駐車場事故(ちゅうしゃじょうじこ)とは文字通り、駐車場内で起こる事故のことです。
交通事故分析センターが行った調査によると、平成28年に起こった駐車場事故は18,766件発生しており、全体の事故数の3.8%を占める状況になっています。
引用:平成29年度提案公募型研究駐車場の交通事故減少に向けた安全性向上のための施設運用に関する研究
また、駐車場事故のうち3割を人対車両の事故が占めています。
原因としては、駐車場内では通行する歩行者や自動車の安全確認がおろそかになりやすいことや子どもの飛び出し、駐車場は公道とは違い車の動きが変則的であることなどが挙げられます。
駐車場事故は、道路上での交通事故とは異なる点がいくつかあります。
駐車場は道路ではないから道路交通法の適用がないの?
施設の駐車場では施設に責任も問えるの?
当て逃げされて加害者がわからない時の保険料や対応はどうするの?
今回は、
- 駐車場事故と道路上の交通事故の違い
- お店の駐車場であるときのお店への責任追及
- 駐車中の当て逃げへの対処法
などに関して詳しくみていきたいと思います。ご参考になれば幸いです。
また、以下の関連記事では交通事故での被害者が損をしないための知識について解説しています。突然の交通事故の被害にお困りの方は、以下の関連記事もあわせてご参考いただければと思います。
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1、駐車場事故と道路上の交通事故の3つの違いとは?
駐車場事故は、一般的な道路上の交通事故とどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、駐車場事故における特徴について、解説していきます。
(1) 過失割合
まず、認定される過失割合に特徴があります。
駐車場には、公道のように、信号機や横断歩道または優先道路などはありません。
ということはつまり、証拠が残りにくく、事故が起きた際の状況を示すものが少ないため、過失割合を算定するのが難しくなります。
そのため、
『自分が絶対に被害者だ!』
と思ったとしても、それを決定づける証拠が駐車場内には少ないため、車同士の駐車場事故では、保険会社によって50対50に近い過失割合を主張されるケースが多いようです。
この基本対応を覆すには「証拠」です。
証拠は、現在であればドライブレコーダーが有効でしょう。
レコーダー搭載ではない、もしくは自身が歩行時であったなどの場合は、施設駐車場であれば施設の監視カメラも証拠となり得ます。
突然の追突事故では多くの場合、追突された側には過失はありません。
しかし証拠がなければ50対50の可能性が。
この場合は泣き寝入りをせずに、証拠を見つけていきましょう。
(2)道路交通法の適用
駐車場には公道とは違い、道路交通法が適用されない場所があります。
このことは、道路交通法第2条1項にも記載されています。
道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。
つまり、『一般交通の用に供するその他の場所』に該当すれば道路交通法が適用され、該当しなければ、道路交通法は適用されないということです。
引用:平成29年度提案公募型研究駐車場の交通事故減少に向けた安全性向上のための施設運用に関する研究
上記の表のとおり、
- 私道
- 空地
- 広場
- サービスエリア
- パーキングエリア
などは、道路交通法が適用されますが、
- 個人宅の駐車場内
- 月極の駐車場
などは道路とみなされず、道路交通法が適用されません。
このように、駐車場には道路交通法の適用がない駐車場があります。
(3)駐車場事故では警察を呼ばなくてよい?
本来、交通事故では、警察への報告義務があります(道路交通法第72条)。
ただし、これは道路交通法上の義務であり、(2)に記載したように道路交通法が適用されない場所ではこの義務はありません。
しかし、もし、道路交通法上の報告義務がなくても、人体の負傷が出た場合は関係ありません。
すぐに警察に連絡を入れてください。
自動車運転処罰法上の過失運転致傷罪や危険運転致傷罪などに該当する可能性があります。
また、私有地での事故は自賠責保険の対象外でありますが、任意保険では通常カバーされていること、万が一加害者が任意保険に加入していなかった場合でも、自賠責法上の運行供用者責任又は民法上の不法行為に基づき損害賠償は可能です。
事故を写真に収めておく、話し合いを録音しておく、目撃者に連絡先を聞いておくなど、不法行為(事故)の証拠を残しておきましょう。
2、駐車場事故はお店側にも責任を問える?
商業施設等の駐車場事故が起こった場合、施設(お店)側にも責任を問えるのでしょうか?
(1)土地工作物責任
駐車場の設置または保存に瑕疵がある場合、施設(お店)側に民法上の土地工作物責任(民法第717条)を追及することができます。
具体的には、
- 照明が消えていて見通しが悪い
- 駐車場のスペースが異常に狭い
- フェンスや塀がなく、人が簡単に侵入できる環境だった
- 案内不十分により出口までの経路が不明確
- 警備員がいない
- 駐車場内に壊れた箇所がある
などの場合、それらを原因として事故が発生した場合は、駐車場の占有者または所有者が責任を負う可能性があります。
占有者(お店の運営者)は過失がなければ責任を免れますが、所有者(駐車場の土地所有者)は無過失責任です。
占有者や所有者は、通常損害保険に加入しているので、この保険でカバーされるのが一般的です。
(2)有料駐車場における賃貸借契約違反
有料駐車場には賃貸借契約が成立するため、施設(お店)側に契約上の管理責任が発生します。
管理責任とは、
- 監視カメラを設置する
- 警備員を配置する
などのことです。
有料の駐車場で事故が起こった場合には、この管理責任を怠ったとして、お店側にも責任が問われることになります。
事故当時、駐車場内が管理責任を怠っている状況だったのであれば、その損害賠償をお店側にも請求できる可能性があるということを、覚えておきましょう。
3、駐車場事故の被害に遭った際の対応方法
実際に駐車場内で事故の被害に遭った際は、どのような対応をするべきなのでしょうか?
ここではその対応について、順序立てて解説していきます。
(1)被害者の救護活動
事故が発生したらまず、被害状況を確認し、被害者がいる場合はその救護活動をする必要があります。
その後、被害者を病院に運ぶための手配をしたり、自分も被害に遭っていて動けない場合には、周りにいる人に救護を求めるようにしましょう。
また、事故車両を移動させたり、周囲に事故の発生を知らせるなど、事故がさらに拡大しないための対策をとるようにしてください。
警察に連絡するよりも先に、被害者の救護と、事故の拡大を防ぐための措置をとる必要があります。
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
引用元:道路交通法第72条
(2)警察へ連絡
事故処理が終わった段階で、警察へ連絡をしましょう。
自分が被害者であっても、加害者が負傷していたり、加害者が連絡を取れなかったりした場合には、自ら警察にその状況を報告するようにしてください。
被害者の救護と同様に、こちらも道路交通法第72条に定められている事故当事者の義務です。
(3)事故状況を確認する
警察が事故現場に来るまでの間に、事故の状況や証拠などを集め、記録しておくようにしましょう。
警察による実況見分の際、それらが重要な証拠となることも大いにあり得ます。
事故後に余裕があるのであれば、
- 相手車両が出していたスピード
- 相手の身元確認
- 目撃者の証言
など、なるべく多くの証拠を集めておくことが大切です。
これらをもとに、警察による実況見分に臨めば、過失割合にも良い影響を及ぼすことが期待できます。
この際、相手が示談を持ちかけてきたとしても、その場では応じないようにしましょう。
なぜなら、この場では怪我などの負傷をしていなかったとしても、後になって後遺障害が発生してくることもあり得るからです。
示談をした後では、その損害賠償を請求することは難しいので注意しましょう。
(4)保険会社へ連絡
その後は、保険会社へ連絡をします。
自分が加害者であれば、保険会社への連絡は相手への賠償のために必ず行うことですが、自分が被害者であっても、保険会社への連絡は欠かすことができません。
自分の保険で「人身傷害補償特約」や「弁護士費用特約」、「搭乗者傷害特約」を付けていれば使うことができます。
また、もしも相手が保険に加入していなければ、無保険者補償特約を付けている場合は使うことができます。
なので、交通事故が発生した際は、自分が加害者・被害者どちらの立場であれ、保険会社への連絡は怠らないようにしましょう。
ちなみに、保険会社への連絡は、事故直後ではなく後日でも可能です。
(5)医師の診断を受ける
ここまでの処理が終了したら、たとえ軽い怪我であっても、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。
その時は大丈夫であれ、後から怪我や症状が発覚してくる可能性も十分にあり得ます。
もしも日数が経過すれば、事故と怪我の因果関係が認められなくなる可能性もあるため、怪我や症状の具合を自分で判断せず、事故後すぐに医師の診断を受けるようにしてください。
(6)弁護士へ相談・依頼
交通事故の被害に遭われたら、弁護士へ相談・依頼することも効果的です。
例えば、保険会社や加害者とのやり取りは、手間や時間、または精神的な苦痛を要することが予想されるため、自分ひとりでは面倒なケースが多いです。
また、法的な根拠をもって相手方に主張することができるため、過失割合を減らしたり、相手からもらえる賠償額を増額できたりといったことも期待できます。
こういった、過失割合や損害賠償を決める際には、弁護士はとても大きな存在となり、強い味方になってくれるでしょう。
そういったことを可能にするために、ぜひ弁護士への依頼を検討してみてください。
また、交通事故後の詳しい対応方法については、こちらの記事もご覧ください。
4、駐車場事故特有の問題―駐車中の当て逃げ
駐車中に当て逃げされた場合は、もはや加害者がわからず、この悲しみや怒りをどうして良いか・・・。
この場合は、
- 防犯カメラ
- 目撃者
この2つが重要です。
もし、自分の住むマンションなどの駐車場内であれば、駐車場を利用する人はかなり限定されています。
そういった場合には、管理人に協力してもらうなどして加害者の特定を目指しましょう。
まとめ
今回は、駐車場内での事故について紹介してきました。
駐車場事故は一般的な事故と異なり、警察が一切関与しないケースもあるため、実際に被害に遭った際にはその対応に困ることもあるでしょう。
しかし、もしも駐車場事故によって何らかの被害に遭えば、相手方に損害賠償などを請求することはできますし、過失を認めさせることもできます。
『駐車場事故だから泣き寝入りするしかない…。』と考えるのではなく、被害を警察に連絡したり、弁護士に相談を依頼したりなど、納得のいく解決に向けて最善の行動をするようにしましょう。