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安全配慮義務違反になるケースは?安全配慮義務の7つの知識

2021年11月25日
安全配慮義務違反になるケースは?安全配慮義務の7つの知識

労働者を雇っている事業主の立場でも、「安全配慮義務」について詳しく知っている人は多くありません。

「仕事が忙しいから、月に40時間、労働者を残業させている」
「暑い環境で労働者を働かせているけれど、問題ないよね?」

これらは、安全配慮義務に違反している可能性があるのです。

気づかないうちに安全配慮義務に違反していて労働者から損害賠償を求められた・・・なんて事態は回避したいもの。特に、労災発生時における安全配慮義務違反の損害賠償は、数千万円を超えるのも珍しくありません。本記事で安全配慮義務についてしっかり理解し、労働者と円滑な関係を築いていきましょう。

そこで今回は、

  • 安全配慮義務について
  • 安全配慮義務に違反した場合の損害賠償
  • 安全配慮義務違反になるケース

などについて解説していきます。
安全配慮義務について、確認しておきたい方のご参考になれば幸いです。

[nlink url=”https://best-legal.jp/compliance-meaning-26636/”]

1、安全配慮義務とは労働者が健全に働く環境を保護する義務

安全配慮義務とは労働者が健全に働く環境を保護する義務

安全配慮義務とは、労働者に安全に働いてもらう環境を提供する義務です。

以前は、安全配慮義務について法律に具体的な明文はありませんでしたが、2008年3月1日に施行された労働契約法の中で、安全配慮義務が明文化されました。

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(引用:労働契約法第5条)

当初は、労災による怪我や死亡の場面で、企業側の安全配慮義務違反の有無が問題となることがほとんどでした。

ところが最近では、パワハラや過重労働で鬱などの精神疾患が発症したような場面で、企業側の安全配慮義務違反の有無が問題となるケースが増加しています。

2、安全配慮義務により守られている具体的な範囲とは?

安全配慮義務により守られている具体的な範囲とは?

上述した労働契約法第5条の安全配慮義務の“必要な配慮”とは、どのような範囲を指すかを解説していきます。

(1)健康診断を実施しているか

年に1度、労働者に健康診断を実施しているかは重要です。
病気により就労が難しい労働者を漫然と働かせているようでは、配慮に欠けると言われても仕方ないでしょう。

昔から雇用している労働者はもちろん、途中入社した労働者にも健康診断は実施してください。

(2)仕事で使用する施設や備品に不良はないか

業務をする上で、施設・車・器具などが安全かどうかは重要です。
整備不良などの点検を怠り、漫然と安全性を欠く環境で労働者を働かせているようでは、配慮に欠けると言われても仕方ないでしょう。

労働者の働く施設や備品などは、常に壊れていないかチェックしてください。

(3)過度な労働をさせていないか

長時間労働の削減策を講じることもなく、仕事が終わらないからというだけで漫然と長時間労働を労働者にさせているなら、配慮に欠けると言われても仕方ないでしょう。
あまり長時間働かせてしまうと、過労死の恐れもあるからです。

働く時間をカットするための工夫をするか、長時間勤務が続いているなら早めの帰宅を促しましょう。

(4)人員配置は適切か

体力のない人に無理やり肉体労働をさせたり、計算が苦手な人に無理やり経理の仕事を任せたりなど、人員が適切ではない場合には、配慮に欠けると言われても仕方ないでしょう。

労働者に働いてもらう際には、その人の能力に合った環境で働いてもらうのが基本です。

(5)人間関係は良好か

労働者の仲を良好に保つための環境づくりは大切です。

例えば、社内ですれ違う人には元気な挨拶を心掛ける。
挨拶は誰でもできますし、されて嬉しいものです。
良好な関係を保つにはうってつけの方法でしょう。

このような、何かしらの人間関係を良好に保つ環境づくりをするのが安全配慮義務を守ることになります。

(6)新型コロナウイルス対策をしているか

2020年2月頃から蔓延しだした新型コロナウイルス。
2020年夏現在、テレワークが国からも推奨されています。

テレワークの体制を整えることはもちろん、テレワークに不向きな業務もありますので、これらの業務のため出社する労働者向けに、3密を避けた社内環境を整えることが必要です。

企業がすべき新型コロナウイルス対策の詳しくはこちらをご覧下さい。

[nlink url=”https://best-legal.jp/corona-corporate-ready-20873″]

3、安全配慮義務に違反した場合の損害賠償

安全配慮義務に違反した場合の損害賠償

冒頭で述べましたが、安全配慮義務に違反したことで労働災害が発生すると、数千万円以上の損害賠償問題になることも、珍しくありません。

実際に、水道局で働いていた職員の遺族に対して、損害賠償1,062万円の支払いを川崎市に命じた過去の判例があります。

水道局で働いていた職員Aさんは、上司3人から卑猥な発言や体型に関して悪口を日常的に言われて、統合失調症を発症しました。
回復はみられず、自殺未遂を繰り返して、遺書を残して最終的に自殺してしまいました。
(参考:川崎市水道局職場いじめ自殺控訴事件|東京都労働相談情報センター)

このように、安全配慮義務に違反すると多大な損害賠償が必要となる可能性があります。

4、安全配慮義務違反に該当するかの判断ポイント

安全配慮義務違反に該当するかの判断ポイント

安全配慮義務違反になるかのポイントは2つです。

  • 労働者の健康を害することを予測できたかどうか(『予見可能性』)
  • 労働者の健康を害することの回避策はあったかどうか、その回避策を怠ったかどうか(『結果回避性』)

上記2つが守られていないと、安全配慮義務違反になります。

5、安全配慮義務違反になる具体的なケース

安全配慮義務違反になる具体的なケース

安全配慮義務違反になりやすい3つのケースをお伝えします。

(1)80〜100時間以上の過労死ラインを超える時間外労働をさせている

月の時間外労働が、労災保険の場面における過労死認定の基準である「過労死ライン」を超えていると、安全配慮義務違反が認められやすくなります。

過労死ラインの目安は次のとおりで、これらの場合には、死亡の原因となった脳卒中や心臓病の発症と業務との関連性が強いと評価されることになります。

  • 脳卒中や心臓病の発症前2〜6ヶ月で平均80時間以上の時間外労働をさせている
  • 脳卒中や心臓病の発症前1ヶ月に100時間以上の時間外労働をさせている

どちらかに該当する場合は、労働者の睡眠時間を1日6時間以上確保できない過酷な長時間労働を強いていた疑いが強いため、安全配慮義務違反になりやすいのです。

(2)30度を越す劣悪な環境で労働をさせている

働いている環境の室内温度が28度を超える場合は、事務所衛生基準規則において努力義務とされている室内温度のラインを超えるため、安全配慮義務違反になりやすくなります。

事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四
十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。
(引用:事務所衛生基準規則第5条3項)

エアコンの設定を28度にしても、室内温度が変わっていなければ意味はありません。

(3)激しい台風の日に無理やり出勤させた

安全に出社できるか分からない激しい台風などの天候の日に無理やり出勤させた場合は、安全配慮義務違反になる可能性があります。
労働者に、何かしらの事故などの被害が出るかもしれないと予見できるからです。

台風などの日は、無理やり出勤させるのではなく、自宅でできそうな勤務をさせるようにしましょう。

6、安全配慮義務違反になった会社の事例

安全配慮義務違反になった会社の事例

実際に、安全配慮義務違反になった事例をご紹介します。

(1)サニックス事件

サニックス事件は、会社が新人研修で歩行訓練を実施した際、Aさんが負傷し、後遺症を抱えることになったため、会社が安全配慮義務違反に問われた事件です。

どこが安全配慮義務違反か、ポイントをピックアップしました。

  • 研修先での外出をすべて禁止にしていた(病院へも行けない)
  • 歩行訓練で右足関節を痛めたので病院への受診を求めたが、拒否された
  • 怪我を負っているのにも関わらず、歩行訓練に参加させられた
  • 参加者の年齢のバラツキや運動能力に差があるのに、同じ訓練をさせた

労働者の年齢や体力差を無視して無理やり研修を行わせたことが、安全配慮義務に欠けていると判断された事件です。

(2)電通事件

電通事件は、新入労働者のAさんが働きすぎて鬱になり、自殺するまでに追い込まれた事件です。

Aさんの残業時間は月に147時間。

入社前は明るかったAさんも、残業に耐えられなくなって、元気がなくなり、鬱病にかかってしまいます。

Aさんは、残業の過酷な生活を続けて1年5ヶ月が経ち、とうとう追い込まれ自宅で自殺。

両親は、残業が原因で鬱病になったことを主張して、会社に損害賠償を求めます。

裁判所は、会社はAさんの残業時間を把握していたのにも関わらず適切な処置をしなかったとして、安全配慮義務違反だと認定しました。

7、安全配慮義務に関する相談窓口

安全配慮義務に関する相談窓口

安全配慮義務について相談できる窓口をご紹介します。

(1)労働基準監督署

労働基準監督署の総合労働安全コーナーでは、労働者・企業側のどちらの相談も承っています。
総合労働安全コーナーは、全国380箇所の労働基準監督署に設置されており、無料で相談が可能です。

(2)弁護士

安全配慮義務に関して労働者とトラブルが起きてしまったなら、弁護士に相談しましょう。

弁護士であれば、法律の観点から、企業側に責任があるか否かの判断が可能です。
また、企業側に責任があるとしても、適切な対処法を教えてくれます。

安全配慮義務に関して不安や悩みを抱えてしまったのなら、弁護士に相談してみてください。

まとめ

最近は、パワハラや残業が原因で安全配慮義務に違反してしまうケースも増えてきています。
損害賠償を求められたら、数千万円を支払うことになるかもしれません。
安全配慮義務に違反しないためにも、2つのポイントが守られているかどうか、今一度確認しましょう。

  • 労働者の健康を害する予測ができたかどうか(『予見可能性』)
  • 会社が労働者の健康を害することの回避策はあったかどうか、その回避策を怠ったかどうか(『結果回避性』)

この2つのポイントをしっかり抑えておけば、とりあえずは安心です。

ただし、気づかないうちに安全配慮義務に違反する可能性もあります。
労働者と何か問題が起きてしまったのであれば、弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、企業側が不利な状況でも法律の観点から的確なアドバイスしてくれます。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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