死亡一時金とは、家庭を支えていた稼ぎ手が亡くなった場合に、残された遺族が受け取れる年金制度の1つです。
死亡一時金は、金額はそれほど大きくありませんが、一定の条件を満たしていれば受け取れます。
今回は、
- 死亡一時金の受給条件や手続き方法などの基礎知識
についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。この記事がお役に立ちましたら幸いです。
相続に関して詳しく知りたい方は以下リンクからご覧ください。
1、死亡一時金とは
死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料を3年以上納めた人が死亡した場合に、一定の条件のもとに生計を同じくしていた遺族に支給される給付金です。
第1号被保険者には、日本国内在住の20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業者、学生および無職の方とその配偶者の方(厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、第3号被保険者でない方)が該当します。
2、死亡一時金の受給条件や対象について
死亡一時金を受け取るためには、亡くなった人と受給対象者がいくつかの条件を満たしている必要があります。
(1)受給条件
国民年金の保険料を「3年以上納めた人」が老齢基礎年金・障害基礎年金の両方とももらわないまま死亡した場合、遺族(家族)は死亡一時金が受給できます。
(2)対象
死亡した国民年金加入者と、生計を共にしていた遺族(家族)が受給対象です。
第1号被保険者の遺族年金は、「遺族基礎年金」が有名です。
ただ、遺族基礎年金は第1号被保険者と生計をともにしていた18歳未満の子どもがいる配偶者、または18歳未満の子どもだけが受給対象者です。そのため、子どもがいない配偶者や18歳以上の子どもなど、遺族年金がもらえないケースがあるのです。
この穴を埋めるべく制定されているのが「死亡一時金」です。そのため、後述しますが遺族基礎年金を受給している場合は、死亡一時金はもらえません。
死亡一時金を受給できる遺族は配偶者や子どもに止まりません。
その範囲と順位は次のとおりで、最上位の人のみが受給できます。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
最上位者が複数いる場合は、うち一人が代表者として請求・受給、その人が他の受給権者に分割して渡すことになっています。
3、死亡一時金で受給できる金額
死亡一時金は、死亡した人が生前にどれだけ保険料を納付しているかによって金額が変わります。
(1)計算方法
死亡した日が属する月の前月までの第1号被保険者期間における保険料納付済期間から保険料免除期間をそれぞれ次のように計算し、導き出された保険料納付済期間によって支給額が決まります。
- 保険料納付済期間…実期間
- 保険料1/4免除期間…3/4の月数
- 保険料半額免除期間…1/2の月数
- 保険料3/4免除期間…1/4の月数
たとえば保険料納付済期間20年(240月)で保険料半額免除期間が1年(12月)の場合、240月+12月×1/2=246月となります。
(2)受給金額
先ほどの計算方法で導き出された月数によって、死亡一時金の受給金額が決定します。
保険料納付期間 | 一時金の額 |
36月以上180月未満 | 12万円 |
180月以上240月未満 | 14万5千円 |
240月以上300月未満 | 17万円 |
300月以上360月未満 | 22万円 |
360月以上420月未満 | 27万円 |
420月以上 | 32万円 |
さらに、毎月の保険料と付加保険料(毎月400円を別納)を3年以上納めた人が死亡した場合は、上記の金額に8,500円が追加されます。
4、死亡一時金の手続き方法
死亡一時金を申請するための必要書類や申請先について解説します。
(1)請求に必要な書類
①国民年金死亡一時金請求書
日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
参考:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todoke/kyotsu/20181011-04.html
②亡くなった人の年金手帳か基礎年金通知書
提出できないときは、その理由書を提出します。
③戸籍謄本(記載事項証明書)
亡くなった人と請求者の続柄および氏名・生年月日の確認のために必要です。
受給権が発生した日以降で提出日から6ヶ月以内に交付されたものを提出します。
④亡くなった人の住民票(除票)および請求者の世帯全員の住民票の写し
死亡者との生計同一関係の確認のため必要です。
⑤受取先金融機関の通帳等(本人名義)
請求者のカナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカード(写しも可)等、請求書に金融機関の証明を受けた場合は添付が不要です。
⑥請求者の印鑑
認め印でも可。
(2)必要書類等の提出先
死亡一時金を受け取る条件を満たしている場合は、申請手続きを行います。
申請先は市区町村役場の窓口、年金事務所または年金相談センターです。
申請時には次の書類等を提出します。
(3)失踪宣告により死亡とみなされた人の死亡一時金
失踪宣告とは、生死不明の人に対して法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
失踪宣告を受けた人の家族も、条件を満たせば死亡一時金を受け取ることができます。
(4)東日本大震災により行方不明となった方の死亡一時金
「東日本大震災により死亡した死体未発見者に係る死亡届の取扱いについて」(法務省通知)により、死亡一時金が支給されるようになりました。
5、死亡一時金には時効がある
死亡一時金は死亡した日の翌日から2年を経過すると時効により消滅、請求できなくなります。
失踪宣告が確定したときは、確定日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
6、死亡一時金が受け取れないケース
(1)老齢基礎年金、障害基礎年金を受け取ったことがある
亡くなった人が老齢基礎年金や障害基礎年金の支給を受けたことがあるときは、死亡一時金は支給されません。
さらに、遺族にいずれかの年金が支給されるときも死亡一時金は受け取ることができません。
(2)寡婦年金を選択した場合
寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者で、25年以上保険料を納付またはその免除を受けた夫が死亡したときに妻に対して支給される年金です。
死亡一時金と同時に寡婦年金を受けることができるときは、両者のうちどちらを受給するか選択します。
寡婦年金についてはこちらの記事をご参照ください。
(3)遺族基礎年金が支給される場合
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした人が亡くなったときに支給されるものです。
支給されるためには、亡くなった人が次の要件のいずれかを満たす必要があります。
- 国民年金に加入中
- 60歳以上65歳未満で以前国民年金に加入していた
- 老齢基礎年金の受給中、あるいは受給資格を満たしている
さらに、故人が保険料納付等の資格期間を満たしていることが必要です。
遺族基礎年金を受け取れる人の条件は次のとおりです。
- 18歳未満の子、あるいは20歳未満で障害等級1級または2級を持っている子
- 上記に該当する子がいる配偶者
※いずれも亡くなった人と生計が同一で、亡くなった人によって生計を維持されていたことが必要です。
まとめ
一家の生計を支えていた人が亡くなると、残された遺族は収入が途絶えてしまい、生活の維持すらままなりません。
死亡一時金や各種年金は、遺族の生活を救済する措置として設けられています。
2年で時効を迎えること、その他受給要件が複雑です。
相続の問題も抱えている場合はさらなる手続きに悩まれることかと思います。
そんなときは、弁護士にどうぞご相談ください。
相続のみならず年金の受給についても適確にアドバイスをさせていただきます。