配偶者が浮気をした場合、配偶者と浮気相手に対して慰謝料を請求することができます。
浮気の慰謝料は数十万円~300万円が相場と言われており、それぞれに対して請求することができます。しかし、配偶者と離婚しない場合に、浮気相手だけに慰謝料を請求したいと考える方も多いでしょう。
しかし、浮気相手だけに慰謝料請求する際には注意すべき点もあります。
そこで今回は、
- 浮気相手だけに浮気慰謝料(不貞慰謝料)を請求する際の注意点やポイント
- 浮気相手との慰謝料請求の示談交渉を成功させるためには
- 夫(妻)に内緒で慰謝料を浮気相手にだけ請求することは可能か
などの点を分かりやすく解説していきます。
本記事がお役に立てば幸いです。
不貞行為 慰謝料 二重取りについては以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、浮気相手にだけ慰謝料請求する際の3つのポイント
配偶者が浮気をした場合、配偶者には慰謝料を請求せずに浮気相手にだけ慰謝料請求したいと考える方もいるでしょう。
もし浮気相手にだけ慰謝料を請求する場合には、次の3つのポイントを事前に知っておく必要があります。
- 浮気慰謝料の債務者は「浮気相手」と「配偶者」
- 浮気相手は配偶者に求償できる
- 浮気相手は慰謝料の減額を主張が当然にみとめられるわけではない
(1)浮気慰謝料の債務者は「浮気相手」と「配偶者」
夫婦には貞操義務(性的な不純行為を行ってはいけないという義務)があり、浮気は不法行為に該当します(配偶者が自分以外の異性と肉体関係を持つということ、不貞行為とも呼ばれる)。
不法行為は他人の権利や利益を不法に侵害することを指し、不法行為があった場合には加害者は被害者に対して損害を賠償する義務を負うことが法律で定められています(民法第709条)。
そして、浮気は配偶者と浮気相手の二人で行う共同不法行為になり、損害賠償の支払いは「不真正連帯義務」になります。
不真正連帯債務とは、加害者各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うことを指します。
一般的に連帯債務では、債権者が連帯債務者の一人の債務を免除すれば、他の連帯債務者もその免除の恩恵を受けることになります。
しかし、不真正連帯債務の場合は一人が債務の免除を受けても、他の債務者は免除の恩恵を受けられません。
つまり、浮気慰謝料の債務者は浮気相手と配偶者の二人になり、配偶者に慰謝料の請求を免除した上で浮気相手だけに慰謝料請求することが可能です。
(2)浮気相手は配偶者に求償できる
浮気相手だけに浮気の慰謝料を請求することはできますが、注意しなければいけない点が浮気相手の持つ「求償権」です。
求償権とは、共同不法行為者の一方が自分の責任部分を超えた慰謝料を支払った場合、もう一方の共同不法行為者に対して自分の責任を超えて支払った部分について支払いを求めることができる権利です。
例えば、不倫の慰謝料が100万円だった場合、100万円全額を浮気相手だけに慰謝料請求することはできます。
しかし、浮気相手が求償権を行使すれば、浮気の責任は50:50と考えられることが多いため、共同不法行為者である配偶者に対して50万円の支払いが請求されることになるのです。
(3)浮気相手は慰謝料の減額の主張が当然に認められるわけではない
浮気相手には求償権がありますが、求償できるからといって、その分の慰謝料を減額して欲しいという主張が当然に認められるわけではありません
求償権は減額するための権利ではなく、自分の責任分を超えて負担した金額を、共同不法行為者に支払いを求めることができるという権利です。
夫婦であり、家計の財布は1つであっても配偶者は別個人であり、あくまでも自分は被害者であることから慰謝料を全額請求できるということを知っておきましょう。
2、慰謝料を浮気相手から夫(妻)に求償させないことは可能?
浮気相手だけに慰謝料を請求したいももの、求償権を行使されることは避けたいと考える方も多いでしょう。
浮気相手から配偶者に対して慰謝料の求償権を行使させないことは可能なのでしょうか?
(1)示談交渉で求償権を放棄させればOK
求償権を行使することも放棄することも、個人の自由です。
そのため、示談交渉において浮気相手に求償権の放棄を約束してもらえば、後から配偶者に対して浮気相手が求償権を行使することは出来ません。
求償権の放棄を約束した場合には、
- 示談書:示談にて当事者間で合意した内容を書き留めたもの
- 公正証書:公証人が作成する書類
などに記載して証拠として残しておくようにしましょう。
こうすることで「言った」、「言っていない」というトラブルを回避することが可能です。
(2)浮気相手が求償権を放棄しない場合はどうする?
話し合いで浮気相手が求償権の放棄に応じず、双方が示談内容に合意できない、となれば裁判へ移行することになります。
しかし、裁判になれば解決までに長い時間がかかるため、浮気相手が求償権を放棄するよう一気に示談をまとめることが重要になってくると言えます。
そのためにはどうすればよいのでしょうか。次の章で確認していきましょう。
3、浮気相手との慰謝料請求の示談交渉を成功させる条件
浮気相手との慰謝料請求の示談交渉を成功させるには、弁護士に依頼することをおすすめします。
求償権の放棄を含めた慰謝料請求の示談交渉は当事者同士で行うこともできますが、当事者同士の示談交渉は容易ではありません。
弁護士に依頼すれば、代理人として交渉を進めてもらうことができます。
弁護士は法的な知識があるだけではなく、交渉の専門家です。
浮気相手が求償権を放棄しない理由は、お金を払いたくないということに限らず、あなたの配偶者が憎いという感情を抱えているケースが多いでしょう。
浮気の慰謝料の支払い義務は浮気した配偶者も負うべきものであるにも関わらず、相手は
- 離婚や
- 慰謝料の支払い
もなく、何の損害も被らないことへ納得できないことが多いのです。
弁護士は豊富な経験から浮気相手の心情にアプローチし、浮気被害者のあなたの権利を守りながら、浮気相手が納得できるように交渉を進めてくれることが期待できます。
4、夫(妻)に内緒で慰謝料を浮気相手にだけ請求することはできる?
配偶者に対して「浮気相手だけに慰謝料を請求する」ということを話せば、
- 配偶者が浮気相手を擁護するようなケース
- 配偶者が逆上してしまうようなケース
もあるでしょう。
そのため、配偶者には内緒で浮気相手だけに慰謝料を請求したいと考える方もいると思います。
配偶者へ知らせずに浮気相手だけに慰謝料請求することは可能です。
しかし、配偶者がそのことを知ればトラブルが大きくなってしまう可能性があります。とくに離婚を避けたいと考える場合には配偶者に内緒で慰謝料請求を進めたいと考える方も多いでしょう。
そのような場合にも早期に弁護士へ依頼すれば心強いサポートを受けられます。
浮気相手が配偶者に「自分にだけ慰謝料請求がきている」と伝えてしまい事態が悪化すれば、慰謝料額の増額など浮気相手には不利になることなどを弁護士は浮気相手に伝えることができます。
ご自身で直接交渉するケースよりも弁護士が交渉した場合の方が、配偶者へ慰謝料請求の話を浮気相手がうっかり伝えてしまうことを防げる可能性が高まります。
5、慰謝料を浮気相手から確実に獲得するための5条件
そもそも浮気相手へ慰謝料を請求するには、いくつかの要件を満たしておく必要があります。
確実に慰謝料を獲得するためにも、慰謝料請求の前に次の5つの条件を満たしているのか確認してみてください。
- 夫婦関係は破綻していないか
- 浮気相手は夫(妻)が既婚者であることを知っていたか
- 浮気の証拠はあるか
- 配偶者から慰謝料をすでにもらっていないか
- 不倫の事実を知ってから3年以上が経過していないか
(1)夫婦関係は破綻していないか
配偶者の浮気前から夫婦関係が破綻していた場合、浮気の慰謝料を請求することはできません。
なぜならば、法律上で守られている
- 夫婦の婚姻共同生活の平和を維持するための権利
は夫婦関係が破綻している時点で存在しないと考えられるからです。
そうなれば、浮気があなたの権利や利益を侵害したとは言えず、浮気相手に支払い義務はないとされます。
そのため、浮気相手が「夫婦関係は破綻していると相手(浮気した配偶者)から聞いていた」と反論するようなケースもあるでしょう。
しかし、法律上において夫婦関係が破綻していると判断される要素は次のような場合です。
- 長期の別居(凡そ5年以上)
- DVの横行
- 深刻な経済的な問題(借金等)
こうした客観的な要素が必要であり、
- 夫婦間の会話がなくなっていたこと
- 気持ちが離れていたこと
というような感情的な要素だけでは夫婦関係が破綻しているとは認められません。
(2)浮気相手は夫(妻)が既婚者であることを知っていたか
浮気の慰謝料を請求するには、相手の故意や過失が必要になります。
つまり、浮気相手は夫(妻)が既婚者であることを知っていたかどうかという点が大きなポイントになります。
夫(妻)が独身であると偽って浮気相手を積極的に騙していたような場合であれば、浮気相手に過失はないと考えられて慰謝料の支払い義務はないとされる可能性があります。
しかし、
- 既婚者であることを知って浮気をしていた場合
- 途中から既婚者であることを知っても浮気関係を継続していた場合
などでは「故意」が成立するため慰謝料の支払い義務が生じます。
浮気相手に慰謝料を請求した場合、「既婚者であることを知らなかった」と相手が主張するようなこともあるでしょう。
この場合、
- 本当に既婚者であることを知らなかったのか
- 注意を払えば既婚者であることを知り得る状況ではなかったのか
ということが争点になってきます。
既婚者であることを全く知り得ない状況だった場合には、支払い義務はないとされる可能性があります。
しかし、注意を払えば既婚者だと知ることができた場合には浮気相手に「過失」があったことになるため、知っていた時と同じように慰謝料の支払い義務が認められることになります。
(3)浮気の証拠はあるか
浮気を原因に慰謝料を請求する以上、浮気の証拠を揃えておく必要があります。
浮気の証拠がなければ「浮気関係ではない」と相手が主張して慰謝料の支払いを拒否する可能性があるからです。
また、裁判へ移行する場合にも証拠が必要になります。
そのため、浮気の慰謝料請求を行う前に証拠集めはしておかなければなりません。
浮気の証拠は、「肉体関係があった」ということが分かる物証です。
- ホテルに出入りしている写真
- 性行為の写真や動画
- 肉体関係のあることが分かるラインのメッセージ
などが証拠として挙げられます。
メッセージ内容やレシートなど複数の証拠を組み合わせることで証拠として認められることもあるため、できるだけ多くの証拠を集めるべきでしょう。
また、浮気の証拠集めと当時に相手の情報も集める必要があります。
弁護士に相談すれば必要な証拠や情報の集め方などのアドバイスも得られるため、証拠集めの段階から相談することをおすすめします。
(4)配偶者から慰謝料をすでにもらっていないか
配偶者からすでに慰謝料の全額の支払いがあったという場合、法律上あなたには浮気相手へ慰謝料を請求する権利はありません。
慰謝料は二重請求することができないからです。
浮気相手へ慰謝料請求することを配偶者が知った場合に、浮気相手を庇って配偶者が全額支払ってくることが予想されるようなケースでは、弁護士に相談・依頼して配偶者へ知られないように進めることをおすすめします。
(5)不倫の事実を知ってから3年以上が経過していないか
慰謝料の請求権には時効が存在します。
不倫の慰謝料の場合、不倫の事実及び不貞相手を知ってから3年が経過すれば時効が成立します。
時効が成立すれば、慰謝料を請求する権利は消失してしまいます。
ただし、現在も不倫が継続されているという場合であれば時効は進行しません。
そのため、不倫の事実を知ってから3年以上経っていたとしても、今も不倫関係が継続していれば慰謝料を請求することが可能です。
また、浮気相手の
- 氏名
- 住所
を知らないという場合にも請求権の時効は消滅していません。
不倫関係は終わっており、その事実を知ってから3年経過しているものの浮気相手の素性を全く知らないという場合には時効は消滅していないので慰謝料請求することができます。
まとめ
浮気の慰謝料を浮気相手だけに請求することはできますが、その場合には求償権の問題が生じます。
また、配偶者が浮気相手だけに請求することを知ってトラブルが大きく発展してしまうという可能性も考えられるでしょう。
トラブルを大きくせずにスムーズに示談を進めるためにも、まずは弁護士へご相談ください。
弁護士に相談・依頼することで、浮気相手だけに慰謝料請求することを実現できるだけではなく、有利な条件で問題を解決できる可能性が高まります。
精神的なサポートにもなるので、一人で抱え込まずに専門家である弁護士に相談してみましょう。