
再婚禁止期間についてご存知ですか?
元々、民法において女性の再婚禁止期間は「6ヶ月」と規定されていました。
しかし、平成28年6月に民法の一部を改正する法律が成立し、6ヶ月の再婚禁止期間は廃止され、新たに再婚禁止期間は「前婚の解消又は取消しの日から起算して100日」に短縮されました。
今回は、
- そもそも再婚禁止期間とはなんなのか、
- 再婚禁止期間の問題点、
- 大法廷判決の内容、
- これを受けた動き
など、再婚禁止期間の現状と今後の動向について多くの離婚事件を解決してきたベリーベスト法律事務所の弁護士監修の上でお伝えしていきます。ご参考になれば幸いです。
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目次
1、再婚禁止期間とは?
そもそも、再婚禁止期間とは何なのでしょうか?
女性は、離婚した場合、一定期間再婚することが禁止されています。この離婚後、再婚ができない期間のことを再婚禁止期間というのです。
なお、男性にはこのような再婚禁止期間という制限はありません。
2、現在の法律上再婚禁止期間はどのようになっている?
再婚禁止期間については、民法733条1項で定められています。
令和3年3月現在、「前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ再婚できない」とされています。
例外として、民法733条2項によれば、離婚後100日以内でも以下に当てはまる場合は再婚が可能です。
- 前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
- 前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
離婚時に妊娠していなければ、100日の再婚禁止期間は適用されないということになります。
しかし、同条項によると、「妊娠していない証明をできれば離婚してすぐにでも再婚できるかのように思ってしまいますが、そうではありません。
離婚成立日から「28日間」は、再婚せずに待たなければならないのです。
また、民法に明記されているわけではないのですが、通達に基づく戸籍実務では、次の場合であれば前婚の離婚から100日以内であっても再婚可能とされています。
- 離婚した夫と再婚する場合
- 女性が妊娠することができないとされる年齢(67歳)に達している場合
3、何故再婚禁止期間が設けられたのか?
では、なぜ女性にだけこのような制約が課されているのでしょうか。それは、「嫡出推定」という制度があるためです。
嫡出推定とは、生まれた子の父が誰かを推定する規定です。
母親が誰であるかは出産によって明確に分かりますが、父親が誰であるかは分からないケースもあるため、父のいない子が出てきてしまう可能性があります。
そこで、父のいない子が生ずることを防ごうと、父性推定の規定を設けたのです。
この嫡出推定を定める民法772条中、再婚禁止期間に特に関わりのある規定によれば、以下のとおりとなります。
- ①結婚後(再婚後)200日を過ぎて生まれた子の父は現在の夫とされる
- ②離婚後300日以内に生まれた子は前の夫の子とされる(同2項)
このため、離婚後すぐの再婚を認めてしまうと、嫡出推定が重なる期間が100日生じてしまい、前夫と現夫のどちらを父としていいのかわからない期間が生じるおそれがあります。
そこで、このような推定の重複による混乱が生じないように一定期間再婚を禁止する再婚禁止期間を設けることとしたのです。
4、再婚禁止期間の憲法上の問題点は?
再婚禁止期間については、以前から憲法上の問題が指摘されていました。
具体的には、次の問題です。
- ①女性にだけ再婚禁止期間を課すのは平等原則を定める憲法14条1項に違反するのではないかという問題
- ②また婚姻に関する法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚しなければならないとする憲法24条2項に違反するのではないかという問題
いずれの点も、女性にだけ再婚禁止期間を課すのは合理的な根拠のない女性差別であるという考えが根本にあると考えられます。
これまでも、最高裁で再婚禁止期間について憲法違反であるとして争われたことがあります。
しかし、女性に再婚禁止期間を課すのは、先ほど述べたように父性推定の重複を避けるという合理的な理由があるので、差別的な取扱いには当たらず憲法違反ではないと判断されていました。
5、再婚禁止期間の改正のきっかけとなった判例と改正の流れ
平成27年12月16日、これまでの「6ヶ月」の再婚禁止期間を覆す判断が下されました。
父性推定の重複は100日の再婚禁止期間があれば足りるので、これを超える期間の再婚禁止期間は違憲という判決が出されたのです。
もっとも、訴えを起こしていた女性は100日を超える部分だけでなく、再婚禁止期間全体が違憲だと主張していました。
この点について最高裁は、「再婚禁止期間が設けられた趣旨や再婚禁止期間を全廃した場合に父がいない子が生ずることになる点を鑑みると、100日の再婚禁止期間は合理的である」という判断を下しました。
なお、補足意見では、100日の再婚禁止期間の例外について、既に認められたものに加えて父性推定の重複が認められない場合には広く認めるべきであるとも述べられていました。
以上の判例が、現在の再婚禁止期間へ変更となったきっかけなのです。
100日を超える部分の再婚禁止期間について違憲という判決が下されてから、内閣はすぐに再婚禁止期間を100日とする民法改正案を閣議決定しました。
違憲判決を受けて、法務省より通達を出し、離婚後100日を過ぎた女性からの婚姻届の受理を認めたので、実際上はこの判決が出た直後にも再婚禁止期間を100日として認めたのと同じ状況であったともいえます。
そして、平成28年6月、再婚禁止期間は「100日」として民法が改正されました。
まとめ
今回は、再婚禁止期間について紹介しました。
再婚は、人生において非常に重要な選択となります。
もし再婚を急がれたい場合には、自分が置かれている状況が例外当たるかどうか一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。