「父親が嫌いで、できれば縁を切りたい!」
「父親のことが生理的に受け入れられず、もう顔も合わせたくない!」
父親との関係で、このように悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
父親からひどい扱いを受けて、父親から逃れたいと考えている人もいれば、そんなに悪い父親ではないけれどなぜか嫌いで、そんな自分に罪悪感をもっている、という人もいると思います。
いずれにしても、父親嫌いを放置したまま過ごすのはストレスになりますし、自分の将来に暗い影を落とすおそれもあります。
そのため、親子関係を改善するために歩み寄るにせよ、父親との関係を断つにせよ、早期に適切な対処法を考えることが重要となります。
そこで今回は、
- 父親を嫌いになる理由とは?
- 父親嫌いを放置するとどんなリスクがある?
- 父親が嫌いすぎる場合の対処法とは?
などについて、弁護士が解説していきます。
この記事が、父親嫌いで悩んでいる方の手助けとなれば幸いです。
目次
1、父親を嫌いな人は少なくない!父親を嫌いな理由って?
父親を嫌いな人の中には、家族のために頑張って働いてくれている父親を嫌うなんて、自分の方がおかしいのでは?と罪悪感を感じている人もいることと思います。
そんな人は、自分の他にも父親を嫌いな人がどれ程いるのか、ということが気になることでしょう。
そこでまずは、世間で父親が嫌いの人の割合と、父親を嫌いな理由についてもみていきましょう。
(1)父親嫌いな人の割合ってどれくらい?
アサヒビールホールディングスが運営するWebサイトが行ったインターネット調査(アンケート)によると、お父さんが好きか嫌いかという質問に対する回答状況は以下のとおりでした。
- 大好き…25.6%
- まあまあ好き…48.2%
- あまり好きではない…11.1%
- 大嫌い…2.8%
- その他…3.0%
- 無回答…9.3%
70%以上の人が父親について「好き」と答えていますが、このアンケートは「父の日のギフト選び」というテーマで行われたものですので、もともと父親好きな人が回答者の多くを占めていると考えられます。
しかし、その中でも4人に1人以上の人は父親が好きとは答えておらず、「あまり好きではない」「大嫌いと答えた人を合わせると13.9%もいます。
世の中全体で見ると、父親嫌いの人の割合はもっと高いはずですので、父親嫌いな人の割合は決して低いものではないといえるでしょう。
(2)父親を嫌いになる理由とは
上記のアンケートでは、「お父さんの嫌いなところ」という質問に対して、
- 頑固で言い出したら譲らない
- 考えが古い
- 飲むとだらしない
- 喫煙
- 真面目すぎる
などの回答が並んでいます。
ここからは、一般的に父親嫌いの人が父親嫌いになった理由やその心理を詳しく解説します。
以下の理由の中に、あなたの理由も含まれているのではないでしょうか。
①愛情を感じられない
幼少期から仕事が忙しいなどの理由で父親にあまり構ってもらえなかったために愛情を感じられず、そのために父親嫌いになってしまう人は多くいます。
シングルファザーのため家事に仕事に大変だったケースはもちろんのこと、そうでなくても仕事が忙しく家になかなか帰ってこなかったり、家にいても遊んでくれなかったりという父親は少なくありません。
育児や学校のことは母親任せという父親だと、子どもにとっては「自分のことを考えてくれていない」と感じるのも無理はないでしょう。
②頑固で話を聞かない
自分の意見や価値観を家族に押しつけて、子どもの話を受け入れず、聞いたとしても否定が多いという父親も少なくありません。
自分の話を頭ごなしに否定されたり、無視されたりすると、子どもは自尊心を失くし、自信がなくなってしまうという影響を与える可能性があります。
やがて、「父親には何を言っても無駄」、「父親なんて、いてもいなくても一緒」という心境から、父親嫌いになってしまうでしょう。
③自分のことを棚に上げて細かく口を出してくる
子どもに対して何かと細かく口を出してくる父親も、子どもから嫌われがちです。
ただ口うるさいだけならまだしも、例えば自分だって酒やギャンブルに溺れていたり、特に仕事で成果を出していなかったりするのに、事細かく子どもに対しては口出ししてくるような父親もいます。
このような父親は子どもから尊敬の対象としては見られず、むしろ反面教師として扱われるようになるでしょう。
④お酒・ギャンブル・不倫などに溺れている
これらの逸脱行動が目立つ父親も、「反面教師」にされる典型例といえます。
お酒やギャンブルに溺れて借金があるようでは、子どもの生活水準も低いものになりがちで、「父親のせいでひもじい思いをさせられている」と感じてしまうことでしょう。
収入が高い父親であっても、不倫に溺れているようでは子どもへの愛情が行き届かず、子どもの心は寂しい思いで満たされてしまうはずです。
いずれにしても、子どもから尊敬される父親からはほど遠い姿であるというべきです。
⑤外見に気を使わない
何年もいつも同じ服、ひげの手入れをしない、髪の毛はボサボサ…いくら若くないとはいえ、見た目に気を使わない父親は、子どもにとっては恥ずかしい存在といえるかもしれません。
特に思春期以降の娘にとってこのような父親は、「一緒にいるところを見られたくない」「友達などに紹介したくない」という対象となってしまうでしょう。
⑥家族に暴力を振るう
気に入らないことがあったら家族に暴力を振るったり、物に当たったりする父親は、子どもにとっては恐怖であるとともに、父親に対して嫌悪感を抱くものです。
子どもが小さいうちは父親に従っていたとしても、心の中では「自分が大きくなったら父親を見返してやる」と思っている可能性が高いです。
⑦母親が父親を嫌っている
母親が父親を極度に嫌っており、母親が子どもに対して父親の悪口などを繰り返し言っている場合、その影響で子どもが父親を嫌うこともあります。
このケースの場合、中には何も問題がないのに母親に嫌われているという気の毒な父親もいますが、ほとんどのケースでは父親に上記①~⑥のいずれかの理由があり、家族からの信頼を得られていないものです。
本当に何も問題がなければ、子どもは成長するにつれて父親のことを理解するようになるはずです。
2、父親を嫌いなままでいることによる5つのリスク
父親のことが「あまり好きではない」というレベルなら、父親に何を言われても受け流し、やり過ごすというのが最も現実的な対処法となるでしょう。
しかし、顔を合わせるのも苦痛なほどに父親を嫌いなのに、その状態を放置していると、以下のリスクを背負ってしまう可能性があります。
(1)家庭でストレスがたまり続ける
父親と一緒に住んでいる場合、基本的には毎日顔を合わせなければならないでしょうから、父親が嫌いだと家庭でストレスがたまり続けてしまいます。
仕事や勉強のストレスなら趣味やスポーツをしたり、友人と遊ぶことで解消もしやすいものですが、家庭で毎日たまり続けるストレスは解消するのも難しいものです。
そのストレスから、やがて父親だけではなく家庭そのものも嫌いになってしまい、家にいても心地よくなくなってしまうでしょう。
本来は癒やされる場所であるはずの家庭で毎日ストレスを受け続けていれば、仕事や勉強の成績にも悪影響が及ぶ可能性が高くなります。子どもが思春期の場合は、非行に走るおそれもあります。
(2)社会性が身につかない可能性がある
おおむね成人するまでの若い人の場合、通常は父親との対話によって社会のいろいろなことを学んでいくものです。
しかし、父親嫌いで信頼関係が結べていないと、この重要な成長プロセスが抜けてしまうおそれがあります。
その結果、社会性が身につかず、就職した後も仕事上の人間関係で悩むことになりかねず、解決方法も分からないということになりかねません。
要は、父親がいても、その父親から何も学べないということになりかねないのです。
(3)恋人を紹介しづらくなる
父親を嫌いでいると、プライベートの話はしにくくなります。普段はそれで特段の問題はなくても、いずれ恋人を紹介しなければならないときがくるはずです。
そのとき、父親に対しても恋人に対しても、非常に気を遣うことになるでしょう。
「お父さんに紹介しにくい(紹介するのが嫌だ)」と思っていると、良い人が見つかっても積極的になれなかったりして、恋愛や結婚に悪影響が出るおそれもあります。
(4)娘なら男性が苦手になるおそれがある
娘にとって父親という存在は、最も身近な異性です。そのため、父親との関係は娘の男性観に重要な影響を及ぼします。
父親のことを極端に嫌いなままでいると、男性そのものが苦手になってしまうおそれもあります。
男性嫌いになると、恋愛や結婚に支障をきたすのはもちろんのこと、職場や学校などでも毎日大きなストレスを受けてしまうかもしれません。
そこまでいかなくとも、父親との関係が悪いと娘が恋愛や結婚で失敗を重ねるおそれがあります。
なぜなら、娘は無意識のうちに父親に似たタイプの男性を恋愛や結婚の相手として選ぶことが多いと言われているからです。
最初は自分にとって理想の人だと思っていても、交際や結婚生活を続けていくうちに相手の中に父親と似た面をいくつも見つけてしまい、別れを繰り返してしまうケースは決して少なくありません。
(5)罪悪感をもち続けてしまう
「父親と自分は無関係」と自分に言い聞かせて仕事や勉強、恋愛など努力をしている人でも、父親嫌いのままでいると、無意識のうちにも罪悪感を持ち続けてしまうことが多いものです。
特に、父親が自分の夢を諦めて好きでもない仕事をして自分を育ててくれたような場合、「自分だけが好きなことをするのは悪い」という意識が働いて、行動にブレーキがかかってしまうことがあります。
罪悪感のために自分が本来持っている能力を人生で十分に発揮できないというのは非常にもったいないことですし、負のループといっても過言ではないでしょう。
3、父親のことを嫌いすぎる人がとるべき対処法
父親嫌いを放置することがよくないと分かってはいても、無理やり父親を好きになるというわけにはいきません。
何らかの理由があって父親嫌いになっているわけですので、無理に好きになろうとするのも健全な対処とはいえません。
父親のことが嫌いすぎるという人は、以下の対処法を検討してみましょう。
(1)カウンセリングを受ける
父親嫌いで精神的に苦しいという場合は、専門のカウンセリングを利用してみることをおすすめします。
最近では、親子関係の問題について心理学を活用したカウンセリングを行っている専門的な機関がたくさんあります。
SNSで無料相談を受け付けているところもありますので、ネット検索して利用してみるとよいでしょう。
心理学的に正しい考え方や行動の仕方をアドバイスしてもらうことで、精神的負担を軽減するヒントが得られるでしょう。
眠れない、食欲がない、過度にイライラしやすい、うつなどの症状が出ている場合は、医師のいる心療内科などのクリニックを受診しましょう。
(2)事実上の縁を切る
父親から暴力やモラハラを受けている、父親に借金があってお金を無心される、父親が不倫して家に帰ってこない、など父親の問題行動に苦しめられている場合は、縁を切ることを考えてもよいでしょう。
ただし、親との法律上の縁を切る手段はないので、事実上の縁を切るということになります。
実家で父親と同居している人なら、まずは自分が実家を出て父親と離れて暮らすことです。
父親からの連絡や自宅への突撃もブロックしたい場合は、役所に「住民票閲覧制限」を申請し、電話番号やメールアドレスも変更しましょう。
可能であれば、職場も変えて父親の目が一切届かないところで新しい生活を始めるのがよいでしょう。
(3)弁護士に相談する
親との法律上の縁は切れなくても、父親との関係に問題があるときに使える法的手段はあります。
例えば、裁判所に保護命令を申し立てて、「接近禁止仮処分命令」を得れば父親によるつきまといをブロックすることができます。
また、「親族関係調整調停」を申し立てれば、父親との関係を改善するために裁判所の調停委員を介して話し合うことができます。
その他にも、父親からの暴力や暴言、お金の要求などは犯罪に該当する可能性もありますので、その場合には警察への相談や告訴を行うことも考えられます。
さらに、民事裁判によって、慰謝料の請求や使い込まれたお金の返還請求などを行うこともできる可能性があります。
これらの法的手段を取るには専門的な知識が必要となりますので、弁護士に相談した方がよいでしょう。
4、父親との縁は切れない?将来のために考えておくべき3つのこと
父親との事実上の縁を切ったとしても、法律上の縁は切れませんので、将来的に父親との関係が再び問題となってくることもあります。
特に、以下の3点については早めに対処法を考え、心づもりをしておいた方がよいでしょう。
(1)嫌いな父親でも結婚式には呼ばなければならない?
法律上、親を結婚式に呼ばなければならないという決まりはありません。
とはいえ、結婚式には両親が参列するのが社会常識であると考えて、悩んでいる人も意外に多いものです。
しかし、今は結婚式のあり方も多様化していて、親を呼ばないというケースも出てきています。
ウェディングプランナーに事情を話して相談すれば、父親を呼ばなくても違和感のないようなプランを考えてくれるでしょう。
父親を呼ばなければ結婚式ができないということはありませんので、安心してください。
(2)嫌いな父親が倒れたら扶助する義務はある?
父親が倒れて、他に面倒を見る人がいないという場合、原則としては、扶助する必要があります。直系血族には、互いに扶養する義務があるからです(民法第877条1項)。この義務のことを、「親族扶助義務」といいます。
ただし、必ずしも倒れた父親をあなたが付きっきりで介護しなければならないというわけではありません。
ヘルパーを雇ったり、介護施設や老人ホームに父親を入れて、その費用を父親が支払う余裕がない場合にはあなたが費用を負担することによっても、親族扶助義務を果たしたことになります。
このように、お金で解決することも可能ですので、もしもの場合に備えて少しずつ貯蓄をしていくことをおすすめします。
嫌いな父親のために貯蓄をするのは気が進まないかもしれませんが、将来の介護は考えておかなければならない問題です。自分の将来を守るための対処法と考えて、貯蓄していった方がよいでしょう。
(3)嫌いな父親からお金の無心をされたらどうすればいい?
父親が生活費に困っている場合も、子どもは親族扶助義務として一定の範囲内で父親の生活費を援助しなければなりません。
ただし、親族扶助義務とは、自分の生活と同程度の生活を親族にも保障するという義務ですので、自分の生活が苦しい場合にまで援助する義務はありません。
また、父親が浪費で作った借金に追われているような場合も、一定の範囲を超えて援助する義務はありません。
このような場合は、まず父親が浪費をやめて、残った借金については債務整理をするなどして解決すべきです。
父親の借金を子どもが肩代わりするような義務はありません。
自分も生活に余裕がないという場合は、父親には生活保護を受けてもらうということも可能です。
親族扶助義務があっても、自分の生活を犠牲にする必要はありませんので、度を超えるお金の無心は拒否することができます。
5、父親も一人の人間!嫌いな理由を自覚して歩み寄ってみよう
父親による虐待やDV、モラハラ、借金などがある場合は縁を切るのもやむを得ませんが、親子関係の改善が見込めるなら歩み寄ってみるに越したことはありません。
父親も一人の人間であり、完璧な人間というのはこの世に一人もいません。どんな人にも、いくつかは気に入らない点があるものです。
自分が父親を嫌いな理由を分析し、自覚してみましょう。その理由は、親子関係を断絶すべきほどのものでしょうか。
案外、受け流しておけばいずれ解消するようなケースも多いものです。
父親のことが疎ましく感じる場合、それはあなたが成長したからかもしれません。
このような場合、最初は父親が「子どものくせに何を言ってるんだ」という対応をしていても、やがてあなたの成長を認めると、一人の大人として扱ってくれるようになるでしょう。
このようにして父親との葛藤を解消できた場合、その後は良好な親子関係を築きやすくなります。
「昔は父親が嫌いだったけど、今は感謝している」という人は数多くいます。
ただ、本当に父親に問題があるケースもありますので、法的措置をとって父親と距離を取る場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
父親嫌いは、成長の過程で生じる一過性のケースも多いものです。そのような場合は、自分が成長することで自然に父親嫌いが解消されます。
しかし、いつまでも父親嫌いでいると、自分の将来に暗い影を落とすことになりかねません。
どうすればいいのか分からないほど悩んでいるときは、気軽に弁護士に相談してみましょう。
法的措置を取った方がよいのか、カウンセリングが有効なのか、警察へ相談すべきケースなのかについて、弁護士が状況に応じてアドバイスしてくれます。
父親嫌いの悩みを解消するためには、弁護士も心強い味方となりますので、お困りの方は無料相談を利用してみてはいかがでしょうか。