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痴漢示談金の相場は?交渉の流れと示談金増額のコツとは

痴漢 示談金

痴漢の示談金の相場や交渉の流れと示談金を増額するためのポイントについてご紹介します。
この記事をお読みになる方のなかには、ご自身が痴漢の被害に遭った、または身近な人が痴漢の被害に遭ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

痴漢という犯罪の被害に遭ったときは、加害者に対して示談金を請求することができます。

とはいえ、「示談金をいくら請求すればよいのか分からない」、「まとまった金額の示談金をもらわなければ加害者を許せない」という方もいらっしゃることでしょう。

あるいは、「示談金は支払ってほしいけれど、それで加害者が処罰されなくなるのは納得できない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。

そこで今回は、

  • 痴漢被害の示談金の相場と請求方法
  • 痴漢被害で示談金を増額する方法
  • 示談金をもらいつつ痴漢加害者の処罰も求める方法

について解説していきます。

痴漢は軽い犯罪だと思われることもありますが、被害者の方は多大な精神的苦痛を味わっていらっしゃることでしょう。

痴漢の示談交渉で思わぬ不利益を受けないために、この記事を参考にしていたければ幸いです。

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1、痴漢における示談金相場

痴漢における示談金相場

そもそも示談とは、民事上のトラブルについて当事者間で話し合うことによって損害賠償の問題を解決することをいいます。

被害者は犯罪行為によって被害を受けていますが、加害者に損害賠償を強制するためには、本来であれば、民事裁判において主張立証を行い、裁判官にその損害額を認定してもらうという手続きが必要となります。

しかし、示談は当事者が互いに納得する金額で合意するので、上記のような手続を経る必要がありません。

示談は、加害者にとっては身体拘束からの早期開放の可能性や刑罰を軽減できる可能性があるというメリットがあります。

他方、被害者にとっても上記裁判手続を経ることなく、早期に被害を回復してもらえるというメリットがあります。
また、民事裁判において加害者に損害賠償を命じる判決を得ても、加害者が任意に支払わなければ更に加害者の財産を調べた上での強制執行が必要になりますが、示談であれば加害者が支払を約束しているため、確実に支払を受けられる可能性が高まります。

ただし、示談金の額は被害者と加害者とで話し合って決めるものですので、決まった計算基準があるわけではありません。

ですが、痴漢事件においても示談はよく行われているので、一定の相場はあります。

(1)犯罪態様により変わる

ひと口に痴漢といっても、犯行態様は様々です。

比較的軽微な痴漢は迷惑防止条例違反に該当しますが、悪質性が高い場合は強制わいせつ罪が成立します。

どちらの犯罪が成立するかによって、示談金の相場は以下のように異なります。

もっとも、実際の示談金の額は、次の(2)で説明する事情によっても異なりますので、以下の金額はあくまでも参考としてお考えください。

①迷惑防止条例違反の場合

迷惑防止条例違反の場合、示談金の相場は、おおむね10万円~50万円程度です。

迷惑防止条例違反についてはこちらの記事でも解説していますので、ご参照ください。

②強制わいせつ罪の場合

強制わいせつ罪に該当する場合、示談金の相場は、おおむね30万円~100万円程度です。

強制わいせつ罪については以下の記事でも解説していますので、ご参照ください。

(2)その他に示談金の額に影響する事情

示談金の額は、以下のような事情によって変動することがあります。

  1. 具体的な痴漢の行為態様
  2. 被害の程度
  3. 被害者の処罰感情の強弱
  4. 加害者の経済力や社会的地位
  5. 加害者の反省の態度

行為態様が悪質で被害者の精神的苦痛が大きく、加害者の処罰を強く望むような場合は、そうでない場合に比べて示談金が高くなりやすいといえます。

また、加害者の経済力や社会的地位が高ければ高いほど、示談金も高くなる傾向があります。

一方で、加害者が深く反省して真摯に謝罪し、被害者も理解を示した場合は示談金が低めになる傾向があります。

ただし、加害者が反省や謝罪をしたからといって、必ずしも被害者が請求する示談金を引き下げる必要はありません。

2、示談金を受け取るまでの流れ

示談金を受け取るまでの流れ

示談金を受け取るためには、まず加害者側と話し合いをしなければなりません。

この点、警察・検察が示談交渉を仲介してくれることはないので、加害者または被害者のどちらかから示談を提案する必要があります。

加害者が知り合いの場合は、加害者本人から示談を申し出てくることもあるでしょう。

加害者が警察に逮捕されたような場合は、加害者についた弁護士から示談を申し出てくることが多いです。

これらのように加害者側からの連絡がない場合は、被害者側から連絡をとらざるを得ません。

それでは、加害者側と連絡をとる方法から最終的に示談金を受け取るまでの流れについて、順を追ってみていきましょう。

(1)加害者側に連絡先を伝える

加害者側が示談を希望している場合、検察官(捜査段階によっては警察官)から加害者に連絡先を伝えてもよいかどうかを尋ねられます。

このとき、加害者に弁護士がついている場合には、連絡先を伝えるのはその弁護士限りとし、加害者本人には伝えないように求めることもできます。

また、被害者も弁護士に示談交渉を依頼すれば弁護士が交渉の窓口となるため、加害者側に連絡先が漏れることはありません。

(2)加害者側から連絡がくる

加害者側に連絡先を伝えてもよい旨を答えた後は、加害者側から連絡がくるのを待ちます。

このとき、被害者も弁護士に依頼していれば、加害者側から被害者本人に対して直接連絡が来ることはありません。

(3)交渉

加害者側と連絡がとれたら、示談金の交渉を行います。

弁護士に示談交渉を依頼すれば弁護士が代理人として対応してくれるため、ご自身で直接交渉する必要はありません。

なお、加害者に弁護士がついている場合はご自身で対等に交渉するのは難しいでしょうし、加害者本人と交渉するのは精神的な負担が大きい場合もあるでしょう。

そのため、できる限り示談交渉は弁護士に依頼することが望ましいといえます。

(4)合意

話し合いの結果、示談金の額や支払い方法について合意ができたら、示談成立となります。

痴漢の示談交渉では、被害者がいくらの示談金で納得できるかがポイントとなるので、ご自身の主張はしっかりと述べるようにしましょう。

ただし、実際には相場や加害者の支払能力の問題もありますので、ある程度の譲歩を検討する必要はあるかもしれません。

そのあたりの問題も、弁護士に相談して判断するとよいでしょう。

(5)示談書の作成・交付

示談が成立したら、示談書を作成します。

通常は同じ書面を2通作成し、お互いに1通ずつを保管することになります。
記載内容が重要ですので、書面の表題は合意書であっても、和解契約書であっても、示談を否定するようなものでなければ構いません。

示談書はどちらが作成してもよいのですが、イニシアティブをとるためには被害者側で作成した方がよいでしょう。

弁護士に依頼していれば正確な示談書を作成してもらえますし、弁護士が代理人として署名・押印するため、被害者の住所が加害者へ漏れないというメリットもあります。

(6)示談金の振り込みを待つ

示談書を取り交わしたら、あとは示談金の振り込みを待つだけです。

示談金は手渡しで受け取ってもよいですが、一般的には振り込みを指定する場合が多いです。

そのためには振込先口座を示談書に記載する必要がありますが、弁護士に依頼していれば示談金のやりとりも弁護士が代わりに行ってくれるため、その必要はなくなります。

3、より高額な示談金を獲得するためのポイント

より高額な示談金を獲得するためのポイント

相場どおりの金額や、加害者側が提示してくる金額では被害者として納得できない場合もあるでしょう。

少しでも高額な示談金を獲得するためには、以下のポイントに気をつけるとよいです。

(1)警察・検察に犯人の厳重な処罰を求めておく

痴漢行為が刑事事件として立件された場合は、被害者も警察と検察で事情聴取を受けます。

その際、加害者の処罰をどの程度望むかについて尋ねられますので、「厳重な処罰を求めます」と答えておきましょう。

ここで、「特に処罰は求めません」などと答えると、実際の加害者の処罰も軽くなる傾向にあります。

そのため、加害者も高額の示談金を準備しようとはしないこともあるので、ご注意ください。

(2)早い時期に示談を成立させる

痴漢事件で示談するタイミングは、大きく分けて次の4段階があります。

  • 逮捕直後(最大3日間)
  • 起訴前の勾留中(10日~20日間)
  • 起訴後、判決前(1か月半~3ヶ月程度)
  • 判決後

示談をするなら、早ければ早いほど高額の示談金を獲得しやすくなります。
なぜなら、早期に示談した方が加害者にとってのメリットも大きいからです。
逮捕直後に示談できれば、逮捕に続く身柄拘束である勾留を回避できる可能性があります。

勾留されても、起訴される前に示談できれば不起訴処分となり、前科を回避できる可能性が高くなります。

起訴されて刑事裁判になってしまうとほとんどの場合有罪判決は免れませんが、それでも示談できれば執行猶予付き判決などの軽い処分となることが少なくありません。

判決が確定すると、もはや処分が確定してしまうため、加害者に上記のようなメリットがなくなりますので、被害者に有利な内容での示談はあまり期待できなくなります。

(3)増額すべき事実を摘示して交渉する

被害者が具体的な被害を訴えなければ、示談交渉では示談金の相場や加害者の支払能力のみを考慮して、形式的な話し合いで示談金が決められがちになります。

そこで、被害者から声を上げて、示談金を高くすべき事情を具体的に説明することも有用です。

具体的には、

  • どのような行為をされたのか
  • どのような精神的苦痛を受けたのか
  • 行為後もどのように苦しんでいるのか(男性が怖くなった、満員電車に乗れなくなった、等)

などの事情を詳細に主張していきましょう。

(4)安易に犯人を許さない

前記「(1)」とも関連しますが、安易に犯人を許すと高額の示談金を獲得することは難しくなります。

示談交渉の際、加害者側は必ずと言っていいほど、被害者の意向として「加害者を許します」、「処罰は求めません」、「寛大な処分を望みます」といった文言を示談書に記載することを求めてきます。

なぜなら、加害者はこれらの文言が入った示談書を手に入れることで、不起訴処分や減刑を獲得できる可能性が高まるからです。

加害者側がこのような望みを有しているのなら、被害者としては以上の文言を示談書に盛り込むのと引き換えに示談金を増額するように交渉することができます。

(5)示談書の記載を確認する

示談書を作成したら、記載内容に間違いがないかを必ず確認しましょう。

特に、加害者側に示談書を作成させた場合には、実際には寛大な処分など望んでいないにもかかわらず「寛大な処分を望みます」などと勝手に記載されてしまうこともあり得ます。

その示談書に署名・押印してしまうと、被害者が寛大な処分を望んでいることを理由として加害者の処分が軽くなってしまう可能性があるので注意しましょう。

(6)弁護士に依頼する

示談交渉には法的な知識がある程度必要です。
交渉力も重要な要素となります。

一般の方が仕事や家庭があるなか、示談交渉のために日程を調節したり、加害者側の弁護士の説得に対し有効な反論することは簡単なことではありません。

被害者も弁護士に依頼することでスムーズに示談交渉を進めることができますし、弁護士の法的知識やノウハウを活用して示談金を増額できる可能性も高まります。

4、示談金をもらうと処罰されないの?

示談金をもらうと処罰されないの?

示談金をもらってしまうと加害者が処罰されなくなるのではないかと気になっている方もいらっしゃるでしょう。

この点について詳しく見ていきましょう。

(1)示談(民事)と処罰(刑事)は手続きが別

示談は民事上のトラブルを解決する手続きであって、加害者の処罰を決める刑事手続きと本来は関係ありません。
そのため、刑事裁判の判決後、処罰が確定した後に示談をすることも可能です。

ただし、実際のところは判決後の示談では示談金が低くなりやすい傾向にあります。
他方、早期に示談をすると加害者の不起訴処分や減刑につながりやすいことも事実です。

なぜなら、刑事手続き上、示談することは加害者の反省の現れであり、示談金を支払うことで被害者が受けた損害も回復されることによって処罰の必要性がなくなるか減少すると考えられているからです。

高額の示談金と加害者の厳重な処罰のどちらかを選択せざるを得ないという問題は、ある程度は仕方がないことでもあります。

(2)示談金をもらいながら処罰も望む場合

誤解していただきたくないのは、示談金をもらったからといって必ずしも加害者が処罰されなくなるわけではないということです。

示談金をもらいながら処罰を望むこともできます。

民事上の手続きである示談と刑事手続きにおける処罰はあくまでも別なので、民事上の問題は解決しても刑事上は起訴を求めることも可能なのです。

その方法は、警察・検察に犯人の厳重な処罰を求めておくと共に、示談書に「加害者を許します」、「処罰は求めません」、「寛大な処分を望みます」などの文言を記載しないことなどが挙げられます。

5、痴漢の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

痴漢の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

痴漢事件の示談交渉は被害者がご自身で行うことも可能ですが、弁護士に依頼することで以下のメリットを受けることができます。

(1)加害者側とのやりとりを代行してもらえる

被害者にとって、痴漢事件のことは2度と思い出したくない、1日も早く忘れたいことでしょう。
それにもかかわらず、加害者側から連絡を受けてご自身で交渉することでさらなるストレスを受けてしまいます。

弁護士に依頼することで、被害者の代理人として加害者側とのやりとりをすべて代行してもらえます。
また、示談書を取り交わす際、弁護士が代理人として締結するので、ご自身の住所や口座情報を加害者に知られる心配もありません。

痴漢事件のことを忘れて仕事に集中し、安心して家庭生活を送るなどの日常を取り戻すことができるでしょう。

(2)示談金額の増額を目指せる

示談交渉に際しては、専門的な知識やノウハウに長けた弁護士の力を借りた方が、示談金額を増額できる可能性も高まります。

示談金をもらいながらも厳しい処罰を求める場合は落とし所が難しいですが、刑事事件に詳しい弁護士のアドバイスを受けることで、ご自身にとって最適な内容で示談することが可能となるでしょう。

(3)刑事手続におけるサポートが受けられる

痴漢事件の被害者は、ただ示談金をもらうだけの立場ではありません。

刑事手続きにおいて加害者の処罰を決める際に、被害者の対応も重要な要素となります。

弁護士に依頼することで、加害者に適切な処罰が下されるように、刑事手続きにおけるサポートを受けることもできます。

①事情聴取

痴漢事件が刑事事件として立件されると、被害者も警察官や検察官に呼ばれて事情聴取を受けることになります。

その際に処罰感情について尋ねられることは前記「3」(1)でご説明しましたが、加害者が痴漢の事実を争っている場合には、被害者にも具体的事実を詳しく尋ねられます。

そのとき、取調官からどのようなことを聞かれるのか、自分に不利な事実を認めさせられるのではないか、うまく説明できる自信がないなどの不安を抱えている方もいらっしゃるかと思います。

弁護士に依頼すると、事前に取調官に伝えるべき事情を整理したり、取調官とやりとりする際のコツなどについてアドバイスを受けることができます。

事情聴取に弁護士が同行することも可能です。
不当な事情聴取がされている場合には弁護士が抗議するなどして万全にサポートします。

②公判

加害者が起訴されて刑事裁判となった場合、被害者も刑事裁判に参加できる「被害者参加制度」を利用できる場合があります。

被害者参加制度とは、被害者が刑事裁判の法廷で証人や被告人に質問をしたり、意見を述べたりすることができる制度です。

弁護士に依頼することにより、事前に質問内容や意見陳述の準備を行い、裁判官に被害者の主張が十分に伝わるようサポートを受けることができます。

6、示談を弁護士に依頼する費用を抑えたい方へ

示談を弁護士に依頼する費用を抑えたい方へ

弁護士に依頼したくても、弁護士費用が気になる方も多いことと思います。

弁護士費用を抑えたい方は、次の2点を検討してみましょう。

(1)法テラスの「犯罪被害者法律援助」を利用する

犯罪被害者法律援助とは、性犯罪など一定の類型の犯罪被害者等が上記の被害者参加制度などを利用するために弁護士に依頼する費用について援助を受けることができる制度です。

この制度を利用することによって弁護士費用の自己負担はゼロとなる場合が多いです。

ただし、弁護士の活動によって示談が成立するなどして現実に利益が得られた場合は、その金額に応じた割合で弁護士に成功報酬を支払うこととされています。

また、この制度を利用するためには、申込者の資力が一定の金額以内であるなどの条件があります。

詳細は、法テラスのホームページ(犯罪被害者法律援助)をご覧ください。

(2)費用の安い法律事務所を探す

弁護士費用は一律ではなく、法律事務所によって幅があります。費用が高いほど弁護士の経験が豊富というわけでもありません。それぞれの事務所の費用を比較してみるのがよいでしょう。

相談料が無料の事務所や、費用の分割払いに対応している事務所もあるのでいくつかの事務所に問い合わせてみることをおすすめします。

まとめ

痴漢事件の被害に遭って精神的に苦しまれた以上、加害者に対して示談金を請求する正当な権利があります。

本記事をご参考にしていただき、納得のいく示談をしていただければ幸いです。

示談をするなら早い方が有利ですので、お早めに弁護士に相談なさってみてはいかがでしょうか。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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