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株式の差押えで債権を回収するために知っておくべき5つのポイント

2021年12月9日
株式の差押えで債権を回収するために知っておくべき5つのポイント

会社の株式って、差押えできるのかな…。

取引先が売掛金などを支払ってくれない場合、裁判などをした上で、最終的には相手方の財産を差し押さえて債権を回収することができます。ただ、何を差し押さえればよいのかがわからないことも多いことでしょう。

そんなとき、相手方が株式会社であれば、その会社の株式を差し押さえることもできます。もちろん、自社株だけでなく、相手方が所有している他の株式の差押えも可能です。

とはいえ、具体的にどのようにすれば株式を差し押えて換価し、債権を回収できるのかがわからないという方も多いことでしょう。

そこで今回は、

  • 株式を差し押さえる方法
  • 差し押さえた株式を換価する方法
  • 相手方が株式を持っているか調査する方法

について、債権回収に詳しいベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

この記事が、債権回収でお困りの方の手助けとなれば幸いです。

差押えの基本ルールについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/foreclosure-47053/”]

1、株式って差押えできるの?

取引先に対する売掛金や貸金などの金銭債権について、判決等の債務名義がある場合には、強制執行によって相手方の財産を差し押さえることができます。

相手方が株式を所有している場合は、株式も財産に他なりませんので、差押えが可能です。

債務名義とは、裁判所の強制執行手続きによって回収することが可能な債権の存在や範囲を公的に証明する文書のことです。

債務名義の詳しい内容や取得方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/name-of-debt-name-of-debt-12539″]

債務名義を取得できたら、相手方の財産に対する差押えを検討することになりますが、多くの場合は預金口座や不動産、相手方が他社に対して有する売掛金などを差し押さえることになるでしょう。

これらの財産が見当たらない場合は差押えができずに困ってしまうかもしれませんが、相手方が株式会社であれば、必ず自社株を有しているはずです。その株式を差し押さえることは、債権回収で非常に有効な手段となります。

もちろん、相手方が他社の株式を有している場合には、それを差し押さえることもできます。

それでは、株式を差し押さえるにはどうすればよいのかについて、項を改めて解説していきます。

2、株券が発行されていない株式を差し押さえる方法

2006年5月から施行されている会社法によって、株券は原則として発行されず、発行する場合はその旨を定款に定めることになりました(会社法第214条)。

近年では株券の電子化も進んでおり、特に上場会社では株券を発行せず、証券会社の振替口座でのみ株式を保有しているケースが多くなっています。

しかし、株券が発行されていない株式についても、以下の方法で差し押さえることができます。

(1)上場株式の場合

証券取引所に上場されている株式は、自由に譲渡できます(会社法第127条)。そのため、株券が発行されていない上場株式は譲渡可能な債権ということになります。

この場合は、その株式を「その他の財産権」として、債権執行の例によって差し押さえることになります(民事執行法第167条1項)。つまり、株主としての権利を債権として差し押さえるということです。

ただ、株式を差し押さえたところで、発行会社に対して債権の取り立てができるわけではありません。

差し押さえた株式を換価するには、裁判所による「譲渡命令」や「売却命令」を求めることになります(民事執行法第161条1項)。

譲渡命令とは、差し押さえられた債権を裁判所の定めた価額で、支払いに代えて差押え債権者に譲渡する命令のことです。したがって、譲渡命令を得た債権者は、株主としての権利を行使することによって債権の回収に充てていくことになります。

売却命令とは、債権の取り立てに代えて、差し押さえられた債権を裁判所の定める方法により売却することを命じることをいいます。この場合、裁判所の執行官が差し押さえられた株式を売却しますので、債権者はその代金を債権の回収に充てることになります。

(2)非上場株式の場合

証券取引所に上場されていない株式の場合は、発行会社の定款に譲渡制限の定めがあることが一般的です。自由に譲渡できないため換金不可能であり、差押えはできないかとも思われますが、実はこの場合も差押えは可能です。

非上場株式を差し押さえると、裁判所による競売が行われます。買受人が現れた場合、債権者は売却代金を債権回収に充てることができます。

買受人が現れない場合は、差押え債権者が自ら買い受けることも検討しましょう。

買い受けた後は、株式の発行会社に対して、譲渡承認請求ができます(会社法第137条)。譲渡承認が得られた場合は、株主としての権利を行使することによって債権の回収に充てていくことになります。

発行会社が譲渡承認を拒否する場合は、その会社が自ら株式を買い取るか、または指定買取人を指定しなければなりません(会社法第140条1項、4項)。この場合、債権者はいずれにしても買取代金を債権回収に充てることができます。

3、株券が発行されている株式を差し押さえる方法

次に、株券が発行されている株式を差し押さえる方法についてご説明します。

(1)債務者が株券を所持している場合

債務者が株券を所持している場合、その株券は「動産」にあたりますので、動産執行(民事執行法第122条)の例によって差し押さえます。差し押さえると競売が行われますので、債権者は売却代金を債権回収に充てることができます。

上場株式の場合は評価額の鑑定が容易なので換金しやすいですが、非上場株式の場合は鑑定評価が難しいという問題があります。

株式の鑑定評価は裁判所が選任する評価人が行うのが一般的ですが、その際、債権者が株式発行会社の財務諸表などの資料を提出する必要があります。

また、譲渡制限がある株式の場合は、上記「2(2)」でご説明したように、譲渡承認請求の手続きが必要となります。

(2)債務者が株券を所持していない場合

株券発行会社でも株券を発行しないこともあるため、債務者が株式を保有していても手元に株券がない場合もあります。

その場合は、前記「2(1)」と同じように、その株式を「その他の財産権」として債権執行の例によって差し押さえます(民事執行法第167条1項)。

そして、債権者には取立権があるので、株主の有する株券発行請求権に基づいて、株券を発行して裁判所の執行官に引き渡すことを発行会社に請求できます。

この請求によって株券が引き渡された場合は、動産執行の例によって競売にかけられるので、債権者は売却代金を債権回収に充てることができます。

発行会社が株券の発行に応じない場合は、前記「2(1)」と同じように譲渡命令や売却命令を求めることによって株式を換価します。

この場合も、譲渡制限がある株式については、譲渡承認請求の手続きが必要です。

4、投資信託における株式を差し押さえる方法

債務者が投資信託を行っている場合も、債権回収のために差し押さえることは可能です。

ただ、投資信託では個別の株式を保有しているわけではありません。投資家は資金運用の専門家に投資をして、その運用収益などの利益を受け取る権利(受益権)を有するのみです。

したがって、債務者が投資信託を行っている場合は、投資信託の受益権が差押えの対象となります。

差押え・換価の方法は、「投資信託振替制度」を利用しているかどうかによって、以下のように異なります。

(1)投資信託振替制度を利用している場合

投資信託振替制度とは、投資信託の設定や解約、移転、償還などをコンピュータシステム上の振替口座簿の記録により行い、受益証券をペーパーレス化(電子化)する制度のことです。

2007年1月から導入された制度で、現在ではこの制度を利用している場合が大半でしょう。

この場合は、振替社債等の差押えの例によって、振替口座のある金融機関を第三債務者として差押えを行います。

差押えが執行されると、その投資信託の解約や移転が禁止され、振替機関が名義人に対して償還や運用収益の分配を行うことも禁止されます。

債権者としては、振替機関から投資信託の運用収益の分配を受け取ることによって、債権の回収に充てることになります。

(2)投資信託振替制度を利用していない場合

現在においても、投資信託の全てのケースで投資信託振替制度が利用されているわけではありません。

この制度が利用されていない場合は、通常の債権執行の例によって、投資信託の受益権を差し押さえます。

換価方法は上記「(1)」と同じで、振替機関から投資信託の運用収益の分配を受け取ることによって、債権の回収に充てることになります。

5、株式を差し押さえるためには事前の調査が重要

債務者の自社株を差し押さえた場合、その株式が第三者に流出すると会社の経営に支障をきたすおそれが高いため、債務者が早期に債権全額を支払ってくることもあります。

しかし、債務者の会社の経営状況が悪化している場合にはすぐに支払うこともできず、結果的に放置されることになります。その場合は差し押さえた株式を換価することになりますが、非上場株式の場合、実際には換価が困難なことも多いものです。

したがって、相手方の自社株だけでなく、できる限り換金価値の高い保有株式を差し押さえたいところです。そのためには、相手方がどのような株式を保有しているのかについて、事前に調査しておくことが重要となります。

(1)あらかじめ債務者から情報を得ておく

この調査を行う方法として最も実効性が高いのは、あらかじめ債務者から情報を得ておくことです。

なぜなら、次にご紹介する「弁護士会照会」や「財産開示手続」を利用する段階では、債務者が差押えを警戒して保有株式を移転してしまい、実際に差押えをしようとする段階では相手方の手元から消失している可能性が高くなるからです。

相手方から情報を聞き出す方法としては、普段の取引の中で、相手方の会社の担当者などとの世間話の際に、それとなく保有株式の話題を出してみることが考えられます。

その他には、その会社が発行している会誌などを入手したり、インターネットでその会社のホームページを検索したりして精査すれば、保有株式に関する情報が見つかることもあります。

(2)弁護士会照会を試みる

あらかじめ情報が得られなかった場合には、法的手段で調査を行うことになります。その方法の1つとして、弁護士会照会という手段があります。

弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件を処理するために必要な情報について、所属弁護士会を通じて公私の団体に報告を求めることができる制度です(弁護士法第23条の2)。

もっとも、金融機関や証券会社などは、個人情報の保護を理由に、債務者の同意書がない限り弁護士会照会には応じないのが通常です。

ただし、なかには、債務名義を有する債権者の代理人である弁護士が申請した弁護士会照会に対しては回答に応じる金融機関もあるようです。

したがって、回収したい債権について公正証書を作成しているような場合には、弁護士に依頼して弁護士会照会を試みてみるのもよいでしょう。

(3)裁判上の調査手続きを利用する

裁判上、相手方の財産を調査できる手続きとして以下のものがあります。

  • 調査嘱託(民事訴訟法第186条)
  • 文書送付嘱託(同法第226条)
  • 証拠保全(同法第234条)

ただし、これらの制度を利用できるのは、その裁判の審理に必要な場合に限られるという制限があります。裁判が終了した後の差押えのために必要な事項についてまで、これらの手続きを利用して調査できるわけではありません。

例えば、取引先に対する売掛金を請求する裁判を起こした場合、以上の手続きを利用できるのは、売掛金の存在や金額を証明するために必要なときだけです。

相手方の保有株式が売掛金にまったく関係ないものであれば、以上の手続きによって調査することはできません。

(4)財産開示手続を申し立てる

差押えを行うために相手方の財産を調査するために設けられている手続きが、財産開示手続です。

裁判所へ財産開示を申し立てれば、債務者自身が財産目録を提出し、裁判所から金融機関や振替機関に対して債務者の有する株式等の財産を開示するように命じてくれます。

もっとも、この申立てができるのは、確定判決や強制執行認諾文言付き公正証書等といった執行力のある債務名義を有している金銭債権の債権者だけです。

つまり、公正証書がない限り、裁判を終えた後でなければ財産開示を申し立てることはできないのです。

そのため、裁判をしている間に相手方に保有株式を移転するなどされるおそれがあります。

株式の差押えを実効的に行うためには、やはり、前記「(1)」でご説明したように、あらかじめ債務者から情報を得ておくことが重要となります。

まとめ

株式の差押えは可能ですし、債権回収の手段として大きな効果を発揮することもあります。

特に、相手方の自社株式を差し押さえてプレッシャーをかけることによって、早期の債権回収も期待できます。

ただ、株式の種類によって差押えの方法も異なりますし、差押えの手続き自体も少し複雑です。また、差押えができても換金が容易でないことも多くあります。

効率よく株式を差し押さえて債権回収の効果を上げるためには、弁護士に相談されることをおすすめします。

債権回収でお困りの際は、お気軽にベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。

[nlink url=”https://best-legal.jp/debt-collection-6936/”]

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

ベリーベスト 法律事務所弁護士編集部
ベリーべスト法律事務所に所属し、企業法務分野に注力している弁護士です。ベリーベスト法律事務所は、弁護士、税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、中国弁護士(律師)、それぞれの専門分野を活かし、クオリティーの高いリーガルサービスの提供を全国に提供している専門家の集団。中国、ミャンマーをはじめとする海外拠点、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも特徴のひとつ。依頼者様の抱える問題に応じて編成した専門家チームが、「お客様の最高のパートナーでありたい。」という理念を胸に、所員一丸となってひたむきにお客様の問題解決に取り組んでいる。
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