業者(会社)に対して、速やかに調査、指導、是正勧告してもらうためにどんな資料を集めておけばよいのかもアドバイスしてもらえます。

(3)証拠がない場合の対策を提案

通報を適切に行うために必要な証拠がない場合に、どんな方法で証拠を集めればよいかなども、弁護士からアドバイスしてもらえるでしょう。

(4)被害回復の方法を提案してもらえる

通報前にすでに労務提供先の事業者(会社)から不利益を受けているケースにおいては、不当解雇の無効や不当な扱いに対する損害賠償請求など、通報の他に被害回復方法について考えてもらえ、さらにその請求まで依頼することができます。

まとめ

労働基準監督署は強い権限を持っています。通報を受ければ、事業者に対して調査を行い、法令違反を認めれば、指導、是正勧告を行ってくれます。通報したことで事業者から不利益な取扱いを受けることはありません。

ただ、事業者側に法律違反があるかどうか、あるとしてどこに通報するのが適切か、通報するにはどんな資料が必要かなど、なかなか判断が難しいケースもありますので、まずは弁護士に相談してみるのがおススメです。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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