小学校休業等対応助成金とは?制度や問題点を5つ解説

小学校休業等対応助成金

「小学校休業等対応助成金」という制度をご存知でしょうか?

文部科学省の調査によると、昨年4月22日時点で全国の小中高などの91%が臨時休業(休校)していました。
子どもの通う学校が休校になると、保護者が仕事を休んで子どもの世話をしなければならない家庭も少なくありません。

そこで政府は、このような保護者の休暇取得の支援措置として「小学校休業等対応助成金」という制度を設けています。

今回は、

  • 小学校休業等対応助成金とは何か
  • 小学校休業等対応助成金でいくらもらえるのか
  • 小学校休業等対応助成金をもらえない場合はどうすればいいのか

といった点を解説していきます。
この記事が子どもの休校によって休暇を余儀なくされている保護者の方のお役に立つことができれば幸いです。

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1、小学校休業等対応助成金とは?

【コロナ助成金】小学校休業等対応助成金とは?制度の内容や問題点を解説

小学校休業等対応助成金とは、簡単に言えば、小学校等の臨時休校に伴って仕事を休んで子どもの世話をしなければならない保護者の収入の減少を補填するために、政府から支払われるお金のことです。

ここでは、小学校休業等対応助成金の概要をご説明します。

(1)保護者の支援制度だが企業に支給される

小学校等の臨時休校が数日だけなら、保護者は有給休暇を取得することで対応可能でしょう。

しかし、臨時休校が長引くと有給休暇だけでは足りませんし、そもそも有給休暇取得の条件を達成していない労働者の方も少なくありません。

そこで、労働基準法で定められている年次有給休暇とは別に有給の休暇を保護者に取得させた企業に対して支払われるのが、小学校休業等対応助成金です。

休暇を取得した保護者に直接支給されるのではないことに注意が必要です。

(2)小学校休業等対応「支援金」とは別もの

小学校休業等対応助成金とよく似た名称の制度として「小学校休業等対応支援金」というものもあります。
小学校休業等対応支援金も臨時休校に対応するために仕事を休む保護者の支援策ですが、こちらはフリーランスや個人事業主向けの制度です。
子どもの通う学校が休校となって就業できなかった日について1日あたり4,100円が支給されます。

小学校休業等対応「助成金」が企業に雇用されている方の支援策であるのに対して、小学校休業等対応「支援金」は企業に雇用されず、個人で委託を受けて仕事をしている方の支援策です。

(3)対象期間は2020年6月30日まで延長された

小学校休業等対応助成金の制度が創設された当初は、2020年3月31日までの休業が対象とされていました。
しかし、緊急事態宣言によって小学校等の臨時休校も延長されたことに伴い、助成金の対象期間も同年6月30日まで延長されています。

2、小学校休業等対応助成金の制度概要

【コロナ助成金】小学校休業等対応助成金とは?制度の内容や問題点を解説

それでは、小学校休業等対応助成金がどのような制度なのかをご説明します。

(1)「小学校等」とは

この制度の対象となる「小学校等」には、以下のような学校や施設が含まれます。

  1. 小学校、義務教育学校の前期課程、各種学校(幼稚園または小学校の課程に類する課程を置くものに限る)、特別支援学校(全ての部)
    なお、障害のある子どもについては、中学校、義務教育学校の後期課程、高等学校、 各種学校(高等学校までの課程に類する課程)なども含みます。
  2. 幼稚園、保育所、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業等、子どもの一時的な預かり等を行う事業、障害児の通所支援を行う施設等
  3. 放課後児童クラブ、放課後等デイサービス

(2)対象となる「子ども」

この制度の対象となる「子ども」は、以下のとおりです。

①新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校などに通う子ども

ですので、保護者の自主的な判断によって子どもを休ませた場合は対象外となります。
ただし、学校長が新型コロナウイルスに関連して欠席を認めた場合は対象となります。
なお、自治体や放課後児童クラブ、保育所などから利用を控えるように依頼が出た場合も対象となります。

②新型コロナウイルスに感染したなどの理由で「小学校等」を休む必要がある子ども

感染が判明した子どもだけでなく、感染したおそれのある子ども(発熱などの風邪症状がある、感染者と濃厚接触したなど)も対象になります。
日常的に医療ケアが必要な子どもや、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するおそれの高い基礎疾患がある子どもも含まれます。

なお、「小学校等」のうち学校の場合は、学校長が出席を停止するか、欠席を認めた場合をいいます。

(3)対象となる「保護者」

この制度の対象となる「保護者」とは、親権者だけでなく、未成年後見人や里親、祖父母等、子どもを現に監督する人のことをいいます。
その他にも、事業主の判断において有給休暇の対象とする場合は、親族で子どもの世話を一時的に補助する人も含まれます。

(4)対象となる「休暇」

この制度の対象となる「休暇」について、注意が必要な点をご説明します。

①土日、祝日等

新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校などに通う子どもに関する休暇の場合、土日や祝日、春休みなど学校がもともと休みの日は対象外となります。
放課後児童クラブなど、その他の施設については、本来その施設の利用が可能な日が対象となります。

他方で、新型コロナウイルスに感染したなどの理由で学校を休む必要がある子どもに関する休暇の場合は、元々の休日に関わらず令和2年2月27日から同年6月30日まで全ての日が対象になります。

②半日単位、時間単位の休暇

半日単位や時間単位で休暇を取得した場合も、対象となります。
ただし、「時短勤務」は対象となりません。
この場合は休暇とは異なり、所定労働時間そのものを短縮する措置に当たるからです。

③年次有給休暇、欠勤、時短勤務の事後的な振り替え

既に年次有給休暇や欠勤、時短勤務として取り扱った場合で、事後的に特別休暇に振り替えた場合も、この制度の対象となります。
ただし、その旨を事業主から労働者本人へ説明の上、同意を得ることが必要になります。

(5)支給金額

この制度を利用することによって、休暇を取得した保護者がもらえる金額は、年次有給休暇を取得した場合に支給される賃金相当額の全額です。
ただし、政府から企業に支給される助成金は日額8,330円が上限です(令和2年5月4日現在)。
年次有給休暇を取得した場合に支給される賃金相当額が1日あたり8,330円を超える場合、超えた分は企業が負担する必要があります。

3、小学校休業等対応助成金の申請方法

【コロナ助成金】小学校休業等対応助成金とは?制度の内容や問題点を解説

小学校休業等対応助成金を申請するには、申請書を学校等休業助成金・支援金受付センター(厚生労働省の委託事業者)へ郵送します。
詳細については、厚生労働省のホームページをご参照ください。

注意が必要なのは、申請するのは事業主だということです。
労働者が助成金の支給を希望しても、勝手に申請することはできません。

4、会社が小学校休業等対応助成金を申請してくれないときの対処法

【コロナ助成金】小学校休業等対応助成金とは?制度の内容や問題点を解説

小学校等の臨時休業に対応する保護者を支援するための小学校休業等対応助成金ですが、現実には企業がこの制度を適切に活用しないケースが少なくないようです。
一例として、外食産業で大手の「サイゼリヤ」では小学校等の臨時休業に対応する保護者の休業補償として日額2,000円を一律支給することとしており、この制度を活用していないことがNHKニュースで報道されました。

企業がこの制度を活用してくれない場合、保護者としては年次有給休暇を取得するか、そうでなければ無給で欠勤するか、子どもの世話を誰かに頼むしかありません。
勤務先の会社が小学校休業等対応助成金を申請してくれないときは、どうすればいいのでしょうか。

(1)会社に申請義務はない

まずは、会社に対して小学校休業等対応助成金を申請するように申し出ることです。
企業の中には、日額8,330円を超える賃金相当額を負担すること嫌がって申請しないところもありますが、単に面倒だという理由で申請していないところもあります。

したがって、困っている事情を話して依頼すれば、事業主が申請してくれることもあるでしょう。

しかし、現状の制度では会社に申請する義務はないので、必ずしも申請してもらえるとは限りません。

(2)労働局へ相談する

次に考えられるのは、労働局へ相談することです。
厚生労働省はこのような実情を踏まえて、各都道府県労働局に対して、労働者から相談があった場合には企業に助成金を利用するよう促す対応を求める通達を出しています。

したがって、会社に直接申し出ても取り合ってもらえない場合は、労働局に相談することで事態が進展する可能性があります。

とはいえ、労働局から企業に対する働きかけには強制力がないので、企業が応じないことも考えられます。

(3)労働組合へ相談する

会社に労働組合がある場合は、そこへ相談するのも有効です。
労働組合には「団体交渉権」があり、企業は労働組合と誠実に交渉する義務を負っています。

そのため、個人で会社と交渉するよりは解決に至る可能性が高まります。

しかしながら、企業に義務づけられているのはあくまでも交渉に応じることだけです。
交渉によって小学校休業等対応助成金の申請を義務づけられるわけではありません。

したがって、労働組合に相談しても解決できない可能性はあります。

(4)弁護士へ相談する

会社が小学校休業等対応助成金を申請してくれないときは、弁護士に相談してみてもいいかもしれません。

たしかに、企業に法律上の申請義務はないため、弁護士に相談しても解決できるとは限りません。

しかし、労働者への配慮が不十分な企業では、他に違法な行為が行われている可能性もあります。

残業代の未払いや残業規制に違反する長時間労働、パワハラやセクハラなど、違法行為があれば、併せて相談してみましょう。
これらの問題の解決を弁護士に依頼すれば、弁護士と会社との交渉のなかで小学校休業等対応助成金の問題も解決できるかもしれません。
何らかの糸口が見つかる可能性もあるので、お気軽に弁護士へ相談してみるとよいでしょう。

5、賃金を引き下げられたときの対処法

【コロナ助成金】小学校休業等対応助成金とは?制度の内容や問題点を解説

会社が小学校休業等対応助成金を申請してくれるとしても、その際に賃金を引き下げられてしまうおそれがあるかもしれません。
年次有給休暇を取得した場合の賃金相当額が日額8,330円を超える部分は会社が負担しなければなりません。
会社によっては、この負担を避けるために、日額が8,330円以内におさまるように、賃金を引き下げることが考えられるのです。

このように賃金を引き下げられてしまった場合は、どうすればいいのでしょうか。

(1)一方的な賃金の引き下げは違法

そもそも、事業主が労働者の賃金を一方的に引き下げることは基本的にはできません。
労働条件を変更するには原則として労使間の合意が必要です。

そして、日額を8,330円以内のおさめるためという理由のみで、労働条件を一方的に労働者の不利益に変更したとしても、そのような変更は無効となる場合が多いでしょう。

したがって、一方的に賃金を引き下げられた場合は、労働条件変更の無効を主張し、差額の支払いを請求することを検討すべきです。

(2)賃金を引き下げられたら弁護士に相談を

会社の経営者といえども、法律に疎い人は少なくありません。
そのため、違法であることを知らずに賃金の引き下げが行われるケースもあります。

そんな経営者に対しては、弁護士が専門的な見地から冷静に対応することが有効です。
一方的に賃金を引き下げられたら、むやみに会社と争いごとを起こしたり、泣き寝入りしたりせず、弁護士に相談しましょう。

まとめ

小学校休業等対応助成金は、子どもの世話をするために会社を休む保護者を支援するために日額8,330円まで企業に支給されるものです。
適切に活用されれば、多くの保護者が助かることでしょう。
勤務先の会社の対応が不十分な場合は、一人で悩まずにお早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

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