
官報とは政府が発行している機関紙で、自己破産をすると官報に氏名や住所が掲載されます。官報から自己破産した事実が知り合いにバレてしまわないかと心配で、自己破産をためらう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は
- 官報に掲載される自己破産に関する情報
- 官報から自己破産がバレるのか?
- 官報への掲載以外の自己破産のデメリット
などについて解説します。
この記事が、借金でお悩みの方のための手助けとなれば幸いです。
自己破産するとどうなるか不安をお持ちの方は以下の関連記事をご覧ください。
1、官報とは?
(1)官報は政府が発行する機関紙
官報とは、政府が発行する機関紙です。官報には、国民に知らせる必要のある情報が記載されています。
官報に掲載される内容は主に以下の通りです。
- 法律、政令、条約
- 政府の人事異動
- 国家資格の登録者
- 入札の告知
- 会社決算
官報は行政機関の休日を除いて毎日発行されており、政府から国民に情報を伝える役割を果たしています。
(2)官報はインターネットでも閲覧できる
官報は各都道府県庁所在地にある官報販売所で購入できるほか、インターネットでも閲覧が可能です。インターネットでは過去30日分は無料で閲覧でき、有料サービスに登録すると昭和22年5月3日以降のものを閲覧できるようになります。
2、官報には自己破産したことが掲載される
(1)官報に自己破産した人の住所・氏名などが載る
官報の掲載事項の中には裁判所公告が含まれており、自己破産に関する情報も掲載すると定められています。
自己破産について官報に掲載されるのは、債権者(破産者にお金を貸した人)に対して、破産することを知らせる必要があるためです。
破産手続は借金を帳消しにするものであり、債権者にとっては重大な事実になります。しかし、破産する人が債権者全員を把握しているとは限りません。そこで、すべての債権者が破産手続に参加できるように、官報によって知らせることとされているのです。
官報に掲載される自己破産に関する内容は以下のとおりです。
- 事件番号
- 管轄裁判所
- 破産者の住所
- 破産者の氏名
- 決定の日時
- 決定の内容
破産者の住所・氏名も掲載されるため、官報を見れば「どこの誰が自己破産したか」がわかります。
(2)官報に自己破産が掲載されるタイミング
官報に自己破産が掲載されるのは、以下の2回となるのが一般的です。
- 破産手続の開始のとき
- 免責許可決定のとき
①破産手続の開始のとき
破産手続の開始が決まると官報に掲載されます。
なお、個人の自己破産では、「破産手続開始決定」と同時に「破産手続廃止決定」をおこなうのが一般的です。これを「同時廃止」といいます。
「同時廃止」とされるのは、自己破産する人が破産手続にかかるお金すら持っていない場合です。債権者へとお金を分配する余裕が破産者になく、時間をかけて手続をする意味がないため、破産手続をすぐに終わらせてしまうことになります。
②免責許可決定のとき
免責許可が決定されたときにも官報に掲載されます。
免責許可とは、裁判所が借金への責任を免除することです。免責許可決定があると、破産者は負っていた借金を返す必要がなくなります。借金の返済を要求できないことを債権者に知らせるため、免責許可決定の事実を官報に掲載することになっているのです。
(3)官報に自己破産が掲載される期間
官報に自己破産が掲載されると、紙媒体が存在する限り記録は残ります。インターネットについては、無料で誰でも閲覧可能なのは30日間に限られるものの、有料サービスの登録者には常に閲覧可能な状態となります。
3、官報から自己破産がバレる?
(1)官報から自己破産を知られる可能性は低い
官報に自己破産した人の住所・氏名が掲載されると聞くと、「破産したことが知り合いにバレてしまうのではないか」と心配になるかもしれません。しかし、実際には官報から自己破産が知られる可能性は低いといえます。理由は以下のとおりです。
①一般人は官報を見ない
一般の人は、官報の存在そのものを知らない場合が多く、知っていたとしても毎日確認する人はほとんどいません。
官報を日常的に確認するのは、金融機関の担当者です。破産した直後の人にお金を貸すと返済されないリスクが大きいため、金融機関は破産者の情報を必要としています。他には、役所の税金担当者や法律事務所の職員などがチェックすることがありますが、いずれも仕事で必要なためで、プライベートな目的で見るわけではありません。
なお、違法な貸付をする闇金業者も、融資をもちかけるダイレクトメールを破産者に送付するために官報を確認しています。破産した後に、一般の金融機関からは借りられないからといって、闇金業者から融資を受けることのないようにくれぐれも注意してください。
②官報の情報量は膨大
官報には破産の公告の他にも多数の情報が載っており、かなりのページ数があります。知り合いが官報を見ることがあっても、たまたま自分の破産情報にたどり着く可能性は非常に低いです。
③ネット上で名前を検索してもヒットしない
官報はインターネット上で30日間は無料で見られますが、検索エンジンで破産者の名前を入れて検索しても官報はヒットしません。官報はPDFで画像として公開されており、名前や住所では検索できないためです。知り合いが自分の名前を検索エンジンに入れて検索したとしても、官報の破産情報にたどり着くことはできないので安心してください。
(2)官報以外から自己破産を知られる可能性も低い
以下で説明するとおり、官報以外の情報から自己破産を知られる可能性も低いです。
①信用情報は本人以外に開示されない
信用情報とは、勤務先、年収、ローンなど個人の支払い能力についての情報です。自己破産するとその事実が信用情報に記載され、クレジットカードの利用ができなくなったり、銀行からの融資が受けられなくなったりします。
信用情報を用いるのは金融機関であり、開示請求は本人でないとできません。したがって、信用情報を通じて家族や友人に破産の事実がバレてしまう心配は不要です。
なお、5~10年経てば破産の事実は信用情報から削除されます。
②破産者名簿は非公開
自治体には「破産者名簿」というものがありますが、ここから判明する可能性も考えなくてよいでしょう。
そもそも破産者名簿に載るのは免責許可がおりないような場合に限られるため、通常は破産者名簿に掲載されることすらありません。掲載されてしまったとしても、破産者名簿は一般には公開されておらず、そこからバレることは考えづらいです。
なお、よくある誤解として「破産すると戸籍や住民票に載る」というものがありますが、そのような事実はないので心配する必要はありません。
③破産者マップは閉鎖された
かつて、ごくわずかな期間ではありますが、「破産者マップ」というウェブサイトが存在しました。これは、官報に掲載されている破産者の情報を集め、グーグルマップ上に表示したもので、氏名も公開されていました。
破産者マップの存在は破産者の名誉やプライバシーの観点から問題とされ、行政指導もなされた結果、現在は閉鎖されています。似たサイトも現れましたが、同様に閉鎖されました。
違法性が示されたため、類似サイトを開設するのは難しくなっており、こうしたサイトから破産の事実が知り合いにバレるリスクは低くなっているといえます。
4、官報への掲載の他にも自己破産にはデメリットがある
官報に掲載されても、周囲に破産が発覚する可能性は低く、大きな問題ではありません。もっとも、自己破産には以下のデメリットがあるため、十分に認識しておく必要があります。
(1)自宅や車を手放さなければならない
自己破産すると、借金を免除されるかわりに、一定以上の価値のある財産は手放さなければなりません。自宅や車は生活に欠かせないものですが、高価であるため手放す対象となってしまいます。ただし、価値が20万円を超えない場合にはそのまま所有できるため、車については中古車販売業者に価値を確認しておくとよいでしょう。
(2)就けなくなる職業がある
「自己破産している人は就くことができない」と法律上定められている職業があります。例としては以下の職業が挙げられます。
- 弁護士、公認会計士、税理士などの士業
- 生命保険募集人
- 警備員
- 貸金業者
特徴は、お金を取り扱う仕事であるという点です。例として挙げた以外にも多くの職業で資格制限がありますので、ご自身の職業があてはまらないかどうか確認しておきましょう。
なお、上記の職業に一生就けないというわけではなく、免責許可決定を受けるなどして復権すれば元の職業に就くことが可能です。
(3)一定期間は借り入れができなくなる
上述したとおり、自己破産すると信用情報に記載されます。そのため、5~10年はクレジットカードが利用できなくなったり、ローンを借りられなくなったりしてしまいます。自己破産をした後は、借り入れの必要がないように生活しなければなりません。
(4)保証人に迷惑がかかる
自己破産をしても、保証人の義務はなくなりません。自己破産の効果は本人にしか及ばないためです。
自分が破産して借金を免除されても、家族や友人が保証人となっていれば取り立てを受け迷惑をかけてしまいます。事前に事情を説明して理解を得ておくとよいでしょう。
5、自己破産を考えている方は弁護士にご相談を
(1)自己破産すれば借金が免除される
自己破産にはデメリットもありますが、借金が免除されるというメリットがあります。金銭的にはもちろん、取り立てがなくなるため精神的にも非常に大きなメリットです。自己破産をした後に得た財産は没収されず、人生を一からやり直せます。
とはいえ、自己破産の手続に必要なことをすべて自分で行うのは簡単ではありません。専門知識を持った弁護士の力を借りると安心です。
(2)最善の方法を考えられる
借金の悩みの解決のためには、自己破産以外にも任意整理や個人再生といった別の方法もあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分にはどの方法がよいのかを考えるには十分な知識が必要です。弁護士に相談して最善の方法を探すのが得策といえます。
まとめ
ここまで、自己破産について、官報に掲載されることを中心に解説してきました。
官報に載ってしまうことはたしかにデメリットではありますが、バレる心配は少なく、必要以上に自己破産を恐れなくて大丈夫です。
借金にお悩みの方は、まず弁護士に相談して解決に向けた第一歩を踏み出しましょう。