Twitterを使っていると画像の利用やRT(リツイート)のときに「違法になることもあると聞く。自分は大丈夫だろうか」と不安になることがあるのではないでしょうか。知らず知らずのうちに無断転載などの著作権法違反をしてしまっているケースは少なくありません。Twitterで何気なくしていることが、違法になってしまうケースがあるのです。
問題になってから「知らなかった」では済みません。そこで今回は、
- TwitterなどのSNSを安心して使うために知っておきたい著作権の基本
- 著作権を侵害しないためにやっていいこと、やってはいけないこと
についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
著作権については以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、Twitterの利用で問題になる「著作権」とは何か
著作権の侵害には罰則が定められており、ときに訴えられるリスクもあります。著作権を侵害しないことはTwitterなどのSNSを安全に使うためにも重要なことです。
まずは「著作権とは何か」や問題になるケース、違反した際の罰則などについてお話しします。
(1)著作権とは著作物の権利のこと
著作権とは著作物に対して著作者がもつ権利のことです。
著作物とは著作権法で以下のように定められています。
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
著作権法2条
著作物がどのようなものを指すのかは、著作権法10条に定められています。具体的には以下のようなものが挙げられます。
絵、漫画、版画、図面、図表、小説、論文、脚本、彫刻、映画、音楽、映像、プログラム、写真 など
個人が作成したもの、企業が作成したものを問わず、著作物は著作権法により守られています。
著作物を利用する権利をもつのは著作物を制作した人や会社(あるいは権利を譲り受けた人・会社)です。
たとえば、あなたが絵を描いたとします。その絵を赤の他人が勝手にTwitterのアイコンに使用しました。著作物の権利者はあなたですから、あなたが許可をすればアイコンなどに使うことはできます。しかし、あなた以外の人が、無許可で絵(著作物)を利用することは原則としてできません。
あなた(著作者)には絵(著作物)の権利(著作権)があり、その権利は著作権法という法律に守られています。
(2)著作権では私的利用の範囲なら問題ない
著作物を自由に利用する権利は著作者にあります。
著作者以外が絵などの著作物を利用することはできませんが、「私的利用の範囲なら許される」という例外があるのです。私的利用とは個人や家庭のごく限られた範囲内で使う場合です。
たとえばあなたの絵を気に入った第三者が、個人で楽しむ意図で作品を印刷し、壁に飾りました。他の用途では一切使わず、絵を自分だけが見るためにです。このような私的利用の範囲内であれば、基本的には問題ないと解釈されます。
ただし、目的が私的利用であったとしても、違法にアップロードされた音楽や動画などを、違法であると知ってダウンロードすることはNGです。
(3)Twitterの著作権では「無断転載」が問題になる
Twitterに自分で描いた絵や文章をアップするのは自由ですが、他人の絵や文章といった著作物をアップロードすることは違法になります。
たとえばあなたが描いた絵を他人が個人で楽しむためにダウンロードしたとします。自分ひとりで楽しんでいるなら、それは個人利用の範囲です。しかしこの他人はあなたの絵をTwitterなどのSNSやブログ、webサイトに無断でアップしました。いわゆる無断転載です。
無断転載は権利侵害になるため許されません。著作物をアップロードする権利(公衆送信権)は著作者にあるからです。Twitterでは個人で自由に画像などをアップできることから、よく無断転載が問題になります。
無断転載の具体的なケースについては後述します。
(4)著作権侵害の罰則
著作権侵害などに関する刑事罰は大部分が親告罪とされております。親告罪とは、被害者である著作権者が申し出ない限り、起訴されないというルールです。
著作権侵害に対する罰則は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金です。また、著作権の侵害に対しては刑事罰の他に、民事における損害賠償などを請求されるリスクもあります。
2、Twitterの無断転載とは?
Twitterは個人で画像などを手軽にアップロードできることから、よく無断転載が問題になります。
無断転載とは「著作権者に許可をもらっていないのに勝手に著作物を転載すること」です。
たとえばあなたが漫画を描いたとします。漫画は有料コンテンツでした。しかし他人がTwitterに有料の漫画を転載してしまい、大勢の人が無料で見られるようになってしまいました。その結果、あなたが漫画で得られるはずだった利益が失われてしまいました。また、無断転載されたせいで漫画を加工されて使われるなど、二次被害が出てしまいました。
Twitterで素敵な絵や写真、文章などを見つけると「たくさんの人に見て欲しい」という気持ちで気軽に転載する人がいます。どのような気持ちがあるにせよ、著作権者に無断で転載してしまうことは無断転載という違法行為になってしまうのです。これはTwitterだけでなく、FacebookやInstagramなどでも同じです。
(1)無断転載と引用の違い
すべての転載が違法になるわけではありません。他人の著作物をどうしても使いたい場合は許可を得るか、又は「引用」という方法があります。
まず、著作物を著作権者の許諾を得て掲載することはもちろん許されます。著作権を侵害していないからです。著作権者に許諾を得ないで勝手に転載することは問題ですが、著作権者に「いいですよ」と許可をもらった場合は問題ありません。
また、「引用」の場合も例外的に他人の著作物を使えます。「引用」とは自分の著作物の中において他者の著作物を使用することです。「引用」であるとして許されるためには、以下のような条件を満たさなければいけません。
- 引用しなければ説明が難しいなど必要性がある
- 出典(書籍名や著者、URLなど)が明記されている
- 引用元の内容を変えていない
- 引用と自分の作品の主従関係が明確である
- 引用した部分がどこなのか明記されている
- すでに公開された著作物を引用に使っている
など。
「引用」はあくまでも自分の著作物の部分がメインであり、その中に従として他人の著作物をルールに則って使う法的に許されている方法です。対して無断転載は違法であり、自分の著作物に他者の著作物を従として使うわけでもありません。無断転載の場合とは、他者の著作物がメインになっている点で違いがあります。
3、Twitterで無断転載/著作権違反になってしまう事例
無断転載などの著作権侵害が悪いこと、罰則や訴えられるリスクのあることだとわかったとしても、具体的に「Twitterで何をしてはいけないのか」悩むのではないでしょうか。
Twitterで無断転載/著作権違反になる具体的な事例を4つ取りあげます。
(1)Twitterで見つけた画像をアイコンやツイートに使う
AさんはTwitterでいろいろな人の絵を見るのが大好きでした。Twitterで活動している漫画家やイラストレーターは多く、Aさんのタイムラインには毎日のように素敵な作品が流れてきます。
Aさんは気に入った絵や漫画はTwitterのブックマーク機能や「いいね」機能などを利用して保存し、自分で何度も見返したい作品についてはダウンロードしていました。
ある日、Aさんは相互フォロワーであるBさんのアイコンが変わっていることに気づきます。BさんのプロフィールアイコンがAさんの好きなイラストレーターの絵になっていたのです。Bさんに尋ねると「素敵な絵だったから使いたくなった」とのことでした。
Aさんはここで「その手があったか」と思いました。タイムラインに流れてくる素敵な絵を自分のアイコンにすればたくさんの人に見てもらえますし、自分のTwitterもお洒落になります。
Aさんはさっそく自分のアイコンに好きなイラストレーターの絵を使いました。また、タイムラインで見かけた素敵な絵を拾い、自分のツイートに転載するようになりました。
このような転載行為も、著作権侵害に当たり得ます。
(2)無断でスクショして自分のツイートに掲載する
タイムラインを見ていると素敵な絵や写真がよく流れてきます。
Aさんはある日、タイムラインに流れてきた絵をスクショして自分のツイートに掲載しました。すると「素敵な作品ですね」「素敵な絵ですね」とどんどんフォロワーが増えます。また、Aさんのスクショが掲載されたツイートには多数の「いいね」がつき、たくさんRTされました。
Aさんはフォロワーを増やし「いいね」を稼ぐためには、この方法が良いのではないかと考えます。
以降、Aさんはいろいろな作品を見て回り、「いいね」やフォロワー数を稼げそうな作品は作者のツイート・作品をRTするのではなく、自分でスクショして掲載するようにしました。
このような転載行為も同様に、著作権侵害に当たり得ます。
(3)他人のツイートと同じ内容を発信する(パクツイ)
AさんはTwitterで他人のツイートがバズる(爆発的に広がる)ところを目にし、自分も「いいね」やRT、フォロワー稼ぎをしようと思いました。そこで、バズっているツイートを利用しようと考えます。爆発的に拡散されるツイートの文章をそのまま自分のツイートに転載して投稿しました。
絵は無断転載になるが文章は問題ないと勘違いされがちですが、文章の場合も無断転載に該当し得ます。
(4)Twitterで著作権以外にも注意したいポイント
Twitterに自分が撮影した写真を投稿することは「写真=自分の著作物」なので問題ありません。ただし、写真に写っているもの次第では別の権利侵害になる可能性があるのです。
たとえば、Aさんが友人と出かけて人通りの多いところで写真を撮りました。写真には他人の顔がはっきりわかるかたちで写っていました。また、写真の中には人気の芸能人の姿も写っていました。Aさんはこの写真をTwitterにアップロードします。自分の撮った写真なので著作権の問題はないと思ったのです。
他人を無断で撮影してTwitterなどで公開してしまうと、肖像権侵害のリスクがあります。人には自分を勝手に撮影されない、そして無断で公開されない権利があるのです。芸能人についてはパブリシティ権(経済的な利益を排他的に利用する権利)を侵害する可能性があります。
Twitter利用の際は著作権だけでなく、肖像権など各種の権利も侵害しないよう注意する必要があります。
4、TwitterのRTも問題になる?知っておきたい最高裁の判例
Twitterで面白いツイートや素敵な作品つきのツイートが流れていると、軽い気持ちでRTする人は少なくありません。RTは大勢の人に情報や素敵な作品をシェアできる反面、リスクもあるのです。
最高裁判所ではTwitterのRTを巡る裁判がありました。著作権者以外の者が著作物である写真をツイートし、その写真をRTした際に画像がトリミングされて著作者の名前が表示されなくなるという場合において、氏名表示権の侵害にあたるという判示でした。
東京地裁でも誹謗中傷や名誉棄損などをRTした場合、自分が直接発言したわけでなくても、自分の言葉(意見)と同等に扱われるという判決があります。RTしただけでも損害賠償などの責任を負う可能性があるということです。
5、Twitterで著作権違反/無断転載しないための注意点
著作権法違反には罰則が科されたりや訴えられたりするリスクがあることから、Twitterを安心して使うためには著作権法違反を避けることが重要です。
著作権違反/無断転載せずリスクのないTwitter利用をするためには6つのポイントに注意しましょう。
(1)気に入っても個人利用の範囲に留める
気に入った絵や文章など他人の著作物は個人利用の範囲なら問題ありません。個人利用(私的利用)についてはすでにお話ししました。
Twitterなどに流れてきた素敵な絵など著作物は個人でダウンロードして楽しむことなら基本的に問題ありません。ダウンロードした絵などをアップしてしまうと問題になります。
Twitterで気に入った作品を見つけても個人利用の範囲から出てしまわないように注意しましょう。
(2)拾い画や他人のイラストなどをアイコンに利用しない
素敵な絵や写真があると、思わず自分のTwitterアイコンなどに利用したいと思うかもしれません。しかし、他人の絵や写真といった著作物を無断で利用すると違法になります。
たとえ気に入った絵や写真などがあっても、無断でアイコンに利用するのはNGです。
(3)著作権者にきちんと許可をもらう
Twitterで気に入った絵などがあれば、著作権者に許可をもらうことで解決できる可能性があります。
たとえばAさんが描いた絵をBさんが気に入ったとします。どうしても自分のプロフィール画像に使いたいと思いました。ここでBさんが勝手に絵を使ってしまうと無断転載ですが、BさんはAさんにコンタクトを取り、プロフィール画像への使用許可をもらいました。
このように、許可をもらうことで防げる無断転載もあります。
ただし、著作権者が許可するかどうかは別問題です。著作権者にコンタクトを取っても使用目的などから利用を断られるケースも少なくありません。
断られたときに「一応、コンタクトは取ったから」と利用してしまうと無断転載になりますから、駄目といわれたら素直に諦めてください。無理に使おうとしたり、勝手に使ったりしてしまうとトラブルのもとです。
(4)権利フリーの画像などをアイコンに使う
絵や画像の中には権利フリーのものもあります。いわゆるパブリックドメイン(社会が共有している)画像や写真のことです。「著作権フリー画像」などで検索してみるとすぐに取り扱いサイトが見つかります。
権利フリーの画像や写真は取り扱いサイトの利用規約で許可していればTwitterのアイコンなどに利用可能です。
(5)「引用」については「引用」のルールを守る
「引用」の際は「引用」ルールを守ることが重要です。自分では引用のつもりでも、引用元が書かれていなかったり、もとの文章などを改変したりしていると、適法な「引用」とはいえません。ルールを守っていない場合は「引用」ではなく無断転載です。引用時は注意することが必要です。
(6)判断が難しいときは弁護士など専門家に確認する
Twitterを使っていて「やって良いことなのか」と迷うことがあれば、やって良いこととやってはいけないラインを明確にするためにも弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。あやふやなまま転載や引用をしてしまうと、後からトラブルになりかねません。罰則や訴えられるリスクもあります。
不安なときは専門的知識を持つ人に確認し、常日頃からリスクやトラブル対策をしてください。
6、イラストやアイコンを無断転載されないための注意点
Twitterを作品発表の場にしていると、無断転載する側ではなくされる側になることもあります。補足として、無断転載されないための注意点についても説明します。
(1)イラストなどの作品にサインを入れる
Twitterに作品を投稿するときに「自分の作品だとわかるマーク・サイン」を入れておくと、無断転載作品だと見た側がわかります。
たとえばTwitterのIDを入れたり、自分が識別できるマークやサインを入れたりするなど、作品には自分の作品だと証明するものを入れておくようにしましょう。
(2)Twitterへ著作権侵害の報告をする
Twitterには権利侵害を報告できるフォームがあります。Twitterのヘルプセンターを開き、イラストなどの著作権者であれば「権利者」を選んで報告してください。送信すると、追ってTwitterの方から返信があります。
Twitter社の対応としては、著作権を侵害している人のアカウント凍結などがあります。ただ、必ず対処してもらえるとは限りませんので注意してください。
(3)弁護士に適切な対処法を相談する
適切な対処をしたい場合は弁護士への相談も検討しましょう。弁護士に相談することで訴えた方が良いか、すぐにできる対処はないかなど、ケースごとにアドバイスを受けられます。
仮に訴える場合は手続きなども弁護士に一任できますので、無断転載などに困っている人は、まずは相談してみてください。
まとめ
Twitterで素敵なイラストや写真などを見かけると、「保存したい」「自分のアイコンに使いたい」と思うかもしれません。
自分ひとりで見て楽しむなど私的利用の範囲ならダウンロードも問題ありませんが、アップロードやアイコンへの利用はNGです。
Twitterでやって良いこと、やってはいけないことの判断が難しい場合は、やる前に弁護士からアドバイスを受けることをおすすめします。訴えられるリスクや罰則のリスクがあることを忘れないでください。
無断転載されて困っている場合は早めの対処をおすすめします。RTなどで広がると被害が深刻化します。二次被害のリスクなどもありますので、弁護士へと早めに相談し適切な対処をしましょう。