
みなさんの中には、朝早くから出社して夜も遅くまで残業している方も多いのではないでしょうか。いわゆる「長時間労働」の問題です。
毎日の長時間労働で心身ともにすり減り、疲れ切っていることでしょう。ストレスで精神的な限界が来る前に、今の状況をなんとか改善したいと思っている方もいらっしゃると思います。
しかし、長時間労働について、どこの誰に相談すればいいのか分からず、困っているのではないでしょうか。
そこで、今回は、
長時間労働を相談できる5つの窓口について
その窓口と、それぞれの窓口によってできることとできないことについて解説していこうと思います。
そして、問題解決のために最もメリットが大きいのは弁護士に相談することである理由についても説明していきますので、長時間労働に苦しんでいる方は、是非最後まで読んで現状打開に役立ててください。
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目次
1、長時間労働の5つの相談窓口
早速、長時間労働を相談できる5つの相談先についてご紹介していきます。
(1)労働基準監督署
労働基準監督署とは、労働基準法などの労働基準関係法令を守らない企業を監督指導し、取り締まる機関で、長時間労働が疑われる事業場に対して監督指導も行います。
厚生労働省によれば、令和元年度に長時間労働が疑われるとして監督指導の対象となった32,981事業場のうち47.3%にあたる15,593事業場で違法な時間外労働が確認されたとして、是正・改善に向けた指導が実施されています。
なお、対象となった事業場のうち実際に1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、違法な時間外労働があったもののうち37.1%にあたる5,785事業場でした。
このように、労基署は違法な長時間労働に対しては厳しい姿勢で臨んでいます。
労基署は、労働基準法等の労働関係法令が遵守されるよう、労働基準監督官が事業場に立ち入り、事業主の事情聴取や書類の確認を行う「臨検監督」を実施することができ、事業主が臨検を拒んだ場合、刑事罰の対象となります。
臨検監督のうち「申告監督」では、事業場に勤務する労働者など、第三者からの具体的な相談を契機として労基署が調査を行います。
ただし、第三者が労基署に申告するにあたっては、具体的な法令の違反事実を申告する必要があります。
漠然と労働時間が長いので困っていると相談したとしても、労基署は動いてくれないでしょう。それなりの資料を集め、違反実態を疎明する必要があります。
また、労働者に代わって会社と交渉や話合いを行ってくれるわけではありませんので、長時間労働への救済としては直接性を欠くとも言えるでしょう。仮に労基署からの指導が入ったにも関わらず、事業場が実行的な改善に応じなければ、従業員の職場環境が改善されることは期待できません。
(2)労働条件相談ほっとライン
「労働条件相談ほっとライン」は、違法な時間外労働・過重労働による健康障害・貸金不払残業などの労働基準関係法令に関する問題について、専門的知識を持つ相談員が、法令・裁判例を踏まえた相談対応や各関係機関の紹介などを行う電話相談です。
この事業は、厚生労働省が株式会社東京リーガルマインドに委託して運営している事業です。労働基準監督署が閉庁している平日夜間や土日祝日も、フリーダイヤルで電話相談をすることができます。
また、日本語に加え、英語、中国語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語などの13言語に対応しています。
各種ハラスメントや職場のいじめや嫌がらせ等については、専門の相談窓口へ案内してくれます。
ただし、「労働条件相談ほっとライン」が直接事業場に対して指導・勧告等を行うことはできません。
(3)労働相談ホットライン
「労働相談ホットライン」というものもあります。
これは全労連が設置している電話相談窓口です。
フリーダイヤルで地域に設置されている常設労働相談センターに繋がります。
電話相談の受付は月曜~金曜の午前10時~午後5時までです。
メール相談にも対応しています。
労働相談ホットラインや労働相談センターでは、労働者と使用者が当事者間でトラブルを解決できるように、具体的な助言や情報提供を行ってくれます。
一方で、相談窓口が直接具体的な措置を講じてくれるわけではありませんので、労働者に代わって会社に対して何らかの請求をしてくれるわけではありません。
(4)都道府県労働局
都道府県労働局では、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、
①総合労働相談センターにおける情報提供・相談
②都道府県労働局長による助言・指導
③紛争調整委員会によるあっせん
の3つの紛争解決援助制度が用意されています。
「総合労働相談コーナー」は、職場のトラブルに関する相談や情報提供をワンストップで行うことを目的に設置されています。
専門の相談員が面談もしくは電話で対応してくれ、予約は不要で無料で利用することができます。
総合労働相談コーナーでは、関連する法令・裁判例などの情報提供や助言・指導制度及びあっせん制度についての説明を受けることができます。また、必要に応じて労政主管事務所、労働委員会、裁判所、法テラス(日本司法支援センター)、労使団体における相談窓口等への連携も行ってくれます。
助言・指導は、総合労働相談コーナーで助言・指導の申出を行った場合に、都道府県労働局長からなされます。助言・指導は、労働者と使用者との間の自主的な解決の促進を目指すものです。
助言・指導でも解決しない場合には、次の「あっせん制度」に移行します。
この「あっせん制度」は、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家である紛争調整員が担当し、労使双方の主張の要点を確かめ調整を行うものです。
「あっせん制度」も無料で利用することができ、また、裁判手続に比較して迅速かつ簡便に行うことができます。
しかし、この「あっせん制度」も当事者間での話し合いを促進することで双方の合意を目指す手続ですので、労使いずれか一方でも納得できない場合には紛争の終局的な解決とはなりません。
解決できない場合には、労働審判や民事訴訟などの他の制度を利用する必要があります。
(5)弁護士
長時間労働に関するトラブルについては、弁護士に依頼することができます。
弁護士に依頼することの具体的なメリットは後程解説しますが、最大のメリットは依頼者の具体的な権利利益を実現するために行動してくれるということです。
労働者を代理して労働者の利益が最大化するために行動してくれる点は、上記で紹介した他の相談窓口にはないメリットです。
2、長時間労働を相談する前に整理!長時間労働になる理由
長時間労働の是正を図るうえで、そもそも長時間労働になる原因はどこにあるのでしょうか。
(1)人手不足・業務量が多すぎる
労働時間が長時間化するもっとも大きな原因として考えられるのは、業務量が多く労働時間内に処理しきれないということです。
業務量が多いとしてもそれを処理するだけのマンパワーがあれば問題ないはずですので、人員の不足も原因になっていると考えられます。
業務量が常に多い状態が続けば、そのような労働環境で働く労働者の心身の疲労が蓄積され、健康不良による休職・退職につながるリスクがあります。
(2)マネジメントができていない
長時間労働化する原因として、管理職や上司が部下の業務量を適切に把握できていないというマネジメント力の欠如が考えられます。
日々の部下の業務態様や仕事量を管理することができていなければ、部下が上司に直訴または限界が訪れるまで長時間労働が継続してしまいます。
さらに悪いことに、部下の長時間労働の実態を把握していながら漫然と放置し何らの措置を講じない場合も考えられますが、そのような事態はマネジメントの放棄です。
そのような実態は、長時間労働に気づきながらも仕事量を減らしたくないという管理職の思惑から招来されてしまいます。
(3)繁閑差が大きすぎる
さらに、繁忙期と閑散期の差が著しく大きい場合も、繁忙期に長時間労働が起こりやすい原因のひとつです。なぜなら、余剰人員を抱えることは企業にとって非合理的なため、閑散期をベースに従業員を配備してしまっている可能性があるからです。
(4)長時間労働を美徳とする企業体制
日本の悪しき企業文化として、長時間労働を美徳であるととらえる考え方が未だに蔓延しています。
社内評価の基準として、他の従業員と比較して他人よりも長く働いていることが評価の対象となっているのです。
そのような企業文化が醸成されている場合、無駄な時間を減らそうと努力することもなされにくいのです。
3、長時間労働の相談で知りたい!会社の違法性
(1)長時間労働が違法なケース
労働時間は、1週間で40時間を超えてはならず、1日に関しては8時間を超えてはいけません。
この法定労働時間を超えて労働者を働かせるには、36協定を締結して届出ておく必要があります。
36協定は、事業場の過半数を組織する労働組合か過半数代表者と締結する必要があります。
そして、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間であり臨時的な特別な事情がなければこれを越えることはできません。
なお、36協定を締結していたとしても残業代の支払義務までなくなるわけではありません。
(2)違法な長時間労働に対してとるべき対策
労働者が法定労働時間を超えて働いた場合や休日労働をした場合には、その時間に応じて割増賃金が支払われます。
割増賃金は、1時間あたりの賃金を算出して割増率に応じて金額を加算して割増賃金の対象となる時間を乗じることで計算されます。
割増率に関しては、
- 時間外労働は、「1時間あたりの賃金×1.25以上」
- 休日労働は、「1時間あたりの賃金×1.35以上」
です。
時間外労働に関して割増賃金を会社に請求するには、労働時間が分かる証拠が必要となります。
労働契約書のほか、タイムカードや利用時間の分かる公共交通機関の記録、家族へのLINEのやりとりなどで1日当たりの労働時間を算出する必要があります。
4、長時間労働の相談は弁護士相談がおすすめ
長時間労働に関する相談は、弁護士相談を利用しましょう。弁護士に依頼することで、個別的な悩みに対する直接的な解決を図ることができます。
また、弁護士は依頼人を代理して行動してくれますので、会社との面倒な交渉の窓口となってくれます。
さらに、会社との任意での話し合いがまとまらなかった場合には、労働審判や民事訴訟手続へ移行することになりますが、そのような際も弁護士に任せておけば適切な主張・反論を行ってくれ、依頼者の利益が最大になるように全力を尽くしてくれます。
まとめ
今回は長時間労働の相談や会社への対応について解説しました。
長時間労働に悩んでいる方で、この記事を読んでも具体的な手段が分からないという方は是非弁護士に相談してみましょう。ご自身にとってベストな解決策を法律の専門家がアドバイスしてくれるはずです。