「最近は個人間融資で手軽にお金を借りられるから便利だけど、本当に安全なのかな…」
近年では、SNSやネット上の掲示板などを通じて、見知らぬ人同士がお金の貸し借りをする「個人間融資」という方法が広まってきています。
個人間融資では、金融機関のような審査もなく、迅速に借り入れできるため、多くの人にとって便利な選択肢と映るかもしれません。しかし、正規の金融機関から借り入れが難しい状況の人々にとっては、個人間融資が頼りとなることもあるでしょう。
しかし、実際には個人間融資を利用した人々は、さまざまなトラブルに巻き込まれているケースが多いとされています。金融庁も個人間融資の利用には危険性があるとし、注意を喚起しています。
そこで、以下のポイントについて詳しく解説します。
個人間融資のしくみ
個人間融資を利用する際のリスク
個人間融資で被害に遭った場合の対処法
この記事が、個人間融資の検討中の方や、実際にトラブルに遭った方々の参考になれば幸いです。
お金を作ること全般に関しては、以下の関連記事をご参照ください。
目次
1、個人間融資とは?
個人間融資とは、その名のとおり金融機関による貸付ではなく、個人が個人に対してお金を貸し付けることをいいます。
広い意味では、家族や親戚、友人・知人などとの間でお金を貸し借りすることも個人間融資に含まれます。
しかし、最近問題視されている「個人間融資」とは、このように面識のある人同士で行われるお金の貸し借りのことではありません。
単に「個人間融資」という場合は、SNSやネット上の掲示板などを通じて見知らぬ人同士がお金の貸し借りをすることを指します。
それでは、この意味での個人間融資がどのようなものなのかを具体的にみていきましょう。
(1)個人間融資の基本的な仕組み
個人間融資にもいくつかのパターンがありますが、基本的な仕組みは次の4ステップです。
- ネットに書き込む
- 個別に連絡をとる
- 交渉の上、融資
- 返済
それぞれのステップについて、ご説明します。
①ネットに書き込む
個人間融資は、貸し手または借り手がネット上の書き込みで希望者を募ることから始まります。
貸し手が「お金を貸します」と書き込むパターンと、借り手が「お金を貸してください」と書き込むパターンの両方があります。
②個別に連絡をとる
上記の書き込みに対して、希望者がアクセスします。
その後はメールアドレスやLINEのID、電話番号などを交換した上で、個別に連絡をとってやりとりをするのが一般的です。
③交渉の上、融資
個別の交渉によって融資の金額や金利、返済期日などを取り決めた上で、融資が行われます。
以上のやりとりは、お互いに一度も顔を合わせないまま行われ、融資も振り込みによる場合がほとんどですが、中には対面した上で手渡しで融資が行われるケースもあります。
④返済
融資が成立した後は、通常の借金の場合と同じように、決められた返済期日までに返済が行われることになります。
もし返済できない場合は取り立てが行われることになりますが、どのような取り立てが行われるかはケースバイケースです。
(2)個人間融資が行われる場所
個人間融資はネット上のさまざまなところで行われていますが、代表的なものは以下の3つです。
- ツイッター
- LINE
- 専用掲示板
これらの場所に、現在も毎日、貸し手からも借り手からも多数の書き込みが行われています。
「#個人間融資」「#お金貸します」「#お金貸してください」「#困っています」などのキーワードで検索すると、数多くの書き込みを見ることができます。
なお、LINEには「LINEポケットマネー」というものがありますが、これはLINE株式会社が運営している個人向け金融であり、個人間融資ではありません。
(3)どんな人が個人間融資を利用している?
個人間融資を利用しているのは、主に以下のような人たちです。
①貸し手側
- 利息でひと儲けしようと考えている人
- お金を貸すことを口実に異性との出会いを求めている人
- 闇金融業者
「1.」の人の中には、特に悪質なことをするわけでもなく、普通にお金を貸して多少の利息を得ているという人も多くいます。
しかし、個人が繰り返しお金を貸す行為は次項でご説明するように法律に抵触する可能性が高いので、注意すべきです。
「2.」と「3.」の人は悪質性が高いですが、ネット上の書き込みを見るだけでは特に悪質とは感じないことがほとんどなので、特に注意が必要となります。
②借り手側
- 金融機関から借りられない人
- 家族や友人等にも頼れない人
- 今すぐにお金が必要な人
- 未成年者
- 消費者金融からの借金に抵抗がある人
消費者金融から借りるよりも個人から借りる方が精神的負担が軽いと考えて利用する人もいます。
しかし、大半の人は他に借りられるところがなく、切羽詰まった状況で個人間融資を利用しています。それだけに、悪質な貸し手から弱みを握られてしまい、後ほど「3」でご紹介するようなトラブルに巻き込まれるケースが多くなっています。
2、金融庁も警告!個人間融資が危険である理由とは
インターネットが普及したことで個人間融資を利用する人が増えてきましたが、実はネットを介した個人間融資の多くは法律に違反する取引なので注意しなければなりません。金融庁でも、「貸す側も、借りる側も#個人間融資に要注意!」と警告を発してしています。
ここでは、個人間融資の法的な危険性について解説します。
(1)賃金業法の規定に抵触している可能性が高い
個人がお金を貸し付ける場合でも、反復継続して行う意思がある場合は貸金業法にいう「貸金業」に該当します。
貸金業を営むには、国または都道府県に貸金業登録をしなければなりません(貸金業法第11条1項)。
SNSやネット上の掲示板でお金を貸し付けている個人は貸金業登録など受けていない人がほとんどなので、貸金業の無登録営業に該当する可能性が非常に高いといえます。
また、不特定多数の人が見ることが可能なSNSや掲示板等に「お金を貸します」などと書き込む行為自体も、貸金業法で禁止されている「無登録業者の勧誘」に該当する可能性が極めて高いです(同条2項)。
これらの行為は貸金業法違反となり、貸し手に以下の刑罰が科せられることがあります。
- 貸金業の無登録営業:10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方
- 無登録業者の勧誘:2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方
(2)闇金の被害や犯罪等のトラブルに巻き込まれる可能性が高い
個人間融資の貸し手からの書き込みは、そもそも法律を無視しているか、法律を知らない人によって行われています。そのため、必然的にトラブルが発生しやすくなっています。貸し手にとってSNSやネット上の掲示板は、お金に困っている人に対して匿名で効率よくアクセスできる場です。このような場を利用して借入希望者にお金を貸し付けて、暴利を得ようとする闇金業者は数多くいます。
その他にも、借り手が詐欺の被害に遭ったり、個人情報を悪用されたり、女性であれば性的被害に遭うなどのトラブルも多発しています。基本的に、個人間融資はそれ自体が違法なので手を出すべきでないと考えておいた方がよいでしょう。
3、個人間融資の利用で注意すべき具体的な6つのリスク
個人間融資が貸金業法に違反する可能性が非常に高いものであるとしても、「今すぐお金が必要だ」「違法であっても、きちんと貸してくれるのなら問題ない」と考える人もいるでしょう。
そこで次に、個人間融資を利用すると具体的にどのようなリスクにさらされてしまうのかについてご説明します。
たとえ貸し手の書き込みが優しいものに感じられたとしても、実際にお金を借りると以下のようなトラブルに巻き込まれる可能性が十分にあります。個人間融資を利用する前に、リスクをしっかりと確認しておきましょう。
(1)法外な金利を要求される
貸金業法では、貸金業者が借り手に対して請求できる金利の上限が、貸付額に応じて年15~20%までと定められています。
貸金業者でない個人が1回だけお金を貸し付ける場合であっても、出資法で年109.5%を超える金利を請求することが禁止されており、刑事罰も定められています。
しかし、闇金業者はそもそもこのような法律を無視していますので、法外な金利を要求してくるのが通常です。
以下の数字を見れば、闇金が要求してくる金利がどれほど高いかがお分かりいただけるでしょう。
- トイチ(10日にごとに1割の利息)…年365%
- トサン(10日ごとに3割の利息)…年1095%
- トゴ(10日ごとに5割の利息)…年1825%
闇金ではない一般の個人が貸し手の場合も、法外な金利を要求してくることはよくあります。例えば、5万円を貸してもらう場合に、「1か月後に5,000円の利息をつけて返してもらえればいい」と言われたら、「そのくらいなら仕方ないか」と思ってしまうのではないでしょうか。
しかし、年利に換算すると120%にもなり、出資法に違反する犯罪行為に該当します。
いずれにせよ、個人間融資では法律を無視した高金利を要求される可能性が非常に高いといえます。
(2)厳しい取り立てを受ける
お金を借りた後、約束した期日までに返済できなければ取り立てを受けるのは当然ですが、個人間融資では法律に違反する厳しい取り立てがよく行われています。
貸金業法では、取り立てについても借り手の心身に不当なダメージを与えないように、一定のルールが定められています。
具体的には、主に以下のような債権者の行為が禁じられています。
- 正当な理由なく夜間や早朝に借り手の自宅を訪問すること
- 正当な理由なく借り手の勤務先を訪問すること
- 借り手を誹謗中傷するような貼り紙をしたり立て看板を設置すること
- 借り手以外の第三者に返済を求めること
- 借り手を威迫するような言動で返済を迫ること
闇金業者は、あえて上記のような取り立てを行うことで借り手を精神的に追いつめ、利息を支払わせることを常套手段としています。くれぐれも注意しましょう。
(3)詐欺の被害に遭う
個人間融資では、典型的な闇金被害の他にも、詐欺の被害に遭うケースも多くなっています。
例えば、SNSや掲示板で融資を申し込んだところ、最初に保証料などの名目で一定の金銭を振り込むように指示され、振り込んだところ連絡が取れなくなるなどのケースです。
(4)犯罪への加担を要求される
借り手自身が金銭的な被害に遭うケースの他に、貸し手から犯罪への加担を要求されることもあります。
要求されることが多いのは、以下のような行為です。
- 銀行口座の譲渡を求められる
- 携帯電話やスマホの譲渡を求められる
- 振り込め詐欺などの手伝いを求められる
これらの要求は、返済が滞った場合に利息の免除などと引き替えに行われることが多いですが、中には貸し付けの条件として要求されることもなくはないようです。
(5)個人情報を悪用される
個人間融資でも、借り手は貸し手に対して住所・氏名・連絡先などの個人情報を伝えなければなりませんし、身分証明書の提示を求められるのも一般的です。
闇金業者の場合はさらに、勤務先や家族・親戚・友人などの情報まで求めてきます。
そして、返済が遅れるとこれらの個人情報がインターネット上に流されるなどの嫌がらせを受けるケースもあります。
嫌がらせを受けなかったとしても、借り手の個人情報が名簿業者などに売られているケースは数え切れないほどあります。
(6)女性なら性行為を要求されることも
個人間融資では、借入を希望する女性が性的被害に遭うケースが多いことも問題となっています。
貸し付けの条件として性交渉を求められるケースのことを「ひととき融資」といいます。ひととき融資では、金利は免除、または低金利とする代わりに完済するまで継続的に性交渉を求められるケースが多くなっています。
また、最初から性交渉を求められるわけではなくても、返済が遅れると性交渉を強要されるというパターンもあります。
さらに、お金を貸し付ける際に担保として借り手(女性)から裸の写真を送信させ、「返済が遅れると裸の写真をネットでばらまくぞ」と脅して法外な金利を要求するケースもあります。
4、個人間融資を利用して被害に遭ったときの対処法
もし、すでに個人間融資を利用してしまった場合、約束した金利も含めて返済が可能であれば、早急に完済して貸し手と手を切るのが一番です。できるのであれば、両親や親戚等から返済資金を借りてでも、すぐに完済してしまいましょう。すぐに完済できない場合は、警察と弁護士に相談することをおすすめします。
実は、法外な金利を伴う貸金の契約は、それ自体が犯罪行為のため民事上も無効となり、借り手は元金すら返済する義務はありません。したがって、貸し手に対して「返済しません」と告げて連絡を絶つのが、法律上は正解となります。
しかし、このように対応すると、貸し手から厳しい取り立てを受けたり、個人情報を悪用されたりする可能性が非常に高くなります。そのため、警察と弁護士に相談した上で対応した方がよいでしょう。警察や弁護士から貸し手に連絡すれば、トラブルを避けて解決できる可能性が高くなります。
裸の写真を担保に取られている場合も、いつネットに流されるかわかりませんので、警察や弁護士に相談した上で慎重に対応しましょう。
5、個人間融資を利用せず安全にお金を借りる方法
ここまでご説明してきたように、個人間融資の利用には大きなリスクが伴いますので、おすすめできません。
どうしてもお金が必要な場合は、以下の手段で金策を試みる方が安全です。
(1)信用情報を確認して金融機関の融資に再度申し込む
お金を借りるなら、個人間融資よりも銀行や消費者金融などの金融機関の方が、法律を遵守するので安全といえます。
しかし、すでに金融機関から借金している人の場合は、融資を申し込んでも断られることもあります。
その場合は、再度申し込む前に個人信用情報を確認することが大切です。なぜなら、もし延滞などの情報が登録されていると、何度申し込んでも正規の金融機関から借りることはできないからです。
信用情報を確認する方法は、以下の個人信用情報機関に情報開示を申請することです。
- JICC
- CIC
- KSC
詳しい方法については、以下の関連記事をご参照ください。
(2)公的支援制度を利用する
信用情報に延滞などの情報が登録されている場合や、どうしても金融機関の審査に通らない場合は、公的支援制度を利用しましょう。
お金に困った人が利用できる主な公的支援制度として、以下のようなものがあります。
- 生活福祉資金貸付制度
- 求職者支援資金融資制度
- 母子父子寡婦福祉資金貸付
- 年金担保貸付
- 教育一般貸付
- 生活保護
その他にも、家賃補助や医療補助など、自治体ごとにさまざまな支援制度があるはずですので、お住まいの自治体に相談してみましょう。
6、借金返済に苦しんでいるなら個人間融資ではなく債務整理で解決!
もし、すでに金融機関からの借金の返済に苦しんでいて、「他に借りられるところがない」という場合は、債務整理によって借金問題を解決してしまうことをおすすめします。
債務整理には、主に次の3つの方法があります。あなたに適した方法があるはずですので、確認してみてください。
①任意整理
裁判所を通さずに債権者と個別に交渉することによって、返済額や返済方法を変更する方法です。
大幅に借金を減額することは難しいですが、毎月の返済額を減らすことは可能なので生活が楽になります。借金総額が比較的少ない人に向いている方法です。
②個人再生
裁判所を通して借金総額を原則として5分の1に減額した上で、3年~5年で分割返済していく方法です。
一定の条件を満たせば、住宅ローンが残っているマイホームを維持することも可能です。
多額の借金を抱えているけれど財産を手放したくない人に向いている方法で、特にマイホームの住宅ローンを返済中の人には大きなメリットがある方法といえます。
③自己破産
裁判所を通じて、すべての借金の返済義務を免除してもらう方法です。
一度の手続きで借金から解放されるというメリットがありますが、一定額以上の財産を処分するひつようがあることや、手続き中は一定の職業に就くことができないなどのデメリットもあります。
到底返済できないほど多額の借金を抱えて、めぼしい財産もないという人には有効な方法です。
まとめ
個人間融資は、いっけん便利な仕組みのようにも思えますが、その多くは違法な取引であり、利用するとさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高いものです。
したがって、たとえお金に困っていても個人間融資の利用はおすすめできません。
すでに個人間融資を利用してトラブルに巻き込まれてしまった方や、借金返済でお金に困っている方は、弁護士に相談して適切に対処すべきといえます。弁護士が状況に応じて最善の解決策を一緒に考えてくれますので、ひとりで悩まずに無料相談を利用してみましょう。