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営業車で起こした事故の責任は?会社側が知るべき4つのこと

2022年1月6日
営業車で起こした事故の責任は?会社側が知るべき4つのこと

営業車で人を死傷させる交通事故を起こしてしまった場合、会社側に責任はあるのでしょうか。

2019年5月21日午前9時45分頃、東京都港区新橋4丁目の交差点で、営業用トラックが歩行者を相次いではねた後、乗用車など計4台と次々に衝突し、合計5名(トラック運転手を含む)が負傷するという交通事故が発生しました。
愛宕警察署によると、トラックが赤色信号で交差点に進入したということです。

このように、業務中に従業員が営業車で交通事故を起こした場合、その運転手あるいは会社はどんな責任を負うのでしょうか?

この記事ではそんな疑問にお答えしたいと思います。

少しでもお役に立てれば幸いです。

使用者責任について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/user-liability-28721/”]

1、営業車が起こした事故の責任は?

営業車で従業員が事故を起こしたらどうなる?会社として知っておきたい責任の所在などを解説

まず、運転者(従業員)の責任と会社の責任とに分けてご説明いたします。

(1)運転者には民事上・刑事上の責任が生じ、行政処分を受ける可能性も

交通事故を起こして、他人に損害(治療費や車の修理費用など)を加えた場合、不法行為責任(民法709条)に基づく損害賠償義務を負い、金銭的な支払いをしなければなりません。
これが民事上の責任です。

刑事上は、過失運転致死傷罪などの罪に問われます。
過失運転致死傷罪の刑罰は、「7年以下の懲役・禁固、または100万円以下の罰金」と定められています。

また、当然ながら、事故の程度や交通法規の違反の程度に応じて、免許取消・停止などの行政処分が科せられることもあります。

(2)会社にはどういう責任があるのか

従業員が交通事故を起こした場合に、従業員を雇っていた会社に発生する責任は「使用者責任(民法715条)」や「運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)」です。

①使用者責任

使用者責任とは、被用者(営業者運転手)がその事業の執行について第三者に加えた損害について、その被用者を使用する者(使用者=会社・職場)が賠償する責任のことをいいます。

使用者責任は「報償責任の原理」に基づいています。
つまり、使用者は、被用者を使用することによって利益を上げている以上、その被用者の使用によって生じた損害についても責任を負うべき、という考え方です。

[nlink url=”https://best-legal.jp/traffic-accident-employers-responsibility-13197″]

②運行供用者責任

運行供用者責任とは、被用者(営業者運転手)がその運行によって他人の生命、身体を害した場合(つまり、人身事故を起こした場合)に、これによって生じた損害を運転者の運行供用者(会社・職場)が賠償する責任のことをいいます。

ここでいう「運行供用者」とは、「運行支配」、「運行利益」を有する者であるとされています。
通常、会社は「運行支配」、「運行利益」を有していますから、会社は「運行供用者」といえるでしょう。

(3)状況により異なる賠償責任の有無

以上のように、従業員が交通事故を起こした場合、その従業員が不法行為責任を負うことは明らかですが、会社は、ケースごとに責任を負う場合と負わない場合とがあります。

以下、表により場合分けしましたのでご確認ください。

車の名義

業務か私用か

従業員

会社

使用者責任・運行供用者責任

会社

業務

責任〇

責任〇

私用

責任△1

個人

(マイカー)

業務

責任◯

私用

責任△2

〇=責任あり

△=場合によって責任あり(下記3で解説します)

(4)使用者責任と運行供用者責任の違いは?

被害者が、会社を相手方として使用者責任を問うには、交通事故を起こした従業員の故意、過失を立証しなければなりませんが、事故態様によっては(例えば、交差点の出会い頭事故で、双方が「自分の信号が青だった」と主張しているような場合)、被害者側において従業員の故意・過失を立証することは容易ではありません。

しかし、被害者が従業員の過失を立証できないばかりに損害賠償を受けられないのでは被害者にあまりにも酷です。
そこで、運行供用者責任では、被害者に、従業員の故意・過失を立証する責任がないとされているのです(証明責任の転換=事実上の無過失責任)。

すなわち、むしろ運行供用者に対して、

  1. 自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
  2. 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があつたこと
  3. 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

の立証責任を負わせ、これらが立証されない限りは運行供用者責任を負うとする、実質的な無過失責任を運行供用者に負わせているのです。これにより被害者は損害賠償を受けやすくなり、被害者の保護が図られているといえます。

そこで、運行者責任が問える場合は、まずは自動車損害賠償保障法3条により損害賠償を求めていくことになります。

また、これは会社に対して使用者責任及び運行供用者責任を追求する場合に共通のメリットですが、「会社の資力を交通事故の損害賠償に充てる」という側面もあります。

交通事故による賠償額は高額になりがちですが、従業員個人の資力は小さいのが通常ですので、従業員個人のみに賠償義務を負わせても、従業員個人が無保険であるような場合には最終的に賠償額が支払われずに終わってしまうこともありえます。

そのようなときに、会社の資力を損害賠償に充てることで、被害者保護を図っているわけです。

2、会社が支払った損害賠償金について、従業員に対し求償できるか

営業車で従業員が事故を起こしたらどうなる?会社として知っておきたい責任の所在などを解説

仮に、会社が使用者責任や運行供用者責任に基づき被害者に損害賠償金を支払った場合、従業員に対して支払った賠償金を支払えということはできるのでしょうか(こういった請求を「求償」といいます)。

(1)従業員に対する求償権は制限される

使用者責任のように、本来他人(従業員)が負担すべき金銭を交付した者(会社)が、その他人に対してその金銭の償還を請求する権利のことを「求償権」といいます。

この求償権については民法715条3項に規定されています(運行供用者責任を定める自賠法においても、その4条で民法の適用を定めていますので、同様に考えられます)。

しかし、会社が従業員に全額求償できるとすると「報償責任の原理」が無意味となりかねませんから、求償権を制限するのが通説・判例です。

[nlink url=”https://best-legal.jp/right-to-recourse-11233″]

(2)求償権はどの程度制限されるのか

求償権がどの程度制限されるかはケースバイケースですが、判例(最判昭和51年7月8日)は、

  • 事業の性格、規模
  • 施設の状況
  • 被用者の業務の内容
  • 労働条件
  • 勤務態度
  • 加害行為の態様
  • 加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度
  • その他諸般の事情

を考慮し、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において求償できるとしています。
結局、この事案では、使用者が被用者に求償できる範囲は、損害の4分の1を限度とすべきとされています。

また、最近では以下の裁判例が参考となります。

最近の裁判例

大阪地裁平成23年12月1日判決は、工場内でフォークリフトを運転中に起こした交通事故で他の従業員が死亡した事案です。

上記大阪地裁判決は、

  • 交通事故を起こした従業員の従事していた業務が一定の危険を伴うものであったこと
  • 事故後、本件工場内において安全対策が行われたが、事故時にはそのような対策は設けられておらず、設けられていても徹底されていなかったこと
  • 事故を起こした従業員は、勤務開始から本件事故に至るまでに事故を起こしたことはなかったこと
  • 勤務態度も良好であったこと
  • 従業員の過失内容、任意保険に入っていなかったこと

等を考慮して、求償しうる範囲は、信義則上、会社が支払った金額の25パーセント相当額に限られると認定しました。

3、交通事故別、会社が取るべき対策

営業車で従業員が事故を起こしたらどうなる?会社として知っておきたい責任の所在などを解説

前記の表のように、従業員が、業務中に会社の車で交通事故を起こした場合、会社も責任を負うことは明らかです。

では、その他の場合はどうなのでしょうか?会社が取るべき対策も併せてご紹介いたします。

(1)従業員が、私用で、会社の車で交通事故~△1について~

私用での事故ですので、一見すると会社は責任を負わないようにも思えますが、使用者責任が発生する「(従業員の)業務の執行中(民法715条1項)」とは「外形的に業務の執行と認められる行為」とされています。

つまり、たとえば、従業員が、私用で「〇〇会社」などとペイントされた車を運転して交通事故を起こせば、それは第三者から見れば「業務の執行中」と思われかねず、会社も使用者責任を負う場合があるということです。

また、運行供用者責任についても、従業員が社用車を私用で利用していることを会社が黙認していたり、鍵が自由に取り出せるような状況だったりする場合には「運行支配」、「運行利益」があるとされ、責任が認められる傾向にあります。

判例の中にも、従業員が終電車に乗り遅れたために使用者である会社のジープを無断で使用し、帰宅途中事故を起こしたという事案に使用者責任を認めた事例があります(裁判昭和39年2月4日)。

このような事態を防ぐには、

  • 就業規則・社内文書などで社用車の業務外使用を禁止する
  • その旨を徹底周知する
  • 社用車の鍵を適切に管理する
  • 従業員に運行日誌を付けさせる

などの対策が考えられます。

(2)従業員が、私用で、自家用車で交通事故~△2について~

会社等に費用負担がなく、専ら従業員の私用(プライベート)での自家用車による交通事故の場合、会社が責任を負う必要がないことはいうまでもありません。

しかし、業務に付随する場合、特に、通勤中の自家用車での事故は注意が必要です。

この場合も、一見すると、会社の責任外に思えますが、会社が、ガソリン代・駐車場代を負担するなどし、かつ、自家用車の通勤を積極的に指示・奨励している場合には、使用者責任や運行供用者責任を問われることがあります。

これを可能な限り防ぐには、

  • 自家用車の通勤は認めない
  • 自家用車の通勤を認める場合は、会社の責任を限定するとした書面を従業員と交わす

などの対策をしておくべきでしょう。

4、もし営業車による事故が発生してしまったら

営業車で従業員が事故を起こしたらどうなる?会社として知っておきたい責任の所在などを解説

最後に、交通事故が発生した場合に会社の取るべき対応をご紹介いたします。

まず、交通事故を起こした本人から会社に連絡をさせます。
本人から連絡がなければ、会社としては交通事故の事実を把握しようがありませんから、日頃からどんなに小さな事故でも必ず連絡するよう周知徹底する必要があります。
連絡を受けたら事故状況等を把握し、その他必要な事項を指示します。

また、勝手に示談しないよう注意喚起することも大切です。
「示談は会社や保険会社に任せる」という態度を貫き、交渉に備えて被害者、目撃者の氏名、住所、連絡先等の情報を聴き取るよう指示しましょう。

本人から連絡があった後、本人から聴取した事故状況、被害者、目撃者の個人情報等を加入している保険会社に報告します。
報告後は、本人から事故報告書を提出させ、本人もケガをしているようであれば、労災の手続きに入ります。

まとめ

従業員が交通事故を起こせば、従業員はもちろん会社にとっても大きな損失となりかねません。

従業員による交通事故は、経済的損失のみならず社会的信用の損失にもつながりかねず、後々の経営にも大きな影響が出かねません。

今回は営業車での事故における会社のとるべき行動や対策について記載してきました。社会的信用を損なわないためにも、日々の心がけと注意喚起が重要です。

そのため、交通事故前からリスクに備えて様々な対策を施しておく必要があります。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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