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交通事故の慰謝料の自賠責基準に関して知っておきたいこと

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「4200円×通院日数×2」が交通事故でケガをした時の慰謝料であるという話を聞いたことはありませんか?

これは、自賠責保険の慰謝料の計算式です。しかし、必ずしもこの計算で算出した慰謝料が支払われるわけではありません。

今回は、慰謝料に関する「自賠責保険基準」を中心にご説明します。

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1、交通事故の慰謝料の種類には2種類ある

まずはじめに、「慰謝料」とは何でしょうか。「慰謝料」とは、被害者が負った精神的苦痛に対する金銭的な補償のことです。そして、この「慰謝料」には、2つの種類があります。

一つは「傷害慰謝料」と呼ばれるものです(「入通院慰謝料」とも言われます。)。

被害者は、ケガによって痛い思いをし、また、ケガの治療のため手術や入院・通院・リハビリを余儀なくされます。これらは精神的な苦痛を伴うと考えられることから、その精神的苦痛を金銭によって評価し、加害者に賠償させる。これが「傷害慰謝料」です。

もう一つは、「後遺障害慰謝料」と呼ばれるものです。

被害者のケガが治療によっても完治せず、後遺症が残ったという場合、後遺症が残ったことに対する精神的苦痛を、後遺症の程度によって金銭的に評価し、加害者に賠償させる。これが「後遺障害慰謝料」です。

2、交通事故の慰謝料の金額の基準には3種類ある。

政府の公表する人身事故の発生件数は、平成27年は53万6789件、負傷者数は66万5126人に上ります。このような膨大な数の負傷者の慰謝料を個別に算定するのは大変な労力がかかります。

そこで、慰謝料の算定をしなければならない立場の人たちは、定型的に慰謝料の算出ができるように、それぞれ独自の基準を設けています。この、慰謝料の算定をしなければならない立場の人たちの代表例が、自賠責保険会社、任意保険会社、裁判所です。

(1)自賠責基準

自賠責保険を取り扱っているのは、損害保険各社です。しかし、自賠責保険は国が法律によって設けた交通事故被害者の最低限の補償のための保険ですから、取り扱っている保険会社によって慰謝料の金額が異なることはなく、国が定めた支払基準に基づいて一律に支払金額が決まる仕組みになっています。この支払基準は「自賠責基準」と呼ばれています。

(2)任意保険基準

任意保険は、自賠責保険によって賄いきれない損害をカバーするものです。任意保険会社は、各社がそれぞれ自社の基準を設定しています。これが「任意保険基準」と呼ばれるものです。その基準は公表されていませんが、自賠責基準と次の裁判所基準の中間くらいの金額に設定されていることが多いでしょう。あくまで保険会社の社内基準ですので、会社によって金額は異なりますし、「任意保険基準」という決まった基準があるわけではありません。

(3)裁判所基準

裁判所が、慰謝料等の金額を決める際は、過去の裁判例をベースにします。そして、過去の裁判例の集積から一定の基準を導き出したものが「裁判所基準」と言われるものです。裁判所が判決をするときは、その基準をベースに慰謝料の金額を決めることになります。

「裁判所基準」は、一般に、「自賠責基準」や「任意保険基準」よりも高い金額で算出されます。我々弁護士は、被害者を代理して保険会社に請求する慰謝料の金額を決めるとき、この「裁判所基準」を用います。

なお、裁判所は、全国一律の基準が用いられているのではなく、地域ごとに特色があり、裁判所によって用いる基準が異なっています。したがって、どの裁判所で裁判をするかで慰謝料の金額に差が出ることがあります。

3、慰謝料の金額について自賠責基準が適用される場合とは

基準が3つあり、それぞれ金額が異なるのであれば、より高い基準で計算した慰謝料を払って欲しい。そう考えるのは当然です。しかし、次に挙げるような場合には、自賠責基準による計算で、慰謝料が支払われることになります。

(1)加害者が任意保険に入っていない場合

任意保険は、加入するかどうかはその名のとおり運転者の任意であり、必ずしも加入者が任意保険に加入しているとは限りません。また、交通事故歴が多い人は、本人が任意保険に加入したくても、保険会社が契約を断ることがあります。

このような人が事故の相手方になった場合、任意保険会社が登場することはありませんから、まずは自賠責保険から、自賠責保険基準に基づいた慰謝料が支払われることになります。

(2)加害者が任意保険を使わない場合

加害者が任意保険に加入していても、任意保険を使うかどうかは加害者の自由です。任意保険の対人賠償保険を使えば、翌年の保険料が上がりますから、任意保険を使いたくないという加害者もいるでしょう。

その場合、任意保険会社が被害者の対応にあたることはありませんので、任意保険基準の適用はなく、まずは自賠責保険から慰謝料の支払いを受けることになります。

(3)被害者に一定以上の過失がある場合

自賠責保険は、被害者に過失があった場合にも、それが7割以上の過失でない限り、過失割合分を減額されるということはありません。7割以上の過失があった場合にも、2割~5割の減額にとどまります。これに対して、任意保険基準や裁判所基準での計算の場合、被害者に過失があった場合には、被害者の過失分を差し引いて、賠償金が支払われることになります。

そうすると、被害者にある程度の過失がある場合、自賠責基準で計算した慰謝料の方が任意保険基準や裁判所基準で計算するより慰謝料額が大きくなることがあります。そのような場合には、自賠責基準で計算した慰謝料を受け取ることになります。

4、自賠責基準での傷害慰謝料の計算方法

自賠責基準の傷害慰謝料の計算は、日額4200円として計算されます。乗ずべき日数は、「全治療期間の日数」又は「通院日数×2」のいずれか少ない方です。

任意保険基準や裁判所基準は、入院の場合と通院の場合とで慰謝料の金額が異なりますが、自賠責保険では入院と通院とで区別されていません。

ここで注意しなければいけないのは、自賠責基準の慰謝料は常に保証されているのかというと、そうではないことです。

具体例を挙げて説明します。

治療期間が200日間で、90回通院した方がいるとしましょう。上記の計算方法だと、4200円×90日×2=75万6000円の慰謝料が支払われることになりそうです。

しかし、実際はそうではありません。自賠責保険には限度額があり、傷害に関する支払いは120万円までと決まっています。すなわち、治療費、通院交通費、診断書料、休業補償、慰謝料など自賠責保険から支払われるもの全てを合わせて120万円を超える部分は支払われないのです。

90回もの通院をしていれば、治療の内容にもよりますが、100万円近い治療費がかかっていることも珍しくありません。そのような場合は自賠責保険の120万円の枠の大部分が医療機関に支払われ、慰謝料に充てられる枠はほとんど残っていないのです。

5、自賠責基準での後遺障害慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料は、後遺障害の程度によって異なります。後遺障害の程度によって、自賠責保険が等級の認定を行い、その等級ごとに慰謝料の金額が定められているのです。

等級ごとの慰謝料は次のとおりです。

(1)介護を要する後遺障害の場合

第1級第2級
1600万円1163万円

(2)(1)以外の場合

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級
1100万円958万円829万円712万円599万円498万円409万円
第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
324万円245万円187万円135万円93万円57万円32万円

6、むちうちになった場合の自賠責基準での計算シミュレーション

では、具体的な事案を例に挙げ、自賠責基準での支払額をシミュレーションしてみましょう。

<事案>

首のムチウチ(頚椎捻挫)となり、半年間治療を続けたものの、症状が残ってしまい14級9号の後遺障害等級が認定されたケース

被害者:女性、35歳主婦

事故日時:平成27年4月1日

事故態様:住宅街の信号のない交差点を直進しようとしたところ、右の狭路から交差点内に進入してきた相手車と接触。過失割合は自分:相手方=3:7

治療状況:頸椎捻挫の診断を受け、平成27年4月1日から平成27年10月1日まで整形外科に通院

(総通院期間184日、通院実日数80日)

症状固定日:平成28年10月1日

事故後の経緯:相手は任意保険に加入しており。治療費は保険会社から医療機関に直接支払われていた。そのため、健康保険も使わず、自由診療での治療を続けていた。それ以外の診断書作成料や交通費は被害者本人が支払っていた。症状固定後、後遺障害の認定を申請したところ、14級9号の認定を受けた。

【自賠責基準による損害計算】

①治療費 70万円

②通院交通費 5万円

③後遺障害診断書作成料 1万0800円

④休業損害 45万6000円

5700円(日額)×80日=45万6000円

⑤傷害慰謝料 67万2000円

4200円×80日×2=67万2000円

⑥後遺障害部分の保険金額 75万円(内32万円が後遺障害慰謝料)

自賠責基準により単純に計算すると各損害の費目ごとの金額はこのような金額になります。もっとも、治療費としてすでに70万円が医療機関に支払われていますので、自賠責保険の傷害保険金の残りの枠は50万円です。したがって、自賠責基準によると、②~⑤の合計が118万8800円になりますが、実際に受領できるのは自賠責保険金の残りの枠内の50万円ということになります。これに⑥の後遺障害部分の保険金を合わせ、125万円を受け取ることとなります。

相手方には任意保険が付いていますが、過失割合が3:7程度になると、任意保険基準で計算するよりも、自賠責基準で計算した方が過失による減額がない分、金額が大きくなるのが通常です。したがって、この場合、自賠責基準の枠内の125万円の保険金を受け取って、示談は終了ということになります。

7、弁護士に依頼するメリットとデメリット

先ほどの例を裁判所基準で計算してみましょう。家事従事者の休業損害は、症状の程度などによってまちまちですが、半年間の通院であれば60万円~80万円が認められているケースが多いため、今回は70万円とします。

【裁判所基準による損害計算】

①治療費 70万円

②通院交通費 5万円

③後遺障害診断書作成料 1万800円

④休業損害 70万0000円

⑤傷害慰謝料 89万円

⑥後遺障害慰謝料 110万円

⑦後遺障害逸失利益 78万8229円→364万1200円(平成26年女性全年齢学歴計賃金センサス)×5%(労働能力喪失率)×4.3295(労働能力喪失期間、5年間のライプニッツ係数)

以上を合計すると、総損害額は423万9029円となります。過失割合は3:7ですから、加害者の負担部分は296万7320円です。ここから既に医療機関支払済みの70万円を引きます。そうすると、今回の被害者が受け取る金額は226万7320円ということになります。

このように、裁判所基準により損害額を計算すれば、被害者が受け取れる金額は大幅にアップします。

被害者本人が、相手方の任意保険会社に対して、裁判所基準による計算をして欲しいと求めることはできますが、これに簡単に応じる保険会社はほとんどないでしょう。しかし、交渉の窓口を弁護士にすると、保険会社も裁判所基準をベースにした交渉をせざるを得なくなるのが通常です。

そこで、被害者としては、弁護士に依頼することで、裁判所基準による金額で交渉をしてもらうか、裁判をするなどして、より高額な賠償額を受け取ることができるようになるのです。

このように、弁護士を入れることで支払われる賠償額をアップさせることができるというのが、弁護士に依頼する大きなメリットと言えます。

もっとも、弁護士に依頼するには弁護士費用がかかってしまいます。これが弁護士に依頼するデメリットです。

賠償額をアップさせるメリットと弁護士費用のデメリットを比較して、弁護士に依頼するかどうかを決めることが重要です。

まとめ

今回は、慰謝料に関する自賠責基準を中心に説明しました。自賠責保険から払われる慰謝料は4200円×通院日数×2という単純な計算で支払われるとは限らないということが分かっていただけたと思います。

事故の被害に遭って、いくらくらいの慰謝料をもらえるのだろうと心配な方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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