嫡出否認をしたいけど、どのようにすればよいかわからなくてお困りの方もいるのではないでしょうか。
もしも子どもが自分の子どもではないと気がついてしまったら…。辛いですし悲しい気持ちになるでしょう。
また、子どもの出生を疑う自分にも嫌悪感を持ってしまいます。
しかし、子どもとの親子関係が本当にないと確信を持ったなら早めの行動が肝心です。
自分の子どもではないことを証明し嫡出否認を行う必要があります。
今回は
- 嫡出否認とは何か
- 嫡出否認の手続き
- 嫡出否認の効果と弊害
などを紹介していきます。
早めに親子関係を明確にして後世に憂いを残さないようにしましょう。
あなたと子どもにとって最善の選択ができることを願います。
目次
1、嫡出否認とは?親子関係を否定する法的手続き
自分の子どもではないと気がついた場合に、親子関係を否定するための法的手続きには次の2つの方法が存在します。
それぞれどのような制度なのかを見ていきましょう。
(1)嫡出否認
嫡出否認(ちゃくしゅつひにん)とは、婚姻中や離婚後300日以内に生まれた子どもを自分の子どもとせずに親子関係を否定することです。
妻の不貞でできた子どもや、離婚後に別の男性との間にできた子どもを自分の子供ではないと否定できる制度です。
通常女性の妊娠期間は10月10日といわれています。
そのため、法律上、離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子どもとして推定されてしまいます。
しかし、場合によってはこの推定が正しくないこともあるため、嫡出否認という制度が設けられています。
(2)親子関係不存在確認
明らかに親子関係が認められない場合には「親子関係不在確認」という方法もあります。
明らかに親子関係ではない場合とは、夫が服役中にできたなど明らかに夫婦が会うことができない状況下でできた子ども、婚姻後200日以内に生まれた子どもなどのことを指しています。
この場合には親子関係不在確認の制度を利用することで親子関係の否定が可能です。
万が一嫡出否認ができなかった場合には、親子関係不在確認で親子関係を否定できます。
2、嫡出否認をするための条件
嫡出否認を行うためには、子どもの幸せや利益を考えていくつかの条件が定められています。
本当は夫の子どもにもかかわらず、妻の不貞が発覚しただけで子どもを否定することは許されません。
嫡出否認をするための条件とは、
- 生物学上の親子関係がないこと
- 夫が子どもの出生を知ったときから1年以内に手続きすること
- 家庭裁判所に対して原則夫が申し立てること
- 当事者間の双方が嫡出否認を認めていること
です。
単なる推量や憶測、証拠のない嫡出否認はできませんので注意してください。
妻が夫の子どもだと主張するケースでも嫡出否認はできない可能性があります。
嫡出否認の申し立てを行う場合には、確かな証拠が必要になるでしょう。
3、嫡出否認に必要な手続き
嫡出否認に必要な手続きを見ていきましょう。
条件をクリアしているなら、あとは必要書類の準備と申し立てだけです。
(1)必要書類等の準備
嫡出否認を行うために必要な書類は次のとおりです。
- 申立書
- 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 子供の戸籍がある場合は子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 出生届未了の場合は母親の戸籍謄本(全部事項証明書)、子どもの出生証明書の写し
- 収入印紙1,200円分
追加で書類が必要な場合には別途裁判所から依頼があります。
調停中に鑑定が必要になった場合には、申立人が費用を負担することになります。
(2)調停を申し立てる
相手方の住所地の家庭裁判所に対して必要書類を準備の上夫が申し立てを行います。
当事者間の合意があれば合意のあった地方の家庭裁判所にも申し立ては可能です。
もしも夫が子どもの生まれる前や嫡出否認の権利を行使できる期間に死亡していた場合には、3親等以内の血族やその子どもに相続権を害される者でも代理で申し立てができます。
夫が未成年の場合には、後見人や後見監督人でも申し立ては可能です。
4、嫡出否認調停は当事者間の争いがなくても不成立になることがある
嫡出否認の調停では当事者間の合意があれば基本的には解決します。
しかし、裁判所では子どもの利益を考慮するため、確かな親子関係を否定する証拠がない場合には、調停不成立になるケースもあります。
もしも調停不成立になった場合には、嫡出否認の裁判に発展するかもしれません。
その場合には新たな証拠を提出しなければ嫡出否認は認められない可能性が高いでしょう。
5、嫡出否認での有力な証拠とは
嫡出否認で有力な証拠になるのがDNA鑑定です。
夫と子どものDNAが一致しなければ親子関係でない可能性は非常に高いことになります。
その他、血液型の不一致や、夫が服役中で夫婦間の性交渉がないことが立証できれば嫡出否認の有力な証拠となるでしょう。
6、嫡出否認による効果と弊害
嫡出否認は、もしも離婚をするなら効果が高いといえます。
しかし、婚姻関係を持続して嫡出否認をする場合には熟考が必要になるでしょう。
(1)嫡出否認による効果
嫡出否認が認められ親子関係がないことが証明された場合には、夫に子どもの養育義務はなくなり、子どもの相続権もなくなります。
もしも妻の不貞がわかり離婚を考えているなら、嫡出否認をした方が離婚後に養育費を払わないで済むため、あなたにとって有益です。
また、前妻の嫡出否認をしたとしても同様の効果があります。
相続権もなくなりますから、離婚と嫡出否認をしておければ、将来的にも安心です。
実子に対する相続が守られる結果になるでしょう。
(2)嫡出否認の弊害
もしも妻の不貞がわかり婚姻中に子どもの嫡出否認を行った場合でも、子どもは家庭内ではあなたを父親と思い生活していくでしょう。
子どもが複数人いた場合には、1人だけ父親に育ててもらう権利がなくなるわけです。
もしも離婚せずに嫡出否認だけをするなら相当な覚悟が必要になるでしょう。
あなたの子どもではなくても、妻にとっては可愛い我が子です。
あなたが養育義務を放棄し他の子どもと差別して育てることで、間違いなく夫婦関係はこじれてしまいます。子どもも不幸になってしまうでしょう。
将来的な相続を考え嫡出否認をしたとしても、婚姻関係を持続するなら、実子と分け隔てない愛情を持って接していくことが望まれます。養育義務はありませんが、実際には養育していくことになると考えてください。
まとめ
子どもが実は自分の子どもでなかったと気がついた場合にはどうしたらいいのかわからなくなることでしょう。
もしも嫡出否認をしたいなら、確かな証拠とともに嫡出否認の調停を申し立ててください。
しかし、妻が否定しているケースでは調停不成立になる可能性もあります。
嫡出否認は子どもの将来を左右する大きな事案です。
迷いや不安がある場合には、弁護士に無料相談してみてください。
あなたの利益と子どもの利益を考えて適切な対処をしてくれます。
正しい決断をしてあなたが幸せになれますように。