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「変形労働時間制」を導入するときに知っておくべき7つのこと

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時計

変形労働時間制とは、労働基準法上、1日・1週間単位で定められる労働時間の制限を、1か月や1年といった長期で捉えることを可能にする制度です。特に、繁忙期とそれ以外が明確に分けられる事業所においては、重宝する制度と言えます。

具体的には、こんな業務の事業所に適した仕組みです。

「月初はあまり仕事がなく、月末はとても忙しい。暇なときには、早帰りして家族と団らんを楽しみ、忙しい時には、その分頑張って残業したい。」
「季節商品を扱っており、夏場冬場は猛烈に忙しいが、春秋は暇だ。暇な季節に、18時の終業時刻まで、みんなで居残るなんておかしい。暇なときは、さっさと帰ろう。」

とはいえ、制度の内容は、かなり複雑です。

今回は、弁護士が、「変形労働時間制」の基本から注意点まで、わかりやすく説明します。
この記事がそのお役に立てれば幸いです。

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1、変形労働時間制とは

変形労働時間制とは

(1)法定労働時間柔軟化の種類

労働基準法で定める「法定労働時間」の原則は、1日8時間、1週40時間です(注)。これを超えれば、時間外手当(割増賃金)を支払う必要があります。

ですが、業務の内容は、職場により、まちまちです。

このため、法定労働時間についても、様々な柔軟化が図られています。

概要は、次の表のとおりです。

【法定労働時間柔軟化の制度の比較】

大分類

内容

制度名称

「法定労働時間」の枠の特則

法定労働時間「1日8時間・1週40時間」を、一定期間の枠内で柔軟化します。

期間内の法定労働時間の「合計」は、変わりません。これを超えた実労働時間分の時間外手当は支払われます。

変形労働時間制(事業場ごとの法定労働時間を、一定の期間の枠内で変形させる)

フレックスタイム制(個々人が始業・終業時刻を自ら決定できる。)

「法定労働時間」の算定の特則

実労働時間にかかわらず、一定時間働いたものとみなします。時間外手当もみなし時間に基づいて支払われます。

裁量労働制(専門業務型・

企画業務型)

事業場外労働みなし制

(外回り営業等)

(注)「法定労働時間」の例外(1日8時間・1週44時間)
特例措置対象事業場(常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業及び接客娯楽業の事業場)では、1日8時間、1週44時間とする特例措置が認められています(労働基準法施行規則第25条の2)。

(2)変形労働時間制のポイント

変形労働時間制とは、ざっくりといえば、次のような制度です。

①事業場単位の制度

変形労働時間制は、事業場全体に適用されます。そのため、この人だけ、というような適用はできません。

なお、「裁量労働制」は、対象労働者が法定の業務に限られます。変形労働時間制とは、この点で異なります。

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②残業の観念 

労働基準法上は、1日単位で労働時間が決められていますから、これをオーバーする日は、残業となり割増賃金が発生します。

しかし、変形労働時間制は、1日単位で残業の有無を考えません。一定の期間で考えるのです。

例えば、1か月で考えてみましょう。
1か月を30日間とし、22日間を労働日とすれば、

8 × 22 = 176時間

です。

変形労働時間制は、1か月で176時間(実際は171.4時間(「3」(5)表を参照)であり、週単位の上限時間も定まってきます)をオーバーしなければ、残業とならず割増賃金も発生しない、とする考え方です。

つまり、1日9時間働く日があったとしても、他の日に早帰りをすることで、1か月で176時間をオーバーしなければ、割増賃金も発生しない、ということになります。

③基準単位

変形労働時間制では、基準となる期間を設定しなければなりません。
この制度は、繁閑期の業務量の差が激しい事業場に適していると言いましたが、「繁閑期」の単位は、仕事ごとにそれぞれです。 

例えば、1年を通して忙しいのは、夏休みと冬休みの時だけ、という仕事もあるでしょうし、1か月単位で、月初は仕事がなく、月末が忙しい、という仕事もあるでしょう。さらには、1日1日、天気によって左右される、という仕事もあるでしょう。
そのため、基準となる期間は、1か月単位、1年単位、1週間単位の3つが準備されています。

④フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制は、一人一人の事情に応じて、始業・終業時刻を変えられる制度です。
変形労働時間制は、事業場全体での労働時間の取り扱いを変えるものです。

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2、変形労働時間制が採用されやすい業種

変形労働時間制が採用されやすい業種

変形労働時間制は、どの業種にも当てはまる制度ではないでしょう。
導入すべきは、繁忙期とそうでない時期があるような仕事、ということになろうかと思います。

(1)1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2、同法施行規則第12条の2の2)

月初は、比較的仕事に余裕があり、月末に、残業多くなるような事業場に適しているでしょう。
平均して、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないよう、日々の所定労働時間を設定します。たとえば、経理業務で、下旬が忙しいのであれば、暇な上旬、中旬の1日の労働時間を7時間に短縮、下旬の労働時間は、1日9時間に延長するなどです。

(2)1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4、同法施行規則第12条の4)

1か月を超え1年以内の一定期間を平均して、1週間の労働時間が40 時間以下にするなら、1日10時間、1週52時間までを所定労働時間にできる制度です。

特定の季節や特定の月等に業務が立て込んでいる事業場で、繁忙期に所定労働時間を長く、閑散期に所定労働時間を短くして、年間の総労働時間の短縮を図ることができます。

季節商品を扱う職場や、レジャー施設等、季節により業務の繁閑の差が多い業種で役に立つでしょう。

(3)1週間単位の非定型的変形労働時間制(労働基準法第32条の5、同法施行規則第12条の5)

日によって業務の繁閑が著しく、直前まで状況がわからないため、就業規則等に労働時間を定めておくことができない特定の業種に認められる制度です。

30人未満の小売店、旅館及び飲食店で、1週間の労働時間が40時間の範囲内であれば、1日10時間までを所定労働時間とできます。

3、変形労働時間制導入の手続(1か月以内の期間の場合)

変形労働時間制導入の手続(1か月以内の期間の場合)

代表的な例として、まず1か月単位の変形労働時間制について、導入手続を説明します。

労使協定または就業規則で、以下を定めます。

  • 対象労働者の範囲
  • 対象期間および起算日
  • 「 労働日」および「労働日ごとの労働時間」
  • 労使協定の有効期間(労使協定で定める場合)
  • 労働時間の計算方法

労使協定や就業規則は、所轄の労働基準監督署に届け出ます。

(1) 対象労働者の範囲

対象労働者の範囲は、明確に定める必要があります。対象労働者の範囲が明確に定められているのであれば、範囲の定め方についての制限はありません。

ただし、育児・介護等を行う人への配慮や、妊産婦への適用除外等の制限はあります。

①育児を行う者等への配慮

育児を行う者、⽼人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者、その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければなりません。

②変形労働時間制を適用できない者

満18歳未満の年少者(満15歳以上で満18歳未満の者(満15歳に達した日以後の最初の3⽉31日までの間を除く)は、①1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、かつ、その1週のうちの1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合には、他の日の労働時間を10時間まで延長することができ、②1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲で、変形労働時間制を適用することができます。

妊産婦(妊娠中及び産後1年を経過しない⼥性)が請求した場合、1日・1週の法定労働時間を超えて、労働させることはできません。

(2) 対象期間および起算日 

対象期間および起算日は、具体的に定める必要があります。
対象期間は、1か⽉以内の期間に限ります。

例:毎⽉1日を起算日とし、1か⽉を平均して1週間当たり40時間以内とする

(3)「 労働日」および「労働日ごとの労働時間」

シフト表や会社カレンダーなどで、(2)の対象期間のすべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。 

その際、(2)の対象期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないよう設定します(「(5) 労働時間の計算方法」参照)。 

ここで、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を、会社が任意に変更することはできません。「今日は忙しいから、シフト時間を変えるぞ」というのは、変形労働制の要件を満たさないことになってしまいます。

(4) 労使協定の有効期間

3年以内程度とすることが望ましい、とされています。

(5)労働時間の計算方法 

対象期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないようにするためには、対象期間中の労働時間を、以下の式で計算した上限時間以下とする必要があります。

【上限期間の計算】

上限時間=1週間の労働時間40時間×(対象期間の歴日数/7)

対象期間の歴日数

28日

29日

30日

31日

160.0

165.7

171.4

177.1

残業代の詳しい計算方法については、後述「6」でご説明します。

(参考)厚労省「1ヶ月単位の変形労働時間制」

4、変形労働時間制導入の手続き(1年以内の期間の場合)

変形労働時間制導入の手続き(1年以内の期間の場合)

1か月を超え1年以内の一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えないことを条件に、1日10時間、1週52時間までを所定労働時間にできる制度です。

特定の季節や特定の月等に業務が立て込んでいる事業場で、繁忙期に所定労働時間を長く、閑散期に所定労働時間を短くして、年間の総労働時間の短縮を図ることができます。

「3、変形労働時間制導入の手続き(1か月以内の期間の場合)」との主な違いは次の通りです。

(1)労使協定が必須 

1か月単位の変形労働時間制と異なり、就業規則に定めるだけでは実施できません。
労使協定を結んだうえで、所管の労働基準監督署に提出します。労使協定の有効期間は、1年以内が望ましいとされています。

(2)労働時間や休日について厳格な縛りがある

1年単位の変形労働時間制の場合、1年間の総労働時間の基準さえ超えなければよい、という考えで、偏ったシフト編成が組まれることも懸念されます。
そのため、次のような様々な縛りが設けられています。

①労働日数の限度

労働日数の限度に制限があり、1年あたり280日が上限です。

②日、週単位の労働時間の限度

1日の労働時間の上限は10時間、1週間の労働時間の上限は52時間です。

③長時間労働の期間制限

労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは、3週以下とされています。

また、対象期間を3か月ごとに区分した各期間においては、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下です。

④週の労働日数の制限 

対象期間における連続して労働させる日数の限度は、6日です。

⑤特定期間の制限 

特に、繁忙な期間を「特定期間」として定めることができますが、特定期間においても連続して労働させる日数の限度は、1週間に1日の休日が確保できる日数です。 

(参考)厚労省「1年単位の変形労働制」

※1週間単位の変形労働時間制は、対象業種が限定されていますので、本記事では説明を省略します。

5、変形労働時間制を企業が悪用

変形労働時間制を企業が悪用

変形労働時間制において、「忙しい時に、1日8時間を超えて働いても、時間外労働の割増賃金を払わなくてよい」のは、他の日の労働時間が短縮されていて、早帰りができるからです。

本来早帰りできる日についても、「今日は忙しいから、8時間働いてくれ」などといった運用が行われると、実際の労働時間は長くなり、時間外労働の割増賃金も多く発生し、不払いになるという事態が生じかねません。

実際、ヤマト運輸で、未払残業代の問題が起こりました。変形労働時間制の悪用も、一因であったといわれます。次のような問題が指摘され、労働審判や訴訟なども起きています。

①月あたりの労働時間は約170時間が上限なのに、220時間分ものシフトが組まれていた。月の途中で、シフトが変わった(このような運用が行われるなら、本当は、変形労働時間制を導入できないはずです)。

②変形労働時間制では、労働時間を短縮できる日があるはずですが、同社を提訴した男性によると、「(勤務先の営業所では)他の日の勤務時間を短縮できていない」、「2015年2月~2018年8月に、多い月では120時間以上の残業があった」と主張しています。

③頻繁な勤務変更で、前日にならないと、自分の勤務時間がわからないとか、平均して、週40時間の限度をはるかに超える200時間以上の労働時間が割り当てられていた、という問題も指摘されています。

このため、変形労働時間制では、当初から厳格なシフトを定め、ルーズな運用を防ぐことが求められています。

6、変形労働時間制での残業の考え方

変形労働時間制での残業の考え方

1か月単位の変形労働制を例にとって、残業の考え方を説明します。

1か月単位の変形労働時間制の場合、基本的には、上限労働時間を超えた時間分の残業代を支払うことになるため、「いつ」残業したことになるのか、が重要になってきます。

少し複雑ですが、理解してしまえば簡単です。
以下は、1日から31日まで(第5週の途中まで)という月にける時間外労働の考え方の図解です。

こちらの図を使いながら、具体的にみていきましょう。

(出典:厚生労働省「1ヶ月単位の変形労働時間制」

(1)前提

変形労働時間制における「残業」の観念は、

  • 所定労働時間を超えたか
  • 法定労働時間(1日、1週間、1か月や1年など設定した単位において)も超えたか

のダブルでチェックします。

(2)実際の計算例-第2週編

13日(金)と14日(土)が、所定労働時間を超えています。

ここで、13日(金)は、1日の法定労働時間である8時間を超えていますので、その超えた分(1時間)が残業となり、残業代が発生します。

14日(土)は、所定労働時間を3時間超えていますが、労働時間は7時間ですので、1日の法定労働時間である8時間は超えていません。

では、14日(土)について残業代は発生しないのでしょうか?

ここで、法定労働時間は、週でも制定されています。
週の労働時間で計算すると、第2週はトータルで42時間となっており、つまり、週では法定労働時間を2時間超過しています。このうち1時間分は13日(金)で残業としているため、もう1時間は、14日(土)の1時間が残業になる、ということです。

(3)実際の計算-第3週編 

20日(金)が、所定労働時間を超えています。また、法定労働時間も超えています。
よって、この場合は、所定労働時間を超えた1時間について、残業となります。

(4)実際の計算-第4週編 

27日(金)と28日(土)が、所定労働時間を超えています。

しかし、両日とも法定労働時間内です。

そして、週の労働時間で計算すると、第4週はトータル40時間であり、法定労働時間内です。そのため、両日とも残業代は発生しない、ということになります。

(5)実際の計算-第5週編 

30日(月)も31日(火)も、所定労働時間を超えていません。

ここで、1か月の実働時間を計算してみると、181時間で、月上限の177.1時間を3.9時間超過しています。このうち3時間分は、第4週までに残業となっていますので、残りの0.9時間分は、最終日の31日(火)において残業とします。

7、疑問や不明点は弁護士との相談

疑問や不明点は弁護士との相談

以上ご説明したのは、変形労働時間制のごく基本的な内容です。

それでも、一筋縄では、とても理解できないと思われます。便利そうな制度に見えますが、よく理解しないままに導入して、間違った運用をしている会社が少なくないようです。意図的な悪用は論外ですが、会社の担当者が、知識不足のまま対応していることも考えられます。

会社が変形労働制を導入していたり、これから導入する、という場合、疑問点が出てくれば、早めに人事労務問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

まとめ 

変形労働時間制は、上手に運用すれば、ワーク・ライフ・バランスのために、有効な制度です。

しかし、不適切な運用は、大きな問題を生みます。ヤマト運輸は、極端な例ですが、他にも不適切な運用の例はあり得ると思われます。

この記事で、基本的なイメージと注意点を理解いただき、皆様のお役に立つことができれば幸いです。

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