弁護士保険を離婚に際して利用したいが、具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのか知りたい……。
高額な弁護士費用を抑えながら弁護士に依頼できる「弁護士保険」というものについて、いま一度確認しましょう。
今回は、
- 離婚における弁護士の活用例
- 弁護士保険を離婚で利用したらできること
などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。他にも、補償割合に関することや、弁護士保険の注意点などについても紹介します。
目次
1、離婚における不安は弁護士保険で安心に!
離婚は頻繁に経験するものではありません。不安なことも多くあるでしょう。
弁護士保険に加入することで、離婚への不安を軽減できます。
離婚に際して生じる弁護士費用と、弁護士保険に加入していた場合の補償額について解説します。
(1)弁護士保険で弁護士費用の不安を楽に
弁護士費用は、それぞれの法律事務所によって金額は異なります。
以下の金額が弁護士費用の目安です。
弁護士保険に入っていることで、弁護士費用の補償を受けられます。
①相談料
相談料は、30分5000円が一般的です。
初回無料相談の場合、2回目以降の相談には相談料が生じます。
そんなとき、弁護士保険に加入していれば、相談料についての補償が受けられることが多いです。
弁護士保険で定められた限度額に達するまでなら何度も相談できる場合が多いので、複数の弁護士の話を聞けるのも魅力でしょう。
②着手金
着手金とは、弁護士が事件に着手する際に依頼者から最初に支払ってもらう弁護士費用です。
離婚事件の着手金は、約30万~40万円が一般的です。
親権で熾烈な争いが生じている場合や、財産分与で多くの調査が必要となる場合などは、この金額よりも着手金が高額になることもあります。
弁護士保険の種類にもよりますが、弁護士保険に加入していた場合、50%から100%近くまで補償を受けられるでしょう。
③報酬金
報酬金とは、事件が解決された際に支払うもので、成功報酬ともいいます。
離婚における成功報酬としては、30万円程度が相場です。
加えて、慰謝料や財産分与などで経済的利益を受けた場合は、その金額から10%ほどが加算されます。
弁護士保険に加入していた場合、多くの保険で補償を受けられますが、全く補償がない保険もありますので、事前に確認しましょう。
④日当
裁判所が遠い場所などでは、日当として費用がかかることもあります。
距離にもよりますが、出張日当の他に宿泊費や交通費がかかる場合もあります。
なお、日当については、保険の補償外となっているものもあります。
(2)離婚に詳しい弁護士の紹介も受けられる
弁護士を利用したいと考えていても、いきなり法律事務所に行くのは気が重いかもしれません。
知り合いの弁護士なら気軽に相談できるかもしれませんが、知り合いの弁護士がいないという方の方が多いのではないでしょうか。
弁護士保険に加入していれば、離婚事件に詳しい弁護士の紹介を受けられますので安心です。
「女性弁護士がいい」「家から近い法律事務所がいい」などの希望を伝えれば、厳選して弁護士を紹介してもらえます。
2、離婚における弁護士活用例
まずは、離婚における弁護士の活用例を3つ紹介します。
(1)離婚すべきかどうか迷っているYさん
Yさんは、専業主婦で4歳になる子どもがいます。
夫は結婚当初から仕事一筋であり、毎日夜遅くに帰宅をし、夫婦での会話もほとんどありません。
Yさんは子どものためと思い結婚生活を続けておりましたが、帰宅してもイライラしてばかりの夫との関係をどうするか迷っていました。
そのようななか、離婚を経験している友人から弁護士へ相談を勧められ、Yさんは恐る恐る法律事務所に行くことに決めました。
最近では、Yさんのように、離婚を決意する前に法律事務所への相談に行く方も増えています。
法律事務所では初回無料相談を行っているところも多いため、気軽に相談に行ってみると良いかと思います。
弁護士は、離婚までの手続きや、離婚を切り出すまでにするべきことなどを丁寧に説明してくれるでしょう。
早期相談をすることで、離婚に向けたイメージがしやすく、やるべきことや離婚のデメリットなどについても知ることができます。
離婚問題は、早期の適切な対処も重要です。
Yさんのように離婚を考えた段階で相談に行くことは、より有利な条件での離婚に向けての第一歩といえるでしょう。
また、弁護士はカウンセラーとまではいきませんが、多くの離婚事件を扱っています。
依頼者の不満などに対して、法的な問題を離れたアドバイスを期待できます。
弁護士に相談をすることで、心理的にも楽になるでしょう。
(2)嫌いな夫と離婚を進めるも口も聞きたくないSさん
50代後半のSさんのケースです。
Sさんは、かねてから子どもたちが独立をしたら夫と離婚をしたいと考えており、最近子どもたちが独立。
しかし、夫との会話は長年無く、離婚について夫と話し合う気にもなりません。
このような場合、弁護士に依頼をすることで離婚の交渉を一任することができます。
弁護士に一任をすることで、自らは交渉に立ち会う必要はありません。
夫と直接やりとりするというストレスは軽減され、スムーズに離婚できるでしょう。
また、婚姻期間が長くなると、財産分与が複雑になることが多々あります。
弁護士に依頼すれば、銀行や保険会社への照会などによって、しっかりと財産分与の対象財産の調査が可能です。
複雑な財産分与について、損なく進められるでしょう。
加えて、年金分割など当事者間での協議では忘れがちな点も、しっかり行ってくれます。
以上のことより、Sさんのような場合も、弁護士に依頼するメリットは大きいといえます。
(3)前妻から慰謝料請求されている不倫の末離婚したNさん
会社の同僚との不倫がばれてしまい、妻と離婚したNさん。
離婚後、妻から500万円の慰謝料請求をされています。
妻の家族からも強く非難をされており、500万円の支払いも仕方ないと考えています。
慰謝料請求について、Nさんは妻から公正証書を作成するように言われています。
Nさんには公正証書についての知識はあまりないため、妻に言われるまま従おうとしているようです。
以上のようなNさんの行動は、自らの浮気に対する後ろめたさなどから生じるものであるといえます。
しかし、500万円の慰謝料は、実務上非常に多額であるという点を意識する必要があります。
上記の内容で公正証書を作成した場合、支払いができなかった際に給与の差押を受けるなど、Nさんにとって非常に大きな不利益が生じる可能性があるでしょう。
慰謝料額には、裁判上の相場というものがあります。裁判上の相場は、長年の裁判例で培われたものです。
実際に裁判へ発展した場合にも、基本的にこの相場に従って慰謝料を決めることになります。
Nさんのような状況では、一度弁護士に相談したうえで、500万円という慰謝料額が妥当なのか、再度検討をしてみるべきでしょう。
(4)妻が離婚拒否したため調停から裁判へもつれ込んだRさん
Rさんは、双方の価値観の違いによって一緒に生活することが厳しいという理由で、妻へ離婚して欲しい旨伝えました。
しかし、妻は自らが離婚の原因を作っていないことを理由に離婚を拒否しました。
当事者間での離婚の話し合いを続けるのは困難でしょう。
Rさんは、弁護士に依頼し離婚調停を申立て、離婚調停にも弁護士へ同席をお願いしました。
離婚調停でも妻との話し合いはまとまらず、離婚訴訟を提起することになりました。
離婚訴訟では、離婚調停よりも一層、法的な知識が重要になります。
以上のように、妻との話し合いが全くできなさそうな場合は、早めに弁護士に依頼をしましょう。
離婚訴訟を見据えた行動を取ることが、離婚への近道です。
話し合いが困難であるにもかかわらず、長々と離婚調停を行うことは得策とはいえません。
弁護士へ早期依頼したうえで、離婚訴訟を見据えた離婚調停を行うことによって、争点を絞った離婚訴訟の提起が可能です。
結果として、離婚までスムーズに進むでしょう。
3、保険によって弁護士費用の補償割合は異なる!
保険の種類によっては、全ての弁護士費用が補償される訳ではありません。
補償割合については、保険の種類などによっても異なります。
前述したとおり、離婚調停を依頼する場合にかかる主な費用は、相談料・着手金・成功報酬金です。
本項では、相談料1万円、着手金約30万円、報酬金40万円がかかった場合を例として、補償割合を紹介します。
(1)着手金70%補償・報酬金50%補償の保険の場合(限度額100万円)
弁護士保険には、「支払限度額」があります。
弁護士保険の支払限度額とは、「一事件で支払われる補償額の限度」です。
多くの弁護士保険で、100万円を超える金額が設定されています。
一度の事件で、100万円を超える弁護士費用が生じた場合は、支払限度での補償を受けるにとどまります。
一度の離婚事件で支払限度額を超えることは珍しいため、あまり心配はする必要はありません。
また、通常、着手金の補償には「免責額」というものがあります。
免責額は、保険加入者が自己負担をする金額をいいます。免責額のおおよその設定額は、5万円程度です。
本事例の着手金の補償額は、次のとおりです。
- 30万円(着手金)-5万円(自己負担額)×0.7(補償割合)=17万5000円
以上より、着手金分として弁護士保険で17万5000円が補償されます。
相談料1万円についても、保険料の適用があります。
次に、本事例の報酬金の補償額は以下のとおりです。
- 40万円(報酬金)×0.5(補償割合)=20万円
本事例では、71万円が弁護士費用の合計となります。
71万円のうち、38万5000円が補償額です。
そのため、ご自身が負担をする額は、32万5000円となります。
(2)着手金100%補償・報酬金100%補償の保険の場合(限度額100万円)
既に説明したように、着手金の補償には免責額が設定されていることが多いため、本事例の着手金の補償額が以下のとおりです。
- 30万円-5万円(負担額)×100%(補償割合)=25万円
相談料1万円と報酬金40万円の支払いは、満額受けることになります。
以上より、本事例では71万円の弁護士費用のうち66万円が補償されるため、ご自身の負担額は5万円です。
弁護士保険を利用すると、負担額が非常に少なくなることがご理解いただけたのではないでしょうか。
(3)保険料が高いほどより多くの補償を受けられる
弁護士保険には、さまざまな種類があります。
保険によって、補償割合や月々の保険料が異なります。
弁護士費用の負担を少しでも抑えたいのであれば、補償額の高いものを選択した方がいいかもしれません。
毎月の保険料が気になる方は、ライトなプランを選択することがおすすめです。
弁護士保険だけでなく保険全般にいえますが、保険は「万が一」に備えるものです。
月々の生活費が足りなくなるのでは、本末転倒になってしまいます。ご自身の予算に合った保険を選択しましょう。
4、その他離婚における弁護士保険の注意点
弁護士保険は、生命保険や自動車保険とは異なった独自の注意点があります。
(1)待機期間・不担保期間は補償されない
弁護士保険は、加入すればすぐに補償を受けられるものではありません。
保険金の支払が開始されるのは、待機期間と不担保期間が経過してからです。
「待機期間」とは、保険に加入した後、3ヶ月ほどの間は補償を受けられない期間を指します。
既にトラブルが発生していたり、トラブルが発生する直前に保険へ加入したりといった際に備え定められた期間です。
離婚事件や相続事件には、待機期間よりも長い「不担保期間」が定められていることが多いです。
待機期間と同様に、約1~3年間は保険料が支払われないという期間です。
不担保期間が定められているのは、離婚事件の性質によるものです。
具体的に、離婚事件の多くがトラブル発生から実際に弁護士を利用するまでに3ヶ月以上かかることから、調整のために定められています。
以上のように、待機期間や不担保期間がありますので、早めに弁護士保険へ加入するべきでしょう。
(2)弁護士費用以外の損害については補償されない
誤解しやすい点として、あくまでも弁護士保険は「弁護士費用に対する保険」ということがあります。
離婚事件で決まった財産分与や慰謝料請求の額は、補償の対象では無いということです。
賠償額などの費用は、あなた個人が相手方に負うものなので、保険では対応できません。
以上の点は、自動車保険の対人賠償保険とは異なるので、注意しましょう。
5、離婚の弁護士保険で気軽に弁護士を味方に
今の時代、離婚は誰にでも起きるものです。
感情的な問題だけでは無く、財産分与や親権などの問題がつきものですから、揉めずに離婚できる方が珍しいでしょう。
揉めていないケースにおいても、実は争いを始めから諦めており、泣き寝入りをしているということも少なくありません。
弁護士保険を利用することによって、より気軽に弁護士を味方にできれば、ご自身にとって有利な手続きを進められるでしょう。
離婚の弁護士保険のQ&A
Q1.離婚における弁護士活用例は?
- 離婚すべきかどうか迷っている
- 嫌いな夫と離婚を進めるも口も聞きたくない
- 前妻から慰謝料請求されている不倫の末離婚した
- 妻が離婚拒否したため調停から裁判へもつれ込んだ
Q2.保険によって弁護士費用の補償割合は異なる?
保険の種類によっては、全ての弁護士費用が補償される訳ではありません。
補償割合については、保険の種類などによっても異なります。
Q3.離婚における弁護士保険の注意点は?
- 待機期間・不担保期間は補償されない
- 弁護士費用以外の損害については補償されない
まとめ
今回の記事では、離婚に焦点を絞って説明をしました。
弁護士保険は、離婚事件以外にも幅広く弁護士費用を負担してくれます。
弁護士保険に加入をすることで、離婚以外のあらゆる事件に備えることができます。
離婚を決意した場合、インターネットでの調査や周りの友人に話を聞くことも大事です。
しかし、早めに専門家の意見を聞くことが最も重要といえるでしょう。
当事者間での話し合いでは、夫婦間の力関係がそのまま浮き彫りになってしまい、話し合いにならないということもあり得ます。
離婚の話を進めることは、今後の人生を決める大事な時期ですので、妥協してはいけません。
弁護士保険を利用して、より安心のできる生活を築いていきましょう。