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離婚の解決金とは?メリットとデメリット、取り決める際の注意点

解決金

離婚の際には財産分与や養育費など金銭面で決めるべき項目が複数ありますが、その中に「解決金」という項目が加わることがあります。

不倫やモラハラなど一方に非があって離婚する際には慰謝料が発生しますが、慰謝料と解決金は違う扱いになるのでしょうか?

今回は、

  • 離婚の解決金とは
  • 解決金を支払うメリット・デメリット
  • 解決金を取り決める際の注意点

などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

この記事が、解決金を支払うことでスムーズに離婚を成立させたい方や、配偶者から解決金の支払いを求められている方の手助けとなれば幸いです。

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1、離婚の「解決金」とは?

離婚の「解決金」とは?

離婚する際に、解決金の支払いについて取り決めを行うことがあります。

離婚時にはさまざまな金銭が発生しますが、解決金とはどのような性質を持つ金銭なのでしょうか?

離婚における「解決金」について解説していきます。

(1)離婚問題を解決するために支払うお金のこと

そもそも解決金とは、民事上のトラブルを解決するために支払われる金銭のことです。

離婚においては、離婚問題を解決するために一方の配偶者がもう一方の配偶者に対して支払います。

離婚時には財産分与や養育費、年金分割、婚姻費用など取り決めを行う金銭の種類が複数あり、解決金がその中のひとつとして加わることがあります。

しかし、解決金は法律上で規定されている金銭ではないため、財産分与や養育費などのように支払い義務が必ず発生するというものではありません。

「早く離婚問題を片づけたい」など硬直化した離婚問題を早期解決するために利用されます。

ただし、解決金は法的根拠のあいまいな金銭になるため、離婚裁判で請求することはできません。

夫婦の話し合いで離婚を決める協議離婚の際に利用される支払い名目になります。

(2)慰謝料との違い

離婚原因によっては慰謝料を配偶者から請求されることがあります。

慰謝料とは不法行為によって受けた精神的な苦痛に対する損害賠償金であり、加害者は被害者に対して賠償する義務が発生することが法律で定められています(民法第709条、第710条)。

そして、離婚においては一方の配偶者に離婚の有責性がある場合に慰謝料を請求することができます。

慰謝料が発生するようなケースとしては、「不貞行為(不倫)」や「モラハラ」「DV」などが挙げられます。

このように、慰謝料は法律によって規定された不法行為を根拠に請求する金銭ですが、解決金には法的根拠がないという部分が大きな違いです。

解決金は慰謝料とは異なり、金銭が発生する原因などを明確にすることなく支払うことができます。

(3)和解金との違い

法律上、「和解金」とは裁判上の和解に基づいて支払うお金のことを指します。

離婚事件では、当事者間で話し合いがまとまらない場合には離婚調停を行い、さらに離婚裁判まで発展することがあります。 

離婚裁判でも、当事者双方が主張と証拠を出し尽くした段階で和解の話し合いが行われることが多く、合意ができれば「和解離婚」が成立します。
この和解で取り決められたお金の総称が「和解金」です。

ただ、裁判上の和解条項の中でも解決金の名目が使われることが珍しくありません。
この場合には、和解金の中に解決金が含まれることになります。 

つまり、和解金も解決金も当事者間の合意で取り決めるものという点では同じであり、和解金は解決金よりも広い概念であるということです。 

日常生活の中では、解決金と同じ意味合いで俗に「和解金」と呼ばれることも多いですが、和解金と解決金の違いを知っておくと、離婚調停や離婚裁判に発展したときに戸惑わずに済むでしょう。

2、離婚問題で解決金を支払うケース

離婚問題が発生している際に、解決金を支払うことで離婚問題を円滑かつ円満に解決できるようなケースがあります。

具体的にどのようなケースで解決金が支払われるのかみていきましょう。

(1)相手が離婚に応じないとき

協議離婚では離婚理由に関係なく離婚を進めることができますが、離婚を成立させるには双方の同意が必要です。

つまり、一方の配偶者が離婚を拒否していれば離婚を成立させることができません。

相手がなかなか離婚に応じてくれない場合、解決金を提示することで離婚に応じてもらえる可能性があります。

とくに離婚をすることで金銭的なデメリットがあると相手が考えているケースでは、解決金の提示で離婚に応じてもらえる可能性を高めることができます。

(2)さまざまな費目をひとまとめにしたいとき

解決金は法的根拠がなく、金銭の項目としてはあいまいな性質を持っています。

そのため、幅広い名目で利用しやすいというメリットがあります。

離婚時にはさまざまな金銭が発生しますが、慰謝料や婚姻費用などの全ての費目をひとまとめにしたいと考えるケースで利用されることもあります。

解決金という名目で支払うことにより、慰謝料が発生したというマイナスイメージを拭うこともできるでしょう。

(3)有責性を認めたくないとき

離婚の慰謝料の支払いに応じるということは、離婚の有責性を認めるということになります。

どうしても離婚の有責性を認めたくないものの離婚したい場合や、有責性を認めれば今後裁判に発展すると不利になるという場合には、慰謝料ではなく解決金という名目で支払うことがあります。

ただし、解決金と慰謝料は異なる金銭になるため、有責性を認めたくなくて解決金を支払ったとしても、裁判で有責性が認められれば慰謝料の支払いがみとめられることもあり得ますので、注意が必要です。

(4)扶養的財産分与を支払うとき

離婚時には婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を分配する「財産分与」が行われます。

財産分与はさまざまな目的で行われることがあり、その一種として扶養的財産分与というものがあります。

扶養的財産分与は、離婚することで生活が困窮してしまう配偶者の生活を補助することを目的とする財産分与です。

この扶養的財産分与を定期的に支払うのではなく、一括で支払う場合に解決金の名目を用いることがあります。

(5)性格の不一致で離婚するとき

性格の不一致で離婚する場合、どちらか一方の配偶者に非があるというわけではありません。

そのため、離婚時の慰謝料は発生しないことが一般的です。

しかし、一方は性格の不一致を我慢できていたにも関わらず、もう一方が我慢できずに離婚したいと考えるような場合には、解決金を支払うことで離婚に合意してもらうようなケースも少なくありません。

3、離婚時に解決金を支払うメリット・デメリット

離婚時に解決金を支払うメリット・デメリット

離婚時に解決金を支払うことにはメリットもあれば、デメリットもあります。

メリットとデメリットのどちらも理解した上で、解決金の支払いについて検討するようにしましょう。

(1)メリット

離婚時に解決金を支払う最大のメリットは、「離婚に応じてもらいやすくなる」ことです。

相手が離婚に応じない場合、解決金を支払うことで離婚に応じてもらえる可能性があります。

相手が離婚に応じなければ裁判でも離婚をすることはできますが、裁判離婚するには法定離婚事由(民法第770条1項)が必要です。

性格や価値観の不一致が理由であれば、裁判での離婚は基本的に認められません。

また、裁判をすれば時間を要することになるため、早期に離婚を進めたい場合に解決金を提示することで円滑に離婚を進められる可能性が高まります。

また、支払った側の立場を守ることや、円満離婚を目指せるというメリットもあります。

慰謝料という名目で支払えば、支払った側にはマイナスのイメージがつくことになります。

そのため、解決金というあいまいな名目で支払うことは、支払った側の立場を守ることになります。

そして、解決金を支払うことで他には何の請求もしないという同意を相手から得れば、離婚時のトラブルを避けて円満に離婚することができるでしょう。

(2)デメリット

解決金には法的な根拠がなく、名目が曖昧だという点がメリットになることもあれば、デメリットになってしまうケースもあるので注意が必要です。

例えば、支払った側が財産分与や慰謝料の代わりだと考えていても、その趣旨が受け取った側に伝わっていないこともあるでしょう。

そうなれば、財産分与や慰謝料を別途請求されてしまうリスクがあります。

また、慰謝料とは異なり解決金には相場がありません。

当事者の合意を得られれば、どのような金額でも定めることができるといえます。

そのため、離婚に応じる条件として高額な金額を請求されてしまうことになるかもしれません。

4、離婚時に解決金を取り決める際の注意点

離婚時に解決金を取り決める際の注意点

離婚時に解決金を取り決める際には、いくつか注意すべき点があります。

解決金を支払った後にトラブルが起こるような事態を避けるためにも、次の3つの点にご注意ください。

(1)離婚を拒否する相手に対して強要はできない

離婚問題における解決金は、離婚を拒否する相手に離婚の合意をもらうための提案のひとつです。

解決金を支払う代わりに離婚に合意するように強要することはできません。

解決金は法律に定められている金銭ではなく、双方の合意で支払いが行われるものです。

そのため、離婚を拒否している相手に解決金を受け取って離婚に合意するように強要することは認められず、無理に要求すると強要罪などの罪に問われるおそれもあります。

離婚時の解決金はあくまでも互いの合意のもとで取り決めるものですので、強要行為には注意しましょう。 

(2)支払えないような金額で合意してはいけない

高額な解決金を提示すれば、相手が離婚に合意してくれる可能性は高まるかもしれません。

しかし、早く別れたいことを理由に支払えないような高額な金額での支払いに合意することは避けましょう。

もし解決金について取り決めを行った内容を公正証書で作成していた場合、支払いを怠れば強制執行による財産の差押えが行われるおそれがあります。

そのため、解決金は支払える範囲内の金額で合意することが大切です。

(3)追加請求されないように書面を作成すること

離婚や解決金の取り決めをする際には、後から言った・言わないのトラブルを避けるためにも書面で取り決め内容を残しておきます。

この書面を「離婚協議書」と呼びます。

離婚協議書を作成する場合には、清算条項を忘れないように入れておきましょう。

清算条項とは、離婚協議書内で定めた内容以外には一切の請求を双方が行わないことを確認するための条項です。

清算条項を設けることで、解決金を支払った後の慰謝料や婚姻費用などの追加請求を防ぐことができます。

5、離婚の解決金に関するQA

離婚の解決金に関するQ&A

離婚の解決金に関して解説してきましたが、疑問や不安に思う点がまだ残っているという方もいるでしょう。

そこで、離婚の解決金に関して寄せられる主な疑問に関してご紹介します。

(1)解決金の額に相場はある?

結論から申し上げますと、解決金に相場はありません。

慰謝料については、過去の裁判例などを考慮した相場があります。

しかし、解決金の場合は法的根拠がなく、当事者間の合意で金額が定められるものであるため、相場がないのです。

慰謝料代わりに解決金を支払う場合なら、慰謝料の相場を参考にしつつ、相手との交渉で金額を増減させるとよいでしょう。

財産分与や養育費などを解決金に盛り込む場合も、まずはそれぞれの適正な金額を見積もった上で、相手と交渉することが大切です。

何らの基準もなく交渉を進めると、相手から非常に高額な金額を請求される可能性があるのでご注意ください。

(2)解決金に税金はかかる?

離婚時に支払われる慰謝料や財産分与は非課税であり、解決金についても、一般的に認められるような常識的な金額であれば非課税です。

ただし、場合によっては解決金に税金がかかってしまうこともあります。
あまりにも高額な金額の解決金を支払った場合は、贈与税の対象になり得るのです。

贈与税の対象になるかどうかについて、明確な基準はありません。

婚姻期間や夫婦の収入などに照らして、解決金の金額が常識的なものといえるかどうかがケースごとに判断されます。
一般的にいって、数千万円という高額な金額では贈与税がかかる可能性があると考えられます。

(3)取り決めた解決金を支払えないときはどうすればよい?

病気や急なリストラなど何らかの理由で収入が減少し、取り決めた解決金が支払えなくなってしまうようなケースもあるでしょう。

こうした場合には、相手に支払えない旨を伝えて減額や分割払いを交渉しましょう。

支払えないからといって放っておけば、公正証書に基づき、あるいは裁判を起こされた上で、財産が差し押さえられてしまうリスクがあります。

支払えないと分かった時点でなるべく早く対応することが大切です。

6、離婚時に解決金を支払うときは弁護士に相談を

離婚時に解決金を支払うときは弁護士に相談を

離婚時に解決金を支払う場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することには次のようなメリットがあります。

(1)解決金の適正額が分かる

離婚問題に精通した弁護士は、数多くの離婚と解決金に関する問題を扱っています。
そのため、その事案における具体的な事情に応じた解決金の適正額についてアドバイスが得られます。

解決金は慰謝料のように相場がないからこそ金額を決めることは簡単ではありません。
過剰な支払いを回避するためにも、専門家である弁護士に相談しましょう。

(2)相手方との交渉を代行してもらえる

弁護士に依頼すれば、あなたの代理人として相手方との交渉を行ってくれます。

当事者間で交渉を行えば、適切な知識がないことや感情が加わることで、なかなか離婚条件の話し合いが進まないというケースも珍しくありません。
弁護士ならば豊富な知識と交渉力があるため、事情に応じた適正金額で条件を提示することが可能です。

また、解決金だけではなく離婚条件全般について、必要に応じて交渉を任せることができます。
財産分与や親権、養育費などについても、依頼人が有利になるように条件を提示しながらスムーズに問題解決へと導いてもらえます。 

(3)離婚協議書も作成してもらえる

弁護士に依頼すれば相手方との交渉だけではなく、離婚協議書の作成も任せることができます。

弁護士に離婚協議書を作成してもらえば、清算条項などの必要な項目が抜けることなく適切に作成できるというメリットがあります。
ご自身でも離婚協議書は作成できますが、弁護士ならば正確性の高い書面が作成可能です。 

まとめ

今回は、離婚における解決金について解説してきました。

離婚時の解決金には、離婚を拒否する相手が離婚に応じてもらえる可能性が高まることや、円満に離婚手続きを進めやすいというメリットがあります。

しかし、法的根拠のないあいまいな名目の金銭になるため、解決金を支払う際には財産分与や慰謝料、養育費などの追加請求が行われないように注意が必要です。

離婚問題や解決金に関してお悩みの場合は、トラブルが悪化する前に弁護士へ相談してみましょう。

弁護士が介入すれば、離婚や解決金に関する問題もスムーズかつ円満な解決が目指せます。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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