ドクターハラスメントとは何でしょうか。
なぜ問題になるのでしょうか。
端的に言えば医師による患者への嫌がらせということですが、具体的にはどんな状況を指すのでしょうか。
この記事では
- ドクターハラスメント(ドクハラ)とは何か、なぜ起こるのか。
- ドクハラを防止、速やかな解決のための当事者の注意点
- ドクハラが紛争になったときの対応策
などについて弁護士がわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
精神的苦痛について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
1、ドクターハラスメント(ドクハラ)とは
(1)ドクハラの定義
ドクターハラスメントとは、医師(ドクター)等による患者への嫌がらせ、あるいは、無神経な言動などです。
「病気になったのはあなたの日頃の行いのせい」といった言動が典型例です。
しかし例に限らず、患者が不必要に不安や不快感を感じる言動は広く「ドクハラ」に該当する可能性があります。
(2)具体例
いくつか具体的な例を挙げてみましょう。
以下のような言動はドクハラに該当する恐れがあります。
- がん患者に「もう手遅れですね」と治療不可能と示唆する
- 「このまま退院したら7、8ヶ月で死ぬ」と脅迫する
- 「手術のことなど患者が知る必要はない」と突き放す
- 「これ以上何もできないから、当院にはもうこなくて良いよ」と匙を投げる
- 医師に検査結果の説明を求めても説明されない
- 「不満があるなら退院してくれ」等まともに取り合ってもらえない
2、ドクハラには法律上どのような問題があるか。
ドクハラについて法律上、どのような問題が生じるでしょうか。
(1)正当な医療行為・必要な指示等については、民事刑事とも責任は問われない。
正当な医療行為であれば医療従事者の責任が問われることはないと考えられます。
そもそも医療そのものが大きなリスクを伴うものです。
実際の診療治療行為のみならず、医療のための必要な指示について、緊急時のやむを得ない場合であれば、責任を問われることはないでしょう。
(2)ドクハラが問題になりうるのは、医療上の必要性を超えた悪質な場合
確かに、医療に関しては、人の命や健康に直接関わる問題であるだけに、医師などの医療従事者に相当程度の裁量の余地を認めないと医療行為が成り立たないという側面があります。
他方で、必要性の限度を超えて、患者の心にトラウマ(心的外傷)を負わせるような医療従事者による暴言などの行為は、問題になり得ます。
3、ドクハラの防止と発生時の対処策
ここからはドクハラの防止策及び発生時の対応策についてご紹介します。
(1)医療従事者の側の対策
まずは、自らが患者に対して圧倒的に強い立場にあることを自覚することです。
患者の権利への十分な認識が必要です。
患者は「自己決定の権利」として自分自身に関する自己決定の権利を有しており、医師は、患者に対してその決定のもたらす結果を知らせる必要があります。
医師は医師と患者との間で十分な情報を伝えた上での合意に努めなければなりません。
一方で医療上の必要な注意に従わない患者には、医師として毅然とした態度をとり、必要な医療行為への妨げが生じないようにする必要もあります。
(2)患者の側の注意点
患者はご自身が心身に不調を抱えており、医師に対しても圧倒的に弱い立場にあります。
医師からの理不尽な対応があった場合には、精神的に傷つくだけでなく、治療行為そのものにマイナスの影響が生ずることも現実にあります。
問題があればご家族と相談することはためらわない方が良いでしょう。
4、ドクハラの相談先一覧
限度を超えるようなドクハラがなされることはほとんどないと思いますが、他方で万が一ドクハラに悩まされている患者様がいるのであれば、その解決にはぜひ、下記の相談窓口などもご活用ください。
①各病院の相談窓口
各病院には相談窓口が設置されていると思われます。
患者自身やご家族の方で気になる点があれば、まずは、病院の相談窓口に相談してみることです。気軽に相談できるよう投書箱が設けられている病院などもあります。
②医療安全支援センター
医療安全支援センターは医療法第6条の13の規定に基づき、都道府県、保健所を設置する市及び特別区により、日本全国で380箇所以上設置されています。
患者又はその家族からの医療に関する苦情に対応し、又は相談に応じ、
- 患者
- 家族
- 当該病院等の管理者
などに対し、必要に応じ、助言を行う役割を担っています。
全国の医療安全支援センターは以下で検索できます。
参考:「全国の医療安全支援センター」
③都道府県の「患者の声相談窓口」
東京都では、平成13年5月から、全国に先駆けて医療安全課に「患者の声相談窓口」を設置されていますが、その他の府県などでも同様の相談窓口が設置されています。
5、解決しないときは弁護士の活用を
- 自ら解決できない
- 公的な窓口でも十分対応できない
以上のように感じた場合は、ぜひ、早めにハラスメント対策の経験豊富な弁護士に相談してみてください。
弁護士は様々な局面に応じてあなたのために最善を尽くします。
弁護士の知見が問題の解決に役に立つことでしょう。
まとめ
我慢や泣き寝入りは問題解決にはつながりません。
トラブルを早めに解決し、患者様もお医者様も大切な治療に専念していただくために、弁護士は力を尽くします。