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M&Aで新規事業に進出!買収側の進め方〜5つの段階ごとのポイント

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M&Aで新規事業に進出!買収側の進め方〜5つの段階ごとのポイント

社長が突然、「M&A で新規事業に進出したい!」と言い出しました。

「これからはM&A で、一気に業容を拡大する」などと大乗り気です。

「細かなことは企画担当の君に任せる。ともかくスピードが命だ!」

そんなことを言われても、M&A というのは一体何だろう、大企業ならともかく中小企業でそんな大それたことができるのだろうか。

とはいえ、社長にどう答えればよいのでしょうか。

進むにせよ、止めるにせよ、M&A の実務でどんな注意点があるのかしっかり把握しておかないと、社長に話もできません。

そんなあなたのために、今回は弁護士がM&A の実務と注意点をすっきり説明します。

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1、M&Aとはそもそも何?

M&Aで新規事業に進出!買収側の進め方〜5つの段階ごとのポイント

(1)M&Aの定義

 M&A(エムアンドエー)は『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。

2つ以上の会社が一つになる(合併)、ある会社が他の会社を買う(買収)ということの総称です。

合併・買収だけでなく、会社間の業務提携なども含めて、広くM&A と呼ぶ場合もあります。 

(2)M&A の目的・メリットは?

M&A は、簡単に言えば、他社の事業を取り込むことです。

主な目的は、事業の拡大や、新規事業への参入等であることが多いでしょう。

自社の経営資源だけでの事業拡大や、新規事業への進出は、大変時間がかかります。

M&A で他社事業を取り込むことには、「自社の成長のための時間を、お金で買うことができる」という大きなメリットがあるのです。

しかも、既に存在している他社の事業を取り込むわけですから、一から事業拡大するよりは、リスクも少なく、しかも他社の人材や技術力も確保できることになります。

詳細については、次の記事をご覧ください。

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(3)M&A の代表的な手法

M&A の代表的な手法は、次のようなものです。

中小企業では、株式買収が一番よく用いられています。

手法

内容

趣旨・メリットデメリット、リスクなど

合併

つ以上の会社が一つになる(法人格の一本化)

完全な統合による強力な支配。

一方で、不要な事業まで取り込んだり、隠れ債務の承継といったリスク

企業文化の融合の困難さなど

買収

 

 

(1)事業譲渡

必要な事業のみを買収

譲り受けたい事業のために必要な組織・設備・人員だけ承継するのには、煩雑な手続が必要

(2)株式買取

株式を買収することにより、対象会社の法人格をそのまま残して、実質的に支配する

もっとも簡便な手法。

買収相手の独立性が保たれる一方で、

買収相手のコントロールが難しい面も生じ得る(子会社の不正を親会社で把握できずに、大事に至った事例)

(その他、株式交換、会社分割などもあります。大規模なM&Aでは、株式交換や会社分割を用いて、統合したい会社を親会社の下に、子会社として併存させ、準備が整ってから合併させる、といった手法の組み合わせもあります。)

2、そのM&A、何のための M&Aですか?

M&Aで新規事業に進出!買収側の進め方〜5つの段階ごとのポイント

M&A を検討する場合、

  • 具体的に何を目的とした M&A なのか
  • その目的を達成するには、本当にM&A が必要なのか

を分析し、本当にM&Aが必要であるという場合に

  • どの手法を用いるかを慎重に判断する

という流れで進めていきましょう。

(1)M&A の本質

M&A (買収)の本質は、対象会社や特定の事業を、自社のコントロール下に置くことです。

会社や事業をコントロール下に置くということは、そこに働く労働者への責任も負うということです。

(2)本当に M&A が必要なのか

大きな責任やリスクを負うことになるかもしれないM&A をすべきかどうかは、慎重な判断が必要です。

事業拡大や新規事業への進出といっても、M&Aに限る必要はありません

たとえば、相手先の会社と業務提携をしたり、合弁会社(ジョイントベンチャー)を設立するなど、会社対会社の契約関係で進めていく方法もあります。

事業拡大や新規事業進出の具体的な目的や内容をよく吟味して、本当に M&A によるべきなのか、仮にM&Aを行うとしても、どのような手法を用いるか、改めて考えるべきです。

この検討段階から、早めに弁護士の助言を得ておくことをおすすめします。

(3)考慮しておくべきリスクは何か

M&Aのリスクとして筆頭に上がるのは、財務会計リスクでしょう。

業績好調な会社を買収したところ、簿外債務が発覚し、想定外の負担が発生した、ということになれば、大きなリスクです。

その他、法務リスクがあります。

対象会社は、複数の企業と契約関係にあるでしょうから、それらの契約関係における損害賠償リスク、個人情報・営業秘密等の漏洩リスク、知的財産権の不適切管理のリスク、またハラスメントや未払い残業代などの労務管理リスクなど、対象会社には、さまざまなリスクが存在し得ます。

M&A については、M&A仲介会社を活用することも多いでしょう。

但し、財務会計には詳しいが、法務リスクについて広範な知識を持っているとは限りません。

M&Aを実施する場合、弁護士のアドバイスは必須と言えます。

3、M&A の進め方

ここから、いよいよ本題のM&A の進め方についてご説明します。

中小企業の場合、株式買収、それも株式譲渡の方法で行われるのが通例です。

本項では、株式譲渡を前提に解説します。

(1)準備(事前検討) 

① 目的の明確化

自社がどのような目的で、どのような内容のM&A を行うのかを明確にします。

どのようなシナジー効果(相乗効果)が期待できるか、などを考えます。

【参考:シナジーの概要】

種類

 

売上拡大のシナジー

取扱商品の増加により、範囲の経済の効果で、売上拡大

(注)範囲の経済:複数事業を別々の会社でやるより、1つの会社でまとめてやる方が効率的になる状況

コスト削減のシナジー

出荷数量を一気に増加し、規模の経済効果でコスト削減

ネットワーク外部性

利用者数を増やすことで、その財・サービスから得られる便益が増加する効果が期待できる

上流または下流への侵入

バリューチェーンの上流または下流市場への参入が期待できる

② M&Aのポリシーや方針の決定

なぜ、M&Aをやるのか?どこまで資金を出せるのか?などをあらかじめ見積もります。

想定外の状況変化が発生したりしたときの最終的な決定の基準となるでしょう。

M&Aによって、以下の要素が将来的にどう変化していくのかを検討します。

  • 事業ドメイン  ・・・ 市場はどの程度成長するのか?
  • 競争環境    ・・・ 競争優位性を高めたいのか?
  • ビジネスモデル ・・・ 利益を生み出す仕組みをどう変えたいのか?
  • 企業価値    ・・・ キャッシュフローをどの程度改善したいのか?

③ 取りうるリスクの見積もり

株式の買収であれば、自社の体力からみて、どの程度の資金まで負担できるか、どの程度の期間で、投下資金が回収できるか、など大ざっぱな見積もりを考えます。

自社の現状(資産・負債、業績推移、取引先の状況、社員の資質・能力等)の棚卸しで、リスク負担能力を把握します。

M&A の仲介会社などでもアドバイスしてくれると思いますが、最終的に決断するのは自社であり、まず自らを知ることが必要です。

事業拡大・新規事業への参入を考えるなら、M&A にかかわらず、当然検討すべき事項です。

しかし、前述の通り、M&A の本質は、対象会社や特定の事業を、自社のコントロール下に置くことです。

これまで自社が持っていなかったものを取り込む以上、想定外のリスクが生じることを覚悟し、それに耐えられるだけの体力と覚悟を自社が持っているかどうかを見極める必要があります。

(2)対象会社の選定

 ① 選定の準備

M&A 仲介会社は、M&Aを希望する会社の情報を持っていますので、自社の希望とマッチングする先があるかどうかアドバイスを受けます。

通常は、20~30社程度の候補を挙げてみて、詳細情報を得た上で10社程度に絞り、さらにM&Aの目的に沿った優先順位付けで数社程度に絞り込む、といった流れで選定を進めます。

これも、実際のM&A の目的・内容次第であり、はじめから候補を比較的少数に絞れる場合もあるでしょう。

 ② 資料の提供を受ける

仲介会社が間に入る場合には、M&Aを希望する企業の資料を、まずは名前を明かさずに提供されます(ノンネーム資料)。

交渉が進むうちに、更に詳しい資料が名前を明かして提供されます(ネームクリア)。

(3)交渉(トップ面談・条件交渉)

対象会社とのコンタクト

対象会社のキーマンに連絡をとり、実務的な交渉の準備に入ります。

M&A 仲介会社に仲立ちしてもらう事もあります。 

② トップ面談

いよいよ大詰めです。売り手と買い手の経営者同士が、顔を合わせて面談します。

トップ面談がなぜ必要なのか。

それは、経営理念や組織文化の相互理解が、M&A の鍵を握るからです。

(4)契約(基本合意書・デューデリジェンス・最終条件交渉・最終契約締結と決済・関係者への公表)

① 基本合意書の締結 

詳しい交渉に入る前に、一定の合意内容について、基本合意書を締結することがあります。

買収価格決定に必要な情報を入手するために、秘密保持や独占的交渉権、誠実交渉義務等の約定がなされます。

 ② デューデリジェンスの実施

対象会社の価値を見極めます。買収に必要な金額の計算や、買収後のリスクを把握するための活動です。

基本的には、大きく分けて4つあります。

但し、デューデリジェンスは、専門家による調査であり、フルに実施すると高額なものになります。

M&A の内容次第で、重要な分野とそうでない分野を分け、本当に必要な部分のみに的を絞るといった対応が必要です。

以下は、一般的なデューデリジェンスの内容です。

種類

内容

ビジネス・デューデリジェンス

将来的なビジネス価値の算定です。当事者や会計コンサルタントが調査します。

財務デューデリジェンス

財務状況に問題がないかの調査です。公認会計士などが調査します。

法務デューデリジェンス

係争中の問題がないか、ビジネス自体に法的な問題がないかを調査します。弁護士が担当します。

人事デューデリジェンス

人事労務の問題、人事評価や業績評価、さらに組織の価値観や組織文化などを調査します。

(このあたりをおろそかにすると、クロージング後の対応で、問題が顕在化することがあります。)

③ 最終条件に関する交渉 

これまでのデューデリジェンス等で得た情報を基に、M&Aを実行するか否かを最終決定します。

次のような事項を決定します。

  • 株式譲渡代金
  • 従業員の処遇
  • 社長の処遇
  • 譲渡代金の支払い方法 等

④ 株主総会決議等の手続(必要に応じて)

これも、M&Aの手法次第であり、また、M&A の内容・規模等にもよるでしょう。

いずれにせよ、有力な株主の反発を受けると、M&A そのものが挫折しかねませんので、決議の要否とは別に、株主に、いつ、どのように説明するかを考えておく必要があります。

⑤ 最終契約の締結・決済  

以上の過程を経て、最終契約を締結しますが、契約に基づいて株式の名義書換や譲渡代金の支払い、代表者の交代等を実施します。

これが、いわゆる「クロージング」となります。

⑥ 関係者への公表

従業員や取引先等の関係者への公表です。

特に、従業員に、どのタイミングで、どのように知らせるかは、M&A成功の鍵ともいえます。 

(5)契約後の対応(アフターM&A)

手続が完了しただけでは、M&Aが完了したとは言えません。

当初の狙いのシナジー効果等を得るためには、手続後の様々な対応が必要です。

これを総じて、アフターM&APMI)と呼びます。 

① 組織体制・業務の整理

株式買収で、対象会社を子会社化したとしても、少なくとも、その子会社と関係する部署の組織体制の整備や、関連業務の整備等が必要になります。

従業員同士のコミュニケーション

同じ会社グループの一員となった以上、たとえ別会社であったとしても、適切なコミュニケーションをはかり、組織文化の共有や融合を目指す必要があります(合併等の場合は、なおさらです)。

文化の違いを克服して、同じグループの一員としての一体化を図ります。

③ 隠れたリスク・新たなリスクへの対応など

M&Aの後で、隠れたリスクが顕在化したり、新たなリスクが発生するのはよくあることです。

むしろ、そのようなリスクが全く起こらないことの方が珍しいと思ってください。

問題が起きた後で慌てないように、万一のリスク顕在化・発生時に、どう対処するかをシミュレーションしておくことをお勧めします。

万一のときに、どの組織の誰が、どのように行動するか、それも経営者に、逐次に適切に報告ができるような体制を、あらかじめ考えておきます。 

 4、なぜ信頼できる弁護士との相談が必要なのか

M&Aで新規事業に進出!買収側の進め方〜5つの段階ごとのポイント

M&A については様々な仲介会社が対応してくれますが、現実に問題が起こるのはM&A の後です。

隠れたリスク、新たなリスクが出てきたとき、M&A 仲介会社は、既に役割を終えています。

問題が発生したときにこそ、すぐ対応してくれる弁護士がいることが大きな支えとなります。

M&A の進行過程から弁護士との相談を行っておき、場合によっては、デューデリジェンスや契約書の作成に関与してもらい、M&A の状況を把握しておいてもらうことが将来への備えになります。

大企業でも、M&A で問題を抱えてしまった事例はたくさんあります。

子会社化したが、そのコントロールが行き届かないままに不祥事が発生した事例なども実際には非常に多いのです。

これらの前例を受け、これからのM&Aは、より安全に、スムーズに行われていくべきです。

M&Aを行う際は、ぜひ早い段階から、企業法務に精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。 

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 まとめ

M&A は、会社の将来を変える重要な決断です。

慎重に対応し、かつ、決めるときはしっかりと決める必要があります。

しかし、やりっ放しは禁物です。本当に大切なのは、M&A の後なのです。

 M&A の後こそ、経営者の腕の見せどころではないでしょうか。

自社の従業員も、買収先の従業員も、同じグループの一員として、誇りを持って業容の拡大や新規事業への進出に邁進し、M&A の当初の狙い通りの効果を発揮できるようにすることが重要です。

成功したM&A には、共通の特徴があります。

経営者が、買収先の従業員を大切に扱っています。

そして、元々の自社の従業員にも、買収先の従業員を大切な仲間として対応するよう、自分の言葉で語り続けています。

従業員を大切にする会社こそが、取引先からも、お客様からも信頼され、社会に尊敬される会社となっていくと言えるでしょう。

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