夢のマイホームとしてマンションを購入したものの、近隣とのトラブルに悩まされると毎日ストレスがたまってしまいます。
確かに、マンションはたくさんの人が寄り集まって生活をする場所です。それぞれの人が異なる価値観を持っていますし、ライフスタイルも千差万別です。
ある程度の迷惑については、「お互いさま」として受け流すことも必要かもしれません。
しかし、度を超えて迷惑をかける人が近隣にいると毎日の生活が苦痛になり、夢見ていた快適な暮らしが台無しになってしまいます。
せっかくマンションという大きな買い物をしたのですから、さまざまな近隣トラブルを解決して快適な暮らしを実現することはできないのでしょうか。
今回は、
- マンショントラブルを解決するためにやってはいけないこと
- マンショントラブルの悩みを相談できる窓口
- マンショントラブルの解決方法
などをご紹介していきます。
マンションでの近隣トラブルでお悩みの方のお役に立つことができれば幸いです。
1、よくあるマンショントラブル7選
マンションでの生活において、実にさまざまなトラブルが発生します。そこでまずは、よくある7つのマンショントラブルをご紹介します。
悩んでいるのはあなただけではありません。以下の事例をご覧いただき、少しでも気持ちを軽くしていただければと思います。
(1)騒音や生活音
最も多く発生しているマンショントラブルは、近隣の騒音や生活音です。
生活音として代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
- 廊下や室内を歩く足音
- ドアの開閉音
- トイレやお風呂の水の音
- テレビの音量
これらの音は生活していれば必ず発生するものですし、自分も発生させているはずです。
しかし、無自覚に大きな音を立てたり、深夜や早朝などに頻繁に生活音を立てられると、聞かされる側にとっては大きなストレスとなります。
また、以下のような騒音もマンションでは問題になりがちです。
- 赤ちゃんの夜泣き
- 小さい子どもの騒ぎ声や走り回る音
- 大音量の音楽や楽器の演奏
- 大きな声での会話や深夜までのどんちゃん騒ぎ
- ペットの鳴き声
騒音を出している人にも悪気があるとは限りません。しかし、マンションでは本人が思っている以上に音が響くことも多く、慢性的なトラブルになりやすいのが特徴です。
(2)ペットの飼育マナー
ペット飼育可のマンションでも、マナーを守らない飼い主がいるとトラブルになりがちです。
鳴き声の他にも、悪臭や糞尿の処理方法、散歩の際にリードをつけるかどうかなど、さまざまな形でトラブルが発生します。
ペットの問題については、飼う人と飼わない人との認識の差によってトラブルが生まれるという側面もあります。
例えば、犬を飼っている人なら多少の鳴き声は仕方がないものと思ったり、散歩の際の糞尿も処理すれば問題ないと考えがちです。しかし、犬を飼っていない人にとってはいずれも許せないと思うこともあるでしょう。
(3)タバコのマナー
近年多いのが、タバコのマナーに関するトラブルです。具体的には、以下のようなトラブルが多く発生しています。
- 隣人のタバコの煙が部屋に入ってくる
- ベランダに干している洗濯物にタバコの臭いが染みつく
- 敷地内で吸い殻をポイ捨てされる
タバコの煙や臭いの問題については、吸う人の問題意識が低いためにトラブルが起こりがちです。
ベランダでタバコを吸う場合はもちろん、室内の換気扇の下で吸う場合でも煙や臭いは外に漏れます。近隣の人がタバコを吸わない場合は、多大な迷惑が生じる可能性もあるでしょう。
(4)ゴミの出し方
ゴミを出す曜日や分別方法は、自治体ごとに決められています。それを前提としてマンションではゴミ置き場や、ゴミを出す時間帯も決められているのが一般的です。
しかし、このようなゴミの出し方のルールを守らない人が一定割合でいるものです。
また、ゴミの問題については共用部分にポイ捨てされたり、自室がゴミ屋敷のようになっていて悪臭が近隣に及ぶというトラブルも散見されます。
(5)共用部分の使い方
自室の玄関前でも、廊下は共用部分に当たります。その共用部分に自転車などの物を置く住人がいます。
共用部分に物を置くと他の住人の通行の妨げになるだけでなく、火災や地震などの災害の際の非難にも支障を及ぼす可能性があります。そのため、どこのマンションでも共用部分に私物を置くことは禁止されているはずです。
なかには、ダンボールや新聞、古本などの燃えやすい物を置く人もいますが、放火されるおそれもあるので避けましょう。
(6)駐車場におけるマナー
駐車場においても、さまざまなトラブルが発生しています。
住人やその来客が勝手に他の住人の駐車スペースにたびたび車を停めるといったトラブルもあれば、エンジン音やアイドリング音、ドアの開閉音がうるさいという騒音に関するトラブルもあります。
また、子どもが駐車場で騒いだり、ボールなどを車に当てて傷をつけるなどのトラブルも発生しています。
(7)挨拶
人間関係のトラブルも多く発生していますが、そのなかで意外に多いのが挨拶をする人としない人との間のトラブルです。
多くの分譲マンションでは住人同士が顔を合わせれば自然に挨拶をするのが一般的ですが、挨拶しない人も一定割合でいます。
些細なことかもしれませんが、挨拶をしたのに返事がないと誰しも不快に感じるもので、それが毎日繰り返されることでトラブルに発展することもあるようです。
2、マンショントラブルでやってはいけない対処法
以上のようなマンショントラブルの解決法をご説明する前に、「やってはいけない対処法」をご紹介します。
生活に関する近隣とのトラブルでは、対処を間違うとお互いに感情がエスカレートし、余計にトラブルが深刻化するおそれがあります。特に、以下のような対処はNGです。
(1)仕返し
近隣からの度重なる迷惑行為が腹立たしいのは分かりますが、仕返し行為は決して行ってはいけません。
例えば、隣の部屋がうるさいからといって壁ドン(壁を叩く行為)をすると、相手は喧嘩を売られたと解釈する可能性が高いでしょう。
逆上した相手がさらに故意に騒音を出すなどの嫌がらせに出たり、場合によっては傷害事件などに発展するおそれもあります。
(2)直談判
迷惑行為をしている相手に直接抗議をする「直談判」は、仕返しに比べると問題を解決できる可能性は高いと一応はいえます。
しかし、素直に抗議を受け入れて行いを改めてくれる相手ばかりではありません。えてして、無自覚に迷惑行為を繰り返す人は直談判を受けると逆上することが多いものです。
勇気を持って相手の非を指摘したのに、さらなるトラブルを招いたのでは元も子もありません。マンショントラブルでは、直談判は控えた方が無難でしょう。
(3)我慢しすぎる
仕返しもNG、直談判もNGだからといって、我慢しすぎるのもよくありません。
実際のところ、近隣住人の行為に迷惑していても、言うに言い出せずにひたすら我慢を重ねている人も多いことでしょう。
しかしながら、我慢しすぎると心身を病んでしまうおそれがあります。
また、ストレスのために家族に当たってしまい、離婚問題に発展したり子どもとの関係が断絶したりする可能性もあります。そうなってしまうと、何のためにマンションを購入したのか分からなくなってしまいます。
マンション生活では多少の我慢は必要ですが、我慢しすぎることで解決することは何もないと考えてください。
(4)すぐに引っ越す
近隣住人による迷惑行為が悪質で解決できそうにない場合は、引っ越しを検討するというのも悪いことではありません。
しかし、分譲マンションを売って引っ越すのは経済的なリスクが高いです。
購入時より価値が下がっている場合もあるため、特に住宅ローンを支払中の場合は経済的に苦しいことになってしまうでしょう。
たとえ希望の価格でマンションが売れたとしても、引っ越し先でも同じようなトラブルに遭わないとは限りません。
したがって、引っ越しによる解決は最終手段となります。引っ越しを考える前に、マンショントラブルを解決する方法を知っておくことが大切です。
3、マンショントラブルで悩んだときの相談先
それでは、マンショントラブルに遭ってしまった場合はどのようにして解決すればいいのでしょうか。
まずは仕返しや直談判をせず、しかるべきところに相談するのが第一歩です。
(1)管理会社
マンション生活で困ったことがあれば、遠慮なく管理会社に相談しましょう。
管理会社に相談すれば、まず住人全体への注意喚起として掲示板に注意書きを貼り出してくれたり、チラシを全室に配布してくれたりするなどの対応をしてくれることでしょう。
こうすることによって、匿名でトラブルの相手に対して注意喚起を促すことができます。
それでも改善しない場合は、管理会社から相手に直接注意をしてもらったり、管理会社の仲介のもとに相手との話し合いの機会を設けてもらうことができることもあります。
直談判するよりも、しかるべき第三者を間に入れた方がお互いに冷静に対処できるため、解決できる可能性が高まります。
なお、管理会社が必ずしも以上のようなトラブルの解決の仲介を行ってくれるわけではありません。それでも最低限、管理組合に取り次いでもらい、以上のような対応をしてもらうことはできます。
管理組合は住人の快適な暮らしを維持することについて住人全体から委任を受けた組織なので、住人同士のトラブルの解決に努める義務を負っていると考えられます。
(2)警察
管理会社や管理組合に相談しても解決できない場合は、警察に相談するのも有効です。
マンションでの生活上のトラブルを警察に相談するのは大げさだと思われるかもしれません。しかし、警察は犯罪抑止のために生活の安全に関する悩み相談も受け付けています。
「♯9110」に電話をかければ、犯罪には至ってないものの生活の平穏や安全にかかわるさまざまな悩みごとについて相談に乗ってくれます。電話番号は「♯110」ではなく「♯9110」なのでご注意ください。
警察に相談すれば、相談業務担当の警察官が適切に対応してくれます。必要に応じてトラブルの相手に対する指導や警告なども行ってもらえます。
深夜のどんちゃん騒ぎに迷惑していたところ、匿名で警察に相談して対応してもらったことにより解決したという例もあります。
(3)マンション紛争解決センターⓇ
マンション紛争解決センターⓇとは、マンション管理に関するトラブルを裁判外の手続きで解決するために一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連)によって設立された組織のことです。
裁判外紛争解決手続(ADR)といって、トラブルの当事者同士が調停のような話し合いの手続きを裁判外で行うことによって解決を図ります。住人同士のトラブルも対象としています。
マンション紛争解決センターⓇへADRを申し込むには以下の費用がかかりますが、弁護士に依頼するよりは低額でトラブルを解決できる可能性があります。
- 申込金 3万円
- ADR 1回につき5,000円(申込者・応諾者それぞれ必要)
- 合意成立費用 1万円
- その他実費、消費税
ただ、話し合いの手続きなので、相手が応じなければ解決できないことに注意が必要です。
(4)弁護士
以上の相談先はいずれも力になってくれますが、トラブルの解決に至らない場合も多々あります。
そんなときは、弁護士に相談するのが有効です。警察に相談した場合も、「管轄外」の場合は弁護士に相談するよう促されることが多いはずです。
弁護士は相談者が抱えている事情を徹底して聴き取り、相談者に寄り添ってアドバイスをしてくれます。トラブルの解決を依頼すれば、弁護士は依頼者の利益のために最善を尽くして解決を図ります。
4、マンショントラブルの解決を弁護士に依頼するメリット
マンショントラブルの解決を弁護士に依頼すれば、以下のように具体的な法的手続きを取ることによって実効的な解決に至ることが期待できます。
(1)示談交渉
まず、弁護士は依頼を受けるとトラブルの相手と話し合いを行います。
管理会社や管理組合、マンション紛争解決センターⓇなどの仲介による話し合いと異なり、法的見解に基づいて踏み込んだ話し合いを行うため、実効的な解決が期待できます。
例えば、示談交渉によって「ベランダでの喫煙はしない。もし違反した場合は金○万円を支払う」という合意を取り付けることができれば、トラブルの抜本的な解決になることでしょう。
なお、弁護士は依頼者の代理人として示談交渉を代行します。自分で相手と話し合わなくて済むという点も、弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
(2)損害賠償請求
相手の迷惑行為が違法であり、こちらが精神的苦痛などの損害を受けた場合は慰謝料などの損害賠償請求をすることができる可能性があります(民法第709条)。
マンショントラブルで損害賠償請求をする場合は、損害が受忍限度を超えているかどうかが問題となります。あなたが受けている被害が、損害賠償請求可能なものなのかどうかの判断は、法的な判断になりますので、悩んでいる方は一度弁護士に相談してみてもいいでしょう。
まとめ
人によっては、マンションの住人同士のトラブルで弁護士を立てると相手を逆上させてしまい、逆効果になるのではないかと不安に思われるかもしれません。
しかし、交渉に長けた弁護士に依頼すれば、相手に対して法的に主張すべきことは主張する一方で、相手の言い分も聴き取ることによって柔軟な解決を図ることが可能です。場合によっては、自分も相手もwin・winの解決に至ることもあるでしょう。
話し合いで解決できなければ、裁判で正当な権利を実現するまでです。損害賠償請求などが認められた場合、基本的にはトラブルの相手方は迷惑行為をやめてくれることでしょう。
いずれにせよ、マンショントラブルに遭った一人で悩まず、弁護士に相談されることをおすすめします。