弁護士保険は、いつから補償が始まるのでしょうか。
弁護士保険を利用したいけれど、トラブル真っ只中に新しく加入して今すぐに補償を受けることは可能なのか、疑問に思っている方も少なくないでしょう。
弁護士保険の補償がいつから始まるかについては、注意点がありますので、トラブルが起こる前にしっかり確認すべきです
今回は、
- 弁護士保険の補償はいつから開始するのか
- 弁護士保険の補償対象外となる事件
について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
他にも、弁護士が必要となる具体的なトラブルや、自分に合った弁護士保険の見分け方についても紹介します。
この記事が、弁護士保険の利用を検討している方々のご参考になれば幸いです。
1、弁護士保険はいつから補償が開始する?
弁護士保険は、弁護士費用を補償してくれる保険です。
弁護士保険では、補償開始時期が定められています。
弁護士保険の契約をした翌日から補償されるものではないことに、注意が必要となります。
本項では、弁護士保険の補償開始時期について解説します。
なお、弁護士保険にも様々なものがありますので、ここでは一般的な例としてその内容を解説していくこととします。個別の弁護士保険の具体的な内容については、個々の保険の約款などをご確認ください。
(1)弁護士保険の補補償開始は一般的には「契約日の翌月初め」
弁護士保険は、契約後第1回の保険料を支払った翌月初日から補償をされることが一般的です。
保険料を口座振替などで支払う場合は、支払時期の関係で翌々月の初日から補償が開始されることもあります。
弁護士保険によっては、保険会社が保険料を受領した日から補償が開始される場合もありますので、詳しくは保険会社にお確かめください。
(2)トラブル発生中に契約すれば弁護士費用はお得に?
「すでにトラブルが発生しているなかで、現在弁護士保険を契約できるの?」という点が気になる方も多いのではないでしょうか。
契約してすぐに補償が開始するとすれば、弁護士費用がお得になるため、当然の発想でしょう。
しかし、残念ながら、弁護士保険はそのような設計でないことが一般的でしょう。
次項で、弁護士保険の仕組みについて説明します。
2、弁護士保険には「補償対象外」がある
弁護士保険は、以下のような設計になっていることが多いです。
(1)対象外事件
以下の事件においては、弁護士保険による補償の対象外です。
- ①事件の類型として補償対象外となっているもの
- ②契約前から発生しているトラブル
- ③被保険者以外のトラブル
①事件の類型として補償対象外となっているもの
事件の類型として補償対象外となっているものの一つ目として、「債務整理に関してのトラブル」が挙げられます。
債務整理とは、簡単にいうと「借金の整理等により借金総額を減少・免除を受けるもの」です。
自ら借金を増やしながら、その処理を弁護士に依頼できてしまうと、過大に補償を受けられる場合が出てきてしまいます。
以上のことから、債務整理に関するトラブルは弁護士保険の補償対象外となっているケースがあります。
また、刑事事件で犯罪を行った場合の弁護人報酬についても、保険の対象外となっているケースがあります。
刑事事件は、債務整理と同様に保険加入者が自らトラブルを発生させているという性質があるためです。
②契約前から発生しているトラブル
事件の類型として弁護士保険の補償対象であっても、既にトラブルが発生している事件については基本的には補償の対象外です。
既に述べたとおり、保険会社では、保険契約成立後1回目の保険料を支払った翌月の初日から補償が開始します。
補償の対象となるトラブルについても、補償開始後に限った運用です。
保険契約締結後に補償が開始する日を「責任開始日」といいます。
補償開始日よりも後に弁護士へ相談したとしても、責任開始日にトラブルが既に生じているのであれば、補償の対象外となる場合が多いのでご注意ください。
③被保険者以外のトラブルなど
弁護士保険の対象となるのは、原則として被保険者のみになります。
被保険者のご家族に何かトラブルが生じたとしても、基本的には補償の対象とはなりません。
しかし、保険によっては「家族特約」という商品が販売されています。
「家族特約」は、親族に限って格安の保険料(追加料金無しの保険もあります)で補償を受けられるサービスです。
弁護士保険に加入をする際は、ご家族での加入も検討をしてみましょう。
(2)待機期間内の事件
前述した「責任開始日」に加え、一定の事件については「待機期間」が設けられています。
「待機期間」は約3ヶ月程度であり、待機期間に生じたトラブルについても、補償の対象外です。
(3)不担保期間が設けられた事件のうち不担保期間に発生した事件
離婚事件や相続事件などの家事事件については、待機期間よりもさらに長い「不担保期間」というものが定められていることがあります。
「不担保期間」は、責任開始日より約1年~3年間程度で設定されていることがあり、この期間は補償の対象となりません。
(4)小括|事件別の補償開始日と補償の範囲
以上までに説明したことをまとめると、事件ごとの弁護士保険の補償開始日は下記の表のとおりです。
事件の種類 | 補償開始日 |
偶発事件(自動車事故など) | 責任開始日から |
一般事件(近隣トラブルなど) | 責任開始日および待機期間経過後 |
家事事件(離婚、相続など) | 責任開始日および不担保期間経過後 |
※保険会社によって異なる場合があります。
なお、弁護士保険で受けられる補償は、弁護士費用の一部であり、全ての弁護士費用が補償される訳ではありません。
事件別の補償範囲については、次のとおりです。
①偶発事件
交通事故などの特定偶然事故については、法律相談料と弁護士費用等の実費相当額が全て補償されるのが一般的です(補償の限度額あり)。
②一般事件・家事事件
一般事件や家事事件の場合、弁護士費用の一部は補償されないという運用がとられています。
具体的には、一般事件や家事事件では、基準弁護士費用に対して「免責金額」というものが5万円程度引かれることがあります。
免責金額に対して、あらかじめ定められた補償割合をかけた金額が、実際の補償額です。
具体的に、弁護士費用30万円の場合の補償額を事例に計算してみましょう。
- 弁護士費用30万円-5万円(免責金額)×80%(補償割合)=20万円
上記事例では、30万円の弁護士費用のうち、20万円が補償の対象となっています。
補償割合は保険によって異なり、保険料の高い商品ほど補償割合も大きくなることが特徴です。
3、弁護士に依頼したくなることって人生でどれくらいある?
あなたが、今この瞬間に弁護士に依頼したいトラブルを抱えているのに、弁護士保険が適用できなければ、弁護士保険の加入は意味がないように思えるかもしれません。
しかし、今抱えているトラブル以外にも、人生において、弁護士に依頼すると得することは意外とたくさん身近にあります。
以下の項目に挙げたようなトラブルに対して、弁護士がどのように動き、どのようなメリットがあるのかを簡潔に説明します。
(1)離婚
3組に1組が離婚をしているといわれる現代において、離婚は身近なできごとです。
夫婦問わず、離婚を考えているという方は多いかと思います。
しかし、離婚というのは結婚するよりもはるかに大変であり、早期解決は難しいでしょう。
離婚が難しい理由として、離婚にはさまざまな法律問題が関わってくることが挙げられます。
例えば、子どもの親権・養育費や夫婦の財産分与、慰謝料などです。
法的な問題は、夫婦間であっても理解は異なりますし、お互いに自分の感情を優先してしまい話が進まないこともあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、具体的なアドバイスのもとで有利な条件で離婚を進めることが可能です。
他にも、弁護士はあなたの代わりに配偶者と交渉をしてくれます。
配偶者と直接の話し合いをしなくて良くなり、ストレスが格段に減ることになるでしょう。
(2)借金整理(債務整理)
今や消費者金融は街の至るところにあり、銀行でも簡単に借入が可能です。
消費者金融や銀行のカードローンの広告に有名俳優が出演していることも影響して、借金のハードルは低くなっているといえるでしょう。
加えて、奨学金やショッピングリボなどもあり、若い人でも何らかの借金を負っているのが一般的になりつつあります。
ついつい借りすぎてしまい、毎月の返済が苦しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
借金相談は、弁護士に相談をするメリットが大きい分野です。
弁護士は、債権者への交渉や裁判所を通して借金額を減免できます。
既に記載したように、弁護士保険では債務整理の依頼については補償の対象外となっているところもありますが、相談料は補償の対象となっていることがあります。
弁護士へ相談することで、具体的に借金返済のためどのような行動をすれば良いか適切なアドバイスを受けられるでしょう。
(3)労働トラブル(残業代請求や労災請求など)
労働トラブルは、誰にでも起こりうるものです。
労働トラブルには、次のような幅広い内容のものがあります。
- 残業代未払い
- 退職に関するトラブル
- 通勤中や勤務中などの事故(労働災害)
- パワハラやセクハラなどのハラスメントの問題
労働問題では、会社と一従業員という立場の違いから、個人で解決をすることが難しい事件類型といえるでしょう。
弁護士に依頼することで、会社との交渉を一任でき、交渉でまとまらない場合は訴訟まで一貫して任せられます。
(4)交通事故
交通事故は、思いがけないとき起こるものです。
交通事故加害者となってしまった場合には、多額の損害賠償請求をされる可能性があります。
法的知識がなければ、交通事故における治療費や後遺症障害の等級、慰謝料などを適切に争うことができないでしょう。
しかし、一般の方で、交通事故に詳しい方は多くありません。
弁護士に依頼すれば、相手方本人や相手方の保険会社等との交渉を任せることができます。
適切な賠償額での話し合いが可能でしょう。
自動車保険に加入する際に、「弁護士費用特約」というものがあります。
交通事故の際は、弁護士費用特約を使用することも可能です。
しかし、自動車保険に加入していても、必ずしも、弁護士費用特約に加入しているとは限りません。また、普段自動車に乗らないため自動車保険にそもそも加入していない方で、交通事故に遭ってしまう方もいることでしょう。
そのような場合、弁護士保険で弁護士費用の一部を補うことができます。
(5)相続
親や親族が亡くなった後の相続問題も、突然起こります。
「うちは遺産も少ないし大丈夫」だと考えている方でも、実際に相続になると熾烈な相続争いが生じるケースもあります。
特に、親族間では感情的な対立が強くなるため、互いにあら探しなどをして話し合いが進まないこともあります。
弁護士に依頼することで、遺産の調査から具体的な分割方法の提案や、遺産を使い込みしていた他の相続人への請求をするなどして、適切な分割を実現できるでしょう。
(6)債権回収
債権回収とは、支払期限が到来しているにもかかわらず支払いをしてくれない場合などに、支払ってもらうべき金額を回収することです。
賃料の支払いがされない場合などの賃料の回収なども、債権回収に含まれます。
任意に支払いをしてくれない方からの債権回収は、非常に労力のかかる作業です。
いつまでに支払うという合意ができたとしても、実際には金額の一部だけを支払い、残りの金額については支払いがストップしてしまった……ということも多々あります。
弁護士に依頼すれば、内容証明の通知から訴訟提起、強制執行まで任せられます。より確実に債権を回収できるでしょう。
(7)インターネットトラブル
現代のネット社会において増えているのが、「インターネットトラブル」。
具体的には、次のようなものがあります。
- SNSでの誹謗中傷
- 出会い系サイト内でのトラブル
- ワンクリック詐欺などの不当請求
インターネットトラブルは、警察に届け出ることも考えられますが、警察はあくまでも刑事手続きについての調査しか行いません。
警察に届け出たとしても、ワンクリック詐欺などで失ったお金などは返還されないため、注意が必要です。
しかし、弁護士に依頼すれば、騙された費用などの返還請求や誹謗文言の削除請求、詐欺被害の調査や交渉などを任せることが可能です。
(8)男女問題(不倫など)
不倫などの男女間の問題による慰謝料請求についても、弁護士への依頼が必要な場面といえます。
男女問題は、当事者間では話し合いは困難であることが多く、下手に当事者間でまとめようとすると、さらに複雑化するおそれがあります。
弁護士であれば、より有利な条件で慰謝料の金額などをまとめることができるでしょう。
(9)学校トラブル(いじめなど)
学校でのトラブルについても、弁護士が代理人となることができる場面といえます。
いじめなどのトラブルは学校だけでなく、教育委員会や児童相談所、警察などさまざまな施設と交渉をしなければなりません。
学校トラブルについても、弁護士に依頼することで、交渉から裁判手続きまで任せられます。
また、いじめ加害者や学校関係者との話し合いでは、弁護士が同席してくれますので安心して話し合いできるでしょう。
弁護士が代理人として入ることで、学校関係者もより積極的に調査を行ってくれる傾向があります。
(10)不動産トラブル(賃貸借のトラブルなど)
欠陥住宅や不動産の明渡しなどの不動産トラブルについても、弁護士の得意分野といえます。
欠陥住宅など不動産に瑕疵がある場合は、請負業者などに対して修補や損害場使用を求める必要があります。
また、賃料を支払わない賃借人に対しては、賃料の支払いを求めるとともに不動産の明渡しを求めることが必要です。
強制執行などは、裁判所を通さなければ行えないため、より高度な法的知識が必要といえるでしょう。
弁護士に依頼すれば、不動産トラブルもスムーズに解決できるでしょう。
(11)刑事事件(加害者でも被害者でも)
刑事事件の被害者になった場合も、弁護士への依頼がおすすめです。
刑事事件全体についての説明はもとより、刑事事件における被害者参加や犯人との示談交渉などの依頼も考えられます。
また、刑事事件の加害者になってしまった場合にも、弁護士への依頼が必要です。
刑事事件では、弁護士を弁護人として選任することが必要であり、どの弁護士に依頼をするかはあなたの人生を決めるとても大切な選択となります。
弁護士保険に加入していれば、妥協せず弁護士を選定できるでしょう。
4、弁護士保険の賢い見極め方
現在流通している弁護士保険には、いくつかの種類があります。
保険によって内容はさまざまですが、弁護士保険から弁護士費用が支払われる点については、基本的に同じような補償内容です。
まず考えるべきは、コストパフォーマンスがよいかどうかということでしょう。
得られる補償と月々の保険料を考え、ご自身にあった保険への加入をおすすめします。
まとめ
今回は、弁護士保険がいつから補償されるのかを中心に説明しました。
実際に弁護士に依頼をしたことがある方は、少ないのではないでしょうか。弁護士は自分と縁がないものと考えているかもしれません。
しかし、弁護士に相談や依頼をする場面は日常生活上ではかなり多く、泣き寝入りをする前にもっと気軽に相談をするべきといえます。
弁護士保険に加入することで、弁護士費用の大部分を補うことが出来る可能性があります。
弁護士保険経由で弁護士に依頼すれば、ご自身がより納得できる解決へ進めることができるでしょう。
この記事を参考に、一度弁護士保険への加入を考えてみませんか。