友人からの借金を除外して個人再生を申立てることはできる?

個人再生 友人からの借金

個人再生を申立てると借金が大幅に減額されますが、友人からの借金だけはきちんと全額返したいと考える方は多いことでしょう。
また、自分が個人再生をすることを、お金を借りている相手とはいえ友人に知られたくないという方も少なくないと思われます。

今回は、

  • 友人からの借金も個人再生の対象になるのか
  • 友人からの借金を除外して個人再生を申立てる方法
  • 個人再生で友人に迷惑をかけない方法

などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

個人再生の流れについては以下の関連記事をご覧ください。

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1、個人再生では友人からの借金も対象になる?

結論として、友人からの借金も銀行や消費者金融からの借金と同じように、個人再生の対象となります。

個人再生とは、裁判所で所定の手続きを行うことによって、債務の大幅な減額が認められる手続きのことです。
裁判所で再生計画案が認可されると、債務が原則として5分の1(最大10分の1、ただし最低弁済額は100万円)にまで減額されます。減額後の債務は、3年~5年で分割返済していくことになります。

ここにいう「債務」には、一部の例外を除いて、あらゆる金銭の支払い義務が含まれます。一部の例外としては、主に

  • 税金や社会保険料などの公租公課
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務
  • 養育費

などが挙げられます。

また、住宅ローンについては一定の要件を満たせば「住宅ローン特則」を利用することで特別扱いが認められます。
しかし、友人からの借金は例外にも該当せず、特別扱いも認められません。
したがって、友人からの借金も個人再生の対象となり、銀行や消費者金融からの借金とまったく対等に取り扱われることになります。

逆にいえば、個人再生をすれば友人からの借金も原則5分の1に減額されます。
それだけに、「友人からの借金を除外して個人再生申立てることはできないか」「友人からの借金だけを別に返済することはできないか」という悩みが生まれることになります。

2、友人からの借金を除外して個人再生を申立てることはできる?

それでは、友人からの借金を除外して個人再生を申立てることはできるのかというと、残念ながら、原則としてできません。なぜなら、個人再生では「債権者平等の原則」というものが適用されるからです。

債権者平等の原則とは、その名のとおり、すべての債権者を平等に扱わなければならないという原則のことです。

個人再生で再生計画案が認可されると、裁判所の決定による強制的に債務が大幅に減額されます。もし、一部の債権者を除外して再生計画案が認可されると、除外された債権者は手続きの影響を受けませんので、引き続き債務者に対して全額の支払いを請求できる権利を有することになります。

しかし、これでは債権者間の平等が大きく損なわれてしまい、「債務者と債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整する」という個人再生の目的(民事再生法第1条)を果たすことはできません。

この目的を果たすためには、裁判所が強制的に債務を減額する以上、すべての債権者が平等に扱われなければなりません。

したがって、個人再生を申立てるのなら、友人からの借金も含めてすべての債権者を対象としなければなりません。
どうしても友人からの借金を除外したいのであれば、すべての債権者を対象から除外する、つまり申立てをしないという形にしなければなりません。

3、個人再生の申立時に友人からの借金を除外するとどうなる?

個人再生の申立時に友人からの借金を除外しても、「黙っていれば分からない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、一部の債権者を除外して申立てると以下のリスクを負うことになりますので、故意に友人からの借金を除外して個人再生を申し立てるのはやめておきましょう。

(1)発覚すると追加される

個人再生を申立てた後の手続き中に、債権者一覧表に掲げていない債権があることが判明した場合は、当然ですがその債権者も個人再生の手続きに追加されます。
そのため、結局は友人に迷惑をかけることになってしまいます。

個人再生を申し立てる際には、申立書に通帳のコピーも添付して裁判所に提出する必要があります。
友人からお金を借りたときの履歴が通帳に残っていれば、裁判所や個人再生委員にバレてしまいますので、「黙っていれば分からない」という考え方は通用しません。

(2)個人再生による返済額が増えることがある

友人からの借金のみを先に返済していた場合は、個人再生による返済額が増えてしまう可能性があります。
なぜなら、偏頗弁済した金額は清算価値に加えなければならないからです。
偏頗弁済とは、一部の債権者にのみ優先的に返済することをいいます。

清算価値とは、債務者が有する換金可能な財産の総額のことです。
個人再生では、債務を大幅に減額してもらえる前提として、債務者が有している財産総額以上の金額を返済しなければならないこととされています。
この前提のことを「清算価値保障の原則」といいます。

例えば、債務の総額が300万円の場合は個人再生によって100万円にまで減額することが可能です。
しかし、債務者が総額150万円の財産を有している場合には、150万円以上の金額を返済しなければならないことになります。

財産総額が80万円の場合、返済額は100万円で済むはずですが、友人に対してのみ100万円を優先的に返済していると、その他の財産80万円との合計180万円以上を返済しなければなりません。

偏頗弁済した100万円はすでに債務者の手元にはありませんが、本来ならすべての債権者への返済の引き当てになるはずだったお金といえます。

ですので、債権者平等の原則を守るために、偏頗弁済した金額は清算価値に加えるという形で、他の債権への返済額を増やすことになるのです。

(3)申立てが棄却されることもある

上記2点のリスクのみであれば、大した問題ではないといえるかもしれません。
しかし、故意に友人からの借金を隠して個人再生を申立てたことが発覚すれば、申立てが棄却される可能性があります。

民事再生法では、「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき」には、裁判所によって申立てが棄却されることになっています(同法第25条4号)。

「棄却」というのは、裁判所が申立ての内容を確認して検討した結果、申立てを認めないという判断を下すことをいいます。

友人に迷惑をかけないために友人からの借金のみを除外して個人再生を申し立てるということは、「不当な目的」での申立てに当たりますし、誠実な申立てともいえません。
単に友人からの借金を債権者一覧表に計上し忘れただけという場合は、友人からの借金を追加する形で補正すれば申立てが認められるでしょう。

しかし、故意に友人からの借金を隠そうとして発覚したような場合は、申立ての棄却を覚悟しなければなりません。

4、友人からの借金を除外して個人再生を申立てる方法と注意点

友人からの借金を除外して個人再生を申立てる方法が一切ないのかというと、そうでもありません。

以下の形を取れば友人からの借金を除外して申立てることも可能ですが、注意すべきポイントもありますので、しっかりとご確認ください。

(1)友人に債権放棄をしてもらう

ひとつ目の方法は、申立前に友人に債権放棄をしてもらうという方法です。
そうすれば、友人は債権者ではなくなるので、個人再生の申立てに加える必要はありません。

友人に迷惑をかけたくないという場合は、個人再生による返済がすべて終わった後に、改めて友人に返済することもできます。
債権放棄をしてもらっても、その後に債務者が任意に返済をするのは自由だからです。

そこで、友人に対しては事情を説明して納得してもらった上で、いったん債権放棄をしてもらうように頼むと良いでしょう。

(2)第三者から一括返済をしてもらう

ふたつ目の方法は、友人に対して自分で返済するのではなく、第三者から一括返済してもらうという方法です。

第三者が返済したのであれば偏頗弁済にはなりませんし、清算価値が増加するという問題もありません。

家族や親戚などに頼れる場合は、友人への一括返済をお願いすると良いでしょう。
この場合も、個人再生による返済が終了した後であれば、肩代わりしてくれた家族や親戚等へ返済するのは自由です。

(3)自分で一括返済した場合の注意点

自分で友人へ一括返済した場合には、個人再生による返済額が増えるリスクがあるということを前記「3」(2)で解説しました。

しかし、逆にいえば、そのリスクを甘受するのであれば一括返済も可能ともいえます。

例えば、債務者の保有資産の総額が20万円で、友人に対して50万円を偏頗弁済した場合、清算価値は合計70万円となります。
個人再生における最低弁済額は100万円なので、この場合は結果的に手続きには何ら影響ないことになります。

しかし、保有資産のうち何をどの範囲で清算価値に加えるべきかという問題は複雑であり、思わぬものを資産として清算価値に加えなければならないこともあります。
したがって、ある程度まとまった金額の偏頗弁済をすると、やはり個人再生による返済額が増えてしまう可能性があると考えておくべきです。

また、偏頗弁済が発覚すると、小規模個人再生では他の債権者からの不同意の意見によって、再生計画案が不認可となるおそれもあります。

ですので、安易に友人への一括返済を行うべきではありません。
どうしても一括返済したい場合や、すでにしてしまった場合は、弁護士に相談して対応策についてアドバイスを受けましょう。

5、個人再生の申立てで友人からの借金を含めると返済額が減る?

少し話は変わりますが、個人再生の申立てで友人からの借金を含めると、金融機関である債権者へ返済金額は減ることになります。

例えば、個人再生による返済額が100万円となる場合、債権者のすべてが金融機関であれば、そのまま100万円を金融機関へ返済しなければなりません。

それに対して、100万円のうち10万円が友人の債権だとすれば、金融機関への返済額は90万円となり、あとの10万円は友人へ返済することになります。

以上は当然の話ですが、もし、再生計画案の認可後に友人が返済を猶予してくれたとすれば、債務者は90万円しか返済せずに借金を整理できることになります。

しかし、このような計画を友人と示し合わせて個人再生を申立てることは、やってはいけません。
なぜなら、再生計画案認可後の返済の段階においても、「債権者平等の原則」が適用されるからです。

最初から一部の債権者から返済猶予を得ることを示し合わせて個人再生を申立て、再生計画案が認可された場合は、「再生計画が不正の方法により成立したこと」に該当するものとして、再生計画の認可が取り消されるおそれがあります。

個人再生による返済が厳しいときに、債権者である友人に頼んで待ってもらうことは問題ありませんが、金融機関への返済額を減らす目的で、最初から返済するつもりのない(その旨の合意をしている)借金を計上することはやめておきましょう。

6、個人再生で友人に迷惑をかけたくないときの対処法

個人再生を利用したいけれど、友人にも迷惑をかけたくないという場合は、前記「4」(2)でご紹介した第三者に一括返済してもらうことが最も手早い解決方法となるでしょう。

それができないという場合は、以下の対処法を検討してみましょう。

(1)再生計画終了後に免除された債務を返済する

ひとつ目の対処法は、再生計画終了後に、免除された友人への債務を返済するという方法です。

再生計画案が認可された後は、減額された後の債務を3年~5年で分割返済していきます。
その間は、友人に対しても減額後の金額のみを分割返済することになります。

このようにして再生計画の履行を終了すると、減額された分の債務は免除されることになります。
そして、免除された債務は「自然債務」となります。

自然債務とは、債権者から支払いを請求することはできないものの、債務者から任意に支払うのであれば債権者が受領できるという状態の債務のことです。

再生計画に基づく返済をすべて終了した後であれば、もう「債権者平等の原則」は働きませんので、友人にのみ全額返済することも自由にできます。

ただし、この方法で友人からの借金を完済するには、少なくとも3年~5年という期間を要します。

早期に解決したいという場合は、次の対処法を検討することになります。

(2)任意整理を選択する

任意整理とは、個別の債権者と任意に交渉することによって、債務の返済額や返済方法を変更する手続きのことです。

裁判所を介しない任意の手続きであるため、任意整理では「債権者平等の原則」は働きません。
そのため、金融機関からの借金のみを任意整理で減額し、友人からの借金はそのまま全額返済しても問題はありません。

借金総額が比較的少ない場合は、任意整理での解決を検討すると良いでしょう。

(3)自己破産を選択する

任意整理では大幅に借金を減額することは期待できません。
そのため、多額の借金を抱えている場合は自己破産も視野に入れてみましょう。

自己破産では、免責が許可されるとすべての債務の返済義務が免除されます。
免除された債務は、個人再生の場合と同様に「自然債務」となります。
そのため、免責許可決定の確定後に債務者から任意に友人に全額返済するのは差し支えありません。

自己破産の手続きは、個人再生よりも早期に終了します。
同時廃止事件の場合、申立てから免責の確定間の期間はおおよそ3か月~4か月程度です。

自己破産と個人再生のどちらを選択すべきかは、さまざまな要素を考慮して判断すべきですが、友人からの借金を全額返済するためには自己破産の方が断然早いといえます。

なお、自己破産も裁判所を介した強制的な手続きですので、「債権者平等の原則」が働きます。
そのため、友人からの借金のみを除外して自己破産を申立てることはできませんので、ご注意ください。

7、友人からの借金がある場合の個人再生は弁護士に相談しよう

前記「4」で解説したポイントに注意すれば、友人からの借金を除外して個人再生を申立てることも可能です。
とはいえ、自己判断で安易に行うと、法律に抵触して個人再生に失敗するおそれがあります。
悩ましい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

債権放棄をしてもらう方法や、再生計画終了後に全額返済する方法などは、当事者同士で話し合っても理解してもらうことが難しく、感情的なトラブルに発展しがちなものです。しかし、弁護士に間に入ってもらって、法的観点から冷静に説明してもらえれば、円満な解決が期待できます。

また、無理に個人再生をするよりも、任意整理または自己破産の方が適しているというケースも少なくありません。
どの手続きが最適化については、専門的な知識がなければ判断するのは難しいものです。

そこで、弁護士に相談して、「友人に迷惑をかけたくない」という希望を伝えれば、最善の解決方法を一緒に考えてもらえます。
ひとりで悩んでいるだけでは思いつかなかったような解決策を提案してもらえることもあります。
お困りのときは、弁護士に頼るのが得策といえるでしょう。

まとめ

個人再生をする以上は、友人からの借金も、銀行や消費者金融からの借金と同等に扱わなければなりません。

「バレなければ除外してもいい」「少額だから先に返済してもいい」と考えて安易に特別扱いをしてしまうと、個人再生に失敗してしまうおそれがあります。

友人からの借金を完済するためにも、借金問題は適切な方法で解決することが大切です。
弁護士の力を借りて、最善の方法で解決されることをおすすめします。

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