自己破産をしても「マイホームをもちたい」「今の家を手放したくない」とお考えの方も多くいらっしゃると思います。
しかし、自己破産をすると7年程度は住宅ローンを組むことはできませんし、現在住宅ローンをお支払いの方はマイホームを失ってしまう可能性が高くなります。
そこでこの記事では、自己破産しても住宅ローンは組めるのか、自己破産後に住宅ローンの審査にパスできるのかなどの疑問ついて、詳しく解説します。
目次
1、自己破産後に住宅ローンは組める?
自己破産のデメリットのうちの一つが、今後借り入れをすることが難しくなるという点にあります。
自己破産は、法律的に認められている手段とはいえ、言葉は悪いですが、借金を踏み倒したのと同じことですから、過去にそのような経験がある人に貸し付けをするのはリスクがある、と金融機関が判断するのも無理はありません。
自己破産をした方の側も、過去に借金で苦しんだ経験がありますから、金利の高いカードローンや消費者金融等はもう利用しない、と思われていることが少なくありません。
ただ、住宅ローンだけは事情が異なります。自己破産をされた方でも、賃貸で家賃を払い続けるなら住宅ローンを組んで家を購入したいと思われる方も多いと思います。
住宅の購入は高額であるため、現金で支払うというのはほぼ不可能ですから、どうしてもローンを利用する必要があります。
住宅ローンは金利も低いので、それが原因で再度多重債務に陥るということも考えにくいといえます。
しかし、そのような場面で、過去に自己破産をしていることがネックになってしまいます。
自己破産後に住宅ローンを組む方法はあるのでしょうか?
結論としては、自己破産後すぐには住宅ローンを組めません。住宅ローンを組むためには、自己破産後、5年〜10年経過していなければならないのです。
2、自己破産をした後に住宅ローンの審査を通す6つの方法
では、過去に自己破産した方が住宅ローンの審査を通すにはどのような点に注意すればよいでしょうか。
(1)信用情報機関における自己破産情報の登録が消えるのを待つ
まず一番大切なのは、住宅ローンの審査を行う金融機関に、過去に自己破産したことを知られないようにするという点です。
自己破産したという情報は、信用情報機関に登録されます。
このことを「ブラックリストに載る」などといいますが、ブラックリストというリストがあるわけではなく、信用情報機関に自己破産等の事故情報が記載されている状態をいいます。
信用情報機関によって登録される年数は異なりますが、CICやJICCは5年、全国銀行協会(全銀協)は10年と言われていますから、自己破産してから10年経過すれば、全ての信用情報機関から自己破産したとの情報が抹消されるようです。
ですから、まずは、自己破産の情報が抹消されるまで待つことが大切です。
なお、期間を経過しても、情報の消し忘れ等で信用情報機関に、過去の自己破産の情報が残ったままになっていることが稀にあります。
そのため、まず、期間を経過したら、該当の信用情報機関に自己の情報の開示を請求して、自己破産の情報が抹消されているかどうかを確認する必要があります。
もし、期間が経過しても情報が残っている場合は、その情報を抹消していない金融機関(貸金業者)に免責決定通知等を送って、情報を抹消してもらう必要があります(信用情報機関における情報は、貸付業者毎に載っているので、自己破産当時5社に借り入れがあった場合、5社ともの記録が抹消されていないといけないということになるのです)。
(2)クレジットヒストリーをつくる
信用情報機関から情報が抹消されると、その方の信用情報を調べても何も出てこない(いわゆるホワイトの状態)になります。ただ、昨今の社会状況の中で、クレジットカード1枚すら所有していない、という状態は、審査をする側から見ると、かえって、何かカード等を作れない理由があるのではないかという疑念を抱かせます。
そこで、CICやJICCの記録が抹消される5年後以降に、契約時に全国銀行協会の情報を参照しない業者でクレジットカードをつくり、少しだけ利用してきちんと返済をし、その記録(これをクレジットヒストリーといいます)を信用情報機関に残すことが大切です。
なお、携帯電話の機種本体代金の分割払いもクレジットヒストリーの一つとなるので、携帯電話を利用している人は、代金の支払い遅れ等がないようにすることが大切です。
(3)金融機関を選んで審査の申し込みをする。
前記のとおり、自己破産をしたという情報は、10年経過すれば、信用情報機関から抹消されます。
しかし、自己破産当時借り入れをしていた業者の社内データからは消えることはありません。
例えば、自己破産当時、三菱東京UFJ銀行のカードローンを利用していたときは、信用情報機関における情報が抹消された後も、三菱東京UFJ銀行の社内データには残っている可能性があるのです(金融機関がこのようなデータを残していても違法ではありません)。
ですから、住宅ローンを申し込む時は、自己破産当時に借り入れのあった金融機関やその系列の金融機関はなるべく避けたほうが良いといえます。
また、審査が厳しくないという観点からいうと、銀行系ではない、住宅金融支援機構やノンバンクで申し込むのも良いかもしれません(ただし、ノンバンクは利息が高い傾向にある点に注意が必要です)。
特に、フラット35で知られる住宅金融支援機構では、一般的な銀行とは審査基準が異なるので、仮に過去の自己破産歴が判明したとしてもそれだけで絶対に審査が通らないというわけではないようですし、金利も低いので、過去に自己破産歴がある方にとっては、住宅ローンの申し込み先として検討すべき金融機関の一つとなるといえます。
(4)パートナーや親が借入をする
共働き等でパートナーに十分な信用がある場合や親の年齢がそれほど高くない場合には、パートナーや親の名義で借り入れを行うことも一つの方法です。
もちろんパートナーや親が年齢の要件や収入要件を充たしていることが前提となります。
ただ、この場合、実際、中心となって返済をしていくのは自己破産をした方でしょうから、家族の間で返済についてしっかりと話し合いをしておくことが大切です。
(5)自己資金を多めに用意する。
住宅ローンの審査を少しでも通りやすくする方法として、自己資金(頭金)を少しでも多めにすることです。
例えば5000万円の住宅を購入する場合に、自己資金が500万円の場合と、5500万円の住宅を購入する場合に、自己資金が1000万円の場合では、借り入れる金額は同じ4500万円ですが、後者の方が審査に通りやすいといえます。
物件の担保評価に対しての借入額の割合が少なくなることや、それだけの現金を用意していることへの信用力があることが審査を通り易くするのです。
自己破産をすると、少なくとも10年は信用情報機関に情報が残りますから、その期間を利用して逆に頭金を貯めておくくらいの準備が大切です。
(6)複数の金融機関に連続して申し込みをしない
自己破産後に住宅ローンを申し込む場合、連続して複数の金融機関に申し込みをするのは避けた方がよいでしょう。
例えば、自己破産後10年が経過し、信用情報機関から自己破産の情報が消えたことを確認してから申し込んだ場合でも、その金融機関が、過去の借入先の系列金融機関だったために、過去の自己破産を理由に審査を否決したとします。
そうすると、6か月間は、信用情報機関に、その審査否決の情報が残ります。
他の金融機関で審査否決となったという情報(いわゆる、「申し込みブラック」の状態)があると、それ以外の金融機関もマイナスにとらえるため、どうしても審査に悪影響を及ぼしてしまいます。
ですから、1つの金融機関で審査を否決された場合は、6か月以上、間をあけてから、別の金融機関に審査を申し込むのがよいでしょう。
住宅ローンの申し込みをする段階では、希望の物件も決まっていることでしょうから、一つの金融機関で審査が通らなくても、すぐに、別の金融機関に申し込みをしたいという気持ちもわかります。
販売する不動産業者も、そのように勧めてくることが多いと思います。
ただ、自己破産歴のない方であればともかく、自己破産歴がある方は、そもそも審査が通りにくい状況にあるのですから、審査の申し込みは慎重に行うべきです。
3、自己破産をすると住宅ローンはどうなるか
それでは、自己破産する前に住宅ローンを組んで、その後、自己破産すればよいではないかという疑問が生じます。
住宅ローンを抱えた方が、自己破産をした場合、住宅ローンの支払いはどうなるのでしょうか。
(1)自己破産と住宅ローンの支払い義務
自己破産をして免責決定が出されると、自己破産の申し立て前に負った債務(借金)の支払い義務はなくなります。
住宅ローンも例外ではありませんから、免責決定が出されると、以後、住宅ローンを支払う必要はなくなります。
(2)住宅ローンに連帯保証人がいる場合
自己破産をした本人に免責決定が出て、住宅ローンの支払い義務がなくなっても、連帯保証人の支払い義務はなくなりません。
ですから、住宅ローンを組む際に連帯保証人を付けていた場合は、その連帯保証人に対し請求がいくということになります。
その場合、自己破産をしたことにより(もしくは、自己破産前に月々の住宅ローンの支払いを滞納したことにより)、期限の利益を失っている場合が多いことから、連帯保証人に対しては、金融機関は、残債務について一括で請求をすることができます。
連帯保証人が残債務を支払う際に分割での支払いを認めてくれるかどうかは、金融機関との交渉次第ということになります。
(3)住宅ローンに連帯債務者がいる場合
住宅ローンを組む際に、配偶者が連帯債務者になっているような場合も、連帯保証人がいる場合と同様、連帯債務者に対して、残債務について一括で請求される場合があります。
この場合、残債務について分割払いを認めてくれるかどうかは、連帯保証人がいる場合と同様、金融機関との交渉になります。
なお、分割払いを認めてもらうには、別に新たな連帯保証人を付けること等が条件となる場合もあります。
4、自己破産をすると住宅ローンで購入した家はどうなるか
住宅ローンで住宅を購入した方が自己破産をした場合に、その住宅はどうなるのでしょうか。
その家に住み続けることはできるのかどうかということは、自己破産をせざるを得なくなった方にとって重要なことだと思います。
ここでは、住宅ローンを完済している場合とそうでない場合に分けてご説明します。
(1)住宅ローンを完済している場合
住宅ローンを完済している場合、その住宅は、自己破産をした方の財産ということになります。
自己破産というのは、財産を投げ出すかわりに借金もゼロにする(支払い義務がなくなる)という制度ですから、自己破産をすれば住宅は手放さざるを得なくなります。
具体的には、自己破産の申立て後に、裁判所から選任された破産管財人の手によって住宅は売却され、その売却代金は、債権者に対して分配(配当)されます。
ですから、破産管財人の手によって売却されるまでに、住宅から立ち退かなければならないということになります。
(2)住宅ローンの支払中に自己破産した場合
住宅ローンは自宅を担保にしてその購入資金を借り入れるものです。
ですから、住宅ローンが支払えずに自己破産してしまうと、住宅ローンの担保である住宅は、住宅ローンを貸し付けた金融機関の手によって売却され、その売却代金は、住宅ローンの返済に充てられることになります。
売却代金を返済に充てても住宅ローンが残った場合は、自己破産の手続きにおいて免責決定を得ることで、支払の義務がなくなります。
なお、金融機関が住宅を売却する方法としては、金融機関が買主を探してくる任意売却と、裁判所に申し立てをして、購入者を募集し入札によって購入者を決定する競売とがあります。
5、住宅ローンのある人が自己破産する前に検討すべき3つのこと
前記のように、住宅ローンを組んで住宅を購入した方が自己破産をすると、住宅を手放さざるを得なくなります。
しかし、住み慣れた家を手放すのは精神的にも辛いでしょうし、引っ越しをして新たな生活を始めるのに費用もかかります。
そこで、自己破産をする前に、家を手放さなくてよいように検討すべきことがあります。
(1)金融機関と交渉(相談)する
住宅ローンの支払いが厳しくなってきた場合は、支払いについてまず金融機関に相談した方がよいといえます。
相談しないまま支払いが遅れたり滞納が続いたりする前に相談することが重要です。
相談をして必ずしも希望通りになるとは限りませんが、1カ月当たりの返済額を減らすこと等(これをリスケ(リスケジュールの略)といいます)に同意してもらえる可能性もあります。
ですから、まず、金融機関に相談してみる必要があります。
(2)債務整理を検討する
住宅ローン以外にも債務があるために、住宅ローンの支払いが厳しくなっている場合は、住宅ローン以外の債務について、弁護士等に債務整理の依頼をする、というのも一つの方法です。
それによって、住宅ローンの支払いを継続できるのであれば、家を手放さなくてよくなります。
住宅ローン以外の債務について債務整理を行いつつ、住宅ローン自体についても、金融機関に対して月々の支払額変更(リスケ)の相談をする、という方法を採るのもよいでしょう。
(3)民事再生(個人再生)の検討をする
金融機関に対する住宅ローンのリスケの相談や、住宅ローン以外の借金の債務整理をする方法によっても、その後の支払い継続が困難である場合は、自己破産を検討せざるを得ません。
しかし、住宅ローンを支払中の方が自己破産をしてしまうと、家を手放さざるを得なくなってしまいます。
そこで、裁判所の管理の下、住宅ローンだけはこれまでどおり支払いを継続しつつ、他の借金については大幅に減額(圧縮)をする方法があります。それが民事再生(個人再生)です。
住宅ローンを抱えた方が自己破産をせざるを得ない状態になってしまったけれども、家を手放したくないという場合は、民事再生(個人再生)の手続きを採ることを検討されるとよいでしょう。
個人再生について、詳しくは「個人再生のデメリットは?手続きや費用についても徹底解説」をご参照ください。
まとめ
マイホームは、生活や人生の中で大きな位置を占めるものです。
住宅ローンを組んで念願のマイホームを手に入れたのに自己破産せざるを得なくなったとか、過去に自己破産をしたせいで住宅ローンが組めないという事態はできれば避けたいものです。
ただ、そのような状況においても、きちんとした知識を持って行動することで、事態を好転させることが可能です。知識不足のまま行動すれば、より不利益を被ってしまいます。
今はネット上で様々な情報を手に入れることができます。それ自体は良いことですが、残念なことに誤った情報も多いのも事実です。
自己破産という辛い場面に直面したからこそ、事態をそれ以上悪化させないためにも、ネット上の情報だけでなく、弁護士等の専門家のアドバイスも受けながら、慎重に、かつ的確に判断して行動することが求められるといえるでしょう。
「自己破産」に関する詳細はこちらの記事をご参照ください。